巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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#6

一ノ瀬とアイリーンが五重塔前でMr. Aを待っていると、周囲の人達が「中国の女工作員だ!」と叫び航空自衛官数人が駆け寄ってきた。

一時的に卒倒していたアイリーンに中国語で呼びかけただけで一ノ瀬を工作員と決めつけたのだから完全な言いがかりだ。

 

「中国人の女工作員がいると聞いてやって来たが貴様らだな。奈良基地まで来てもらおうか。」

 

「丸腰の市民に銃口向けるってあんた最低!令状も無いし行く義務は無い。」

「治安出動を知らんのか?これは自衛隊法第 78 条に基づく正当な行為で総理も了承済みだ。我々自衛隊には国を守るため、国民を守るため数々の権限が与えられているのだよ。」

 

「そうやって権力者は法を曲解し市民に銃口を向ける。私は考古学を学び過去の人類の歴史を調べているけど、古来から権力者は国を守る、民を守ると言いながら自分の気に入らない人達を迫害してきた。今の貴方達と全く同じ。」

 

64 式 7.62mm 自動小銃の銃口を向けてきた極悪自衛官に対しアイリーンも一ノ瀬も堂々と反論している。

彼女達は大阪で沖縄基地反対デモに参加したこともあり日本政府から敵視されていて、邪悪な自衛官連中も隙あらば 2 人を拘束しようと狙っていたのである。

「我々自衛隊に口答えとは生意気にも程がある。生意気な貴様らにはここで死んでもらう。貴様らが我々の警告に従わず銃を奪おうとしたからやむなく射殺したことにすれば問題無い。恨むなら中国の工作員になった自らの過ちを恨め。」

 

突然興福寺境内に銃声が響き、丸腰の市民 2 人の射殺を企てた極悪自衛官が両目を見開いたまま仰向けに倒れ込んだ。

 

驚いて振り返った一ノ瀬とアイリーンが見たのはシグザウエルP226自動拳銃を構えるジョナの姿であり、銃口から煙が出ている。他の自衛官達も全員ジョナに眉間を撃ち抜かれ、一ノ瀬とアイリーンが射殺されるのを期待していた野次馬達は腰が抜けて立ち上がれない。

「一ノ瀬由衣さんだね。私はアラン・ジョナ、Mr. A の名でメールさせてもらった者だ。こいつ等自衛官は人を撃ちたい願望だけ強くて実際に人を撃ったことは無いから撃つのが遅い。国際手配中の私を無視して無実の市民に銃口を向けるとは救いようが無いな。」

 

「はい、私が一ノ瀬由衣です。そしてこちらが私の友人のアイリーン・チェンです。」

 

「場所を変えようか。ここで立ち話はもう無理だ。」

 

周囲の悲鳴を意に介さず一ノ瀬とアイリーンを連れ五重塔脇の車道に出たジョナは、先程射殺した外道自衛官達が乗っていた和製ハマーことメガクルーザーを奪った部下と合流し興福寺を後にした。

腰が抜けた野次馬達は逃げ惑う人々に身体中を踏んづけられ、鹿の糞にまみれながら呻いている。興福寺境内には多数の鹿が頻繫に出入りしていて、転がっている糞の数が半端では無い。

 

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