巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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#7

「1 つずつ話そう。ゴジラ細胞について論文を書いている一ノ瀬さんに聞きたいのだが、政府の連中はゴジラを倒せると思うか?」

 

「ゴジラは細胞 1 つになっても培養液を瞬時に変質させ私達人類にいいように使われるのを拒絶している。そんなゴジラを政府が権力と武力を濫用して倒すなんて無理。政府がゴジラ抹殺に血眼なのは核でゴジラが覚醒した事実を隠蔽し、自分達が最強と思い上がりたいから。」

 

ジョナは一ノ瀬に相槌を打つ。現在パトカーを潰しながら逃走中のメガクルーザーだが、車内は至って落ち着いた雰囲気だ。

 

「ゴジラを殺すための研究しかしない御用学者とは違うな。貴方のような方とお会い出来て光栄だ。ではもう1人のお嬢さん、アイリーン・チェンさんだったな、貴方はこのキングギドラをどうお考えかな?」

 

ジョナがタブレット端末に映し出された壁画の画像を指差しながらアイリーンに話しかけると、彼女は怯えながらも返答した。

 

「ゴジラと双璧を成す存在。嵐と雷を操り災いをもたらすと古文書にはあるけど、一方でその嵐と雷が植物の成長を後押しし、自然を破壊する文明に滅びを与え自然界に調和を取り戻している。私の母国では龍は破壊と救済の神。そしてキングギドラも龍。」

 

ジョナはアイリーンの返答に満足している。この時メガクルーザー後部にパトカーの集団が迫っていたものの、ジョナが先頭車輛のフロントガラスにカラーボールをぶつけたためパトカー同士で玉突き衝突し最早追跡どころでは無い。

 

「素晴らしい返答だ。長年国家や軍の汚い部分を見続けてきた私は文明人による環境破壊にも危機感を持っている。そしてキングギドラこそ愚かで罪深い文明を滅ぼし地球環境の危機を救う存在と考えていて、今すぐにでも地球に来て欲しいくらいだよ。」

 

セクハラ被害に遭い続けて男性に強い嫌悪感を持つ一ノ瀬だが、物腰柔らかなジョナに対しては嫌悪感が湧かない。命の恩人というだけでなく、胸を凝視し軽いノリでセクハラ発言する他の男達と違い、目を見て真摯に話すジョナに安心出来るのが大きい。

 

「そのことなんですが、さっき夢を見ました。キングギドラが太陽系に向かって物凄い速さで迫っている夢です。」

 

アイリーンが夢の件を話すと、ジョナはなるほどといった表情で肯いた。

 

「昔諜報活動の一環でアメリカやソ連の超能力者育成プロジェクトを調べたが、ごく一部の人間には一種の防衛本能に基づく予知能力が備わってはいるものの、自分の意思で制御することもその力の増幅もまず不可能ということだ。貴方の夢もその類と考えれば別段おかしなことでは無い。結局超能力者育成プロジェクトは何の成果も出せず自然消滅したが。」

 

平然と軍事大国の機密情報を話すジョナに一ノ瀬は大丈夫なのかと質問するが、ジョナ本人は平然としている。

 

「国際手配の身だから今更誰に何を話そうとどうってことは無い。この前日本政府を陰で操る金星人連中の親玉と話したが、向こうは国際手配中の私が金星人の本心を世間に暴露しても誰も信じないと強気な姿勢だったよ。そうだ、これを貴方達に託そう。本当はもっとゆっくり話したかったが、これ以上民間人を我々の逃避行に巻き込むわけにはいかない。ここでお別れだ。」

 

突然アイリーンと一ノ瀬が車外に放り出されたのは、2 人がジョナ達に拉致され車内で暴れたため放り出されたように見せかけるための芝居だ。

 

歩道に横たわる2人はゆっくりと身体を起こした。一ノ瀬が右手で握っているのはジョナから手渡されたUSBメモリーだ。

 

「由衣ちゃん、あのアラン・ジョナって人、私達のこと気遣ってくれたよね。わざわざ車を止めて歩道を選んでくれたよ。」

 

「しかもここ植え込みだからクッションになってる。あの人達は自分達の逃走で手一杯の筈なのに私達の安全を気遣ってくれた。」

 

アイリーンも一ノ瀬も命の恩人が無事逃げられるよう祈ると同時に、祈ることしか出来ない状況にもどかしさを感じている。

 

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