巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
軽部孝士1 等海士はイージス艦あたごの艦内で怯えていた。
空母ロナルド・レーガンがゴジラに撃沈された一件を日本政府の隠蔽工作により全く知らない軽部でも、F-35A の爆撃が全く通用しないゴジラの頑丈さを目の当たりにすれば自衛隊の軍事力が通用する相手では無いことくらいすぐにわかる。だが他の海上自衛官連中は軽部を臆病者と嘲り暴力を振るった。
「俺達の力ではゴジラを止めるのは無理だと!?この根性なしめ!俺達が日頃から気合入れてやっているのに感謝が足りん!」
「艦長、コイツ気合入れ足りないみたいっす。てわけで今から鉄拳で気合入れてやった方がいいっす。」
「軽部!これはいじめでも虐待でも無い!貴様の間違いを正すための愛の鉄拳だ!感謝して受けるように!」
あたごをはじめとする海自の艦隊がゴジラを一斉に攻撃したものの全く相手にされず、単に弾薬を浪費しただけだ。海自ではゴジラは止められないと言った軽部が結局正しかったのである。
だが軽部が正しかったことを死んでも認めたくない腐れ自衛官連中は軽部を袋叩きにした。完全な逆恨みだ。撤退を余儀無くされた艦隊を尻目にゴジラは東海第二原発を目指す。
「ゴジラの原子炉への進行を阻むため地中に単一方向性爆弾ブラストボムを 20 基埋設し、ゴジラの皮膚を射抜くことが可能なフルメタルミサイルを 200 発用意しました。これでゴジラといえども原発に手出しは出来ません。ここを奴の墓場にしてやりますよ。」
ブラストボムもフルメタルミサイルもヨヴェル達金星人が製造した兵器で、威力を試すため陸自に貸与されていた。
内心地球人を毛嫌いしているヨヴェルだが、3 機の修理が済んでいない状態で金星人が巨神ゴジラに直接挑むのは危険と判断し自ら陸自への貸与を願い出たのだ。海面に背びれだけを出し泳いでいたゴジラは、東海第二原発に近づいてくると頭を出し立ち上がった。
久慈川河口南部の浜辺に並ぶ 90 式戦車隊がゴジラに向け一斉に砲撃を開始したが、そんなものが通用する相手では無い。元々茨城県内の土浦駐屯地に自衛官への教育用に配備されていた 90 式戦車だが、日米安保条約破棄に伴う自主防衛強化の観点から実戦用に配備数が増やされた経緯がある。ゴジラに対する砲撃が全く通用しない状況に戦車隊長は苛立った。
「出来れば我々の兵器だけで倒したかったが仕方無い!フルメタルミサイル発射!」
ゴジラを射抜き殺傷するため製造開発された貫通弾頭フルメタルミサイルだが、そのゴジラの皮膚の頑丈さが規格外過ぎて命中した途端にミサイル自体が砕けてしまう。
厚さ 200m の鉄筋コンクリートの壁5 列を 1 発で射抜く貫通弾頭でもゴジラの皮膚を射抜くには至らない。両脚を狙ってゴジラを転倒させようとする自衛隊だが、フルメタルミサイルが両脚に命中してもゴジラはよろけさえしない。
途端にゴジラの背びれが青白く光った。基本的に人類など眼中に無いゴジラだが、流石に執拗なフルメタルミサイル攻撃には頭に来たようだ。直後にゴジラは放射熱線を吐き片っ端から戦車隊を殲滅していく。
「ガハッ、まだだ、まだブラストボムがある。俺達自衛隊は原発を死守する。ゴジラ、お前の好きにはさせん。」
放射熱線で全身を大火傷した上被爆した戦車隊長は地べたを這いながらゴジラを睨んだ。
ゴジラが原子炉の敷地に足を踏み入れた途端にブラストボムが一斉に起爆しこれで原発を死守出来たと微笑む戦車隊長だが、直後に爆炎の中から無傷で出てきたゴジラが原発を破壊し始めたため愕然とし、そのまま黒い血を多量に吐き絶命した。結局自衛隊は原発を死守出来なかったのである。
「やっぱりゴジラは来てしもた。自衛隊がゴジラに勝たれへんのも由衣の言うた通りやわ。」
「反政府デモを暴力で叩き潰したがっている自衛隊を絶対信用するなと由衣っぺが言ってたけど、自衛隊の連中、私達に避難指示さえせずゴジラに踏み潰させようとしていたのがバレバレだったから早く避難しておいてよかった。」
原子炉から放射能を吸い尽くしたゴジラは前傾姿勢で咆哮する。
前述の通り人類など眼中に無いゴジラはそのまま海に帰り、反原発デモの参加者達はゴジラ上陸前に安全地帯に全員避難していたので、あわよくばゴジラがデモ隊を殲滅するのを期待していた外道自衛隊連中の思惑は外れた。
久慈川に隣接する浜辺では壊滅した戦車隊から突き出た旭日旗が燃えながらはためいている。