巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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第五章 計算違い
#1


ラゴモ人達の葉巻型 UFO を襲撃した際に機体を改造し今現在宇宙空間を飛行中の MOGERA は、レーダーが何かの反応を示している。MOGERA の頭部アンテナにはレーダー機能が備わっていて前方の障害物を遠方から割り出す役割があり、亜光速での宇宙空間飛行の安定化には欠かせない。

「前方より未確認飛行物体が光速で接近。衝突を未然に阻止するため破壊する。攻撃開始。」

 

ズメイの指令でMOGERAが両目からプラズマレーザー光線を発射すると、前方の未確認飛行物体、即ち巨大隕石が突然動きを止め、プラズマレーザー光線が命中していない箇所から亀裂が入り、そのまま爆発した。

爆炎の中から姿を現したのは惑星ラゴモでスペースゴジラとの死闘を制したキングギドラである。

「謎の巨大生物出現。体内に多量の電力を蓄積している模様。性質は至って凶暴と推察。」

 

ズメイがキングギドラの解析のため使用しているのは MOGERA のスキャン機能である。一方キングギドラ側は MOGERA を睨む右の首、そんな右の首に今は様子を見ろと指示する中央の首はいつも通りだが、MOGERAを物珍しげに見たのは一瞬だけで何かを警戒するかのように周囲を見回している左の首の様子は明らかにいつもと様子が違う。

 

「謎の巨大生物を排除対象と認識し直ちに抹殺する。プラズマレーザー光線発射。」

 

ズメイはキングギドラを敵と認識し、MOGERA は両目と両腕のプラズマレーザー光線を発射した。キングギドラの右の首も単独で引力光線を吐いたため光線同士がぶつかり合う。相殺だがわずかに引力光線が優勢だ。

それ見たことかと言わんばかりに右の首が睨むと、中央の首は申し訳なさそうな表情を浮かべた。

「敵の戦闘力は極めて強大。追加攻撃としてスパイラルグレネードミサイル発射。」

 

MOGERA の両腕のドリルがパカッと上下に開き、中から発射されたのはスパイラルグレネードミサイルだ。

このミサイルは元々鋭利な先端が標的に突き刺さった後爆発する構造だったが、ズメイ人の葉巻型 UFO を制圧した際に先端がドリル状に回転するよう改造されより深く標的に打撃を与える凶悪な兵器と化している。

「スパイラルグレネードミサイル、2 発とも命中するも標的に損傷確認出来ず。」

スペースゴジラの両肩の結晶体なら十分破壊出来そうな回転ミサイルだが、キングギドラの全身を覆う鱗や両翼の皮膜には歯が立たない。

直後にキングギドラの各首が吐く引力光線が命中し、MOGERA は後方に吹っ飛んだ。

引力光線は放射熱線同様に合成ブルーダイヤコーティングでは防ぎきれない程高威力なのである。

 

「プラズマロケットエンジン起動。逆噴射。」

 

逆噴射で体勢を立て直したMOGERAは再びキングギドラに向かって飛行を開始した。

とはいえ真正面から突き進んでくるキングギドラと衝突しないよう機体の角度を変えたりしている。仮にここが地球上でゴジラが加勢してくれるならもう少し互角に戦えるかもしれないが、スペースゴジラを制し宇宙エネルギー吸収で自己強化したキングギドラ相手に一対一の戦いは余りにも厳しい。

 

「計器に異常あり。機体損傷度12.73%。」

 

20 年以上の宇宙空間飛行中に膨大な宇宙線を浴び続けてきたにも拘らず特に不調は無い MOGERA の計器は、キングギドラの全身から発する微弱な電磁波くらい何ともない。だが引力光線が発する多量の電磁波を光線直撃時に浴びたことでその計器が不調をきたし始めた。言うまでも無く MOGERA にとって苦しい状況である。

 

「機体角度90 度変更。プラズマメーサー光線発射。」

追い詰められた MOGERA はプラズマメーサー光線を発射した。だが試し撃ちでズメイ人の葉巻型 UFO を消し去ったこのMOGERA 最強兵器もキングギドラ相手だと一瞬動きを止めるのが精一杯だ。

直後に引力光線が直撃し MOGERA の上半身が吹き飛

ばされた。

キングギドラの中央の首は自分が攻撃するまでもないと判断したので引力光線を吐いたのは左右の首だけだが。

 

MOGERA にはプラズマメーサー光線発射時に腹部の砲台周辺が無防備になる弱点があり、キングギドラの左右の首が吐く引力光線で十分という中央の首の読み通り、無防備な腹部から機体内部に侵入した引力光線がレーザー核融合炉を爆破し MOGERA は上半身を失った。

放射熱線や引力光線に耐性がある合成ブルーダイヤコーティングも中からの破壊には対応出来ない。

 

「ザザ、ザザザ、下半身変形、スターファルコン起動。ザ、ザザザザ、ザザ。」

 

実は MOGERA には地底戦車ランドモゲラーと高速爆撃機スターファルコンに分離する機能がある。

MOGERA の上半身即ちランドモゲラーの部分が爆発する直前に分離した下半身は早速スターファルコンに変形した。引力光線が発する電磁波の影響で雑音の発生等不調をきたしているズメイだが、MOGERA が上半身を失う事態に直面しても対応は早い。

 

「ザ、ザザ、わ、私はイリーナ・マミーロワ、今は人工知能ズメ、お、おお、貴様はズメイ!実在したのか!伝説通りだ!ならば私は祖国の英雄イリヤー・ムーロメツに成り代わり貴様を成敗する!ズメイは私だけでいい!」

 

驚くべきことに無機質なAIと化していたズメイにマミーロワの人格が戻った。これも引力光線が発する電磁波の影響だ。

10000 年前地球に飛来したキングギドラの姿を目撃し衝撃を受けた人々はその存在を伝説として語り継ぎ、ズメイやヒュドラ、八岐大蛇といった多頭の龍の神話が生まれた。キングギドラは生きた伝説なのである。

 

「クッ、やはりメーサーバルカンは効果が無いか。」

 

スターファルコンは両翼のメーサーバルカン砲を撃つがMOGERA最強兵器プラズマメーサー光線が効かないキングギドラ相手には焼け石に水だ。

なお MOGERA の兵器は上半身に集中しているため、その上半身を失うことは兵器の大半を失うことを意味する。

「物理的に破壊出来ないなら、違う方法で貴様を制すまでだ!貴様のエネルギーをあの葉巻型 UFO 同様に吸い尽くす!貴様から頂いたエネルギーはこのスターファルコンが大切に使うから安心して逝くがいい!」

スターファルコンはキングギドラの背後に回り込み、機体に収納されていたエネルギー吸収ケーブルを伸ばす。ケーブルの先端はハサミ状になっていて、キングギドラの両翼の下部に挟んでエネルギーを吸収し始めた。

 

「さあ、もっとだ、もっ、あ、ちょっと待て、おい!全然制御出来ないじゃないか!?おい止めろ!機が壊れる!」

 

スターファルコンは吸収したキングギドラのエネルギーを全く制御出来ず、機体の至る所から火花が噴出している。所詮は人の手で製造された機械に過ぎないスターファルコンに巨神、即ち神であるキングギドラのエネルギーの制御は荷が重過ぎた。

電力だから葉巻型UFO のエネルギー同様に制御出来ると表面的にしか見ていなかったズメイもといマミーロワの致命的過ぎる大誤算だ。

「え?急にエネルギー減り始めたんだけど?まさかコイツ、逆にこっちのエネルギーを吸っている?」

そのまさかだ。キングギドラはエネルギー吸収ケーブルの構造を逆に利用しスターファルコンのレーザー核融合炉からエネルギーを奪い始めた。

勿論最初に吸われた分は即奪還している。キングギドラの更なる強大化をお膳立てする格好になったスターファルコンだが、この時丁度地球では楠木が核攻撃でゴジラの強大化をお膳立てしていたのだからある意味奇跡の瞬間である。

 

「ズメイが両翼で自分の身体を覆った。一体何が、って、うわぁああああああああ!」

 

突然発生したニュートリノの衝撃波がキングギドラとスターファルコンに襲い掛かる。先程キングギドラの左の首が MOGERA にはほとんど目もくれず周囲を見回していたのは衝撃波の予兆を感じ取っていたからである。キングギドラは両翼で身体を覆い防御態勢に入ったが、既に機体全体に致命的打撃を受けているスターファルコンは部品を散らしながら吹っ飛んだ。

 

「こんな所で、こんな所で私は終わるのかぁ!」

 

ほとんどスクラップ状態のスターファルコンはニュートリノの衝撃波により発生した時空の歪みに飲み込まれた。用済みのエンジニア達やラゴモ人達の葉巻型UFO を MOGERA の光線砲で消し去ったズメイもといマミーロワであるが、ついに自分自身が消え去る瞬間が来たのである。

引力光線を撃ち込んで時空の歪みを消し去ったキングギドラはそのまま光速移動を開始した。

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