巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
アフリカのジブチ共和国では地元の人々が自衛隊基地を包囲している。
自衛隊から業務委託された企業が地元労働者を不当解雇した件で暴動が発生したのである。
そのジブチに日本政府が派遣した飛行式機動兵器、スーパーX こそヨヴェルが言う新兵器のうちの 1 機に他ならない。スーパーX は炊飯器に似た形状で、チタン合金の装甲の下はバルカン砲やミサイル等武器だらけだ。
瞬間移動装置でジブチに到着したスーパーX は早速市民達を死体の山に変えていく。元を正せば地元労働者を不当解雇した企業が全部悪いのだが、企業に肩入れする自衛隊が抗議する市民数人を見せしめで射殺したため市民側も暴動を起こし自衛隊基地を包囲したのである。
スーパーX を操縦する自衛官連中が殺戮を楽しんでいるのは、元からジブチの人達を見下しているのも大きい。
メキシコの時と同じ邪念を察知したラドンがジブチに飛来すると、スーパーX が逃げ惑う人々を機銃掃射している。またあいつらかと呆れたラドンは素早く接近しスーパーX の機体を鷲掴みにしてジブチ基地に叩き落とした。弾薬庫に墜落し発射口が変形した状態でミサイルを誤射したスーパーX は木っ端微塵になり、弾薬庫の弾薬が次々と誘爆したことでジブチ基地全域が吹っ飛んだ。
「あの巨鳥は我々の救い主に違いない。神が巨鳥の姿で降臨されたのだ。」
ラドンが暴虐な自衛隊を殲滅する様子を目撃した地元の人達は暴動を止め一斉にひれ伏す。ジブチ基地もろとも自衛隊を全滅させジブチ全域を覆う邪念が消滅したのを確認したラドンは、地元の人達には一切手を出さずそのまま雲の中に消えていった。
一方釜山沖ではスーパーX と同時に製造開発された無人艦艇スーパーX2 がゴジラと対峙していた。
濃緑色でアイロンに似た台形型の機体であるスーパーX2 は、飛行性能のみを有するスーパーX とは異なり潜水性能も有する。この機体を護衛艦たかなみ等からなる海自の艦隊に同伴させ韓国侵攻を企てた日本政府だが、近海を泳ぐゴジラを発見し急遽叩くことにしたのである。
スーパーX2 が発射したフルメタルミサイルはゴジラの怒りを買う。一見すると東海第二原発の時と同じ失敗を繰り返しているようだが、自衛隊はわざとゴジラの怒りを買い放射熱線でスーパーX2 を攻撃するよう仕向けているのだ。ゴジラの背びれが青白く光ると、ス
ーパーX2 の機体前面が左右に展開し中から人工ダイヤモンドコーティングの三面鏡が現れた。
「ゴジラが熱線を吐きます。ファイヤーミラー、展開完了です。」
「総理、このファイヤーミラーにゴジラが放射熱線を撃ち込めば 10000 倍にして跳ね返すことが出来ます。」
「なるほど、ゴジラ自身の放射熱線をそっくりそのまま利用するわけか。であれば流石のゴジラもひとたまりもあるまい。ゴジラ打倒の暁には君達を来年の『梅を見る会』に招待しよう。」
スーパーX2を遠隔操作する2人のオペレーターの解説に門長はご満悦だ。ところで「梅を見る会」自体多額の税金を使った有権者の買収だと世間から非難されているのだが。
自衛隊の狙い通りゴジラはスーパーX2 のファイヤーミラーめがけて放射熱線を吐く。
だが放射熱線が余りにも高威力で、ファイヤーミラーは勿論スーパーX2 の機体自体が木っ端微塵である。
激怒した門長はオペレーター達に八つ当たりで怒鳴り散らし部屋を出て行った。スーパーX2 を爆砕したゴジラはそのまま放射熱線で海自の艦隊を全滅させ海中へと姿を消す。
ペンタゴンの中央管制室では、ホシェルとヨヴェルが放射熱線を吐きスーパーX2 を爆砕するゴジラを大画面で眺めている。
「フルメタルミサイルでわざとゴジラを怒らせ放射熱線を吐かせる発想自体はよかったが、放射熱線があそこまで高威力なのは想定外だったな。それはそうとあと何日かで国連安保理が日本への武力制裁を決議するだろうから日本政府の反応が楽しみだ。」
「新兵器が2機とも巨神に呆気無くやられたのは残念ですが、試作品ですので我々の計画には何の支障もありません。それにしてもルクス様も人が悪いですね。日本政府の連中には『国連安保理は私が抑えますのでご安心を。』と言い、一方でその国連安保理にニューヨークで大量虐殺を楽しむ寺内や自衛官連中の映像を提供する等して日本への武力制裁決議を後押しなさるとは。」
「地球人達が憎しみの矛先を日本人、即ち同じ地球人に向けてもらわないと我々金星人の計画進行の妨げになりかねない。もしこれで日本が多国籍軍に叩き潰されたなら、その時はまた別の国を支援し今度は地球人達がその国を憎むよう仕向けるまでだ。」
1 週間後、官邸は蜂の巣をつついたような大騒ぎである。
「そ、総理、こ、国連安保理が我が国への武力制裁決議を可決しました!」
「安保理は私が抑えると貴方仰っていましたけど全然抑えられていないじゃないですか!あの 3 機とスーパーX はラドンとやらに壊されてしまいましたし、スーパーX2 もゴジラにやられました!もうこれでこの国はおしまいですよ!どうしてくれるんですか!?」
秘書官からの報告に門長は失禁し、小物丸出しの表情で狼狽えている。門長の下半身が放つ悪臭及びほぼ泣き言な罵声に顔色一つ変えないホシェルは、ワシントン D.C.陥落時はあんなに浮かれていた癖に随分身勝手な日本国首相だなと内心冷ややかだ。
「門長総理、今現在日本以外の全ての国は政府の中枢が麻痺し大混乱に陥っています。いくら安保理が日本への武力制裁を決定したところで何も出来ません。最早安保理などこけおどしです。ご安心を。」
事態はホシェルが言った通りに進展した。日本への武力制裁に賛同したどの国も国内の混乱が全く収束せず経済が破綻し、年が明けて 2020 年になっても武力制裁が実施される気配は無い。そして円以外の通貨の価値が暴落したのも相まって、日本は世界中の国々を経済的に隷属させる超大国に変貌したのである