巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
瓦礫から出てきたキングギドラの目の前に、同じく瓦礫から出てきた
キングギドラが目を見張ったのは、四つん這いになった怪物 X の背中から翼が生え、頭部の形状が著しく変化し全身の外骨格が皮膚と同化したのに伴い両肩の突起が著しく伸びてキングギドラ同様の 3 本首と化したからだ。
X 星人の支配から解放された怪物X は本来の姿、カイザーギドラに変貌したのである。
キングギドラに酷似した姿のカイザーギドラだが、キングギドラが全身を金色の鱗で覆い 2 足歩行なのに対し、カイザーギドラは金色と黒が入り混じった色合いのゴツゴツした皮膚で全身を覆い 4 足歩行と差異も目立つ。
キングギドラがコンピューターを停止させたことで制御装置の支配から解放され自我を取り戻し本来の姿に戻ったカイザーギドラだが、勿論キングギドラに感謝などしていない。
怪物 X の頃と同じ赤く光る眼でキングギドラを睨みカイザーギドラが不気味な声を上げると、キングギドラの右の首は鼻息を荒げて睨み返す。左の首はギドラ族同士の対決に困惑したが、向こうは殺意全開で和解は不可能と中央の首から諭され決意を固める。怪物X の姿で X 星人の操り人形に甘んじ続けてきたカイザーギドラをこのまま生かしておくと、また別の宇宙人の操り人形になるだろう。
カイザーギドラの各首が反重力光線デストロイド・カイザーを吐くのに対し、キングギドラも中央の首の鳴き声による合図で各首が一斉に引力光線を吐く。
反重力光線は引力光線に酷似した稲妻状の光線で、物体の分子構造を乱すことに特化した引力光線と違い物体を宙に浮かせることも出来る。なお各首がそれぞれ個性的なキングギドラと違いカイザーギドラの各首は特に個性は無いようだ。
引力光線と反重力光線がぶつかり合うと威力の差から引力光線が徐々に押し負けていく。
地底都市の電力を吸い尽くしたことで怪物 X と戦った頃より強大化しているキングギドラが劣勢なのだからカイザーギドラの火力は凄まじい。キングギドラの左右の首は引力光線を吐きながら目で中央の首にこのままでいいのかと尋ねると、同じく引力光線を吐きながら中央の首が目で何かの合図をする。
突然キングギドラは大きく広げた両翼の棘から引力光線を放射しカイザーギドラの胴体を狙う。
キングギドラの両翼から放射された引力光線の直撃でカイザーギドラが悲鳴を上げたことに伴い反重力光線は大きく逸れ、キングギドラが口から吐いた方の引力光線が一気に押し返す。口から吐く光線を撃ち合っている隙に無防備な胴体を狙うキングギドラの中央の首の作戦は見事成功したのだ。
口から吐く引力光線で反重力光線を押し返しカイザーギドラの胴体前部を負傷させたキングギドラは、一旦空高く飛翔しカイザーギドラの背中に勢いよく着地した。
翼が小さ過ぎて飛翔出来ないカイザーギドラは身体の肥大化で怪物 X だった頃の俊敏さを失い接近戦も厳しい。
口から吐く光線同士の撃ち合いでは劣勢だったキングギドラだが、それ以外の面ではカイザーギドラを凌駕している。
背中に乗るキングギドラに反重力光線を撃ち込もうとするカイザーギドラだが、キングギドラの各首が素早くカイザーギドラの背中に噛みつき体力を吸い始めたため反重力光線を吐けない。
カイザーギドラもキングギドラの両脚の付け根に噛み付き体力を奪おうとするが、それを読んでいたキングギドラは 2 本の尾から引力光線を放射しカイザーギドラの中央の首と左の首を切断する。
地面に落下したカイザーギドラの首は 2 本とも息絶えた。首だけで生存可能なキングギドラの生命力は確かに規格外過ぎるが、飛翔不可能かつ接近戦が苦手で生命力までキングギドラより劣っているとなるとカイザー(皇帝)ギドラは完全に名前負けしていると言われても仕方無いだろう。
そしてカイザーギドラにはキングギドラのような再生能力も無いので刎ねられた首はもう二度と生えてこない。
キングギドラの各首はカイザーギドラの腰に噛みつき全身を何度も地面に叩きつける。
首 2 本と戦意を喪失したカイザーギドラに対しキングギドラは攻撃の手を緩めず、遠心力を利用して空高く放り投げた。宙を舞うカイザーギドラの巨体を狙いキングギドラの各首が一斉に吐いた引力光線は、カイザーギドラの体力をたっぷりと吸ったことで威力が飛躍的に上昇している。
自力で飛翔出来ず X 星人に自我を奪われ続けてきたカイザーギドラは、キングギドラに空高く放り投げられたこの時初めて空からX 星を見た。
とはいえ空から X 星を見ることが出来たのは唯一残った右の首だけでしかも一瞬だけである。直後に反重力光線に押し負けていた頃とは比べ物にならない高威力の引力光線が胴体に直撃し、カイザーギドラは断末魔の叫び声を上げ粉々になった。
自分の意思で宇宙を旅し戦いを繰り広げる中で色々知恵を絞ってきたキングギドラと、X 星人の操り人形に甘んじ続けてきて自分の頭で考えながら戦ったことが無い怪物Xもといカイザーギドラでは実力に大きな差があるのは当然だ。
反逆の機会はいくらでもあった筈なのに、怪物X の姿で X 星人の操り人形に甘んじ続けているようではカイザー(皇帝)の名が泣く。
X 星を後にするため飛び立ったキングギドラは、地上に転がるカイザーギドラの首 2 本に引力光線を撃ち込み消滅させた。前述の通りカイザーギドラの首は 2 本とも絶命しているが、スペースゴジラの件もあるのでキングギドラは後始末に余念が無い。
地上を見つめるキングギドラの左の首の目線の先で瓦礫から突き出ているのは、X 星人が地球侵攻に使う筈だった円盤の残骸だ。