巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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第六章 激突と共闘
#1


2020 年の幕開けは日本と他国で著しく異なっている。日本では例年通りお祭り騒ぎが繰り広げられ、TV ではどの番組も晴れ着姿の芸能人達の愚にもつかない話を放送しているが、他国では経済破綻を伴う大混乱で事実上の無政府状態となり新年を祝うどころではない。皇居で他の皇族連中や政府与党のお偉いさん達と新年を祝う天皇は満面の笑みを浮かべている。

 

「門長、今年はいつもにも増して夜明けが明るく見えたぞ。今や日本は世界に君臨する超大国だから、朕は世界に君臨していることになる。まさしく八紘一宇だ。君が代は千代に八千代に続くのだよ。他国の皆さんは色々大変みたいだが日本人に生まれなかった時点で運が無かっただけだ。日本以外の国が経済破綻で沈没とはまさしく『日本以外全部沈没』ではないか。実に愉快だ。」

 

以前映画館で「日本以外全部沈没」を観て結末を知っている門長は、天皇の能天気な発言に青ざめた。門長と違い題名しか知らない天皇は適当なことを言っているのである。無論他国の人達が苦しむ様子を他人事感覚で面白がり、日本人に生まれなかった時点で運が無かったなどと差別丸出しの暴言を吐いている時点で人として最低なのは言うまでも無いが。

 

「門長、『日本以外全部沈没』とはどのような内容なのだ?俺にも教えてくれ。」

 

門長の青ざめた表情を見て気になった天皇の弟は、トイレから出てきた門長を呼びつけて話を聞くことにした。

 

「殿下、あれ結局日本列島も完全に沈没する結末なんですよ。」

「やはりそうか。お前が青ざめた顔をしていたから何か変だと思ったんだよ。それにしてもあの馬鹿め!映画がどんな内容かも知らず題名だけで判断してやがったのか!やはりあんな馬鹿より俺の方が皇位に相応しいな。」

 

天皇の弟の不用意な発言に門長は一層青ざめた表情だ。

 

「おっと門長、今のは口外無用だ。もし誰かにチクったりしたらお前の巨額の脱税の証拠は勿論、お前のお友達が理事長やっている学校法人による巨額の補助金横領の証拠も全て明るみに出ることとなる。皇族である俺がほんの少し本気を出せばお前なんて一瞬で刑務所送りだ。このまま総理を続けたいなら不用意な発言は控えることだ。わかったな。」

 

天皇の弟は自分自身の不用意な発言を棚に上げて門長を脅迫した。もしこの外道な姿が全国放送されれば天皇の弟は皇位継承どころでは無くなるだろう。もっとも全国放送する前にその TV 局自体が文字通り潰される可能性の方が高いのだが。

新年早々に天皇の弟から脅迫されるとは夢にも思っていなかった門長は、もう日本沈没してくれないかなと一瞬だけ思った。

 

「どうかなさいましたか?顔色が悪いですよ。そうだ、このブレスレットを利き手につけて下さい。ドクターホエールさんが宇宙のエネルギーを込めた特別なブレスレットですよ。こんな凄いものをたった 100 万円で譲って下さるのですから本当に良心的な方です。」

 

ポカンとした表情で宴席に戻った門長に和服姿の通江が手渡したのは見るからに怪しげなブレスレットだ。最早通江にツッコミを入れる気力も無い門長は無言でそのブレスレットを右手首に装着した。無邪気に微笑む通江は勿論門長の気苦労など知る由も無い。

 

 

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