巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
同じ頃ドイツでは経済破綻による混乱に乗じて極右勢力が蜂起した。「21 世紀のヒトラー」と称されるアーリア民族党党首ハインリッヒ・スコルツェニーは特殊部隊や軍にも支持層を拡大し、短時間で首都ベルリンを手中に収めたのである。
スコルツェニーがベルリン大聖堂の天蓋から街並みを眺めていると、側近のオットー・メンゲレが興奮の余り声を上げた。
「ハイルスコルツェニー!あのヒトラー総統の電撃作戦を彷彿とさせるベルリン制圧作戦の華麗さに私、オットー・メンゲレも感極まっております!極東の島国の劣等民族をこのままのさばらせておくわけにはいきません!世界の頂点は私達アーリア民族です!」
メンゲレの右手を真っ直ぐ伸ばす姿勢は言うまでも無くナチス式敬礼だ。
「もっともだ。ヒトラー閣下の聖典『我が闘争』に『日本人は真似以外に才能が無い劣等民族で、偉大なるアーリア民族の存在無しには自力で輝くことも出来ない月のようなもの』と記されているからな。だが我らの軍備は乏しい。それをどうするかだ。」
「軍備につきましては我々にお任せ下さい。」
ヨヴェルと共に突然姿を現したホシェルはスコルツェニーに軍事支援を申し出た。
「貴様ら一体どうやって現れた!?いきなり支援すると言っても我々がありがとうございますと言うわけないだろうが!」
「大変失礼致しました。私達は金星人でして、彼はヨヴェル・マスティマ、そして私はホシェル・ルクスです。実を言いますと今の日本の繁栄は私達金星人のテコ入れによる虚構に過ぎません。この 3 機も私達が日本に貸し与えたものです。」
怒鳴り散らすスコルツェニーにホシェルは自分達の正体を明かした上で解説する。ヨヴェルが持つ小型端末はガルーダ、ガンダルヴァ、ナーガの 3 機を立体映像で映し出している。
「アメリカを陥落させたあの3機を製造したのは貴様らか。金星人が実在したのは意外だったが、真似以外に才能が無い劣等民族にあんな高性能兵器を製造出来る筈ないから前からおかしいと思っていたよ。で、今更我々に支援を申し出たのはどういう存念だ?」
スコルツェニーは前から疑問を感じていた 3 機の件に納得し、ホシェルへの警戒心を徐々に解いていく。
「元々我々が日本政府を支援したのは、我々が製造した 3 機の試し撃ちを代行してもらいたかったからです。ですが日本政府は我々の3機を無謀にもラドンに挑む形で使い潰しました。そんな連中に愛想が尽きまして、我々と外見も酷似している貴方達こそ支援の相手に相応しいと考えこの度挨拶に伺った次第です。やはりこの星は貴方達アーリア民族が統治するべきです。」
確かに金髪碧眼であるホシェル達金星人一行はスコルツェニー達と外見が酷似している。すっかりホシェルのおだてに乗せられたスコルツェニーもメンゲレも上機嫌になり、支援を歓迎した。ホシェルが横目でちらりと見ながら小さく頷き合図を送ると、ヨヴェルは一言も発さず小型端末の画面に指を当て人型ロボット兵器の立体映像を映し出す。
「皆様に提供するこの機はイェーガー、ご存知の通りドイツ語で『狩人』を意味します。本日は実物を 1 機用意しております。」
ホシェルの先導でネオナチ連中が大聖堂に程近いアレクサンダー広場に移動すると、全高約80m の巨大ロボットが出現した。
「素晴らしい!我々アーリア民族がこいつを操縦すれば劣等民族の癖に地球の支配者ぶる日本人共も、薄汚いユダヤ人共も簡単に踏み潰せるじゃないか!劣等民族を狩るイェーガー(狩人)だな。ところでこんなに巨大な機体をどうやってここに運んだんだ?」
「こちらのイェーガー1 号、ジプシー・デンジャーは瞬間移動装置を搭載しておりますので移送は簡単です。左右の腕にはプラズマ砲、胸部には熱線砲を装備しております。」
怪訝な顔をしたスコルツェニーに対し平静を装いながら追加説明を行うホシェルだが、虐殺を楽しむ気満々の総統気取りを内心嫌悪しているのは言うまでも無い。ホシェルからすればこの総統気取りはアメリカで虐殺を楽しんでいた寺内の同類である。
「強力な兵器の提供は有難いが、このイェーガーとやらを我々が操縦する訓練をどこですればいいのだ?私は外科医だから劣等民族である日本人やユダヤ人を切り刻むためメスを握るのは容易だが、急にロボットの操縦をしろと言われても困るよ。」
「メンゲレさん、いい質問ですね。日本でその訓練を行うのですよ。」
一瞬ざわついたネオナチ連中は訓練が完了するまで日本政府を騙し友好を装うというホシェルの解説に納得した。勿論ホシェルは自分の邪悪さと残忍さを隠そうともしない外科医メンゲレをスコルツェニーや寺内の同類と認識している。
もう計画が成功した気になり舞い上がっているネオナチ連中に拠点に戻る旨を伝えたホシェルは、ヨヴェルと共にアレクサンダー広場を去った。
「あのネオナチ連中も日本人と同じですね。地球を支配するべき民族は自分達だと勝手に思い込んでいて実に傲慢です。ああいう連中をあっという間に手懐けるルクス様の話術には毎度驚かされます。私はああいう連中とは口もききたくありませんので。」
「極右なんて自国民が一番偉いと思い上がる傲慢でみみっちい連中ばかりだよ。そしてそのみみっちい自尊心をほんの少しくすぐるだけで簡単に操れる。あの連中ならイェーガーの操縦に失敗して事故死しても全く問題無い。まあせいぜい頑張って貰おう。」