巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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太平洋上を西方向に泳ぐゴジラを急襲したのは4機のイェーガーである。

ジプシーだけでなく全てのイェーガーが瞬間移動装置を搭載しているのだ。ネオナチ連中がゴジラ抹殺作戦を実行に移したのは、今ゴジラの首を突き付ければ全国規模の暴動を鎮圧したばかりの日本政府はすぐ屈服するとホシェルに入れ知恵されたのが大きい。

「4 対1 だから我々が圧倒的に有利だ!ゲルマン神話の英雄ジークフリートが龍を退治したように、我々もゴジラを退治するぞ!」

 

スコルツェニーの号令でタイフーンは機動力にものを言わせて跳躍し、両腕の回転ノコギリでゴジラに斬りかかる。チェルノは高圧電流を帯びた拳をゴジラに叩き込み、ストライカーは両腕の刃から発する高熱でゴジラの身体を焼き切ろうとする。イェーガー同士で見事な連携を見せ攻撃するのはいいのだが、どの攻撃も核爆発の直撃に耐え抜くゴジラ相手には全く効果が無い。

「スコルツェニー総統閣下!我々のイェーガーの攻撃が全く通用しません!」

 

「怯むなメンゲレ!偉大なるアーリア民族の力を信じれば必ずゴジラに勝てる!そして劣等民族がのさばる極東の島国を制圧だ!」

 

自衛隊が空母ロナルド・レーガンを急襲したゴジラ相手に手も足も出ず全滅したことなど全く知らないスコルツェニーは、大和民族の力なるものを信じたその時の自衛隊同様に下らない精神論に陥っている。日本人を劣等民族と見下すスコルツェニーがその日本人と全く同じ過ちを繰り返しているのだから世話が無い。

 

再び跳躍したタイフーンの機体を尾による強烈な一撃で破壊したゴジラは、メンゲレが操縦するストライカーの右腕を掴んで高熱の刃を振り下ろしチェルノの機体を一刀両断した。スコルツェニーが操縦するジプシーは胸部の熱線砲を放つが、規格外過ぎる頑丈さを誇るゴジラに対しては焼け石に水だ。するとホシェルから通信が入った。

「今すぐ引き返して下さい。命あっての物種です。移動先の座標は既に登録してありますのでボタン 1 つで瞬間移動出来ます。」

 

このままゴジラと戦い続けても残るイェーガー2機に勝ち目は無い。負けたままの戦線離脱は不本意なものの、スコルツェニーはやむなく瞬間移動装置のボタンを押した。完敗を悟り絶望していたメンゲレは避難出来てほっとしている。

イェーガーから降りた2人を左手に何かを持つヨヴェルが出迎えた。完全に安心しきっているメンゲレはヨヴェルに話しかける時の態度が実に馴れ馴れしい。

 

「いやはや持つべきものは友だね、お陰で助かったよ。ところでここはどこかな?」

 

その瞬間、ヨヴェルは左手に持つ光線銃でメンゲレの眉間を撃ち抜いた。

 

時を同じくして木星の第13 衛星、即ち X 星から一筋の光が飛翔し地球を目指す。

 

東京では皇居の敷地内に生息する鳥や動物は勿論皇族の飼い犬まで皆姿を消していた。

全国規模の暴動の最中に一斉に敷地外に出て皇居から遠く離れた場所へと逃げ去っていたのだ。自衛隊に虐殺された人達を無視して暴動の鎮静化を喜んでいた日本国民は、何か不吉な前兆ではないのかと気味悪がっている。

人々の不安を裏付けるかのように巨大隕石が大気圏に突入し、防衛省内は世間同様に蜂の巣をつついたような大騒ぎだ。

 

「日本列島に向け落下してきた巨大隕石が突然姿を変え、龍に、3 つの首を持つ龍になりました!」

 

血相を変え執務室に駆け込んできた部下の報告で、轟天号を早く実戦投入したくて仕方無い楠木が色めき立つ。

 

「3 つの首を持つとはまるで魏怒羅のようだがこの国を攻めるということは護国聖獣などではない不届き者に相違ない。ならば俺の轟天号の出番だ!直ちに出撃しその龍を、似非魏怒羅をぶっ潰せ!昨日の不逞外国人同様に血祭りに上げてやれ!」

 

「しかし轟天号はまだ試運転も済んでいないのですが。」

 

「黙れ!今すぐ出撃だ!上官である俺の言葉を天皇陛下の言葉と思え!」

激昂し部下の顔面を拳で何度も殴る楠木だが「軍人精神注入棒」を振り上げた途端に腰を抜かし、床に落ちた棒がカランと乾いた音を立てる。

楠木には顔面血まみれで仰向け状態の部下の姿が頭を撃ち抜いた直後の息子正義と重なって見えたのだ。

 

結局楠木のゴリ押しで出撃命令が下され、格納庫の天井ハッチが開き船底からロケットエンジンを噴射させながら轟天号が飛行し始めた。

 

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