巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

60 / 102
#10

折しも晴海埠頭では ZERO-NIPPON が特設ステージでライブの最中だ。

暴動で中断されていたライブが再開した矢先に隕石飛来の速報が入ったが、ノリにノッている一行は無謀にもライブを続行し、観客達も高揚感に酔っていて誰一人避難しようとしない。

「皆さん、暴動は自衛隊の方々が鎮圧して下さりました。隕石だって何とかしてくれる筈です。そうです、僕達には天皇陛下がいるんです。皇居で天皇陛下が今平和のため祈っています。たとえゴジラが日本を襲っても自衛隊と天皇陛下がいる限り大丈夫です。そうだ、今からゴジラを凍結させる歌を歌いましょう。会場の皆さんが心を 1 つにすればゴジラだって凍結出来るんです。」

マイクを握る YASUSHI は、暴動を起こすまで日本人から虐げられ続け治安出動と称した自衛隊による虐殺の標的にされた在日外国人達を無視した世迷言を宣う。

彼らは歌でゴジラを凍結させることが出来ると本気で思い込んでいるようだが、直後に大波が晴海埠頭全域を飲み込み ZERO-NIPPON のライブを永遠に終了させた。大波の中から姿を現したのはそのゴジラである。

 

巨大隕石の姿なら宇宙空間では光速、大気圏突入後も極超音速を出せるため地球人は勿論金星人の観測技術でもギリギリまで発見出来なかったキングギドラだが、ゴジラは本能でキングギドラが東京に飛来することまで正確に把握していたのだ。

隕石の姿で地球に飛来し正体を現したキングギドラは左の翼で東京タワーをへし折りながら降下し、着地時に芝大神宮を踏み潰している。

両側の建物を倒壊させながら両翼を大きく広げるキングギドラに対し、ゴジラは前傾姿勢で咆哮しそのまま竹芝方面に進撃を開始した。キングギドラの天候操作能力で関東全域を暴風雨が覆う中、二神は 10000 年ぶりの激闘を開始したのである。

両翼を前脚代わりにして浜松町の建物を壊しながら前進するキングギドラは、竹芝桟橋から突き進んできたゴジラと旧芝離宮庭園内で激突した。

二神共に全身にエネルギーがみなぎっているので、身体が衝突するだけで凄まじい衝撃波が発生する。キングギドラの左右の首が交互にゴジラに頭突きし、ゴジラは両手でその左右の首を払いのけながら中央の首を睨み咆哮した。

 

「こちらあたごです。現在台場近辺を北上中です。90 式艦誘導弾発射します。」

 

イージス艦あたごが発射した誘導弾はゴジラの背中やキングギドラの両翼に命中した。ゴジラと同じく特に負傷はしていないキングギドラだが 10000 年ぶりのゴジラとの対決を邪魔されたことに苛立った右の首が単独で引力光線を吐き、直線距離で約 2km 離れたあたごの艦体を撃ち抜き爆沈させた。

勿論この爆沈で軽部を日常的にいじめ続けた上見殺しにした外道共は全員死亡している。

 

右の首がよそ見した隙を突き、ゴジラは尾による殴打でキングギドラを左方向に弾き飛ばし、間髪入れずに腹部めがけて放射熱線を撃ち込んだ。ゴジラが吐く放射熱線を正面から受け止めたキングギドラの中央の首は、10000 年前の自分ならこの一撃で全身が粉々になっていたことを瞬時に悟った。

 

二神共に大幅に強大化していて、10000 年前とは強さの次元が違う。

至近距離からの放射熱線の直撃で危うく仰向けに転倒しそうになったキングギドラだが、両翼を大きく広げて踏ん張りそのまま真上に飛翔する。

 

キングギドラの足元をくぐり築地や銀座は勿論、八丁堀の一帯まで瞬時に壊滅させる放射熱線の威力は凄まじい。ここまで高威力の放射熱線を至近距離から撃ち込まれてもまるで負傷していないキングギドラの頑丈さも凄まじいが。

 

「こちら轟天号です。三頭龍は現在新橋駅付近でゴジラと激闘中です。」

 

「2 体まとめて零度砲の餌食にしてくれるわ!直ちに発射せよ!俺の轟天号の力を怪物共に見せてやれ!」

キングギドラの左右の首がゴジラを締め上げている隙に狙いを定めた轟天号は船首のドリル部分から零度砲を放つ。零度砲は見事命中しキングギドラもゴジラも呆気なく氷漬けになった。

 

「つまらん、もう終わりか。俺の轟天号は最強だから護国聖獣に頼る必要も無かったな。よし、氷漬けの怪物共にトドメを刺せ!」

 

防衛省中央管制室で指揮を執る楠木の姿が皇居地下シェルターの大画面で大映しになっている。

 

天皇は楠木を日本男児との鑑と称え皇后も感涙しているが、それはキングギドラもゴジラも皇居には手を出せないとたかをくくり、スポーツの試合や TV ゲームの感覚で目の前の出来事を把握する能天気な姿勢に他ならない。

 

数々の特権の上にあぐらをかき続け、自分達が何をしても世間からも好意的に解釈してもらえるが故に天皇ら皇族は世間を、そして自然の力を舐め腐っている。

キングギドラが発生させた暴風雨の影響で皇居の濠が増水し、本能でここにいては危険と察知した魚や亀達は皆神田川に逃げ去った後だが、天皇ら皇族はゴジラもキングギドラも退治されたからまたすぐ戻ってくると楽観的だ。

「パパやったね!日本が勝ったよ!下々の連中が何人死んだって俺達皇族には全く関係無いけど、日本が勝ってくれて嬉しい!」

 

皇族以外の人達を「下々の連中」呼ばわりし、何人死んでも関係無いとは何とも上から目線で生命軽視な物言いだ。さらりと外道な発言をする息子の頭を天皇の弟が撫でている。

「あの龍は皇居を避けるように着地し、ゴジラも放射熱線を皇居に当てないように吐いていた。最初からわかってはいたがやはり奴らは聖域であるこの皇居には手出し出来ない。そして全身氷漬けで確実に凍死しているからもう永遠に目覚めることは無い。矢口蘭堂君も言っていたがこの国はまだまだやれる。そしていずれはこの俺が即位し俺の世が始まる。その次は倅よ、お前の世だ。」

この直後に待っていたのは、二神が凍死したと思い込み慢心していた楠木や天皇ら皇族が驚愕する事態である。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。