巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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#3

太平洋上では2体の巨獣が激闘を繰り広げていた。1 体は富士樹海で覚醒した魏怒羅、もう 1 体はゴジラに酷似した姿の白眼巨獣で、魏怒羅は護国聖獣としてこの白眼が日本列島に上陸し破壊活動を繰り広げるのを阻止するため戦いを挑んだ。

胡散臭さに定評がある「護国聖獣伝記」によるとこの白眼は太平洋戦争の犠牲者の怨念の集合体らしい。

 

この白眼は光線状の怨念を吐き、昨日フィジー近海でゴジラの放射熱線と撃ち合いを演じたばかりだ。ちなみに身長 100m 以上あるゴジラに対し、白眼は身長 60m と体格差が著しい。

怨念光線は所詮人間の怨念の寄せ集めに過ぎないため巨神、即ち神であるゴジラには効果が無く、逆に核エネルギー吸収で自己強化を繰り返したゴジラの放射熱線で白眼が負傷しそのまま海中に沈んだ。

 

この白眼は自分より遥かに大型のゴジラに挑み呆気無く敗退したのを踏まえ、身長 50m と自分より小型の魏怒羅になら勝てると踏んでいて実にずる賢い。とはいえ魏怒羅も白眼の背中に乗り各首が噛み付きながら電撃を吐き思いの外奮闘している。

なおこの白眼に5時間あれば傷が完治するゴジラのような再生力は無く、昨日の傷はそのままだ。

昨日はキングギドラの地球接近を察知し白眼にトドメを刺さず戦いを中断したゴジラだが、あの時ゴジラが本気で放射熱線を吐いていたなら白眼が消し飛んでいたのは間違いない。

そんな中、キングギドラが飛来した。この三つ首龍は死闘の末昏倒させたゴジラを先程太平洋に叩き落としたばかりで、白眼が全身から放つ凄まじい邪念を察知しやって来たのである。

白眼はゴジラより更に巨大なキングギドラと直接戦えば勝ち目が無いことを瞬時に悟り、何とか魏怒羅とキングギドラを戦わせられないかと悪知恵を働かせ始めた。

白眼が思い付いたのは、魏怒羅を文字通りの意味でキングギドラにぶつけることだ。突然前屈みになり背中に乗っている魏怒羅をよろめかせた白眼は、魏怒羅の中央の首の喉元に噛み付きそのまま遠心力を利用して放り投げた。キングギドラ目がけて吹っ飛ぶ魏怒羅の背中に怨念光線を撃ち込み吹っ飛ぶ速度を加速させたのだからこの白眼は本当にずる賢い。

 

キングギドラの各首は一斉に引力光線を吐いた。衝突する前に魏怒羅の身体を消し去るためである。

前方から引力光線、後方から怨念光線に襲われた魏怒羅は絶体絶命の状況を脱するため全身を黄金の粒子で覆った。ようやく千年竜王の力が覚醒したようだ。

引力光線と怨念光線を吸収した黄金の粒子は轟音と共にキングギドラを襲う。

黄金の粒子は一方向にしか撃ち返せないので強大なキングギドラへの攻撃を優先するのは護国聖獣としては必然かもしれない。だがエネルギー吸収能力を持つキングギドラの各首が黄金の粒子をその場で吸収し、魏怒羅の各首は余りにも不本意過ぎる事態に悔しそうな表情である。

 

キングギドラは黄金の粒子を吸収したのにも拘らず体力が上昇した感触がほぼ無い。そもそも放射熱線がそうであるように攻撃目的で発射されたエネルギーの塊は普通吸収出来ない。要は黄金の粒子は攻撃と認識されていないのだ。

弓矢くらいしか武器の無い古代日本人に退治されるようでは「キング」ギドラには程遠いとジョナが評した通り、余りにも魏怒羅は弱過ぎる。

白眼は不快そうに呻き声を上げている。巨神キングギドラと千年竜王、魏怒羅の力の差は絶望的で、このまま魏怒羅が片づけられれば次は自分が標的なのは明白である。魏怒羅も絶望的過ぎる力の差に気付き身体の震えが止まらない。

「そなた達、何をしておる!?その八岐大蛇は朕を弑逆し皇統を滅ぼした朝敵ぞ!護国聖獣なら、皇軍兵士の残留思念の集合体ならやることは決まっておろう。朕の仇を取れ!今すぐにだ!」

 

この声の主は先程死亡した天皇の残留思念である。魏怒羅は日本の古代王朝に退治され封印された存在であり、天皇には頭が上がらない。そして白眼の身体を形成する残留思念の大半は天皇を神と崇める日本人のものだ。そのため魏怒羅と白眼はすっかり恐縮し、協同してキングギドラへの攻撃を開始した。

先程までこの2体が殺し合っていたと言っても誰が信じるだろうか。

 

「いいぞ!やれ!護国聖獣と皇軍兵士の残留思念が共闘すれば最強だ!やっちまえ!俺の仇を取れ!」

同じく残留思念になっていた天皇の弟は魏怒羅と白眼の共闘に興奮を隠せない。白眼が吐く怨念光線に魏怒羅の各首が吐く雷撃が合わさりキングギドラに襲い掛かった。直後に雷撃をまとった怨念光線が命中し大爆発がキングギドラの全身を覆う。

「やったか?」

 

残留思念と化している天皇兄弟の期待も虚しく、煙の中から何事もなかったかのようにキングギドラが姿を現した。

ゴジラ同様に巨神、即ち神であるキングギドラに人間の怨念の寄せ集めに過ぎない怨念光線は勿論通用せず、魏怒羅の雷撃に至っては先程の黄金の粒子同様にキングギドラに吸収されている。折角の呉越同舟だが余りにも相手が悪過ぎた。

 

いつもは攻撃的なキングギドラの右の首だが、魏怒羅も白眼も余りにも程度が低過ぎることに気付き反撃する気が失せている。特に反撃しなくても事態の悪化は無いため中央の首も反撃に消極的だ。

 

ところが左の首が魏怒羅と白眼の即時殲滅を主張したため右の首も中央の首も驚いた。一体どういうことであろうか。

 

邪念の塊である白眼を放置しておくと他に害を与えるから早く殲滅するべき、魏怒羅は古代王朝に退治された時点で本来死亡していて、古代日本人の思惑通りに動く事実上の操り人形状態なのは不憫だから早く消滅させ護国聖獣という呪縛を解くべき、これがキングギドラの左の首の見解であり、右の首も中央の首ももっともだと頷いた。

 

各首が滅ぼす決意を固めればキングギドラは行動が早い。早速各首が引力光線を吐き魏怒羅の全身を爆発四散させた。全身を覆う黄金の粒子は既に無く、削岩弾で出血する程度の耐久しか無い魏怒羅の身体が引力光線の攻撃に耐えられる筈も無い。一応護国聖獣として祀り上げられたことにより、古代日本人に退治された頃よりは強化されているのだが。

 

白眼の方は魏怒羅よりは頑丈でキングギドラの各首が吐いた引力光線を徐々に吸収し、背びれを黄色く発光させている。

キングギドラの中央の首が早く撃てと言わんばかり頷くと、白眼はニヤリと笑うかのように両目を細めた。引力光線のエネルギーを吸収し大幅に強化された怨念光線で一気にキングギドラを消し去る算段をつけたようだ。

途端に白眼の全身から引力光線が噴出し破裂した。

人間の怨念の集合体に過ぎない白眼に巨神の、神のエネルギーを制御出来る筈が無く結局スターファルコンの二の舞だ。

キングギドラの中央の首が白眼を挑発し怨念光線を吐くよう仕向けたのは、無論こうなるとわかっていたからである。

全身が粉々になり消滅した白眼だが、昨日ゴジラと戦った時の傷が再生せずそのままだったのを踏まえると、仮に心臓等身体の一部が残ったとしてもその状態からの全身の再生は夢のまた夢と言わざるを得ない。

「おのれ八岐大蛇!朕と弟の最後の攻撃を受けるがよい!取り殺してくれるわ!」

 

天皇兄弟の残留思念が魏怒羅の霊魂と同化しキングギドラに襲い掛かる。とはいえ白眼を一時的に水没させる程度の霊力しか無い霊魂に人間2人の残留思念が加わったところで何の力にもならない。結局キングギドラに対して何一つ出来ないまま魏怒羅の霊魂は消滅した。

 

天皇兄弟の残留思念もろとも消滅した点では自分を退治し封印した古代日本人に一矢報いたとも言えるか。

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