巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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#5

サンフランシスコに着陸した C-130J 輸送機から降りてきたのはあの榊だ。大株主としてジェネシス社に難病患者に高値で売りつけ一儲けするための新薬の開発を依頼していた榊だが、その新薬の投与で猿達が暴れ出したと聞き現地を訪れたのである。無法地帯と化しているサンフランシスコに榊が1人で来る筈もなく、複数の傭兵達を同伴し万一に備えている。

「東京が壊滅し陛下も総理も死亡だと!?クソッたれ!待てよ、東京にいたら俺も危なかったな。危機一髪だ。」

 

秘書からの急報で驚愕した榊だが、直後にサンフランシスコ行きを決意した自分の判断が正しかったと思い安堵した。

 

「これで日本もおしまいか。五輪開催も無理だな。だが俺は今こうして生きている。人類が絶滅したわけではないから働き手はまだ沢山いる。これはチャンスかもしれない。わが社がこの世界を立て直せば、会長である俺が新世界の神になれる。」

 

懲りずに ANOSAP の経営拡大を企む榊はどこまでも金の亡者であり、また人類こそ地球の支配者という傲慢さが顕著だ。

各国の経済破綻で困窮する人達を低賃金でこき使い一儲けを企むこの男は、金儲けのためなら何をしてもいいという資本主義の邪悪な本質をそのまま体現している。

ちなみに榊が傭兵を雇ったのは、ANOSAP に民間軍事部門を立ち上げることを画策しているからだ。

すると馬に乗り自動小銃を持つ猿達が現れた。驚いた榊は猿達の射殺を命じるが、傭兵達は命令に従わない。

「カネで雇われた傭兵の分際でこの俺の命令を無視する気か!貴様らも派遣社員と同じでドブネズミだということを忘れるな!」

 

すると傭兵の1人、全重根が榊にタブレット端末を見せた。そこにはジョナの顔が映っている。

 

「何か勘違いしているようだが、貴様の周りにいる傭兵達は全員私の同志だ。そしてその猿達を解放したのは我々だよ。」

 

愕然とする榊に追い討ちをかけるかのように猿達のリーダーが口を開く。そう、あのコバである。

「エイプ(※Ape 即ち類人猿)を見下し実験台にし続けたヒトは許さない。でもそのヒト達は自由になる機会を与えてくれたし、我々エイプを見下してなどいないから例外だ。そして貴様がガラス窓の向こうでニヤニヤしながら我々エイプが実験台にされているのを眺めていたのを今でも覚えている。絶対許さない。だからここに呼んだ。」

 

コバ達がジェネシス社の研究所から脱走する手助けをしたジョナは自身の日本潜入に並行して部下達を榊の下に送り込み、サンフランシスコに向かうよう仕向けていた。榊は勿論、榊と共に銃口を向けられている秘書の谷昭も顔面蒼白だ。

 

「ま、待て!いくらほしい!?カネならいくらでもやる!この小切手に好きな金額を書いていい!だから撃たないでくれ!」

 

「我々エイプはカネなど必要としていない。」

 

「我々はまだ貴様からカネを受け取っていないし、最初から受け取る気も無い。」

 

カネにものを言わせて好き勝手してきた榊は、門長内閣の信任を得て天皇ら皇族が税金からくすねた多額の隠し財産の運用も行っていた。だがカネなどいらないと拒まれたため最早打つ手が無い。

それにしても菊タブーをいいことに税金の横領まで行っていた天皇ら皇族は本当に罪深い。もっとも天皇ら皇族が全滅し日本政府自体が瓦解した今となってはその隠し財産も無意味だが。

 

するとコバが猿達に銃を下ろすよう指示した。全をはじめとするジョナの部下達も銃を下げる。榊と谷は唖然とした表情である。

「怯える貴様ら 2 人をここで撃つことも出来るが、それでは我々エイプの怒りは収まらない。こうしよう、今からそこに行け。我々エイプは少し時間を空けてから追いかける。我々エイプから逃げ切れたなら貴様らの勝ちだ。」

 

コバは地下鉄の出入り口を指差している。他に選択肢が無いため榊と谷はこの鬼ごっこに応じることにした。「鬼」に捕まれば文字通り殺される地獄の鬼ごっこの始まりだ。

 

地下鉄の駅はボロボロであちこちに亀裂が入り水漏れしている。サンフランシスコが金星人から貸与された 3 機を操縦する自衛隊に急襲され壊滅して以来そのままなのだから当然だ。

カビ臭さに嫌な顔をしながら歩く榊に、谷はビクビクしながら密着している。当然いくら待っても地下鉄は来ないので、猿達やジョナの部下達から逃げるには線路の上を歩いていくしかない。

 

「早く逃げないと殺される。急がないと。猿共め!絶対逃げ切ってやるからな!生き残りさえすればこっちのものだ。あいつらにはカネの力が通じなくても、カネの力が通じる他の連中を使ってあいつらを潰せばいい。やはりこの世はカネが全てなのだよ。」

 

自衛隊の空襲による亀裂で天井のあちこちから光が漏れていて、懐中電灯無しでも何とか前が見えるのは榊ら 2 人にとって不幸中の幸いかもしれない。

 

だが光が漏れているといっても地下道なので暗い箇所が大半で、例えば榊の足元に亀裂があっても暗くてわからない。その亀裂でつまずいた榊は気の焦りから走っていたこともあり、勢いよく転び前頭部を強打してそのまま気を失った。

 

「あんたの命運もここで尽きたな。俺は直属秘書としてあんたから色々学びもう十分あんたの代わりは務まる。あんたはここであの猿共にやられればいい。今から俺が ANOSAP の会長だ。あばよ、榊大翔さん。」

 

元々榊に取って代わる野望を持っていた谷は、榊を放置し 1 人で地下道を駆けていく。

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