巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

78 / 102
#7

「何だったんだ、あれは?三頭龍とゴジラみたいなデカいのが戦っていた。って、痛い!痛い!痛い!助けてくれぇー!」

 

強い痛みを感じて目を覚ました榊の全身をドブネズミが齧っている。キングギドラの下僕と化したセルヴァムが植物由来の暴君の全身を喰い荒らすというさっきまで榊が見ていた夢と同じ構図だ。植物由来の暴君を滅ぼすキングギドラという 6600 万年前の出来事を夢で見た榊だが、それは自分自身にこれから起こることを告げる予知夢だったのである。

 

「これは夢の中と同じじゃないか!ウギャーッ!」

突然のたうち回り叫び声を上げる榊に驚いたドブネズミ達が一斉に逃げ出す。ドブネズミは雑食性で小動物を捕食することはあっても生きたヒトを襲うことはまずない。ドブネズミ達が榊の全身を齧ったのは、気絶していた榊を死体と勘違いしていたからだ。

 

「ドブネズミ共!一昨日来やがれ!」

 

逃げていくドブネズミ達を罵る榊だが、突然全身が硬直した。コバが榊の後頭部に M4A1 の銃口を突き付けている。

「貴様は我々エイプから逃げることが出来なかった。終わりだ。」

 

直後にコバは榊の頭を撃ち抜いた。地上に戻るコバの背後で今度は本当に死体と化した榊にドブネズミ達が群がっている。

「くたばれ猿野郎!」

別の出口から脱出した谷が道端のアメリカ兵の死体から奪った手榴弾を地下道に放り込んだ。直後に手榴弾が爆発し、元々亀裂だらけの地下道が一気に崩落する。

 

間一髪のところで地下道から脱出したコバを全が出迎えた。

「あいつを殺した。我々エイプの恨み、晴らした。あいつの死体、ドブネズミ達に齧られた。でも穴崩れてドブネズミ達と一緒に死体潰れた。穴崩したヒト、お前が殺してくれたのか?」

 

コバが指差したのは谷の死体で、1発で心臓を撃ち抜かれている。全はまだ銃口から煙が出ているM4A1をコバに見せながら頷いた。

ちなみに全は韓国陸軍出身で、韓国の経済破綻後ジョナの部下となり射撃の正確さに定評がある。

 

「終わったな。派遣社員や我々をドブネズミ呼ばわりして侮辱した榊にはお似合いの最期だ。そういえば我々を"朝鮮の猿"と呼び侮辱する日本人が多いが、それは同時に貴方達エイプも侮辱していることになる。勿論榊もドブネズミを侮辱している。だから逆に他者を動物呼ばわりして侮辱するヒトがいかに愚かで罪深いかを学ばせてもらったよ。ドブネズミ達には可哀そうなことをしたが。」

 

全の話を聞いたコバはヒトという生き物が同じヒトを見下し侮辱していることを知り、自分の目の前に立っているヒトが同じヒトから長年愚弄され続けてきたことを悟る。直後にコバと全は額同士を優しく突き合わせた。信頼の証だ。

 

「ヒトは許せない。ヒトとは暮らせない。でも貴方達のことは忘れない。」

 

「自分に嘘をついてまで無理に相手を許す必要は無い。もう二度と会うことは無いかもしれないが、私も貴方達のことは忘れない。」

 

猿達に別れを告げた全達は C-130J に搭乗し去っていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。