巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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#7

門長ら政府要人を引き連れ靖国神社を参拝した天皇は文字通り天にも昇る心地である。靖国神社の周囲で天皇制なる官製カルトの信者達が日章旗や旭日旗を振り「天皇陛下万歳!」と集団で叫ぶ光景は何ともおぞましい。

「門長、忌々しい憲法を押し付けてきたあの国に正義の鉄鎚を下せて朕は満足しているぞ。これで朕は祖父同様に現人神として君臨出来る。今日は文字通りの日本晴れだったが、こうやって夕陽が社殿を照らす中参拝するのもいいものだ。」

 

「陛下、英霊達も無念の思いを晴らせてさぞ喜んでいることでしょう。もうすぐ日没ですが、我が国は今、真の夜明けを迎えています。」

 

舞い上がった様子で参集殿からぞろぞろ出てきた天皇一行をホシェルが遠巻きに冷たい目で眺めている。

すると傍らにいた側近のヨヴェル・マスティマが忌々しげな表情で口を開いた。2 人が立っているのは社務所と神門の間の通り道で日陰になっている。

 

「日本政府の連中は自力でアメリカに勝ったと勘違いして調子に乗っていますよ!我々金星人の支援無しでは日本国内のアメリカ軍基地の制圧も出来ない癖に、何ですかあの現人神気取りの偉そうな態度は!世界各国の政府や軍の中枢を標的にサイバーテロを起こすだけでも大変なのに、あいつらがワシントン陥落は自衛隊機でやりたいとかほざいたせいで、F-2を艦載機に改造、横須賀基地で鹵獲した空母に瞬間移動装置を搭載しヴァージニアビーチ沿岸まで移動と余計な仕事が増えました!」

 

苛立つヨヴェルを宥めるホシェルだが、ヨヴェルの不満は収まらない。

「大体私達が苦労して開発したガルーダ、ガンダルヴァ、ナーガを何故あんな未開人にあっさり貸与されたのですか!?正直私はあの未開人連中に瞬間移動装置のボタンに触ってほしくなかったです。あの 3 機で官邸を威圧し例の首を渡した後、そのまま我々が操縦しアメリカを攻め落とせばよかったんですよ!我々金星人が作った 3 機は我々が操縦するべきでした!」

 

「どれだけ優れた兵器でも実際使ってみないとわからないものだ。万一3 機に欠陥があり我々金星人が死んだらどうする?日本人なら何人死のうと全く問題無いから思う存分試乗させてやれ。それに今ここで我々金星人が表に出て戦争すれば地球人達は間違いなく我々を憎む。だから今は日本人に戦争させ、地球人達が我々金星人ではなく日本人を憎むよう仕向けるのが肝要だ。」

 

ヨヴェルはホシェルの意図を知り不満を口にするのを止めたものの、まだ納得しきれていない表情だ。

途端にホシェルが参集殿方面を向き愛想笑いを浮かべたのは、取り巻きと共に馴れ馴れしい表情で接近してきた天皇に気付いたからである。

一方ヨヴェルは内心毛嫌いしている天皇の接近に舌打ちし、そのまま 1 人で靖国神社境内から立ち去った。

「こんなにめでたい日だというのに、あの金星人は何故不機嫌なのかね?」

 

「彼は急に気分が悪くなりまして、陛下の前で嘔吐するわけにはいかないと言い退出しました。」

「何と殊勝な心掛けだ、朕は感服したぞ。ゆっくりと養生せよと朕が言っていたと伝えておいてくれ。それはそうと近々戦勝祝いとして一般参賀を行うことにした。金星人のそなたも遠慮なく参加するがよい。大歓迎してやろう。」

さらりと嘘をつくホシェルは天皇の軽薄な能天気さと上から目線過ぎる物言いに内心辟易している。天皇は自分が現人神として君臨出来る日が来たと舞い上がっていて、目の前のホシェルが嘘をついていることに全く気付いていない。

 

早朝のニューヨークではタネンを押し込めたコンテナをパールハーバーに送り届けたガルーダが舞い戻り、ガンダルヴァやナーガと共に破壊と殺戮を繰り広げていた。

 

半壊した大都市のあちこちで火の手が上がり人々が泣き叫ぶ。ガルーダには寺内太一防衛相が搭乗していて同乗する自衛官達と談笑中である。

「すげえよな、これ。ボタン 1 つで瞬間移動して短時間でアメリカ陥落させちゃったよ。さて、俺達が瞬間移動で真珠湾に行っている間にもガンダルヴァとナーガは『狩り』を楽しんでいた。俺達も『狩り』の続きを再開しようか。」

 

「大臣、防衛省司令室から連絡があり、総理が早く帰還せよと仰っているとのことです。」

「今は手が離せないとでも伝えておけ。瞬間移動装置があるから遊び飽きたらその時帰ればいい。東京はそろそろ日没の時間帯だけど、こっちは早朝だし日の出と共に俺のテンションも上がってきちゃったよ!さあゴミ共を一掃だ!『お掃除』は楽しいぞ!」

「そうですね。悲鳴を上げる連中が粉々になるのを最前線で鑑賞する楽しみをここで中断するのは勿体無いです。では大臣、今からあの老夫婦を粉々にしますのでご覧下さい。先程の赤ん坊抱いた若い女性を粉々に砕いた時と同じ愉快さを実感出来ますよ。」

興味本位でガルーダに搭乗した寺内は勿論、3機に搭乗している自衛官全員が悲鳴を上げ死亡する大勢の人達を画面越しに観て愉快な気分になり、殺戮を楽しむ人間のクズに成り果てている。

大勢の命を簡単に奪うことが可能な高性能兵器は人をどこまでも残忍にするのである。アメリカの象徴、自由の女神像も首が地べたに転がる無残な有様だ。

 

日本ではどのチャンネルもワシントン D.C.を空爆する自衛隊の「大活躍」を大々的に報じ、TV の前では天皇制信者達が大音量で万歳と叫んでいる。

 

憲法9条を無視してアメリカへの先制攻撃強行という暴挙に出た日本政府を非難する番組は一切無い。人気TV番組「よるおび!」で薄ら笑いを浮かべながらペラペラ喋っているのはお笑い芸人の木下次郎である。

「俺ホンマに日本スゴいと思うで。70 年以上よう耐えたわ。野党とかしょっちゅうデモ行ってる皆さんは侵略戦争や、憲法違反やと騒いどるみたいやけど、原爆2 発落とした上に憲法押し付けてきた国の暴虐にずっとずっと耐えてきたんやから、その雪辱を晴らした自衛隊の皆さんには感謝するのが当然や。感謝せえへん連中は日本国籍剥奪されても文句言われへんで。」

 

感謝するか否かはあくまで本人が決めることだ。自衛隊に感謝しなければ日本国籍剥奪されても仕方無いと脅迫する木下は本当に根性が薄汚い。大体日本は朝鮮戦争やベトナム戦争といったアメリカが積極的に加担した戦争による特需で大儲けさせてもらった上当時の天皇が沖縄をアメリカ軍に差し出す密約でアメリカ政府から天皇制存続を認めてもらった経緯もあり、単純にアメリカの暴虐に耐え続けてきたわけではない。

無論認知の歪みに由来するこの木下の被害者意識は日本国民の大多数が共有している。

木下に限らず最近は政府与党へのゴマすり発言を行う三流芸人が本当に多い。木下の場合は止めておけばよかったのに映画を何本も制作しどの映画も壊滅的な出来で大コケし、映画制作を後押しした所属事務所に多大な経済的損害を与えたため立つ瀬が無くなり政府与党へのゴマすり発言を繰り返しながら自己保身に命を懸けている有様である。

 

 

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