巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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第九章 突破
#1


全身に光線を浴びたキングギドラは全く負傷していない。ガルーダ、ナーガとの合体で 3 機の原子炉を共有しガンダルヴァの連装光線砲は威力が大幅に上昇しているものの、それでもなお巨神キングギドラを負傷させるには威力不足である。

とはいえ攻撃目的で発射されたエネルギーとキングギドラに認識さえされない魏怒羅の黄金の粒子や雷撃と違い吸収されることは無いが。

 

「やはり王なるギドラは頑丈だな。自衛官連中の死体や横倒しの銅像が一瞬で粉々と今の光線砲の威力はかなりのものだが、肝心の王なるギドラは無傷だ。」

「今の砲撃であの楠木武が粉々になってくれればと思ったのですが、粉々になったのは大村益次郎像で、あの男はご覧の通り光線の直撃を免れたので本当に悪運だけは強いです。」

 

藤崎が眺めている画面の隅に瓦礫の山が映っていて、楠木正成像や楠木の下半身が突き出ている。思わず藤崎が目を背けたのは楠木のはいているズボンがボロボロで尻が半分露出していることに気付いたからだ。

「あの楠木武は飲み会の度に新人自衛官達に裸踊りを強要し、踊りが下手な自衛官はお尻が真っ赤になるまで叩かれた上その赤くなったお尻を晒し者にされたんです。私自身こんなことは止めろと言ったのですが楠木武の取り巻き連中から空気を読め、みんな楽しんでいるのだから水を差すなと怒鳴られました。今現在の楠木武のあの姿は自分のやったことの報いだと思います。」

 

この「空気を読め」、「みんな楽しんでいるのだから水を差すな」というのは実に悪質で、見たくもない裸を見せられた人達、裸踊りを強要された上赤くなるまで尻を叩かれ晒し者にされた人達をのけ者にして「俺達が楽しめればいい」と言っているのに等しい。

 

「楠木武の悪行は数知れないがそれは酷いな。藤崎さんをはじめ女性自衛官達に無理矢理裸を見せつけるのは完全なセクハラだし、裸踊りを強要され真っ赤になるまで尻を叩かれる自衛官達の苦痛も察するに余りある。正直あんな外道はさっさと粉々になれと思うが、一方で生き長らえて苦しみ続けて欲しいとも思う。勿論藤崎さんの正当な抗議に難癖つけた取り巻き連中も最低だよ。」

 

直後にジョナが画面を切り替えたのは、藤崎の視界に楠木の尻がこれ以上入らないようにするためである。切り替わった画面が大映しにするキングギドラは、各首が何か話し合っているように見える。

 

キングギドラの右の首がこちらも飛翔するべきと目で意思表示すると、他の首も頷き飛翔を開始した。キングギドラが飛び去った後の靖国神社境内をよく見るとズタズタで泥だらけの日章旗が瓦礫に挟まっている。

この旗は大鳥居の傍らの駐車場に掲揚されていたもので、靖国神社全壊時に竿が折れたことで地面に落ちて泥が付き、メカゴジラとキングギドラに踏まれたのだ。

 

「ルクス様!暴悪龍が連装光線砲による砲撃を意に介さず飛翔しこちらに向かっております!」

「落ち着けヨヴェル。こんな時のための瞬間移動装置ではないか。」

 

連装光線の直撃をものともせず飛翔してメカゴジラを狙うキングギドラは、中央の首の合図で各首が一斉に引力光線を吐く。

ホシェルは機体の瞬間移動装置のボタンを押し、皇居や靖国神社同様に瓦礫の山と化している赤坂離宮にメカゴジラを瞬間移動させた。標的であるメカゴジラの機体が突然消えたため、キングギドラの各首は引力光線を吐くのを止め周囲を見回している。

 

ちなみにヨヴェルはメカゴジラの操縦全てをVENUSに任せるべきと主張していたが、全てをAIに任せるのを強く拒絶するホシェルの意向で操縦士による直接操作と VENUS を併用する形にしたのである。

 

そのためホシェルは VENUS に呼びかけず自分でボタンを押しメカゴジラを瞬間移動させることが出来たのだ。

浮遊と砲撃で多量のエネルギーを消費した直後のメカゴジラの瞬間移動出来る距離は 3km が限界である。

おまけに今の瞬間移動で瞬間移動用エネルギーが底を尽き、プラズマ原子炉からのエネルギー充填が完了するまで瞬間移動出来ない。

「オッケーVENUS、瞬間移動用エネルギー充填にはどれくらいかかりそうだ?」

 

「プラズマ原子炉が生成する全エネルギーを瞬間移動用に充填すればおよそ 4 分で瞬間移動が可能になりますが、その間当機は他の機能を一切使えず棒立ち状態です。」

 

VENUS の返答にヨヴェルは舌打ちした。

キングギドラが赤坂離宮にいるメカゴジラを発見しまっすぐ向かってくる様子が目の前のモニター画面に映っているのだから尚更である。だが VENUS に質問したホシェルは冷静だ。

「その間にやられては元も子も無い。瞬間移動は諦め総火力で暴悪龍を制圧する。我々金星人は10000年間あの暴悪龍から逃げ続けてきたが、もうこれ以上逃げるのは止めよう。」

赤坂離宮にいるメカゴジラを狙いキングギドラが猛烈な速度で迫る。この状態で 4 分待つのは無理と判断したホシェルはプラズマ原子炉からのエネルギー充填を火力面に向けるよう VENUS に指示する。

 

「オッケーVENUS、メカゴジラの火力面のエネルギー充填を頼む。」

 

「かしこまりました。当機の火力面のエネルギー充填は約10 秒で完了します。」

 

火力面のエネルギー充填は瞬間移動用のエネルギー充填とは比べ物にならないくらい短時間で済む。やはりメカゴジラの巨大な機体を瞬間移動させるには多量のエネルギーが必要なのだ。

 

キングギドラの右の首は中央の首の指示を待たず単独で引力光線を吐いた。その引力光線に対しメカゴジラは口から吐いた虹色の光線メガバスターを命中させ相殺する。するとメカゴジラの機内で歓声が沸き起こった。

「ルクス陛下、マスティマ閣下、メガバスターはこんなに高威力なのですか!あの暴悪龍もさぞかし驚いていることでしょう!」

 

「メカゴジラの頭部が3機に分離している時はガルーダ機内に内蔵されているため、合体時にのみ使用可能なのがこのメガバスターだ。威力は折り紙付きだよ。」

 

自身が製造開発を指揮しただけあってヨヴェルは得意げな表情だ。だが上機嫌なヨヴェル達に水を差すかのようにキングギドラの各首が引力光線を吐こうとしている。メガバスターが引力光線1発と相殺できても、引力光線を 3 発同時に吐かれると対応出来るかどうか怪しい。

すかさずホシェルが攻撃指令を下す。

 

「メカゴジラの武器はメガバスターだけではない。全身の武器を駆使し一斉砲撃を開始せよ。撃て。」

 

キングギドラの各首が引力光線を吐いた途端、メカゴジラは口のメガバスター、両手の連装光線、両爪先の四連装ミサイル等全身の武器を駆使して一斉砲撃を行った。

そのため引力光線はかき消され、逆にメカゴジラの砲撃がキングギドラの身体のあちこちに命中する。

流石のキングギドラもこの一斉砲撃で攻め手を欠く状況である。

 

右の首は忌々しげな表情でメカゴジラを睨んだ。

 

「ルクス様、我々の一斉砲撃で暴悪龍が動きを止めました!このまま一気に押し切りましょう!」

 

「オッケーVENUS、このまま火力面のエネルギー充填を維持しながらメカゴジラの移動は可能か?」

 

「瞬間移動は不可能ですが、低速の空中浮遊でしたら可能です。」

 

VENUS の返答を受けてホシェルが新たな指令を下す。

「オッケーVENUS、メカゴジラを浮遊させ右方向に移動させよ。攻撃はそのまま継続せよ。」

「かしこまりました。プラズマ原子炉から生成するエネルギーの 15%を移動用に割り振ります。」

 

直後にメカゴジラは浮遊し、ゆっくりと右方向への移動を開始した。勿論全身の武器による攻撃はそのまま継続中で、キングギドラを釘付けにし続けている。

 

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