巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
建物が全壊し木々が死滅した赤坂離宮では、キングギドラがメカゴジラのバリアを突破出来ず膠着状態が続いている。キングギドラの中央の首が苦渋の表情を浮かべたのは、目の前のバリアが数々の惑星を滅ぼしてきたあのエイリアンの巨大母船のシールドと同じものと気付いたからだ。困惑の色が深まるキングギドラを画面越しに眺めながらヨヴェルは微笑んでいる。
「このバリアは 10000 年前に我々が撃墜したあの巨大円盤のシールド発生装置を解析し完成させたものです。あの暴悪龍にルクス様のような知略など備わってはいませんので、バリアの突破は不可能です。オキシジェン・デストロイヤーが全く効かずイェーガーを 2 機とも失った時は正直絶望しかけましたが、このまま長期戦に持ち込み暴悪龍が体力を消耗すれば勝機が見えてきます。」
「道理で頑丈なわけだ。こちらはプラズマ原子炉からのエネルギー充填を継続中だから長期戦も全く問題無い。」
エイリアンを滅ぼした時はわざとやられて首だけになり、巨大母船内部に運び込まれたところを中から破壊する作戦を立て実行したキングギドラの中央の首だが、メカゴジラ相手にその作戦は使えない。もう一度自分自身に落雷を浴びせて自己強化すればいいのではと左右の首から提案された中央の首はそれで行こうと頷き、早速キングギドラは自身が操る落雷を全身に浴びた。
だが落雷のエネルギーはキングギドラの身体が吸収した途端に両翼や尾の先端から引力光線として勝手に放射されてしまう。他から奪ったエネルギーの蓄積に上限は無いキングギドラだが自身が操る落雷のエネルギーの蓄積には上限があり、先程落雷を浴びた時点でその上限を超えていたのだ。キングギドラの各首が全く想定していなかった事態である。
キングギドラの左右の首は申し訳なさそうな表情だが、中央の首は特に咎めない。今は首同士仲間割れしている時ではないし自身も想定していなかった事態なので左右の首を責める資格は無いと中央の首もわかっている。
「ああ、これでバリアを突破出来ると思ったのに!」
キングギドラとメカゴジラの戦いを映す画面の前で藤崎は悔しそうに声を上げた。勿論ここで金星人が勝利するとそのまま地球が制圧されてしまうのでキングギドラを応援するのは必然ではあるが、ゴジラとの戦いの時からキングギドラの強大さと神秘性を目の当たりにしてきた藤崎はジョナ同様にキングギドラに肩入れするまでになったのだ。
「あのゴジラの模造品、思った以上に厄介だな。だがゴジラと戦った時も一時期窮地に追い込まれながらも結局キングギドラが勝利した。キングギドラが我々地球人には思いもよらない方法でこの状況を覆す瞬間をこれから見られると思うと楽しみだよ。」
不敵な笑みを浮かべるジョナの目の前の画面は、巨大な両翼を広げ飛翔を開始したキングギドラの姿を映している。
一旦落雷を浴びるのを止め飛翔を開始したキングギドラは、メカゴジラに背を向ける形で防衛省正門前に着地した。キングギドラの足元では「防衛省」と書かれた看板がぐにゃりと折れ曲がっている。
「ルクス様、暴悪龍が我々に背を向けるとは一体何事でしょう?自分に何度も落雷を浴びせたのにしてもそうですが、暴悪龍のやることには本当に理解に苦しみますよ。」
再びキングギドラは落雷を全身に浴びた。自身が操る落雷のエネルギーが勝手に両翼や尾の先端から引力光線として放射されるのを逆手に取り、尾の先端から放射される引力光線でメカゴジラを狙う作戦だ。
だがその引力光線が命中してもメカゴジラのバリアはびくともしない。やはり落雷のエネルギーだけでは威力不足なのだ。すかさずホシェルはその落雷を利用することを思いついた。
「オッケーVENUS、攻撃を一旦停止し飛行を開始してほしい。暴悪龍が連発している落雷を吸収しメカゴジラを更に強化する。」
「かしこまりました。では当機は飛行を開始し防衛省の敷地内に向かいます。」
自身に何度も落雷を浴びせ勝手に放射される両翼や尾の先端からの引力光線でメカゴジラを攻撃していたキングギドラだが、メカゴジラが直接落雷のエネルギーを奪おうとしていることに気付いた中央の首は左右の首に落雷を止めるよう指示する。
結局バリア突破は出来なかったが、この時の引力光線が思わぬ所で「戦果」を挙げていたことにキングギドラのどの首も全く気付いていない。