巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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#6

「総理、宇宙自衛隊の紋章はこちらでよろしいでしょうか?抽象化された地球を中心に描き、背景は宇宙、そして楠木家の家紋である菊水紋を地球に重ねる形でこのように描きました。」

 

楠木は自分がいつ総理大臣になったのかわからず一瞬狼狽えたものの、すぐに浮かれた気分になり赤坂から提出された図案に目を通す。楠木が周囲を見回すと自分がいるのは紛れも無い総理執務室で、楠木の机には「楠木武内閣総理大臣」の名札がある。

わざわざ紋章に自分の家紋を入れさせるあたり、楠木が宇宙自衛隊とやらを完全に私物化しているのは明白だ。

「赤坂君よくやった!俺が頭の中で思い描いていた通りの図案だ!やはり君を官房長官に抜擢した俺の判断は正しかったな!これからもこの俺を補佐してくれ!頼むぞ!」

 

「総理からそのようなお言葉を賜り感無量です。では宇宙自衛隊の視察に参りましょう。」

 

楠木と赤坂はそれぞれ自分のベルトのボタンを押し、東富士演習場に瞬間移動した。そこでは轟天号を中心にガルーダ、ガンダルヴァ、ナーガに酷似した形状の戦闘機や戦車がズラリと並び全てに旭日旗の紋章が入っている。

 

「楠木総理に敬礼!」

 

1人の自衛官のかけ声と共にその場にいた自衛官全員が一斉に敬礼したので、元々浮かれやすく単純な性格の楠木はすっかり有頂天である。

 

「楠木総理、耳障りのいい言葉だ。やはり俺は生まれながらの総理大臣だったんだよ。それはそうと金星人共は救いようの無いクズ連中だったが技術力だけは素晴らしい。その技術力を手にした俺の自衛隊は世界一、いや宇宙一の軍隊だ。宇宙全体が陛下のご威光にひれ伏す日も近いぞ。大日本宇宙帝国時代の幕開けだぁ!グハハハハ!」

 

楠木が大声で下品な笑い方をしても赤坂は嫌な顔一つせず、自衛官達も皆敬礼を崩さない。ここがまるで夢の中の世界であるかのように皆が楠木の言いなりである。

「これらは全て天皇陛下と楠木正成公の末裔である総理のご威光です。轟天号を見事に完成させ、正成公さながらの軍略でゴジラや未知の龍、そして金星人の脅威からこの世界を救った英雄にお仕え出来て光栄の極みです。これからもこの不肖赤坂秀樹に何なりとお申し付け下さい。」

 

赤坂の低姿勢ぶりに楠木は完全に調子に乗り、無茶苦茶過ぎる命令を発した。

 

「では赤坂君、今ここで服を脱ぎたまえ、下着も全部だ。このお盆で前を隠しなさい。ああそうだ、シン・ヒデキ 200%だ。これは大ウケ間違いない。何しろ総理である俺のお墨付きだからな。芸が面白くないと抜かす不届き者は国家反逆罪で全員逮捕、いや銃殺してやる。何なら今ここで芸人デビュー宣言したまえ。現役の官房長官でお笑い芸人なんて前代未聞だから広報に丁度いい。」

 

内閣官房長官が全裸になり芸人デビューしたところでどのような政策の広報になるのかさっぱりわからないが、赤坂はその場で全裸になり楠木から手渡されたお盆で股間を隠しながら芸を披露している。よく見るとお盆の裏には菊水紋がある。

「赤坂官房長官、本当に面白いです!ご自身のお尻の穴の奥まで惜しみなく公開するその芸人魂に痺れました!」

 

「そんな赤坂長官の芸人としての素養を見抜いた楠木総理はやはり名総理です。世襲の門長など足元にも及びません。」

 

どうやら赤坂の全裸芸は大ウケしたようで、自衛官達は大爆笑しながら赤坂と楠木を褒めちぎる。この全裸芸が面白くないと言えば国家反逆罪で銃殺刑に処されるのだから当然と言えば当然だが。

「総理の命に従い不肖赤坂秀樹、今後は芸人シン・ヒデキ 200%としても活動する所存です!早速古竹(ふるたけ)クリエイティブ・エージェンシー主催のお笑いグランプリにエントリーし、1 位獲得を目指して全力投球しますので応援よろしくお願い致します!ところで総理にお客様がお見えですが。」

 

 

いつの間にか服を着ていた赤坂が連れてきた「お客様」はゴジラへの特攻を強要し作戦失敗の責任を押し付けた軽部、風穴崩落時に突き飛ばし落盤で押し潰された湊川、家庭内暴力の挙句絞殺した久代、母久代殺害を隠蔽した父楠木を許せず祝賀会の最中に拳銃で自分の頭を撃ち抜いた正義、そして楠木が指揮した治安出動で殺された在日外国人達で、皆楠木を睨んでいる。

 

「うわぁあああっ!止めろ!お前達!止めろ!そんな目で俺を見るのは止めろ!止めるんだぁああああああっ!」

 

自分が死なせた人達全員に取り囲まれ絶叫した途端に楠木は目を覚ました。自分が総理大臣に就任し金星人から奪った科学技術で宇宙自衛隊を結成というのは全部夢で、実際は既に轟天号は皇居に墜落して全壊し赤坂も既に帰らぬ人なのは前述の通りだ。

「うっ、ここは何処だ?って、これ便器じゃないか!おええええっ!」

 

毎年新人自衛官達に無理矢理小便器を舐めさせて楽しんでいた楠木だが、瓦礫の山と化した靖国八千代食堂に叩きつけられた際に小便器に顔面を突っ込んだ状態で意識を失っていたのである。

 

ふらふらと歩き始めた楠木の背後で引力光線が瓦礫の山を直撃し、瓦礫に突き刺さっていた楠木正成像がほとんどドロドロに溶けた状態で宙を舞う。市ヶ谷にいるキングギドラの両翼や尾の先端から放射された引力光線がこんなところまで届いていたのだ。

 

突然楠木が吐血して仰向けに転倒した。関東全域を覆う放射能が楠木の肉体を蝕んでいたのだ。直後に宙を舞い落下してきた楠木正成像の直撃で楠木は死亡し、さらに再び市ヶ谷方面から飛んできた引力光線が銅像もろとも楠木を塵に変えた。

 

楠木正成の末裔であることを自慢していた楠木が楠木正成像に押し潰された上、その楠木正成像もろとも消滅とは何とも皮肉な最期である。

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