巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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終章 消滅
#1


「ルクス様!おお、お目覚めになられましたか!」

ヨヴェルをはじめメカゴジラの乗組員達が必死で呼びかける中、ホシェルが両目を開く。

 

「頭が痛い。私は夢を見ていた。あの暴悪龍が金星帝国を滅ぼす夢だ。あんな夢はもう二度と永遠に見たくない。」

 

ホシェルが意識を失ったのは、キングギドラが吐く引力光線がメカゴジラの機体に直撃した際に、引力光線から拡散された電磁波を浴びて激しい頭痛に襲われたのが原因だ。

 

ホシェルが気を失っている間にメカゴジラは機能が復旧し、踏みつけてくるキングギドラにメガバスターを浴びせて追い払った隙に起き上がっていた。突然の至近距離からのメガバスター発射に驚くも体勢を立て直して着地したキングギドラは、各首が喉を発光させ引力光線を吐こうとしている。

 

すかさずメカゴジラは全身の光線砲による一斉砲撃でキングギドラをけん制した。

 

だがメカゴジラのバリア展開機能は故障している。スーパーX2 のファイヤーミラーがゴジラの放射熱線を跳ね返すのに失敗したのを踏まえ、メカゴジラの機体の人工ダイヤモンドコーティングは放射熱線を四散させ打撃の軽減に徹する形で実装され、実際に引力光線直撃時の打撃をかなり軽減したが、引力光線から拡散された電磁波による影響はホシェル達の想定を遥かに上回る深刻さだ。

 

意識が戻ったばかりのホシェルに代わりヨヴェルが攻撃の指揮を執る。

 

「もっとだ!もっと撃て!暴悪龍が灰になるまで撃ち続けろ!」

 

部下達にキングギドラへの攻撃を命じるヨヴェルは両目に涙が溢れていて、声も震えている。

メカゴジラの全身を覆う頑丈なバリアはもう無いだけに、元々キングギドラへの恐怖心が強いヨヴェルはこのままではやられるという危機感に駆られ必死なのだ。

 

メカゴジラの全身から放たれた光線砲はキングギドラの全身に命中し凄まじい轟音を上げ続けている。

 

「暴悪龍め!バリアを突破したからといって調子に乗るな!我々金星人の底力を、メカゴジラの底力を貴様に見せてやる!」

 

ヨヴェルは両目の涙を拭い不安に駆られる部下達を鼓舞するため虚勢を張るのが精一杯だ。

 

「ルクス様、バリアなど無くてもメカゴジラは十分戦えます!この金星帝国の英知の結晶があんな暴悪龍になど敗れはしません!」

 

不安げな表情のホシェルに話しかけるヨヴェルは、同時に不安で心が折れそうな自分自身に言い聞かせているようにも見える。

 

すると爆炎の中から甲高い鳴き声が響き、3 発の引力光線がメカゴジラの機体に向け襲いかかってきた。

引力光線が機体に直撃したメカゴジラは再び機能停止し背後に吹き飛ばされ、ホテル椿山荘の敷地内に仰向けに倒れ込む。爆炎で視界が遮られていたにも関わらず、キングギドラは引力光線が一斉砲撃の隙間をかいくぐってメカゴジラに命中するよう正確に狙いを定めていたのだ。

「ヨヴェル、ケガは無いか?」

 

「私は大丈夫です。ルクス様、今回は意識を失わずに済み何よりです。」

 

「ああ、そう何度も意識を失ってはいられない。頭痛だってもう治ったさ。オッケーVENUS、メカゴジラをすぐに復旧してほしい。」

 

ホシェルの指令を受けた VENUS は即座に機能を復旧させ、飛行用ジェット噴射を活用しメカゴジラの機体を起き上がらせた。

 

「ヨヴェルよ、AI というのも捨てたものではないな、VENUS の手際の良さには私も感服した。」

 

「あの電子計算機崇拝連中みたいにコンピューターに全面服従するのではなく、我々の至らない部分を補足してもらう形でコンピューターを使えばいい仕事をしてくれます。一度目の復旧で作業工程を学習した VENUS のお陰で復旧速度が上がりました。」

自身が中心となって開発したVENUSをホシェルに褒められたヨヴェルは得意げである。とはいえもしこれでいい気になった金星人達が AI への依存を強めれば結局は X 星人同様にコンピューターに全面服従することになるのは明白だが。

一方キングギドラは引力光線を吐くのを止め、両翼を前脚代わりにして疾走を開始した。全身にメカゴジラが撃つ光線が直撃したキングギドラだが、メカゴジラの執拗な砲撃は接近戦を阻止するためで、ここで接近戦に持ち込めば優位に立てることに気付いたこの三頭龍は全く怯まない。ホシェルに褒められ得意げになっていたヨヴェルの表情が焦りの色で覆われていく。

「ルクス様、暴悪龍を足止め出来ません!」

「撃ち続けろ。このメカゴジラは接近戦が苦手だ。だから何としてでも暴悪龍を接近戦に持ち込ませてはならない。」

 

自身が操る落雷を全身に浴び、ジプシーの原子炉のエネルギーを奪ったことで自己強化したキングギドラは最早メカゴジラの集中砲火では負傷しなくなったため一斉砲撃が意味をなさない。メカゴジラの目の前に到着したキングギドラは、各首が機体に頭突きする等接近戦を開始した。メカゴジラへの敵意が特に強い右の首に至っては直接左腕に噛み付く激しさだ。

「暴悪龍め!振り払ってくれるわ!」

 

ヨヴェルはメカゴジラの左腕を振りキングギドラの右の首を振り払おうとするが、右の首は噛みついたまま離れない。

メカゴジラの右腕の連装光線を発射するヨヴェルだが、光線が両目に直撃しても右の首は負傷も失明もしない。

 

直後に右の首はメカゴジラの左腕を無理矢理へし折った。ちぎれたメカゴジラの左腕の付け根から火花が噴出している。

「レフトアーム破損!」

 

引力光線の直撃で機能停止してもすぐ復旧するメカゴジラを目の当たりにしたキングギドラは、接近戦に切り換えメカゴジラに打撃を与えることにした。右の首が咥えているメカゴジラの左腕は接近戦というキングギドラの選択が正しかった証だ。

 

「暴悪龍は接近戦が苦手というメカゴジラの弱点を見抜いたか。ならば荷電粒子砲を撃て。」

 

メカゴジラは腹部の光線砲台から荷電粒子砲を放つ。メカゴジラの武器の中でも特に高威力な荷電粒子砲だが、連射に時間がかかる上エネルギー消費量の多さから他の武器と併用出来ないのが欠点だ。

とはいえ威力の高さ自体は本物で、至近距離から荷電粒子砲を胴体に撃ち込まれたキングギドラの巨体が 5km 以上も吹き飛ばされてしまった程である。

 

「ルクス様、荷電粒子砲は次弾を撃つのに時間がかかるため今接近戦に持ち込まれれば打つ手がありません!もうメカゴジラの一斉砲撃では暴悪龍を足止め出来ないのですよ!ご覧の通り荷電粒子砲が直撃しても暴悪龍は特に負傷しなかった上、すぐ起き上がりこちらに向かってきましたのでたとえ 2 発目を撃っても仕留めるのは無理です!」

 

「であれば最終兵器を使うしかない。あれなら 1 発で暴悪龍を消滅させられる。」

 

進退窮まり最終兵器の使用を決意したホシェルだが、現在のエネルギー残量だとプラズマ原子炉からのエネルギー充填に 5 分必要とVENUSが告げたため頭を抱えている。

キングギドラが大人しく5分も待ってくれるわけが無いのは明白であり、再び頭痛に悩まされ始めたホシェルにとって二重の意味で頭が痛い状況だ。

 

突然キングギドラの背中にPAC-3ミサイルが命中した。更にF-15J戦闘機部隊がキングギドラを包囲し一斉に空対空ミサイルサイドワインダーを撃ち込んだ。空自の残党が集結しキングギドラ殲滅作戦を決行したのである。金星人の兵器でもまともにダメージを与えられないキングギドラを空自の残党が倒せる筈無いとはいえ、数にものを言わせた包囲攻撃は足止めの役割を十分果たしている。

 

「ルクス様、空自の連中は何故我々を攻撃して来ないのでしょうか?」

意外そうな表情を浮かべるヨヴェルに対し、即座に事情を把握したホシェルは笑みを浮かべている。

「私が直接本心を伝えた地球人は先程死亡した楠木武だけだ。我々の本心を全く知らない空自の連中は暴悪龍と戦う我々を味方と勘違いしている。「敵の敵は味方」なる戯言を真に受ける間抜け共のお陰でエネルギー充填は間に合いそうだ。自衛隊様々だよ。」

 

キングギドラは両翼から引力光線を放ちF-15J部隊を全滅させ、音を頼りにPAC-3の発射地点を割り出し各首が吐く長射程の引力光線で発射機を正確に狙い撃つ。だがその隙にエネルギー充填を完了したメカゴジラは真上に飛行しキングギドラに照準を定めた。

「オッケーVENUS、最終兵器で暴悪龍を消滅させてほしい。」

 

「標的への座標設定及びエネルギー充填を完了しました。ただちに発射します。」

 

直後にメカゴジラが腹部の砲台から発射したのは、金星人達が地球への亡命後の長い年月を費やして完成させた最終兵器、時空砲である。

 

時空砲は時空の穴を出現させ対象を消滅させる凶悪極まりない兵器で、時空の穴の位置や大きさは座標設定で自由自在に調整可能だ。無表情で照準画面を眺めるホシェルの両目が冷たく光る。

「暴悪龍よ、10000 年前に我が帝国を滅ぼした貴様が報いを受ける時が来た。消滅せよ。」

 

時空砲発射により突如出現した巨大な時空の穴はキングギドラの全身を包囲している。その時空の穴がキングギドラの巨体を一瞬で飲み込み消滅した途端に暴風雨が終息した。晴れ間が戻った空に日を貫いている白い虹が見えるのは気のせいだろうか。

 

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