巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
ここは異空間で、1 年前キングギドラに敗れ去り時空の歪みに飲み込まれたスターファルコンの行き先である。
スターファルコンの機体は時空の歪みに飲み込まれた途端に跡形も無く消滅したのだが、どういうわけかズメイの、即ちマミーロワの思念だけは消滅せずこの虚無世界を漂い続けている。
「もし本当に神が実在するのなら随分と意地悪だな。この何も無い世界に私を閉じ込めてそのまま放置なのだからな。こんな場所にいたって何の喜びも悲しみも怒りも感じることが出来ないのだからさっさと消えたいくらいだよ。」
途端にマミーロワはハッとした。
「私は何を言っている?核兵器を横流しした私、その横流しに抗議したエンジニアをその場で殺した私、用済みのエンジニア達を皆殺しにした私、MOGERAになれたことで浮かれてウラルの木々を焼き払った私、先に向こうが撃ってきたとはいえ葉巻型UFOを消し去り船員を皆殺しにした私、こんな罪深い魔女である私にこのバイカル湖の湖底のような仄暗い世界はお似合いじゃないか。」
文字通り何もかも失い異空間を漂う残留思念と化したマミーロワは、ようやく自分の罪を自覚したのである。肉体が滅び残留思念と化した後も自分の行いを何一つ反省しないまま結局消滅した天皇兄弟とはここが大きく違う。
「何だ?向こうに巨大な光の塊が見えたぞ。よし、確かめに行こう。」
残留思念と化した後もマミーロワの探求心は全く衰えていない。
異空間を彷徨うキングギドラと対峙しているのは極めて巨大なエネルギー体だ。このエネルギー体は全身黄金で 3 本の首と 2 本の尾と両翼を備える点はキングギドラと同じだが、全身に薔薇のような棘が生え、各首には翼竜型セルヴァムのように複数の目を備えている。首の長さだけで 20km 以上あるこのエネルギー体の前ではキングギドラの巨体が豆粒に見える。
20000 年以上前惑星マズダでメトフィエス達が降臨させようとしていたのはこのエネルギー体に他ならない。エクシフは星々を巡り文明の発達を促す形で環境破壊を助長し、最終的に星そのものを「終焉の翼」、即ち高次元巨獣ギドラに喰わせる暴挙を繰り返していた。エクシフの標的にされた惑星の動植物からすれば環境破壊に晒された挙句星ごと喰われるのだから余りにも理不尽過ぎる。
エクシフが信奉する教義は「ギドラに喰われるのが真の救い」というもので、自分達が助長した環境破壊の犠牲になる動植物を完全に無視している。ガルビトリウムなる装置でギドラを操りこの非道過ぎる教義を実践していたエクシフだが、キングギドラにギドラ降臨を妨害されアンラマンユ王国もろとも滅ぼされたのは前述の通りだ。エクシフの滅亡によりギドラは異空間での逼塞を余儀無くされた。
「お前はズメイ!何だ、お前も結局ここに来たのか。今取り込み中みたいだが、私には何一つ手出し出来んよ。何しろ今の私には肉体自体が無いんだ。だが今はもうお前を恨んでなどいないよ。お前と戦いこの虚無世界に来なければ自分の過ちに気付くことも無かったからな。今はお前がその馬鹿デカいのを倒す瞬間を是非とも見たいよ。出来ればだが。」
まさかのキングギドラとの遭遇にマミーロワは驚きを禁じ得ない。勿論今のキングギドラにマミーロワに構っている暇など無いが。なおこの異空間内は時間の流れが元の世界より遥かに遅く、マミーロワが来てからまだ数日しか経過していない。つまりマミーロワからすればキングギドラとは最近戦ったばかりなのだ。
高次元の存在であるギドラの身体にはキングギドラの各首が吐く引力光線が全く通用しない。直後にギドラの中央の首は大口を開き、中央の首が左右の首に何かの指示をしたばかりのキングギドラを飲み込んだ。普通ならこれで終わりだろう。普通ならば。
だが全身がエネルギーの塊であるギドラはエネルギー吸収能力を持つキングギドラからすればこの上ないご馳走だ。中央の首の作戦でわざとギドラに飲み込まれたキングギドラはギドラの体内から多量のエネルギーを吸収し、更なる自己強化を遂げると共に自身も高次元の存在と化した。これでキングギドラの攻撃がギドラに通用するようになったのである。
直後にギドラの全身におびただしい数の亀裂が入りガラスのように砕け散る。キングギドラがギドラの体内で全身から引力光線を放射したのだ。全身を粉々にされたギドラはそのまま光の粒子と化して消滅した。
自分自身の見境のない貪欲さをキングギドラにまんまと利用され間抜けな最期を迎えたギドラには黄金の恥晒しという呼称が相応しい。欲は身を滅ぼすのだ。
「ズメイ、やっぱりお前は凄いよ。これで私もこの虚無世界から解放される。ありがたい。」
黄金の恥晒しを粉砕した引力光線はマミーロワの残留思念も消滅させたが、元々一刻も早くこの異空間から消え去りたいと思っていた彼女は恐怖も苦痛も感じていない。既に自身の罪全てを悔い改めたマミーロワならこの後地獄に落ちることはまず無いだろう。