巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
龍神降臨
キングギドラはゴジラのまがい物にほんの少し期待していた頃の自分に引力光線を撃ち込みたい気分であった。
対怪獣用兵器でもない地中貫通弾で大量出血。全身から乱射した光線で都心壊滅と思いきや、東京駅に繋がる線路及び架線は無傷、爆弾を搭載した新幹線が突っ込んできても馬鹿正直に東京駅構内で棒立ちと、ゴジラのまがい物の愚物ぶりが余りにも酷過ぎたのだから無理もない。
キングギドラはこの物がかえって自身の計画の妨げになると判断し、即座に始末することを決意した。
現在の地球をはるかに凌駕している金星の文明を短時間で滅ぼしたキングギドラだが、それは金星人が自分達の文明にものを言わせ金星の自然を完全に滅ぼした挙句、資源欲しさに他の星への侵攻を企てたからだ。
金星人が金星の自然を滅ぼすのを看過したことを悔いているキングギドラは、今度は地球に飛来し、地球の自然が完全に滅びる前に地球の文明を滅ぼすことにしたのである。
隕石に身を隠し太平洋沖に降り立ったキングギドラは例の物を発見し、簡単に洗脳できたため尖兵として日本に送り込んだ。
福島原発から太平洋に垂れ流し続けている汚染水を放置し続けている日本はキングギドラにとって真っ先に滅ぼすべき対象であった。
冒頭で述べた通りゴジラのまがい物はただの愚物。
業を煮やしたキングギドラは自身の天候操作能力で発生させた巨大な雨雲と共に自ら東京に上陸した。
キングギドラが電力を吸収し関東全域を停電させたため爆弾搭載した在来線を全く動かせず愚物打倒を目的としたヤシオリ作戦は呆気なく頓挫。
在日アメリカ軍は横須賀基地を拠点としヤシオリ作戦援護のため無人攻撃機や巡航ミサイルを多量に投入したが、それらは全てキングギドラが翼から放出した引力光線で撃墜されている。
キングギドラが発生させた暴風は関東全域を襲い、「ヤシオリ作戦成功で新たな日本を」という政府与党の政治屋連中の思いは勿論、天皇の代替わりや東京五輪開催で盛り上がる世論に文字通りの冷水を浴びせた。
無論、愚物打倒後に独政権完成を目論む連中に地獄を見せ、敗戦直後に廃止しておくべきだった天皇制にしがみつき多額の税金を貪り続ける天皇なる害悪の代替わりや、国威発揚の手段と化した五輪の開催で盛り上がる世論に水を差すのは何一つ間違っていない。
蝙蝠同様に翼を前脚代わりにして地上を駆けるキングギドラは平気で皇居を全壊させる。
キングギドラからすれば皇居など道端の石ころ同然だ。
当たり前だが皇居破壊を阻止しようとした自衛隊は引力光線の餌食以外の役目を果たせないまま壊滅。誰もキングギドラを止めることなど出来ない。
キングギドラが皇居を全壊させながら東京駅構内に佇む恐物に近寄ってきた途端、 愚物は尾の先端から放つ光線で自身の頭部を破裂させ即死。 愚物の最期を眺めていたのはキングギドラの左右の 首だけで、既に愚物への興味も関心も消え失せた中央の首は違う方向を向いている。
自身が指揮するヤシオリ作戦をあっさり頓挫させ、洗脳能力で身体を操作して用済みの愚物を始末したキングギドラの途方も無い強大さを目の当たりにした矢口蘭堂特命担当大臣は大雨に打たれながら空しく佇む。
そんな矢口をキングギドラの左の首がギロリと睨む。 この首は好奇心が強い性格だ。一方、頭部と尾の先端が消し飛んでいる患物の死体は風雨に晒され徐々に腐敗していった。
「おい三本首の化物!お前が黒幕か!俺はお前に完敗したのか!この国はもうお終いなのか!」
怒鳴り散らす矢口に「そうだよ」と返答するかの如く、キングギドラの左右の首が矢口の身体を喰いちぎる。
司令塔であるキングギドラの中央の首は左右の首が矢口を喰らうのを静かに眺めている。
一方天皇ら皇族は一般人を見捨ててさっさと国外逃亡していた。皇居に残り国民の安全を祈願という報道は勿論、大嘘だ。
だがそんな皇族を数多のデモ隊がパリで出迎えた。デモ隊にはパリ在住の日本人は勿論、先程日本から避難してきたばかりの人達も大勢参加している。
こうしてパリに亡命政府樹立という天皇ら皇族の思惑は完全に潰えた。 既に人類自体が存亡の危機に立たされている状況とはいえ、国籍に関係なく自発的に集った市民の手でようやく天皇制が葬られたのは意義深い。
キングギドラは多国籍軍が発射した核ミサイルを引力光線で破壊すると嘉手納基地を襲撃して 核弾頭を奪い、西日本各地の原発を襲い放射能を摂取たムートーが東京に到着。 横須賀基地を壊滅させたヤマタノオロチも一緒だ。
核ミサイル破壊時に首都圏に降り注いだ放射能と福島原発の再染水の後始末をムートーに、 自衛隊の残党の殲滅をヤマタノオロチに任せたキングギドラは次に滅ぼす国を目指し飛び立った。
愚物の腐乱死体の傍らではボロボロの日の丸がはためいている。