寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

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スカイドラゴン戦。
漫画ではリムルに瞬殺されますが、創造主がいる作中では如何に。


95.ドラゴン退治と居場所

 

「きゃあああああ!」

「ドラゴンだー!?」

「逃げろ!」「助けてくれぇッ!」

 

 

都市部出入口付近。

突如落ちてきた影に村人がハァンハァンと悲鳴を上げ、散り散りに逃げ惑う。

その主因はドラゴンだ。

ジ・エンドの様に黒曜石の塔といった遮蔽物もないフラット面。 危険な地上の安全な上空で奴は一方的に嬲り始めた。

ブレスに次ぐブレス。 抉られる大地。

村人には酷な環境でしかない。 ゴーレムもいないし。 いても対空戦は不可能。 逃げているだけマシだ。

 

 

「俺1人でもヤれそうだが、変にスキルを使ったら教会に絡まれそうだし……先ずスカイドラゴンを堕とす。 そうしたら一気に畳んでくれ。 お前らなら造作もないだろ?」

 

 

リムルはハァンと鳴き、背を伸ばす。

かと思えば次に白衣を装備。 蝙蝠羽を生やして飛んでいく。 速い。 我々もクイック装備は出来るが、リムルも出来たとは。

見習って一部同志もエリトラで追従する様に飛翔した。 なに空中戦は初じゃない。 巨大魚の時もそうだ。 要は慣れだ。 慣れ。

その点、連邦の村人がそうだ。 我々が街中でツルハシやスコップを振り回した程度じゃ気にしなくなっている。

我々に染まったと云えよう。 ある種の同志と化している。 それでも偶に叱咤されるが。 もっと慣れろ。

驚かれなくなる寂寥はあるが、殴られるより良い。 或いは斬られるより良い。

 

 

「リムルがドラゴンを堕としてくれる。 その後は私達が……ッ!?」

 

 

シズにも慣れて貰おう。

頷きつつ俊足のスプラッシュポーションをシズの足下で割る。 これで遅れは取るまい。

 

 

「急にガラス瓶を割ったら危ないよ……あれ、急に足が速く……!」

 

 

そうだろう、そうだろう。 凄かろう。

我々のポーションに感謝して。 回復薬の面では村人に遅れを取ったが、他の面で勝る事はまだまだある。

 

 

「本当に凄いよ。 一緒に戦える事、嬉しく思う!」

 

 

喜んでくれた。 何よりだ。

しかしまぁ……シズと共に駆け抜けながら思う。

この世界にはドラゴンが何体いるのだと。

力と自由を行使し飛び回る有翼の大型生物。

風を巻き空を滑る強大な飛翔こそはクラフターの記憶に住まう怪物そのものだ。

既に目はタイミングを見極めている。 はい、今射れば当たる。 そら、今も。

 

 

「直ぐ衛兵が加勢してくれると思ったけど全然来ない。 要請が無くても警戒態勢の筈なのに西方聖教会……騎士団の対応も遅い。 それにスカイドラゴンはドワルゴンの方角、竜の巣と遠方……なんでここまで……」

 

 

シズがボヤく。 分かる。

騎士団は魔物に敵対的と教えられた。 ドラゴンも御多分に漏れない筈だ。

一方、唯一神ルミナスを崇めている……というのは好きにして欲しい話だが、それが奴等の正義だ。 にも関わらず初動が遅い。

生贄になっている逸れ村人がいるから都市部の被害は免れているだけだ。 いなければ忽ち拠点が陥落する失態を犯している。

それともテリトリーの都市内に侵入して初めて対応する気か。

 

……いや、違う。

奴等は歪んだ正義を掲げている。

 

 

「えっ?」

 

 

我々に襲い掛かる時点で妙じゃないか。

奴等は人魔の区別がついていない。

差別がついていない。

いや。 ある意味差別している。

異世界人という理由なら、何故シズやヨシダは無事なんだ。 可笑しいじゃないか。

 

 

「……ごめん。 擁護出来ないよ」

 

 

目を逸らされた。 何故だ。

まぁ良い。 今はドラゴンだ。 丁度今、同志が不意打をかました。

雪玉を空中にて連射。 1スタック16個を一度に消費。 悉くをドラゴンにぶつける。

ドラゴンよりリムルが荒ぶった。

 

 

「なんで雪玉ぶつけてるの!? そこは弓矢使えよ! カリュブディス戦でやってたろ!?」

 

 

リムルがまた不平不満のハァンを上げ始めたが無視しておこう。

だが確かに……ドラゴンにダメージが入る様子がない。 エンダードラゴンの様にいかない。 残念だ。

だが気を引く事は出来た。

地上への荒らし行為は一時的ながら止められた。

 

後は相手の突撃やブレスをロケット花火の加速、真上向きでの急減速といったエリトラ機動を駆使して回避。

主攻撃は地上班に任せる。 あとリムル、君に決めた。 伝わるか。 いやリムルの事だ。 何とかする。 最悪地上班もいる。

仲間がいる安心感。 思わずニッコリだ。

 

 

「ああもう分かったよ! そのまま気を引いてろ!」

 

 

伝わった。

リムルはドラゴンより空高く舞い上がり、敵の完全な視界外へ。

そのまま急降下、無防備な背中を容赦なく剣で突き刺す。

 

 

───グギャアアアアッ!!

 

 

忽ちドラゴンは地に堕ちた。 脆い。

エンダードラゴンなら、死の間際まで飛び続けている。

 

 

「今ッ!」

 

 

一転攻勢! 突撃敢行!

地上にいればコッチのもの!

俊足のままに青く淡く輝く自慢のダイヤ剣で斬りまくる!

シズは前に渡した鉄剣を使用している。 なんだか不憫に感じてしまう。 素材もだし、そもそもエンチャントを施していない。

落ち着いたらしてあげよう。 そうしよう。

 

リムルは……気が向いたらで良いや。

半荒らし悪食スライム野郎だ。 強力な武具を渡したらナニされるか分からない。 己の剣が己を貫くとか笑えない。 それは元の世界で間に合っている。

 

……それを考えたらシズも危険だった。

良く考えよう。 疲れ顔で頷く。

 

 

「…………うん、倒したよ。 みんなのお陰で、みんな助かった。 ありがとう」

 

 

礼には及ばない。

エンダードラゴンと比較して脆弱だったし。

雪玉が効かない点は誉めたいが。

 

だがしかし。

この世界のドラゴンは皆こうなのか?

 

洞窟にいたドラゴンを思い返す。 スライムであるリムルにアッサリ喰われたドラゴンだ。

謎のドームがあったからかも知れないが……ドラゴンの体力を回復させる忌まわしいクリスタルが無かったのが大きい。

あれば苦戦していただろう。 エンダードラゴン戦もクリスタル破壊の方が大変だった。

 

 

「むっ? その青く輝く鎧と剣……もしやテンペストに縁がある人間の方々ですかな?」

 

 

村人にハァンと鳴かれた。

振り返れば腹と顎が揺れる悪人顔がいた。 これがゾンビイベントやウィッチ戦だったら斬り捨てていただろう。 勢いで。

 

 

「はい。 この方達は連邦の……えーと、職人さん達です。 異国の文化故、言葉が通じませんので私が通訳しています」

「そうですか……と、云いますと貴女様はシズエ・イザワ殿、白衣の聖女様はリムル=テンペスト殿とお見受けしますが」

 

 

なにやら交渉が始まった。

こうなると大抵蚊帳の外だ。 理解出来ない哀しみにも暮れる。 哀戦士。

 

 

「はい。 貴方はミョルマイルさん?」

「いかにもワシがミョルマイルですわい。 ご存知で」

「大商人として名を馳せている方ですよね……名前も、取引の中で?」

「連邦に商談の為に向かいまして。 その際、住民達はあなた方の話ばかりでしたからな。 国主のリムル殿に関しては、人の姿の時の似顔絵まで見せてくれましたよ」

「そうでしたか」

「シズ殿は……ギルドの英雄ではありませんか。 今は教師をされているとか」

「私の事もご存知でしたか」

 

 

虚しい。

ドラゴン退治の後の寂寥感まで再度味わうとは。

気を紛らす為に周囲を見渡す。

負傷している村人がいれば回復ポーションを投げつけた。

クレーターがあれば土ブロックで補填。 整地する。 ついでに松明を刺していく。

 

 

「ええ。 商売の都合のみならず、情報は自然と入るものも多い───皆さん、ずいぶん慕われておいでだ。 ワシも懇意にさせて欲しいもんです。 ぜひお礼も兼ねてご馳走させて頂きたい。 イングラシアにはワシの出資している店もありますので───」

「おいそこの者達!」

 

 

また新手のハァンを鳴かれた。

見やれば騎士団の奴だった。 ヤバい。 逃げよ。 キリが良い。 ずらかるには丁度良い。

何よりこれ以上ハァンハァン聞いていたくない気分。 なんか爪弾き感があるから……。

 

 

「あっ!? おいこら待て! くそっ、なんて速さだ……代わりに一緒にいた者達! あの者達が何者か聴かせて貰えないだろうか。 都市内に時々出没する"魔物"でね」

「魔物……? お言葉ですが、あの人達は魔物に見えません。 人間の間違いでは? それに私達を助けてくれました。 騎士様より先に、ね」

「……その件は申し訳ない。 だが話を逸らさないで貰おう。 足の速さといい、今先ほどまで行われていた松明を刺しまくる珍妙な行為。 街中でも同様の行為が見られたからね。 同じ仲間にしか見えないんだよ」

「……ワシも共にいたが、この方の言っている事は本当だ。 それでも聴取かね。 ワシをミョルマイルと知っての事か?」

「え……?」

 

 

背後でハァン声がどんどん大きくなる。

だがもう振り返らない。 遁走あるのみ。 子供達のお守りもある。

後始末はシズとリムルに押し付ける。 悪く思わないでくれ。 村人語は喋れない。

 

 

「おい! その人達は良いんだ!」

「ドラゴンを倒してくれたのに!」

「そうだそうだ!」

「なっ……だが知性ある竜が無差別に人間を襲うとは思えないんだ!」

 

 

口論が始まったらしい。

余計に居場所がない。 逃げよう。

そして風となり空気となる。

 

 

「じゃあ、あの人達がした無差別の善意は?」

「怪我したお母さんを治してくれたもん!」

「松明は意味不明だが、整地までしてくれた奴等だぞ!」

「目撃者ならこの場に沢山いる!」

「騎士様は人間も敵なの……?」

「今頃出てきやがって」

「出るのは剣じゃなく口だけか」

「見た目ばかりめ!」

「聴取なら俺達が受けてやんよ!」

「ああ! いくらでもな!」

「くっ……!」

 

 

しまった。 ドラゴン退治の報酬が無い。

ドロップ品欲しかったなぁ……嗚呼。 ただ働きは承知の上だったが。

 

 

「彼等の為に賄賂を渡すまでも無かったな。 寧ろ金では手に出来ぬものを手にしたのか」

「みんな……擁護ありがとう」

 

 

まぁ良いか。 都市を守れたし。

さっさと戻ろう。 今日の夕飯が楽しみだ。




リムル「あの、俺も空気に……しないで!?」
ビッド「俺なんて本編に出番は……」
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