「ワタシは十大魔王が1柱、ラビリンスのラミリスである! さぁ跪くがいい! 具体的に言うとコイツらを何とかして下さいお願いします。 迷宮が破壊されたり改造してくるんであります。 責任取りやがれバカ!」
「妖精なのか……俺はスライムのリムル。 で、こちらは人間のシズさん。 アイツらの件は全て諦めろ。 誰にも制御出来ないからな」
「真っ二つのゴーレムがいるね……ごめんなさい」
「本当よ! ワタシの最高傑作なのに!」
合流したリムル達と羽虫の交流は長くなりそうだったから、クラフターは階段ブロックで椅子を作成した。 ついで原木を丸ごと用いたテーブルも用意する。
「また突然と……準備が良いけどさ」
応急的な応接セットだ。 総じて白樺製である。 その昼白色は薄暗い石造遺跡には似つかわしくないが、處として植林でも伐採でも便利な故に。
「はぁ……まさか噂の人間がココにも来るとはね。 青く輝く剣と鎧で世界を侵略し、謎の魔法で物品や建物を創造し、何を総べるでもなく敗者にも等しく遇する。 一方では椅子にテーブル、クッキーやケーキとお持て成ししてくれるなんて。 静かに主人に侍る驚異の技術集団……私にも1人くらい頂戴よ!」
「色々ツッコミたいが訂正させてくれ。 先ず俺はコイツらの主人じゃない。 それから1人どころか全員くれてやりたいところだ。 出来たらだがな。 というか、お前には藩屏……部下がいるだろ。 1匹見たら何十匹といそうな。 既に周りにいっぱい飛んでるし」
「リムル、その言い方はちょっと……」
木材は多種多様な創造に用いる為、常にインベントリに常駐させている。
建材に家具に作業台、必需品のツールに松明と絶対に必要だからだ。
「そりゃそうだけどさ! 物作りとなれば知識と力が必要じゃない? ゴーレムもそうだけど迷宮造りもそう!」
「規模も格式も心が通じなきゃ意味がない。 コイツらは基本自由人だからな……頼み甲斐はあるが、それでも好き勝手にされる」
「でも通訳がいるんでしょ?」
「言ったろ。 いても制御が出来ないんだよ」
「ごめんねリムル……」
「あ、いや、シズさんは悪くないんだ」
だから植林場は連邦にも開拓地にも必ず設ける。
最近は連邦の森を切り拓くのが厳しいので地下や他国の空き地を利用している。
あの植物村人トリオが邪魔してくるからだ。 どうもバイオームの自然景観を破壊されるのを嫌っているらしい。
なら最初から云えば良いものを。 あいや疎通が出来ないのであった。 難儀である。
「そう……でもコイツらが興した噂の大都市や噂の機龍は見てみたいわね! 摩天楼が無数に聳え、ドラゴンの様なゴーレムが守護する噂の国を!」
「噂ばかりだな。 仕方ないのかも知れないが」
「嘘じゃないんでしょ?」
「まぁな。 実際に何度も見た光景だ……モノによっては前世から……うん……」
「おー! やった! 今すぐにでも見てみたいわぁ……壊されたゴーレムね、実はドワーフ王国の研究所で造られた魔装兵の試作品を再利用したものなの!」
「その話、時間掛かる?」
「胴体はいい線いってたけどね、心臓部の精霊魔導核がだめだめで! あれの動力は火の精霊が制御してるんだけど、そもそも通常の鋼材じゃ精霊に耐えられないわけよ。 可動部は水の……」
「おーい。 帰ってこーい」
「ソレが今の人間の精霊工学の限界だって早合点しかけたけどぉ!? ドラゴン並みのデカさのゴーレムをヌルヌル動かせる技術大国と凄い人間達がいるって聞いたら……そりゃ興奮するでしょーがッ!!」
「そうか。 興奮しているトコ悪いんだが、たぶん機龍は精霊工学関係無いぞ」
「えっマジで? 尚更気になるんですけど!」
「…………見聞きした瞬間が最高点だ。 後は暴落するだけさ」
「そりゃアンタの都合でしょ」
よく鳴き、よく食べる羽虫だ。
だが微笑ましい。 テーブルにちょこんと座り、持ち込んだクッキーをバリバリ食べている。
静かにしている子供達もシズと同様に椅子に座り、周囲の羽虫にクッキーを手渡して笑顔を浮かべていた。
遺跡にいながら優しい雰囲気になれる。 松明とは違った優しい明るさ。 創造物を利用される喜びだけじゃない。
懐かしい温かさに、クラフターは目を細め頷いた。
「ワタシは転生と成長を繰り返してきたけれど、やっぱいつ何時も情熱は必要よ。 そりゃ誰も来なくて鬼暇な時間が長い事もあるし、堕落して魔王になったけど」
「堕落って……」
「役目も大切だけどね、リムル。 アンタ自身の人生も楽しんだ方が良いよ? まっ、初対面に言える事じゃないけどさ」
「言ってんじゃねぇか……まぁ、ご忠告どうも」
「シズもそうよ。 気負い過ぎない事ね」
「……そう、見えちゃったかな」
「他にも感じるけどね。 なんか時流というか」
「えっ?」
「いや何でもない何でもない! あ、そうだアンタ達! 何か用事があって来たんじゃないの?」
「やっと本題に入れそうだな……実は子供達が───」
しかし、暇だ。 またしても暇だ。
無視して先に進んでも良いが、どうしてか放置する気になれない。
仕方ない。 両断したゴーレムを調査しよう。
そう思い立ち、残骸に群がる創造主。
クラフターとして興味があるのは事実だ。
目覚しい強さも斬新さも無かったが、今後の創造に何か役に立つかも知れない。
見てみた。
うん。 分からん。 全然分からん。
クラフターは首を傾げた。
クラフターだからって何でも瞬時に分かるワケじゃないのだ。
創造主だが万能ではない。 前に弁解したが。
だが素材は普通の鉄じゃなさそうだ。 研究材料として持ち帰れるだけ持ち帰ろう。 詳しい事は研究班に任せるか。
そう思い、会話を他所に各自手分けしてダイヤツルハシで解体、ストレージに仕舞い込む。 念の為シルクタッチを心掛けるのを忘れない。 それなりの強度がありそうでも、採掘の瞬間にホロリと崩れて欲しくない。
「───なるほどねぇ。 この子達も苦労してるんだねぇ」
「そんなわけで、どうしても上位精霊の協力が必要なんだよ。 その為に精霊女王に取り次いでもらいたい。 精霊に詳しいラミリスなら会ったことあるんじゃないか?」
「あれ言ってなかったっけ? エレメントってアタシの事だよ?」
「冗談言ってる場合じゃないんだけど!?」
「本当ですー!!」
「ラミリスって、その、変わってるね?」
「それ褒めてないでしょ」
「いやそんな事は……少しあるかも」
「そこは嘘でも冗談でも良く言って欲しいんですけど!」
「まぁそんな事より」
「そんな事あるでしょ!」
「……協力してくれる気あるのか?」
そうだ。 ゴーレムは備品かも知れない。
敵対したから斬り伏せてしまったが、この遺跡を守る役目として存在していたのなら話は別だ。
代わりのゴーレムを用意してあげよう。 そうしよう。
「エレメントは聖なる者の導き手。 勇者に聖霊の加護を授ける役目も担っているんだよ……いいよ。 召喚に協力してあげる。 せいぜいスゴイ精霊を呼び出すといいさ!」
鉄ブロックとカボチャを組み立て、先ずアイアンゴーレムを創造しておく。
「……ん? あれ!? ワタシのゴーレムは!? 直せれば再利用出来たのに消す事ないじゃん! って、なんか代わりに見知らぬゴーレムが動いてる! え!? なんか赤いバラ渡してきたんですけど! こ、これ完全に自立してるの!? 本当に精霊関係なく動いている……それとも知らない魔法? 仕組みが知りたいわね……!」
「お前ら、話が進まないから止めてくれ」
「まぁまぁリムル。 代わりを用意してあげただけだから」
凄い喜ばれた。
創造主としても嬉しい限りだ。
クラフターはその喜びのままに、雪ブロックとカボチャを組み立て、スノーゴーレムも創造してあげた。
サービス精神だ。 感謝して?
今後とも付き合いが……あるのか?