寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

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NO.も遂に3桁。
ですが時系列的にはまだ11巻の域。
これ……続くのでしょうか(殴。

戦闘回。 ミスがあればすいません……。


100.時荒らしと判断

 

 

「ラミリス、クロエを頼む! コレは俺らが何とかする!」

「わ、分かった! 頼むわよ!」

 

 

時空の歪み。 伴う違和感。

過去幾度となく味わい続け、それがまた起きている。

原因は知れている。 目の前の時荒らしだ。 どういう形で、単独のみで世界に負荷を掛けているか知らないが、存在そのものがそうしているなら間引く他ない。 創造主は剣先を向ける。

 

 

「頼むぞお前ら! 魔法闘気の剣よりお前らの木の棒が有効だろうからな……!」

 

 

リムルも我々に倣い抜刀した。

クラフターは頷く。

短絡的だが、そうする他ない。 身体が動く内に。

 

時空間問題……元世界では厩舎や大村落、TTで主に発生していた。

建造物やRS回路高密度化で発生する際もある。

今回はソレとはやや異なるが、その類に違いない。 ならばこれ以上"重症"になる前に解決しなければ。

 

時空間問題は深刻だ。 創造主だけの問題ではない。 末期は世界そのものが崩壊する為である。

この問題は牛乳バケツやリスポーンで解決出来ないからタチが悪い。

 

初期症状で既に蘞い。 円滑な行動が不可能になる。

足を1歩前に踏み出しても中々地に着かず、次には突然遠方にワープしていたり、何かが壊れたり、石の中に嵌り窒息したり。

兎に角、思う様に身体が動かなくなる。 深刻な程に感覚は顕著だ。 まともな創造1つも出来ない。 碌なものではない。

末期は時が止まる。 場合により暗黒……無に包まれる。 何も知らなかった頃は混乱したものだ。

原因や解決策を見出してからは注意してきたが。

なに。 また実行するのみ。 原因も知れている。

 

目の前の時荒らしを間引く!

 

クラフターは踏み込んだ。 左手で雪玉を牽制投擲しつつ、右手の木剣を振りかぶる。

駄目だ。 雪玉はすり抜ける。 剣は避けられ空を斬る。

 

 

「くっ!?」

 

 

リムルの剣も避けられた。

後方が遅れて矢を放つ。 これまたすり抜けた。 エンチャント矢なら判らなかったが無い物ねだりしても仕方ない。

この分だと黒曜石の壁もすり抜けそうだ。

だが剣は避ける。 つまり剣は効く。 何とか斬撃を浴びせねば。

 

しかし、相手は回避はすれど攻撃してこない。

本当に荒らしなのだろうか。

創造主は首を傾げた。

 

 

「ッ! ラミリス! クロエ!」

 

 

時荒らしはクロエに向かう。

目的は判らない。 でも守らねば。

だが速い。 追いつけない。 疑念を振り払い、慌てて俊足ポーションを足元で割る。

刹那、猛ダッシュ。 剣を握るが最後の砦の羽虫1匹に頼るしかない。

最初こそ蝙蝠程度の評価を下したが、先程の件を見た今は株が跳ね上がりだ。

 

 

「帰れって言ってるでしょ!」

 

 

また魔法弾を放つ羽虫。

それも安易に避けられてしまったが、その隙に間合いに入り木剣を振る。

また回避行動を見せられたが、剣先が触れたらしい。 遠くへ吹き飛んでくれた。 だがまたゆらりと戻る。 懲りない。

 

 

「しつこい奴ね! とにかく此処を離れるしかないか……!」

 

 

羽虫とクロエが下へと逃れる。

ソレを時荒らしが追い掛ける。

 

耐久レースだ、これでは。

 

だが相手の目的がクロエだと分かった。 何か怨みがあるのか知らないが、創造主からしたら知っちゃこっちゃない。

 

 

「リムルッ!」

「シズさん!」

 

 

シズが異常を察して加勢に登ってきた。

既に抜剣している。 だがソレはノーエンチャント鉄剣だ。 恐らく効果を期待出来ない。

 

やはり主役は我々だ。

 

同志は装備をそれぞれ変更。

弓矢組はエンチャント台を設置。

低レベルでも構わないとばかりに何かしらのコーティングを施す。

ついでに釣竿にも施す。 倒すより時間を稼ぐのが肝要だ。

一方で隙あらば掻き消すべく、ダイヤエンチャント剣を構える者もいる。

素早い手持ちで二剣流にて吶喊。 後方は援護するべく釣竿でブイを投げた。 拘束を試みる。

 

上手くいった。 釣り寄せた。

 

 

「そういう風にも使えるのかよ!?」

「それよりクロエを!」

 

 

このチャンスを逃す創造主では無い。

ダイヤ剣持ちがすれ違いざまに斬り伏せる。 だが引き寄せられながらも避けられた。 素早い身のこなしに敵ながら讃える他ない。 歴戦の創造主をもってして息を呑む。 やれてガードが精一杯だ。

負けじと反転、弓矢を絞るが既にいない。 創造主は首をグリグリ動かし索敵。

 

 

「上ッ!」

 

 

シズが叫ぶ。

上だ。 我々の剣が届かぬ高度だと認知した刹那、クロエに急降下。 猛進だ。

同志が一斉に弓矢を放つも、器用に避けつつ落ちてくる。

 

 

「くっ!」

 

 

何が何でも。

まるで定められた結末。

 

 

無理だ! 阻止出来ない!

 

諦めるな! 考えろ!

 

無いなら作れ! 何時もそうしてきた!

 

我々はマルチクラフターだろ!

 

 

クロエの近く、護衛のシズが剣を構えている。

もうクロエに触れようとした瞬間しか攻撃のチャンスが無いのを悟っている。

 

 

「私はッ! もう失わない……ッ!」

 

 

決意していた。

 

どうして仲間が覚悟して、我々は諦観出来ようか。

 

それぞれがインベントリを開く。

周囲を見やる。

 

最低レベル、無造作に置かれたエンチャント台。

村人との取引用の金インゴット。

必要不可欠の白樺木材。

遊び半分で持ち出した跳躍ポーション。

 

嗚呼、そうだ。

クラフターは熟知しているのだ。 世界に対抗する手段を。 逆境に絶望するどころか、遥かな希望の光をスルリと引き寄せる術を。

 

 

───託そう。

 

クラフター同士は頷き合う。

 

 

群は諦め悪く矢を放ち。

汝は作業台で金剣を創造し。

我は剣に何かしらのエンチャントを施す。

彼は下段のシズに投げる。

己は跳躍ポーションを少女に投げ割った。

 

 

「ッ!」

 

 

少女……シズは鉄剣を放り、金剣を手にする。

 

飛べシズ!

賽は投げられた。 断行せよ。

 

 

「はぁっ!」

 

 

シズが飛んだ。

通常の跳躍より高く、クロエの頭上で時荒らしと交差する。

 

残心の構えで着地するシズ。

ポカンとする羽虫とクロエ。

よろよろと落ちる時荒らし。

死に逝く蝶の様。 されど儚く美しい。

 

 

「シズさんッ! クロエッ!」

 

 

リムルが遅れてシズの元へ。

我々も倣う様に同じレベル帯へ。 油断大敵。

倒れている虫の息の時荒らしを囲み、剣を構える。 念の為釣竿のブイを引っ掛けておく。

リールは駄目だった。 やはり何かしらエンチャントが施されていないと干渉出来ないらしい。

 

 

「"クラフター"さん……ありがとう」

 

 

礼を云われた。 反射的にお辞儀しておく。

だが全ては終わってない。

目の前の存在は消えていない。

 

 

「……そうだね」

 

 

我々としては止めを刺し消すべきだと具申する。

このまま放置すれば、どの様な影響が及ぶか判らない。

時空の違和感はそのままに我々と世界を不機嫌にさせる。

 

 

「ラミリス、コレは一体?」

「わっかんないわよ! アタシも詳しくは分からない! でもやばいやつよ。 存在自体に時間軸のズレを感じる。 たぶん未来から来たのよ。 この時代に現れた理由なんて知らないけど……この子に宿るのが目的みたいね」

「そうなると、どうなるんだ?」

「きっとこの時代での干渉が切っ掛けで未来が大変なことに……」

「鵜呑みにするなら処分した方が良さそうだが。 ラミリスもよく分からないんだろ?」

「ま、まぁ……でも少しは……」

 

 

時荒らしが手を伸ばしてきた。

倒れた姿勢で。

 

 

「ッ! 下がれ!」

 

 

満身創痍といった雰囲気だが、同情する程クラフターは聖人ではない。

クラフターはダイヤ剣を振り上げた。 止めだ。

シズの判断を待たずに処刑しようとした、その時。

 

 

「待って!」

 

 

シズではない声に止められる。

クロエだ。

 

 

「私に逢いに来てくれたんだよね」

「何をしたいのか分からないんだぞ」

「あのね先生。 祈っている時、不思議な感じだったの。 様々な光景が一瞬で……まるで絵本をパラパラと捲っている様な。 懐かしいけど思い出せない、不思議な感じ。 今もそう」

「…………」

「一緒になれば、今すぐじゃなくても何かが分かる。 そんな気がするの」

「ラミリス」

「普通なら反対だけど。 子供を導いてあげるのが大人の務めでしょ。 いつの時代もさ」

「子供を信じてあげるのも大人かな」

「……悪魔よりは良いとしよう」

 

 

クロエも手を伸ばす。

誰も止めない。 それどころか剣を収めた。

 

なら良いか。

 

我々も武装解除。

先程までの激闘はなんだったのやら。

まぁでも。 それがリムルとシズの判断なら多分大丈夫だろう。 何とはなしに。 だけど、どこか誇らしい。

ベイクドポテトを食べつつ、そう思う。

 

やがて互いの手が触れ合った。

瞬間、他の子供達同様にスッと消える。

 

 

「……クロエの魔素が安定した」

「苦しかったり痛いところは無い?」

「うん。 大丈夫」

 

 

相変わらずこの世界は謎に満ちている。

その方が良いが。 楽しみ甲斐があるというもの。

 

 

「先生、みんな」

 

 

声を掛けられた気がして、クロエを見る。

良い笑顔だ。

 

 

「ありがとう」

 

 

創造主もまた、莞爾として頷いた。

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