寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

108 / 175
中央都市(首都)へ。
荒らし3人組が遂にやって来ました。
ですが会話や行動も大きく異なっていきます。
駐在クラフターの存在は凄く……大きいです。

オーク達や鬼人達の時の様に、誰も死なずに済む話も考えましたが……。


103.荒らしと荒らし

 

「はー? ちょっとオカシクね?」

 

 

柄が悪い3人組がやって来た。

かのトリオとは全然風貌が異なる。

絶賛警戒中の連邦だ。 村人の入国審査はガバガバでも我々の目は厳しく誤魔化せない。

 

 

「余所の国の行商や観光してる人間、それに例の人達もいるね」

「そんなのどうでもいいし! ぶっちゃけこの都市ファルムスよりキレイくね? てか日本を思い出すんですけど!?」

「なんでビルが聳えてんだ……」

 

 

例により鳴き始めた。

今はビル群を見上げて吼えている。

まぁ、それは新参の村人に良く見られる行為だ。

いつ見ても評価を下されていると思う程に喜ばしい。 苦労して建設した甲斐がある。

だがそれとこれは別問題。

コイツらが荒らしでない証左にはならない。 引き続き監視の目を緩めない。

 

 

「といっても物騒だよ。 例の人達に監視され続けている。 真剣や弓矢を構えられてね。 それに郊外に鎮座していたのは単なるオブジェクトじゃないだろうし。 それも何処かで見た事がある気がするデザインなんだけど……思い出せないや」

「あ? 大丈夫だって。 騒ぎを起こして森で待機してる連中が突入する機を作れってのが命令だろ? 丁度良いじゃねーか」

 

 

やがて1人が寄って来る。

目付きが悪く、1番柄が悪そうだ。

殴ってこようものなら斬り返す。 倍返しだ。

 

 

「おうおう何ガンくれてんだ? 文句あるならハッキリ言えよ、ああッ?」

 

 

スニーク姿勢で下から見上げられた。

様子見の挨拶か。 柄が悪い癖して律儀な事。

何にせよ応えねば無作法というもの。 此方もスニーク。 お辞儀した。

 

 

「メンチ切り返してんじゃねぇよ!? やるならやってこいや!」

「やっちゃえショウゴー!」

「いやいや先に手を出したら駄目でしょ。 それに欲しい事実は魔物が人間に手を出した行為。 相手が人間じゃ色々違ってくるような……」

「問題ねぇ。 コイツらは教会も魔物扱いしてんだ。 同じモンだ」

「まぁ、それもそっか。 見た目の問題だね」

 

 

問題を起こしている様で微妙な線を突いてくる。

面倒だ。 堂々荒らしてくれれば斬れるのに。

 

 

「キレ合ってる場合じゃないっしょ。 ギャラリー増えて面倒なっから」

「キララに言われたかねぇよ」

「ソレどーゆー意味よ!?」

「そういうとこだと思うな」

「はぁ!? キョウヤまでヒドッ!」

 

 

ハァンハァン煩い。

そうこうしている所為で人集りが出来てきた。

遂にはシオンとシュナまでやって来る。

 

正直来ないで欲しかった。

一般村人と異なるからだ。 騒ぐと後で怒られる。

リムルやシズ程じゃないが。 それでも怒られて良い気はしない。 クラフターはゲンナリした。

 

 

「これは何事ですか?」

「異様な雰囲気を感じ来てみれば……」

「ほら面倒臭くなったじゃん!」

「俺の所為じゃねえ。 コイツらが悪いんだ」

「……仕方ない。 キララ、頼んだよ」

「おっけー!」

 

 

今度は女が前に来た。

今度こそ襲って来るか。

どんとこい。 荒らしの事実が欲しい。 そうすれば無遠慮に攻撃出来る。

然しもの2人も許すだろう。 手を出したのは向こうな訳だし。

 

 

「お前ら、殴って来い!」

 

 

駄目だ。 襲って来ない。 喚かれただけだ。

無性に殴りたくなってきた。

イライラするので牛乳を飲んで落ち着く。 クラフターは深呼吸。 いけない。 危うく相手の術中に嵌り先手を出すところだった。

思う壺になるのは1番嫌だ。 相手が荒らしなら尚更だ。

 

 

「なんで殴って来ないワケ!?」

「苛ついた素振りはあったけど。 レジスト? いやそれにしては……」

「カルシウム取れば済む話じゃねぇだろ」

 

 

どうしたものか。

喚くだけで害が無いなら、シオン達に任せてしまおうか。

外には武装集団がいる。 あまり構っていられない。 忙しいのだ。 楽しむ意味でも。

 

 

「なるほど。 これは声を波長に変換して脳波に干渉するスキルなのですね。 とても恐ろしい力ですので、我が国での使用は禁止させて頂きます。 我が国を好んでお出でくださった皆さまを殺そうとする力───どうぞお引き取りを。 貴女様とお連れ様はこの国に相応しくないようです」

「へーえ。 アンタここの偉い人? そういう態度とるんだ……ってか、魔物って美人いるんじゃん。 教えとけよあのジジイ」

「下種め。 下卑た考えが顔に出ているぞ」

 

 

鳴き合い始めた。 交渉か。

後は任せよう。 いや碌な事にならなそうだから、せめて側にいよう。

特にシオンだ。 前に建造物を破壊してくれた前科がある。 金林檎を食わせた時だ。

ミリムよりマシな被害でも、破壊されるのは気分が悪い。 クリーパーと何方が良いのだろう。

 

 

「このまま素直に都市から出るなら良し。 さもなくば、その命ないものと思うがいい」

「面白ぇ。 実力差を体に教えてやるよ」

「……やれやれ。 どっちが先に手を出したか微妙なカンジになっちゃったな」

 

 

険悪だ。 これまた駄目みたいですね……。

何度目か分からない交渉失敗現場。 もう珍しくも何とも無い。 いい加減耐性がついてくる。 大切なのはその後だ。

 

 

「ま、いいか。 僕も自分の能力を試してみたかったんだ」

「叩きのめされなければ理解出来ないようですね。 では相手になってあげましょう」

 

 

大太刀を街道の煉瓦に突き刺すシオン。

煉瓦の一部が僅かに浮き出る。

クラフターは刮目して荒ぶった。

 

なんて事をしてくれるんだ!

煉瓦が傷付いたじゃないか!

 

やはりシオンはシオン。 かの猛毒をクラフトするだけの事はある。 荒らしの次に荒らしだ。

 

 

「うわっ、あの人ら荒ぶってるんですけど! キモッ!?」

「恐らく初めて来国した貴女達には分からないでしょう。 この都市はこの者達が愛情を込めて建設した都市。 それを汚そうとする貴女達人間に彼等は激昂しているのです!」

「シオン……多分ですけど、違う事に怒っているのかと思います……」

 

 

我々が創造した煉瓦なら良い。

ちょっとの傷なら勝手に直る。

だがそれは村人の煉瓦だ。 村人製の創造物は勝手に直らない。 それを知らないシオンじゃあるまいに。 新参でも許せないものは許せないけれども!

 

 

「それはそれとして……大太刀、剛力丸を置いて戦うのは危険かと。 あの者達、ただならぬ気配を感じます」

「しかしシュナ様、相手は人間です。 侮っているわけではありません。 ですが、リムル様は魔物と人間の共存共栄を望んでおられます。 なればこそ、なるべく穏便にこの身1つで事を収めるべきだと思うのです!」

「穏便……?」

「面白ぇ。 邪魔すんなら潰してやる」

 

 

とうとう殴り合いが始まった。

穏やかじゃないですね……素手同士とはいえ。

傍観するにも離れるにもシオンが危険なので側にいる事にする。 色んな意味で。

事と次第によっては加勢。 シオンがまた建造物破壊をし始めたら、纏めて粛清しよう。

 

 

「何を余所見してるんだい? 僕の相手になってよ。 辻斬したいんだよね」

 

 

と、最後の1人が堂々斬り込んで来た。

やっとマトモな奴がいた。 荒らしという意味で。

分かりやすいのは良い事だ。 これで剣を振れるというもの。

 

直様剣を交えるクラフター。

牽制に雪玉を乱射しつつ、前に出た。

 

 

「なんだ? これは雪玉!? 情報通りふざけた戦い方をするね。 だけど!」

 

 

斬られた。 迂闊に近寄り過ぎた。

だがダイヤ鎧だ。 大したものじゃない。

一旦間合いを取り、回復薬を飲む。

 

 

「それも普通の鎧じゃないようだね。 でも僕のスキル切断者なら……なんだって!?」

 

 

体力を回復。

空腹になるには、まだ早い。

 

 

「まさかポーションが効いたのか? 空間属性の斬撃だぞ!?」

 

 

まぁ早いもなにも。

腹が減る前に退場して貰おうか。

 

クラフターは剣先を向け直す。

周囲のビル窓からは、既に狙撃体制の同志が包囲している。

 

遊びは終わりだ。 死んで貰う。

荒らし死すべし慈悲は無い。




どこかミスってたらゴメンなさい(殴。
裏ではミュウランが結界を張ろうとしたり、外で武装集団が待機していたりしますが、クラフターを介入させるべきか否か……。

なんにせよクラフターには何とかして貰いましょう。
きっと何とかなる(他人事。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。