リムルとクラフターの感性の違いが、とうとう激突してしまいます。
このまま仲違い、絶交、排斥してしまうのか?
と、思いきや段々と。
「……ここからは私が通訳します」
「頼む……お前ら。 これを見てどう思う?」
凄く……小さいです。 被害の話である。
死体の悉くは荒らし。 村人はいない。
当然の報いだ。 寧ろ足りない。
これがクラフターの感想だった。
リムルがいて辛辣同志通訳の下、我々は都市中央広場にいる。
目の前には荒らしの遺体が並べられていた。
中には追い剥ぎをする同志。 良いと思う。 荒らしに使われるくらいなら我々が利用してやる。 その方が創造物も主も浮かばれる事だろう。
「真面目な話をしてるんだ、やめろ!」
此方も真面目にやっている。
遊びで戦をしたんじゃないんだよ。
「……幸い、奇襲攻撃にも関わらず奇跡的に敵軍の遺体以外発見されていない。 お前らが予め用意していた避難路や武器のお陰だろう。 高層階に取り残されていた者もいたが、それはそれで助かる要因になった。 それは感謝している。 それに殺しに来ていた以上、敵を殺すのも仕方ない部分はあると思っている。 正当防衛だ。 だがな」
リムルは突如、追い剥ぎをしていた同志に近寄ると、首根っこを掴んで安置場から放り出した。
「逃げる奴まで殺す事じゃなかった!」
いや殺す事だ。 理解に苦しむね。
荒らしや危害を加える害獣は殺すべきだ。
こうして死体が残っている事から、コイツら荒らしは村人同様にリスポーン出来ないのだろう。 だがそれで良い。 面倒にならない。 同一個体が2度と歯向かってこないから。
後は郊外に逃げた荒らしと拠点を潰す。 その後は本土に出向いて国の村人を皆殺しにする。 憂は無くす。
そうだな。 敵はファルムスとルベリオスだ。 結託して荒らしに来たからな。 本拠地も潰しておきたい。
ルベリオスはシズといた国より更に西であるが、ファルムスはドワルゴンの南西に隣接した国だ。 其方が近い。 先に滅ぼそう。
そうだな。 IRPで砲撃しても良いが、建造物は評価に値する。 毒を使おう。 それなら建物は傷付かない。 それか現地の同志に頼んで皆殺しにするか。
リムルよ。 甘さは捨てるべきだ。
「いい加減にしろ!」
いきなり頬を殴られた。
良いパンチだ。 ウオッと野太い声が出て背後に軽く吹き飛ぶ程に。
意外と初めてかも知れない。 案外、芯に響く。
「リムルさん!?」
「良いから通訳を続けてくれ……俺は確かに甘かったさ! その所為で国の皆を危険に晒した! 人間に友好的に接しろと言ってきた所為でな! それで皆は殺しに来た人間の軍隊と本気でやりあえなかった! 結界だけの問題じゃないんだよ! だからお前らだけに悪役を押し付ける訳にはいかない……だけど、感情だけで全て動けば後が大変になる……分かってくれ」
…………そうだな。
一気に疲れ顔をするリムルに頷く創造主。
冷静になれ。 荒らし3人組の時も最初は我慢したじゃないか。
牛乳を取り出すと、皆して飲んで落ち着いた。 状態正常でも気持ちの問題である。
「一々説明するぞ。 政治的な問題も当然ある。 お前らが分かりやすい様に言うが、軍隊の連中は国の指示で動いているに過ぎないんだよ。 だから奪わなくて済む命があるなら奪わなくて良かった」
成る程。 馬と騎手の関係か。
チキンジョッキーとか。 夜のスケルトンと蜘蛛は許せないが。
だがそれなら尚更に国が諸悪の根源だ。
やはり滅ぼすべきだろう。
「そんな事したら国にいる普通の国民が巻き添えを喰らうじゃねえか! あのな、さっきみたいなもんだよ。 お前らは皆を庇いながら戦っていただろ? 特に戦えない者を優先的に。 国にはな、そういった無関係な者もいるんだよ。 ヨウム達もそうだ。 アイツらは戦えるが、悪い奴じゃないだろ? だが今回攻めて来た連中はヨウムの母国だ。 これで何となく分かるか?」
そうか。 国と村人は、また別の関係か。
なら何故徒党を組んでやって来た。
「国の……いや国王や一部上層部の思惑だろうさ。 悪だと断じるならソイツらの方がしっくりくる」
ボスか。 ボスがいるのか。
確かに元の世界でもそんな存在はいた。 神殿にせよジ・エンドにせよ。
ちょっと各国のボスに挑みたくなってきた。
武装村人とは比較にならない強さだろうし。
見た目も派手だろうな。 悪魔みたいな奴とか、ドラゴンとか。 ルベリオスは神だろう。 ルミナスとかいうボスが登場するのかも知れない。 丁度、神殿的な建物が幾つも建てられている。 山辺りの神殿が怪しい。 現地の同志に頼んで突撃して貰おうか。
「国をダンジョン感覚にするな!? 攻略しようとか思うなよ、絶対だぞ! フリじゃないからな!?」
相分かった。 国家解体もしない。
資材や土地を手に入れるチャンスでもあったが、この世界の複雑難解を説かれたからな。
未だ理解し難いが。
ただ面倒臭いのは分かった。
マルチクラフターとして、ある程度の理解と我慢は必要という事だな。 うん。
「心配だな……地下鉄を張り巡らしてる時点で信用ないんだが……いや信じるぞ。 信じてるからなお前ら!?」
煩い。 この世界は窮屈だ。
些細な事で騒がれていたら身が持たない。
「些細じゃねぇよ! おおごとだよ!? ヒナタにも言われたけど、世界を侵略している自覚は持って頼むから!? 悪い事だからねそれ! 地上じゃなくて地下だから許されるとかじゃないからね? 国際問題だからね!?」
やれやれ全く。
なんて世界に来たもんだ。
生き辛い世の中になったものである。
「お前らの所為で余計生き辛いわ!? 助けられた人魔が沢山いるのは事実だけど!」
そうだろう感謝しろ。
地下鉄も批難される謂れは無いね。
アレは便利じゃないか。 ポータルと比較すると劣るが、ホイホイ作れる訳じゃないのなら需要は高い筈だ。
「ああそうだな。 無許可で人の土地ブチ抜いて作った訳だけどな!? どうせ知らない所で大陸横断鉄道完成してんだろ!?」
ご名答!
くそぅ、ホームや細かい部分が完成してから披露するつもりだったのに!
「ざけんなゴルワァッ!? 歯食い縛れ!」
ウォッ。
また殴ったね!?
シズにも2度も殴られた事無いのに!
斬られた事はあるけれど!
「俺はシズさんほど甘くないぞ! ちょっとこの辺で分からせてやる! 鎧なんか脱いでかかってこい!」
上等だぞ悪食スライム野郎ッ!
テメェなんか怖かねぇ!
クラフターは鎧を瞬時に脱着すると、右拳で殴りかかる。
向こうも殴り返してくるが構わず殴る。
「痛覚無効なんでね、そんなパンチ痛くねぇよ! 体はスライムだしなぁ!?」
畜生めが!
だが諦めたら仕合終了です。 という訳で殴る。
剣を使わないのは慈悲もあるが、礼儀作法みたいなものだ。 もっと言えば戯れだ。
相手も分かってるのか、加減している。 していなかったら食われて即死している事だろう。
我々はアイツら荒らしと違うのだ。
「右パンチしか繰り出せないのかお前らは! そんなんじゃ普通の人間相手にも勝てないぞ!」
「あのー、リムルさん。 警備隊も見てますし、伝える事伝えたなら、今後についての会議とかした方が……」
「……だな。 リグルド達を集めて会議だ。 被害状況と相手の状況を把握して、今後の方針を決めなきゃな。 また戦うにしても」
パタリ、と殴打が止んだ。
助かった。 壁際に追い込まれていたところだ。
だが次は負けん。 殴り合いでも勝てる様になりたいところ。
「お前ら……とにかく、そういう事だから。 信じてるぞ」
最後に薄ら笑みを浮かべられた。
此方も薄ら笑みと共にお辞儀する。
「だそうですよ。 馬鹿やってリムルさん達を困らせちゃ駄目です」
……辛辣同志まで。 クラフターは溜息を吐く。
この世界のマルチは難しい。
政(まつりごと)にしても人魔関係にしても。
だけども……空を見上げる。
冷たさに妙な温かさがあるのは何故だろうと。
軽くなっていきましたね。
最後の方はいつも通りな感じに。
しっくりこない方……すみません。
今後は郊外の荒らしの対処等になりそうですが、どうなるのか。