寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

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ミュウランイベントをスルーするか迷いました。

漫画内でのやり取りそのまま。
クラフターは申し訳程度にいるだけです(殴。


108. 魔女裁判と手術

 

 

「先ずはミュウランの処遇を決める。 事の経緯を聞かせてくれ」

 

 

会議が終われば、今度は宿屋に連行ときた。

日々自由に冒険し建築する創造主は束縛を嫌う。

されど辛辣同志とリムルが云うのだから仕方ない。 少なくとも無益にならぬのだと信じ、共に往く。 鶏肋の惜。

 

 

「───私は魔王クレイマンの配下。 五本指の1人、薬指のミュウランです」

 

 

ベッドに座るミュウランが鳴く。

左右にヨウムとグルーシス。 彼女を守る様に立っている。

例え敵側だったと判明しても仲間であり続けているのだ。 分かる。 我々も隣人が突然荒らしになった時、出来る範囲で擁護する事があるからだ。 村人の言葉を借りるなら愛しているという奴だろう。

その意味では、さっき彼女に配膳していた狐娘達もそうだろうか。 身を案じている様子であった。 少なくとも敵対心は感じない。

 

 

「続けろ」

 

 

対するリムル。 太々しく椅子に座り尋問中。

それが半分演技だとしても、穏やかとはいえない空気だ。 哀愁すら漂う。 ミュウランがどこか諦観している所為である。

一種の覚悟すら感じさせた。 何とかなると良いのだが。 リムルなら何とかするか。

 

 

「私に与えられた任務はテンペストの内偵でした。 だから私は……ヨウムを利用してこの町に潜入したのです」

 

 

辛辣同志に通訳して貰いつつ、成る程と頷いておく。 概ね予想通りだった。

 

 

「成る程な。 つまり今この時もクレイマンに報告をしている訳か」

「いいえ。 連絡手段がありません。 私はウィザードです。 アンチマジックエリアで私に出来る事など、普通の人間とそう変わりません」

 

 

ここで1つ、辛辣同志の疑問が解けた。

ミュウランは"知らない"という事が。

リムルが上手く誘導してくれた。 相変わらず上手いものである。 この地が未だ粗末な村だった時にも感じたものだ。

 

 

「あんたがここをアンチマジックエリアに変えたんだろ? どうやって離脱するつもりだったんだ?」

「…………」

「……クレイマンに見捨てられたってことか」

 

 

裏敵は思った以上に非情らしい。

荒らしの目にも涙、なんてのは無いのか。

その方が都合が良いけども。 遠慮なく殺せる。

 

……辛辣同志よ。

そんな目をするな。 勝手に吶喊しないから。

なんだろうな。 シズとは違う気迫を感じる。

 

 

「マリオネットマスターの2つ名で知られるクレイマンは、配下を自分の意のままに操ります。 それこそ操り人形のように。 彼にとって配下とは道具でしかなく、壊れたりいらなくなれば捨てるだけなのです」

 

 

なら貰う。

溶岩処理でなければ回収出来る。 棄てる主有れば拾う主有り。

あいや。 その裏敵はクラフターに有るまじき行為をしている。 これ程に有益な村人を捨てるなんてとんでもない。

せめて繁殖を試みなかったのか。 貴重品を取引してくれる可能性だってあるのに。 魔法とやらも凄いらしいのに。

 

……だから辛辣同志。 その様な目で見ないで。

君もクラフターだろう。 判れ。

 

 

「何故ヤツの配下に下ったんだ? 従うメリットはなさそうだが」

「……あの時の私もそう気づく事が出来れば良かったのですが」

 

 

騙されたのか。

分かる。 我々も昔、先輩に騙されての強制労働をさせられた。

当時はムカついたものだ。 今や苦笑出来る思い出である。 ミュウランも思い出になる。 少なくとも我々の。

 

……大丈夫。 成る様になるよ。

 

 

「私は元々人間の魔女でした。 人々から迫害を受け、逃げのびた森で幾百年。 家族もなく友もなく魔法の研究に没頭する日々でした。 そんな永劫のような日々が終焉に近づいた頃、あの男が現れたのです。 『貴女に永遠の時と老いる事のない若き肉体を差し上げましょう。 その代わり私に忠誠を誓い仕えなさい』と」

「応じたのか?」

「森に引きこもる世間知らずなど、笑えるほど御し易い相手だったでしょうね。 クレイマンが私に施した秘術は『マリオネットハート』という───仮初めの心臓を媒体に被術者を魔人へと至らしめるものでした」

 

 

ポーションで身体強化、エンチャントでツール強化……とは訳が違う話だな。

だが興味深い。 我々も身体に直接エンチャントを施さないものか。 出来るならリムルを吹き飛ばせそうだ。 ミリムや魚災の時が思い出される。

 

……どうした辛辣同志。 暗い顔をして。

君に何があったか聞かない。

だが過去に囚われてはならないよ。

 

 

「以来、私の心臓はクレイマンの掌の上。 私は約束されたものを受けとったけれど、同時に自由を失ったわ」

「文字通り生殺与奪権を握られてるってことか。 なるほどな……つまり自分の命惜しさに俺の仲間を窮地に陥れてくれたわけか」

「だ……旦那!!」

「黙って下さい、話の途中です」

「……っ」

 

 

前に出てきたヨウムとグルーシスを辛辣同志が鉄剣を出して威圧。 静止させる。

鞘が無いのに、突然現れた剣。 どうやら我々同様にストレージ式。 そこはクラフターである。

 

 

「それで? クレイマンがウチにちょっかいを出す理由はなんだ? まさか配下の始末の為だけに送り込んだとか言わないよな」

「……クレイマンはごく限られた者にしか心の内を見せません。 ですからこれは、あの男の言動から考えうる───私の予想になります。 クレイマン自身がファルムス王国を焚きつけたかどうかまでは分からない。 けれど、テンペストのアンチマジックエリア化は彼の国の蜂起を見越した上での計画だと感じました」

「被害の拡大を目論んだ……とかか?」

「それもあると思います。 ですがそれ以上に外部への連絡を封じ他国への援軍要請をさせないためかと」

 

 

我々は問題なかったのだがな。

今も連絡を受けた遠方の同志が連邦に戻りつつある。

中にはエンダーチェストに戦闘用具を放り込んでのリスポーンで素早く帰還する同志すらいるくらいだ。

 

 

「もしもドワーフ王国やブルムンド王国がテンペストへ援軍を出せば、ファルムス王国への牽制になる。 そうなれば戦争が回避される可能性もあったでしょう。 テンペストとファルムス王国の間で戦争を起こさせる……それはとてもクレイマンらしい筋書きに思えるのです。 ただ戦争を起こして何を得ようとしているのかは分かりません」

 

 

荒らしなら、荒らしたいから仕掛けるのだ。

それで詰まらない己の痩せこけた人生に生の充足を得て満足させている。

他にも理由はあるだろうが、何にせよ敵である。

この世界の荒らしは……聞けば聞くほど複雑難解だ。 考えるのも面倒だ。 荒らしは荒らし。 それで良い。 敵である。 殲滅対象に変わりない。

追撃するには許可がいるんだろうなと考えられる様になったくらいか。 それも臨機応変と気分でやるが。

 

……今は今で集中だ。

 

 

「わかった。 十分だ、ミュウラン」

 

 

リムルが立ち上がり、冷たく言い放つ。

 

 

「お前には死んでもらう」

 

 

死んだら死んだで結果が見られる。

クラフター製のベッド使ってるし。

 

 

「待ってくれ旦那!! ミュウランは本当にっ」

「無駄だヨウム」

「グルーシス!?」

「あれは本気の目だ」

 

 

グルーシスが獣身化。

そうだ。 獣村人は更に獣になれるのだったか。

あの狐娘もそうだろう。

まぁ、それはそうと……元の世界に置いてきた番犬を思い出す。 あと猫も。

 

おっと襲ってきた。 咄嗟に盾を構えて防ぐ。

 

 

「なにしてるヨウム!! さっさとミュウラン連れて逃げやがれ!! コイツら相手に……長くは稼げねぇよ」

「グルーシス……!」

 

 

辛辣同志がいなかったら殺していたな。

大方、打ち合わせ通り。 後はリムルに任せる。

 

 

「くそっ! ミュウラン行くぞ、早く立……」

 

 

ミュウランが、そっとヨウムの頬に触れる。

そして───。

 

 

「好きだったわヨウム。 私が生きてきた中で初めて惚れた人」

 

 

なんだ繁殖しないぞ。

この土壇場に来て、やっとこの世界の村人の繁殖行為が確認出来ると思ったのに。

それとも発情が足りないのか。 そんな気がする。

 

 

「さようなら。 今度は悪い女に騙されないようにね」

「いい覚悟だ」

 

 

ヨウムがリムルの放った蜘蛛の糸に捕縛された。

剣や鋏を反射的に使いたくなったが、堪えた。 後にしよう。 今は怒られる。

 

 

「旦那!! リムルの旦那!! 頼む!! やめてくれ!! リムルの旦那!!」

 

 

辛い。 通訳が止まり言葉が理解出来ずとも。

シズの死を思い出す。 この後を想えば余計に。

 

 

「俺も一緒に一生を懸けて償う!! あんたの言うことはなんでも聞くよ!! だから……っ」

 

 

リムルの右手がミュウランにめり込む。

我々も助手が出来れば良かったがな。 今回は牛乳を飲ませて解決しない。

手術はリムルに任せる。 きっと大丈夫だ。

 

 

「───よし。 成功したようだな」

 

 

ミュウランは生きていた。

ほらね。 我々も負けてられないな。

 

 

「問題なさそうか?」

「え……あの……私、なんで生きて……」

「!?!?!?」

 

 

ヨウム驚愕。 空いた口が塞がらない。

分かる。 我々の創造(想像)力を超えている。

天才はいる。 悔しいが。

 

 

「ああ、うん。 3秒ほどは死んだんじゃない?」

「3秒……?」

 

 

グルーシスも困惑している。

ともかく、戦闘はこれ以上必要無い。

 

 

「だ……旦那!? 一体これはどういう事なんだ!? ミュウランは……っ」

「わかったわかった、説明するから。 そんなに狼狽えると彼女に笑われるぞ」

 

 

蜘蛛の糸を鋏で撤去してやる。

結構手に入った。 羊毛に加工してベッドを数個程度並べられそうだ。

 

……なに?

蜘蛛の糸から何故羊毛に出来るか?

辛辣同志よ。 細かい事を気にしてはいけない。

 

 

「実はな、ミュウランのこの仮初めの心臓はクレイマンの盗聴に使われていたんだ。 暗号化された電気信号でな」

「盗聴……!?」

 

 

リムルが種明かし。

手の平、砕けた宝石を見せながら説明開始。

……それ、修復してナニかに使えないかな?

 

プライバシー?

ちょっとナニ言ってるか分かりません。

 

 

「魔法通信で定期的に報告を入れさせていたのは、それに気づかせないためだろう。 信頼する仲間ではなく、聞いた通り"道具"なんだろうな。 クレイマンを騙す為だが、怖い思いをさせてすまんな」

「いえ……いいえ。 あの……ではこの胸の鼓動は……?」

「仮初めの心臓を参考に作った擬似心臓だよ。 もちろん盗聴機能ははずしてある。 "マリオネットハート"はなくなった。 これでもうクレイマンは貴女に何も出来ない」

 

 

いや全く……驚異的なクラフトであった。

臓器の話は理解し難いが、命を創造したに近い行為をリムルは成し遂げたのではないだろうか。

本当に成功して良かった。

ベッドは飽くまで保険でしかなかった。 シズの様にリスポーンするか分からない以上、賭けて殺す訳にいかなかった。

 

……どうした辛辣同志よ。

ミュウランは助かったのだぞ。 喜べ。

 

 

「は……ははは……本当に……やったじゃねぇかミュウラン! もうお前を縛るもんは何にもなくなったってことだ!」

「……ええ」

「旦那も人が悪いぜ。 俺にくらい教えておいてくれても良かったじゃねぇか」

「……あのなヨウム。 多分お前が人質だったんだぞ」

「え?」

「彼女はクレイマンから見捨てられたんだ。 律儀に最後の命令に従う必要はなかったんだよ。 どうせ心臓も返してもらえないだろうし。 それでも従う事を選んだのは、そうせざるを得ない状況を奴が作り出していたからだ。 例えば人質とかな」

「そ……そうなのかミュウラン」

「……大切な人を守りたかっただけよ……そういえば……あなたの告白にまだ応えてなかったわね。 私、せっかく自由になれたけど、人間の短い一生分くらいなら束縛されてもいいと思っているわ」

「ミュウランさん。 今のお言葉、どういう意味なのかハッキリ教えてもらってよろしいでしょうか」

「バカっ…………ばか」

「こんな状況じゃなけりゃ、祝福してやるんだがな」

 

 

さても問題は山積みだ。

辛辣同志と共にリムルに協力していく所存。

 

 

「───おいグルーシス、何が『あれは本気の目』だよ」

「うるせーよ!!」

「感謝してるくせに……」

 

 

また活気が戻りつつある気がする。

それは良い事だ。 だが完全に取り戻す為には先が長い。

 

また、今回の件は色々と考えさせられる。

今現在としては、ベッドを使用しても村人皆が死んで生き返るとは限らない。

実際、ミュウランは我々のベッドを使用していた上で数秒死んだらしいが……相変わらず言葉は分からない。

向こうも此方を理解した素振りがない。

 

死んで生き返るなんて、我々にとってはよくある話だが、正直に言えば……ここらで1発、村人の事例を増やしておきたかった気がしないでもないクラフターだった。

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