一方ユーザラニアのクラフター。
政治の話は程々に。
観戦回。 置物化する創造主。
またも申し訳程度にいるだけです。
時系列的には少し前かも。
112.観戦と死亡メッセージ
連邦が荒らしを蹂躙するのは疑いようが無い。
それでも血祭りに参加したく、散っていた創造主は一部を除き連邦へ帰還した。
荒らし本拠地のファルムスやルベリオスにいた同志は帰る家を無くしてやろうとしたが、そこはリムルと辛辣同志に止められた。
分からなくはない。
荒らしの国とはいえ、建造物群は立派なのだ。
壊してしまうのは勿体ない。
他にも理由がある様子だが、外部の同志達は従う事にした。
だが獣王国は駄目だった。
いやクラフターが何かした訳ではない。
獣村人に問題が起きたのだ。 故に現地の創造主はファルムス戦に向かえず、だからと何をすべきか判別出来ずに狼狽えた。
「テンペストへ避難しろ!」
「我等が獣王、カリオン様を信じるのです!」
連邦より南東に位置する土地で、ドッタンバッタン大騒ぎ。
ゾンビから逃げる村人の様に、地上の獣村人達が歩きつつも明らかに逃げていく。
その先は魔国連邦だ。
速度からして荒らしが片付いた後に到着するだろうし、対応はリムルや辛辣同志がいるから心配はしていない。
だが何事か。 此処で何が起きた。
地上に出ようにも、それはそれで騒ぎになるのが嫌で地下に籠る創造主。
逆に透明化ポーションで這い出て見ても、まるで意味が分からない。 ゾンビもいなければ他のモンスターすら見当たらない。
……連邦の同志に確認を取らねば。
「避難は出来たぜ」
「……顛末は俺が見届ける」
「任せましたよフォビオ」
どうやらピンキーストーム……あのミリムが獣王国を荒らすと宣言したそう。
事前に知らされた獣村人は、巻き込まれない為に連邦を頼って移動を開始したのだった。
まさかの事態だった。
ミリムは荒らしだと周知しているクラフターだが、まさか本格的に荒そうとは。
扉や街道や植木やら、酷い時はジオフロント全体を破壊したミリムだが、国まで滅ぼす奴じゃないと思っていた。
どうやら買い被りだったらしい。
しかも、わざわざ荒らし宣言。
大抵の荒らしは一々教えてモノを破壊しない。
何故そうするのか。
余程舐めているのか、この国に怨みがあるのか。
両方にせよ他に意図があるにせよ、我々は此れに介入するべきか決断を迫られた。
ミリムは強い。 圧倒的に強い。
だが介入すれば多少の被害は減らせる可能性は無くはない。
ミリムはエンチャントが効く相手だ。 吹き飛ばしたり黒曜石に閉じ込める事は出来るかも知れない。
だが此処……獣王国の地下に極秘建造したジオフロントがまたもバレてしまう事態になりかねない。
ミリムに破壊された本拠地の悪夢が蘇る。
「よぉミリム」
そうこう悶絶している内に、とうとうミリムが来てしまった。
相変わらず謎の力で浮遊している。
未だ辿り着けない驚異のエリトラ技術。
「まさか本当にワルプルギスにも諮らずに協定を破棄しちまうとはな」
対抗はカリオンという村人。
此方も宙に浮く。 だからどうやる。
かつてのシズもそうであったが。
そんなカリオンだが、実は前にも見た事がある。
魚災の始末を始めた頃に来た奴だ。
そして巨大魚に喰われていたフォビオをノックバックパンチで吹き飛ばし、余波で植林場を荒らしてくれた。
つまり荒らし同士の対決である。
潰しあって、どうぞ。
荒らしには冷めた目で見るのもクラフター。
「お前さんは見た目よりずっと思慮深いやつかと思っていたんだが」
とうとう戦い始めた。
カリオンが棒状の得物で攻撃。
が、素手のミリムは全て避ける。
いや、斬撃が避けているというべきか。
ナニか見えない壁で滑っている様でもある。
そして久し振りに見るミリムの顔は……無表情。
反撃するでもなく、ただ対応する様は無機物の様。
荒らし嫌悪か。 なら同族嫌悪だ。
我々は荒らしを応援しない。
「多重結界で滑る……ならば!」
突如、カリオンがリードと思われる紐でミリムの片腕を拘束。
動けなくなったところを攻撃するも。
「……光栄だな」
なんと、ミリムが剣ガード。
どこか曲がり、禍々しい剣だ。 ダイヤ剣より強そうで困る。
しかし鞘なんて見えなかったが。 彼女もストレージ式だったのか。 なら他に何を持っているというのか。
「数多の魔人や魔王を屠った魔剣"天魔"、その剣をこの目で見られるとは」
だが得物を持ち出すとは。
素手でも脅威なのに。 脅威査定は見直しだ。
ともあれ、報告も兼ねて戦闘を見守る。
「ようミリム。 なんでこんな真似をするんだ?」
カリオンが鳴いている。
が、ミリムは鳴かない。 らしくない。
「……ヘッ、もしかして操られてでもいるのかい? だとしたら少し残念だな!」
カリオンが変身。
翼が生えて、身体はより獣化。
まぁ想像し得る範疇。 今更驚く事でもない。
「本気のお前を倒して、この俺様が最強であると証明したかったんだがな」
それに変身したところでミリムに勝てるとは思えないのだ。
たぶん、ミリムは本気なんか出していない。
連邦に滞在していた頃であってもだ。
IRPが敗北を喫し、ジオフロントが大破した時も彼女は笑顔だった。
悔しいが改めて認めざるを得ない。 ずっと遊ばれていたのだと。
では今は?
氷の様に冷たく無表情な彼女の心境は?
これが遊びでないなら、本気だとても?
「さてミリムよ。 この姿を見せた以上、お前には退場してもらうぜ」
カリオンが杖を構える。
観戦は続けよう。 対策を考えるのは後だ。
「この世から消えるがいい! ビースト・ロア!!」
太く眩い光線が放たれた。
ミリムは回避するでもなく、モロ喰らう。
「嫌いじゃなかったぜミリム。 いいダチになれたかもしれねーのに残念だ」
が、晴れた頃には無傷のミリムが浮いている。
更に云えばミリムも変身している。
翼が生え、角まで生えている。 服装も心なしか変化している。
「……冗談じゃねぇ。 まさか無傷とはな。 だが少しは本気になってくれたわけかい」
「やるな。 左手が痺れたのは久し振りなのだ。 お礼に取って置きを見せてやる。 ドラゴ・ノヴァ!」
やっとミリムが鳴いたと思えば、倍返しとばかりに先程より巨大な光線を相手に返す。
カリオンは咄嗟に避けたものの、都市が巻き込まれてしまった。
ついでに観戦していた一部同志まで。
久し振りに目の前が赤く染まった。
死因はミリムに消し炭にされた、である。
見越してストレージには大したものは入れていないが、リスポーン地点は地下だ。 また上がる手間がある。
「……ありえねーだろうが……! 都市が跡形もねぇ……!」
それにしても恐ろしい威力だ。
あの一撃で都市が跡形も無くなりやがった。
透明化の恩恵を利用する為、防具はしていなかったが……恐らくダイヤで最大強化を施しても直撃なら即死した可能性がある。
黒曜石で防げるかも怪しい。 ジオフロントの装甲強化も考えねばならない。
「破壊の暴君ミリム・ナーヴァ。 なるほど御伽噺にしてでも語り継ぐべき脅威だな……ん? ありゃあ……」
「……ほぅ」
しまった!
地面が抉れて一部の装甲が剥き出しに!?
クラフターは慌てふためいた。
またミリムにバレたかと。 また荒されると。
「黒紫……どこかで見た事ある色だな。 例の人間達の仕業……まさか連邦まで不可侵条約を破棄したか……いや、不思議な連中だからな、リムルも知らないか。 今はミリムだ」
戦闘態勢に移行しろ!?
非戦闘要員は備蓄物資と共に連邦へ退避!
玉砕覚悟だ。 各々が大急ぎで武器を取る。
「よう、理由を聞かせちゃくれねえか? なぜユーラザニアを滅ぼそうと思った? 例の人間達の影響か? おいなんとか言えよ。 人様の国を消滅させておいてだんまりか?」
カリオンが鳴いて引きつけている間に、なんとかしなければ。
「ひょっとしてアイツ本当に……」
よし整った奴から上がれ!
エリトラ飛行は突撃せよ!
地上は弓矢で援護! 弾幕を張って威圧だ!
「あら、何かに気が付いたのかしら」
「ヘッ、お前もかよ。 フレイ……!」
と死ぬる覚悟で上がり、弓矢を構えて空見れば……また増えた。 村人がだ。
翼が生え、胸部に膨らみがあり、脚は鳥。
連邦でも見かけた種族である。 有翼族(ハーピィ)とかいったか?
そんな飛び入り参加者も得物を持っており……カリオンを斬りつけた!
それが止めになったのか、動かなくなるカリオン。 そのまま担がれると東方向へミリム共々飛んでいく。
「ここにも例の人達がいるのね」
追うか迷った創造主達だったが、やめた。
飛行速度が違う。 準備もちゃんとしていない。
「……今は遊べないのだ」
去り際、ミリムに鳴かれたが意味が分からない。
ただ少し寂しそうだった。