寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

130 / 175
戦闘後のワルプルギスは領土分配や政治的な話になり、またもクラフターが空気に。

邪竜はいませんが、漫画通り彼女の正体は明かす事にします。
今後に響くかも知れないので……。

応援ありがとうございます!
どこまで書けるか不明ですが、いつも様々な感想・評価・登録等ありがとうございます! 大変励みになります!


125. ケーキと夜魔の女王

直ったテーブルにケーキを鎮座させた創造主であったが、倣う様に周囲も座り始めた。

連戦の雰囲気ではない事に、取り敢えずの安堵感を覚える。

 

 

「ワルプルギスの議題は片付いた。 だが折角の機会だ。 何か言いたい事ある奴はいるか?」

 

 

それよりケーキ要らんかね?

中央に位置するケーキを誰が先に手をつけるか見ものである。

 

 

「いいかしら? 私から提案……というよりお願いがあるのだけど」

『スカイクイーンの名で知られる魔王フレイです』

「うん。 誰であろうと聞きたくありません」

「聞きなさい」

「アッハイ」

「少しでも良いから、例の人間達の行動を抑制出来ないかしら? 実質他国侵攻をしているのだし」

「それなら俺様も言いたい事がある。 というかさっき言ったがな」

「余も同じだ」

「はいはい言うと思ったよ言わせてあげましたよ!? 戦うより面倒だよ!?」

「ここまで来ると、クレイマンのしていた獣王国調査とは名ばかりの軍事侵攻行為が可愛く見えるわね……」

「さて魔王リムル? 初仕事として……私の領内にいる例の人間達を国外退去させて貰えないかしら?」

「いやー、やりたい気持ちは山々なんですがね、なにせ自由人過ぎまして。 文句なら是非本人達にお願いしますマジで」

「だそうだぜ? 煮るなり焼くなり好きに制裁して良いって事だ。 だが経験者から言わせて貰えば、そんな事したって無駄だがな。 どうせまたやって来る」

 

 

誰も手を付けない。

コレはアレか。 ミリム同様直接目の前に置かねばならないのか。

そう思って別のケーキを用意しようとした矢先、赤髪の従者が見かねたのか切り分け分配したではないか。

 

 

「なら余計に言い聞かせて欲しいわね」

「言葉が通じないんで。 通じたところで価値観の違いからか、言う通りにならないんで」

「知らぬ存ぜぬで何もしないのは困るんだがな。 不可侵条約を破ったかどうかはさておいても、他国に首都直下型建造物なんて前代未聞過ぎるだろ!?」

「おいおい、俺達は魔王だぜ? リムルがクレイマンを倒して魔王になった様に、力で示すべきだろう。 その友人たるリムルも文句は本人達に言えって事だし、肉体言語で追放すれば良い。 俺は現にそうしてる。 ついでに楽しませてもらってるがな」

 

 

素晴らしい。

4分割ではなく、8分割にしたぞ。 我々がやらない分配法を見せられた。

満腹度は半減するだろうが、全員へ行き届く様に配慮して見せる優しさをクラフトした。 己も見習おう。 悪食リムルは反面教師だ。

 

 

「リムル、アンタ今まで良く生き延びてこれたわね」

「同情するなら手伝って」

「アンタは私の従者でしょ」

「魔王の従者が魔王ってなんだよ」

「……………」

 

 

欺瞞の国よりお越しの従者が睨んでいる。

オッドアイの奴だ。 卵を投げ付けられた事を未だ根に持っているのだろうか。

いや分かった。 ケーキを貰えない事に腹を立てている。 従者は立ち尽くすのみで、何も貰えない。 可哀想に。 クラフターは憐れんだ目を彼女に向けた。

 

 

「お前、ヴァレンタインの従者に睨まれてるぞ。 というか凄い殺気まで放たれてるぞ。 本当にどこでナニをしてたんだよ」

 

 

やはりケーキを用意しなければ。

ボックスから新たなケーキを用意した創造主は、彼女の前にケーキを直置き。 テーブルに置くと席に着く奴に食われるからだ。

 

 

「だから直置きやめろや!? 凄い失礼な行為してるって自覚持って!?」

「……私は魔王ヴァレンタイン様の侍女に過ぎません。 どうぞ、お構いなく」

「お構いない奴に言っても仕方ないぞ!? いや本当にすみません! もう殺してやって下さい、取り敢えず頭下げとけお前も!」

 

 

駄目だ。 喰わない。

やはりミリム以外には効かないのか。

いや諦めるには早い。 創造主はテーブルの真ん中に立つ。 そしてホールケーキを持って腕を振り回し、効果の無かった彼女を背に愉快な腰振りを披露して見せた。

 

 

「おいいいい!? 頭下げてるつもりが尻を突き出して侮辱してる様にしか見えないんだけど!? お前もう退場しろ!? 後は俺だけで良いから!」

 

 

他の奴になら効果が見られるかも、と思っての行為だ。 牛や豚も小麦を見せると寄ってきた。

これで寄ってくれば、そうだろうと思っての行為だった。

 

リムルに刀剣を矢の如く投げられた。

頭に刺さった。 テーブルから落ちる。 痛い。

 

 

「大変失礼しました。 気に入らねば刺しても構いませんので、どうぞご自由にお使いください」

「おいおい頭に刺さったよ。 流石にコレ死んだんじゃないの……って、平然と生きてる!? しかも引き抜いてナニか作業し始めた!?」

「そういう奴なんで、はい」

 

 

耐久値が低い所為か攻撃力も大して無かった。

しかしまぁ、我々の剣なら耐久値が低くなろうと攻撃力は最後まで変わらない。 だが村人製の剣は耐久値が低くなる程弱くなる様だ。 不便である。

仕方なし。 このままボロボロの刀剣を放置する気にもなれない。 創造主は鉄インゴットで耐久値を回復させていく。

元々の素材とは異なる部位もあるだろうが、取り敢えず形にした。 リムルに投げ返す。

 

 

「使える状態に直してくれたのか。 だとしてもクロベエに見せないとな」

「凄いのぅ。 やはりただの人間ではないな」

「慣れてる様子のリムルも大概よね……」

 

 

よし。 ケーキ実験再開。

もう1度先程の者の下へ向かう。

ミリムに邪魔された。

 

 

「駄目だぞ。 お前は本当の魔王バレンタインだと気付いてるからケーキを貢いでるのだろうが、本人は正体を隠しているのだ。 今の魔王が代理なのは内緒なのだぞ? だからな、そのケーキは私が貰うのだ」

「内緒話デケェ」

 

 

ミリムにケーキを奪われてしまった。

なんて事だ。 最後だったのに。

まぁ……良いか。 ミリムの笑顔を見ていると不思議と思う。

 

 

「はっ!?」

 

 

一方、ケーキを渡そうとした相手を見る。 また睨んでいた。 いや遠慮して食わない方が悪いだろうに。

 

 

「忌々しい人間め! どこまでも妾の邪魔をする!」

 

 

不思議な事が起きた。

オッドアイの彼女が白服から黒服へ装備を変えたのだ。

まぁ装備くらいなら我々も即脱着出来るから特段驚かないが。 それよりも周囲に風の様なのが起きたのが不思議だった。

 

 

「もう良い。 妾の事はバレンタインと呼ぶが良い」

「うわ……ヴァレンタインも相当なもんだったが、本物は別格だ」

「よろしいのですか、ルミナス様」

「致し方あるまい。 もはや正体を偽る事は不可能じゃ……ロイ、気になる事がある。 貴様は先に戻っておれ」

「しかしルミナス様」

「この前、貴様が追い払った……例の人間じゃなく道化の格好をした侵入者。 クレイマンの奴と何か繋がりがあるかも知れぬ。 戻って聖神殿の警備を厳重にするように伝えるのじゃ」

「───承知」

 

 

また不思議な事が起きた。

席に座っていた方が大量の蝙蝠の様になったと思えば次には消えてしまった。

やっぱ世界は楽しいなぁ。

 

 

「……しかしルミナス、ね。 ルミナス教、西方聖教会と関係があるのか? それこそヒナタと……いや。 今考えても仕方ないか」

「───魔王バレンタインの正体が明かされた後で悪いのだけど……」

「どうしたフレイ。 言ってみろ」

「今日この場を以て───私は魔王の地位を返上させてもらうわ。 そしてミリムに仕える事を認めてもらいたいの」

「ゴフゥッ!?」

 

 

ミリムよ。 折角のケーキを吹き出すな。

シズがいたら説教されているぞ。

 

 

「待つのだフレイ! ワタシはそんな話初耳だぞ!?」

「ええ。 言ってなかったもの」

「いきなりだな。 理由はなんだ?」

「理由は───……そうね。 色々あるのだけど、私は魔王としては弱過ぎると思うのよ。 さっきの戦いを見ていて確信したのだけど、私では覚醒したクレイマンに勝つ事は出来なかったでしょう」

「だがフレイよ。 有翼族であるお主の本領は大空での高速飛行戦であろう。 そこまで自分を卑下する事はないのではないか?」

「空ならば敗れなかった。 民を守れなかった時、魔王にそんな言い訳は通用しないわね。 それに、例えクレイマンの様に有利な状況を整えようと、その全てを覆す者達が相手ではどうしようも無いと知ったのよ。 だからねミリム。 私は貴女の配下につくと決めたのよ」

「だ、だが……」

 

 

満腹になったのか。

ケーキを食べる手が完全に止まる。

よし今だぞ黒服オッドアイ。 食え。

 

 

「どうかしら。 この提案を受けてくれないかしら」

「ちょっと待ってくれや。 そういう話なら俺様にも言いたい事がある。 ミリムに負けた俺が魔王を名乗り続けるのは烏滸がましいってもんだ。 だから俺も魔王の地位を返上させて貰いたい」

「ちょっと待てカリオン!? あの時のワタシはクレイマンに操られていたのだぞ? ノーカンに決まっておるではないか!!」

「ははは、てめぇさっきワタシを支配するのは無理なのだって言ってただろうが」

「言ってたな、クレイマンに……あ、お前余計な行動はもうするなよ。 これやるから大人しく遊んでなさい」

 

 

オッドアイにケーキを投げ渡そうと考えていたら、リムルに砕けた宝石の欠片群を渡された。

コレはアレだ。 ミュウランの体内にあったらしいヤツだ。

よし。 修復出来るかやってみよう。 研究すればナニかに応用出来るかも知れないし。

 

 

「本当にそれで良いのかよカリオン」

「ああ。 建前上、魔王同士は同格だが、ああまで歴然とした力の差を見せつけられたんだ。 ここは潔く軍門に下ろうと思う」

「オレはお前を気に入ってたんだぜ? 後数百年もすれば、お前も覚醒するだろうと期待してたんだがな」

「期待は有難いが、身の振り方は自分で決めるさ」

「……まぁ良いだろう。 たった今よりフレイとカリオンは魔王ではない。 ミリムに仕えたいというのなら、自分達で説き伏せるがいいさ」

「……本気なのかカリオン」

「ああ。 獣王国の王を辞めるつもりはねぇが、ミリムを上に置く新体制を築きたいと思ってな」

「良いと思うわよ。 獣王戦士団は貴女の戦力として恥じない実力だし」

「そ、そんな事言って……ワタシを騙そうとしていないか? 配下になると気軽に話してくれなくなるだろ? 一緒に遊んだり悪巧みもしてくれなくなるんだろ!?」

 

 

駄目だ。

作業台の上で欠片を組み合わせて修復は何とかしたが、使用用途が分からない。

帰ってBBに解析鑑定して貰うべきか。

 

 

「いいえ。 何時でも一緒にいられるようになるし、なんならもっと楽しい事が出来るかもよ?」

「それは……あの者達の様に?」

「……イケナイ遊びは真似しちゃダメよ」

「あの人、俺よりミリムの扱い上手いな。 ちょっと悔しい」

「そもそもお前が俺の都を吹き飛ばしたんじゃねぇか! お前にも俺達を養う義務があるんだよ!」

「こっちはごり押しする気だな……って事は今後ミリムの国との国交を考えるなら、彼らを相手に交渉する事になるのか。 手強そうだなぁ……特にフレイさん」

 

 

暇になってきたので、見渡す。

ミリムを中心にワイワイ騒いでいる。

 

 

「ええい、わかったのだ! もう勝手に好きにすればいい!」

 

 

まだまだ時間は掛かりそうだ。

また暇な時間だ。 かといって帰り道も分からない。

 

取り敢えずクラフターはリムルの側にいた。

新しい玩具を寄越してくれるかも、と思っての行為だった。




空気化していくクラフター……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。