やっと彼女の名を出せそうです。
味薄かも。
「打ち上げぇ?」
暫し。 剣のエンチャントについて妄想しているとハァンが響く。
スライムと村人だ。 またも交渉している。 何でもありだ。 羨ましくある。
「ああ。 リムルの旦那のおかげで無事に納品できたんだ。 ご馳走させてくれや」
「いいよ、そんなの。 味覚ないし」
「綺麗なお姉ちゃんも、いっぱいいるから」
「そそっ。 若い娘から熟女まで!」
「……仕方ない。 付き合ってやるか」
何処かへ案内される。 またか。 次はナニを見せてくれるというのだね。
観光ガイドがいるのは大変有難い。 クラフターは内心感謝しつつ、付いていく。 再び建物に入った。 村人に群がられた。
耳が尖っている。 綺麗な服を纏う。 胸が膨らんでいる。 また新種か。
この世界には何種類いる事か。 まだ見ぬ生物群を考えるとワクワクしてしまう。
「いらっしゃいませー!!」
喧しい。
「うっひょーーーーー!」
スライムも喧しい。
しかし魂の奥底から響かせる。 確かに内装は素晴らしい。 煌びやかだ。 参考にしたい。
「うわぁ可愛い!」
「FOOOOOOO!!」
スライムが抱かれた。
勇敢な村人だ。 何でも食うのを既に知り得ているクラフターとしては、見ていてハラハラドキドキだ。
村人が食われるのはどうでも良い。 ただ結果として村人に擬態されたら見分けが付かない。
村人は大勢いる。 森の中から1本の木を見つける行為は困難だ。
半自動釣り装置の様に、スライムホイホイなる装置は作れないものか。
「えーと……楽しんでくれてるみたいでなによりだ」
皆が席に着く。 椅子も豪華。 どうしたら作れるのか。
持って帰れないか。 駄目か。 疑問が積もる。 楽しい。 我々に対する挑戦は続く。
「いや本当、旦那には感謝してるんだ。 お陰でドワーフ王への面目が立つ」
我々も座る。 羊毛だろうか。 知れない世界を尻に敷く。
「しかし恐れいったよ。 俺の渾身の一振りが、まさか数秒で量産されちまうとはね」
「カイジンの一振りが素晴らしかったからな。 俺はそれを複製しただけだ。 あんたは最高の職人だよ、カイジン」
お酌された。 飲む。 美味い。
ポーションの一種か?
状態異常を受けた。 口内に独特の刺激。 視界が僅かに歪み、宙に浮かぶ感覚。 しかし不思議と心地良い。
「それでな旦那。 村に来ないかと誘ってくれただろ? あれなんだが……」
「あ、ママさんさっきの美味しいのおかわりもらえる? 此奴らにも同じく」
「お、おい旦那!?」
「……もう十分見返りはもらえた感じだしな」
これも作りたい。 あれも作りたい。
気分が高揚する。
飲んだからといって攻撃力が上がる気がしないが、人生に潤いを齎す。
あ。 またお酌された。 戴く。 お辞儀して礼を述べる。
「ねぇねぇスライムさん、水晶玉で占いやってみない?」
村人が球体を持ち寄る。 今度はなんだ。 エンダーパールか。
いや違う。 色もだが。 鉱物を加工した物に感じる。 建材では無い。
ツールか。 ならばどんな効力があるというのか。
「何を占ってくれるんだ?」
「そうねぇ……運命の人とか!」
「え"?」
パールモドキにナニかが映る。
子供村人複数に、左目辺りに模様が有る村人が動いている。
どう云う仕組みか。 球体の中に村人が住んでいるとは思えない。
「もしかして……爆炎の支配者、シズエ・イザワじゃねえか?」
「有名なのか?」
「ギルドの英雄だよ。 見た目は人間の若い娘さんだが何十年も活躍してたんだ。 今は引退してどっかの国で若手を育ててるんじゃなかったかな」
「英雄……いざわしずえ……井沢静江? どう考えても日本人の名前だよな」
採掘していれば、それっぽいのを見つけられるだろうか。
僅か1つ処から様々な疑問と興味が湧く。 楽し過ぎる。 休まる暇がない。
「運命の人、気になるんだ?」
「同郷者なら会ってみたいな」
カランと音がした。
また村人だ。 今度は神経質そうだ。
「おいマダム! この店は魔物の連れ込みを許すのか?」
「まずいな……大臣のベスターだ」
ツカツカ歩いて来る。 手には水の入ったガラス容器だ。
アレなら作れる。 ポーションの空瓶だ。
しかし用途は何だ。 醸造台は見当たらない。
あいや、無くても構わないが。
「ふん!」
次の瞬間。 頭上でひっくり返された。 ずぶ濡れになった。
そうか。 そういう用途か。 火薬を使わずして浴びるときた。
スプラッシュポーションみたいなものか。
「魔物を連れ込んだのはお前らだろう。 頭を冷やした方が良い……え?」
瓶を奪う。 残りを飲み干す。 やはり駄目。
浴びても飲んでも効果が無い。 ただの水。
ガッカリした。
「ま、まぁ良いでしょう。 反省したなら改める事です」
「やいベスター! なんて口の利き方だ!」
「これこれはカイジン殿。 こんな所で油を売っていて良いのですかな?」
「納品なら済んだぞ」
「え……そ、そうですか。 流石はカイジン殿ですな。 まぁそれ位出来て当然でしょう」
村人同士が揉め始めた。 新参が不利だ。 しかし何故揉めた。 水の意味なき使用に憤慨しているのか。
だとしたら悪い事をした。 水が欲しいなら作ろう。 無限水源を。
「よくも恩人の連れにケチつけやがって……ん?」
「貴方こそ誰に向かって口を……へ?」
部屋の隅に無限水源を作る。
掛け流し風にする。 既存内装に何とか合わせた。 これで満足して欲しい。
「……あー……ごめんママさん」
スライムが静寂に一石を投じた。
白けた事へ配慮された。 持つべきは友である。
「……なんだ此奴らは!?」
「俺も知りてぇよ」
「ママさん……コイツら悪気は無いんだ。 ナニ考えてるか分からないだけで」
「まぁ。 それは良いのですけれど……綺麗な物を作ってくれましたし」
微妙な空気になる。 また内装が気に入らなかったのか。 無念だ。
かと思えば苦笑される。 謎だ。 そのままにして置こう。
「此奴らをそのままにはして置けない。 連行する」
また何処かへ案内された。 素晴らしい。
いやー、ここの村人は親切心があって良い!