寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

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140.料理と風呂

 

「突然の対応、ありがとうございます」

 

 

迎賓館の厨房。

シュナとゴブイチと共に食事をクラフト中。

今は2人のクラフトを参考に、色材や雰囲気を汲み取った和食とやらを作る。

 

 

「相変わらず彼等は凄いですね。 見ただけ、少し練習しただけで新作にも追い付くとは。 建築だけでなく料理の才能もお有りの様で」

「物作りを愛する者達ですからね。 まだまだ多彩な才能を隠しているのでしょう」

 

 

この場に立つクラフターは料理好きだ。

今まで気にしなかった事にも気を遣う。

盛り付け。 色。 配膳。 組み合わせ。 産地。

料理の奥深い世界の襖を開けた瞬間、目を見開くばかりの感動の波が止まらない。

かつて効率と満腹にばかり傾倒していた頃が懐かしい。 これもシュナやゴブイチ達との出会いあってこそ。

ありがとう料理。 ありがとう世界。

この出会いに感謝を。 我々は今日も生きている。

 

 

「ところでシュナ様」

「分かりません」

「まだ何も言ってませんよ!?」

「当てましょう。 彼等の釜戸が自動で火加減調整してくれる謎。 調理器具使わずに、それも材料を作業台に揃えた次の瞬間には料理が仕上がる謎とか」

「流石ですシュナ様」

「正直複雑ですね。 私達の苦労が蔑ろにされている気分にもなります」

 

 

料理や美食は堕落とさえ考えていた時期もあった。

大変な割に満腹値が高くなかったり、ストックが出来なかったり非効率だからだ。

だがそれは大きな間違いだった。

地下労働の果てに得た宝石が美しく輝く様に、苦労の果てに生み出される料理は価値があるのだ。

それも釜戸に放り込めば勝手に出来上がるベイクドポテトや焼肉とは次元が違う。

ケーキやウサギシチューの様に、何種類もの材料を消費し、やっと1つの料理がクラフトされる。

それも自ら完成形を考案し、研磨し、味のみならず見た目も気にする。 その為、同じ材料でも全く異なる料理が生まれる事すらあるのだ。

これは戦い……そう。 戦いだ。

果て無き戦いにクラフターは挑戦し続ける。

 

 

「ですが彼等も相応に苦労していますよ」

 

 

パクつきたいのを堪えつつ、天麩羅を鍋から引き揚げる!

 

 

「箸使いなさい箸を!」

「ステラには見せられない……」

 

 

だがそこに価値がある。

この天麩羅は他の天麩羅より美味い筈だ。

 

 

「ひょっとして箸の使い方が?」

「いえ。 シズ様に教えて貰っている筈ですが」

「忘れているのでしょうか」

 

 

この作業をひたすら繰り返すだけでもセルフ拷問であるが、耐えた先に見える光景もまた美しい。

黄金色に輝く天麩羅が、机いっぱいに並べられていく。 広大な小麦畑とは異なる感動に涙腺が緩む。

 

 

「泣くほど苦労しなくても……ですが頑張りましたね。 それは認めてあげます。 次は箸を使いましょうね、絶対に」

「えーと、これで皆の分は出来ましたから大丈夫です」

「ごはんの方は?」

「炊き上がっています。 先行して彼等がお酒やツマミを運んでくれてますから、其方も出来上がっている筈です」

「それも彼等が作ってくれたものですね。 私達も負けていられませんよ」

「はいシュナ様!」

 

 

クラフターは配膳するシュナとゴブイチの背中を笑顔で見届けると真っ白に燃え尽きた。

体力は瀕死。 空腹状態。

だがその極限状態が最高のスパイス。

クラフターは出来立ての天麩羅を齧る。

 

美味い……ッ!

 

建物の完成とは違う感動がここにある!

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

勧誘の為に酒を振る舞い、食事を用意し、大部屋に色とりどりのベッドを用意。

村人メイクの方は敷布団なるものや浴衣が用意されていた。 アレも興味深い。 やはり村人のクラフトは学ぶべき点が数多ある。

 

 

「ベッドは分かります。 そういう文化だと。 ですが何故彼等は釜戸や作業台も置くのですか?」

「そういう文化なんじゃないスか?」

 

 

廊下に出ると、露天風呂とやらに向かうシズとヒナタを見かけ首を傾げる。

露天風呂は湯気昇る大池だ。 景観を意識した作りは非常に素晴らしい。

だが実用性は分からない。 肩まで浸かる「裸の付き合い」をする場所と聞くものの。

そしてシズとヒナタは師弟関係とも聞く。

 

これは……成る程、そういう事か!

 

露天風呂とは防具無しの訓練場なのだ!

水を張っているのは、湿地帯等での戦闘を想定している。 動きを制限し鍛える為に。

そう考え剣を装備し突撃。 我も混ぜろ。

 

悲鳴を上げられた。 ドッキリした。

 

 

「"クラフター"さん、混浴じゃないよ? ここ女湯だよ?」

「男女双方で入れば許される訳じゃない。 というか風呂場に剣を持ち込むなんてね……やはり私達の知らない文化圏の人なのかしら」

「カバル達に覗きをされた事はあるけど、こうも堂々されると対応に困るかな」

「魔法で処刑しましょう」

「私はもう炎の力は使えないけど……少しお仕置きが必要かな?」

 

 

何故か黒い笑みを浮かべられた。

これが分からない。 いや、分かる。

2人して我々に挑んで来たのだ。 剣もなしに。

これは我々に対する挑発だ。 お前らなんか拳ひとつで十分だと。

上等だ。 クラフターは剣をしまう。 当然鎧も脱ぐ。 敢えて挑発に乗ってやる。 だが同じ土俵に立たせて貰う。 拳での戦闘は久し振りだが出来ない事はない。

腕を振る。 さぁ来い。 お前達の腕を見せてみろ。

 

 

「先生、コレ殺っても構いませんか?」

「待って。 何か勘違いが起きてる気が……」

 

 

シズ困惑。 ヒナタ喧嘩腰。

そこにスライム形態のリムルが乱入してくる。

 

 

「お前らナニしてんだーッ!?」

 

 

怒声と体当たりを浴びせられ、ドボンと湯に沈められるクラフター。

相変わらず良いノックバックだ。

 

 

「お前らの事だ! 覗きじゃないんだろうがロクなモンじゃないだろどうせ! まさか風呂技師が学びに来た訳でもないだろうし!」

「リムル……前世の性別は?」

「へっ? あ、いや!? そんなつもりは!」

「スライムに性別はないにせよ、やはり同郷となると少し気になるな……?」

「……"ボク"は悪いスライムじゃないヨ?」

「出てけ……ッ! そして風呂上がりに牛乳をバケツいっぱい飲ませてやろう……! 同郷だからな、日本の銭湯を思い出すだろ?」

「遠慮しますっ!?」

 

 

リムルが追い出された。

シズもだがヒナタも強い。 さすが師弟。

 

 

「お前達もだ! 服を着たままいつまでも湯に浸かるな、野蛮人め!」

 

 

平手打ちされた。 頬より心が痛かった。

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