「───教会側が非を認めるんだな?」
同志と娘の地下騒動を収めたリムルが会談を継続する。 その頃にはクラフターも準備が出来ていた。
「じゃあ賠償についてなんだけど……」
「済まない、その点について言っておく事がある」
ひと通りのツールを作れる木材を用意。
レシピを教える。 これを知らねばクラフターとはいえず、生き残れない。
逆に知れば生き残る事が出来よう。 ベッドを確保出来ないのは良くある事にせよ、空腹の瀕死でゾンビの如く徘徊する事態は避けられる筈だ。
「今回の件、本国のルベリオスは関係ない話になると思ってくれ」
「説明を」
ツールを作る以外にも、仮拠点も必要だ。
食べ物もだ。 小麦はその辺の草を刈れば種が、動物を狩れば肉が。
釣竿をクラフトすれば水から魚が釣れる。
だがそう都合良く環境と素材が得られる保証は無い。 最悪はゾンビをアテにする。
「───ヒナタ達を最悪切り捨てる?」
「……そんな」
「私を筆頭に、騎士団の暴走だって事にすれば簡単ね。 何らかの賠償問題になっても私を切って話は御終いになるだけよ」
「色々ややこしい組織と関係なんだな」
「用意周到でしょ?」
「尻尾を切られた気分だよ。 だがまぁ、今は教会に対してのみ納得しておく」
「もし行く宛が無ければ、また一緒に……」
纏めて教育だ。
ベテランを見ると、いきなり建築に走りたくなる衝動は確かにある。
だが先ずはサバイバル。 基本を学んでから様々な分野に手を出していく。
必ずとは云わないが、知り得てから行動するのでも遅くはない。
「申し出は大変有難いのですが、先ずは教会に戻ろうかと思います」
「大丈夫?」
「幸い死者は出ていません。 それに、私達が生きて戻れば、テンペストを認めさせる材料としては有用です。 生かされた事で邪悪ではないと判断出来ます。 問題は教義の扱いですが……」
1番大切なのは楽しむ事だ。
サバイバルにせよ、建築にせよ。
これを忘れなければ、クラフトを楽しみ世界を楽しみ、延いては人生が楽しめる事に繋がる。
「ならさ、この国の者は悪しき者ではなかったと発表するのは? ここの住民の多くは驚くほど人に近いし。 コイツらなんて人そのものだし……見た目だけは」
リムルよ。 そんな目はいけない。
楽しめ。 クラフターだろう!
「……そうね。 亜人であると全体的に認め、ドワーフと同様に扱う様に働きかける。 そうすれば一定の理解は得られる可能性はある」
「一応の落としどころを見出せたな。 じゃあ教会に対しての賠償に戻るけど、定期的な交流をする事」
再びヒナタと鳴き合うリムル。
そうだ。 我らマルチクラフター。 ならではの楽しみ方を楽しむが良い。
「金品じゃないの?」
「正直、信頼の方が欲しいからな。 特にコイツらの所為で、他国から冷たい視線に晒されてるから。 少しでも温かな信頼を得たいの分かって?」
「本当、苦労してる」
「ははは……」
「じゃあ話終わり! シズさんとの再会もあるし、宴会を楽しんでくれ! 酒は勿論、天麩羅や白米、刺身もあるぞ!」
「豪華だね」
「……もはや同郷である事は疑っていない。 驚きを通り越して呆れてくる程に……この環境をたった2年程で作るなんて凄い話よ」
「そうだな凄いな! 摩天楼や都市全体はコイツらが作ったんだけどね!?」
「なんで怒り口調なのよ」
「ま、まぁまぁリムル」
そうだ。 騒げ。 笑い合え。
それもまた、楽しみ方のひとつだ。
そしてこの後は飯が待っている!
「遣りすぎると天使に攻撃されそうなのに」
「天使?」
「知らないの? 500年に1度、天使が発展した町を標的に攻撃、破壊してくる話」
「ラミリスがチラッと言っていたような……天魔大戦?」
「知っているじゃない」
「……忘れてたよ。 コイツらのクレーム処理に追われる日々だから」
「今日は終わりましょう? 食べて飲んで寝ちゃおう! うん!」
「そうだな、もう酒に呑まれたい気分」
「……付き合ってあげる」
天麩羅、米、刺身……どれも美味かった!