「聖騎士はヒナタ含め連絡役以外は帰還、シズさんもユウキに怪しまれない内に学園に帰った。 後はヒューズにも警戒するよう連絡し終えた。 ファルムス攻略はクロに任せてヨシとして、今は闘技企画を進めなきゃ、か」
ゲルドを筆頭に大規模建設……闘技場建設が始まったから、クラフターは嬉々として腕を振るう。
辛辣同志に通訳して貰いつつ、協力しつつの建築でいて尚、興に乗る。 リムル達が書類や本と睨んでブツブツ言っているのは気にもしない。 いつもの事だ。
シズやヒナタが帰ったのは残念だが、地下鉄に大層驚いてくれたからヨシとする。
……シズの暗黒微笑だけは良くないが。
「ジュラの大森林が領土になった関係で、住う魔物の挨拶対応……これは、まぁ良いとして……」
「挨拶してくる者達もですが、闘技を観戦する者、参加する者、方々からの受け入れの準備をしなければなりませんな」
「頼むよリグルド。 建築物は得意なアイツらとゲルド達に頼んでいるから……部下達の話がここまで膨らむとは思ってなかったけど、タダで転ぶつもりはない。 寧ろコイツらの存在が1番の問題。 この際だから精々利用してやるくらいの気持ちだけど……!」
「ははは……」
首都郊外をスコップやツルハシ、斧を振り回して整地。 円形の外壁を石ハーフブロックで組み上げる。
内部は摺鉢状にし、窪んだ中央を囲む様に階段ブロックを敷き詰める。 椅子にするのだ。
特別な席、部屋は豪華にする予定だが、今は基礎だ。 ゲルド達は細かな部分や設備工事、建造物周辺の道整備などをしている。 余裕が生まれたら手伝う。
「この際だ、通訳してくれないか」
「ゲルドさん、どうしましたか?」
「植林場を現場に作ってくれたのは有難いんだが、どうして一瞬で生えるんだ? しかも中間を切っても倒れないのは何故だ? 彼等は中間や根元を切った後、宙に浮く残りを上向きに切っているが……葉に対しては上に乗ったり鋏で伐採し回収する者もいる。 苗木が落ちてくるのも謎だが、種類によっては林檎が落ちてくるのも謎だ」
「そういうものだから、としか答えないと思いますよ。 私もですが」
「受け入れる他ないのか……」
大規模工事でいえば、魔導王朝サリオンへの街道整備も発生している。
ひたすら石ハーフ等を敷く長距離工事であるが、開通した時の達成感と光景を味わう為に同志が頑張っている。
村人から見たら苦行なんてレベルじゃないらしいが、我々は作るのが生き甲斐だ。 空の下、楽しくやらせて貰っている。 座標計算も。 なに、地下鉄と比べたら明るい話だ。 堂々作れる。 この喜びを味わえる。
資源となる石等を地下や山で掘採し、それを用いて建造物や道を作る。
マインクラフト万歳。
ツルハシ、スコップ、斧。 どれが楽しいかな?
「あああ……森が! 管理が! 生態系が!」
「大変、お姉様が発狂してます!」
「おいたわしや姉様」
「ドライアドのトレイニーさんがまた……開拓に犠牲は必要とはいえ……」
「ヴェルドラ様に顔向け出来ません(泣)!」
離れで植物村人達が騒いでいる。
そうか。 泣くほど開通が楽しみか!
物作りに携わる端くれとしては、応援や期待を受け、創造物が利用される事は喜ばしい。
クラフターは不思議と腕が軽くなる。 更に森を切り拓いた。 道をどんどん切り拓こう!
単調作業に集中していると心が洗われる。
道の端には白樺を生やし整えた。
いやぁ。 楽しいなぁ……。
「いやぁああ!? 木が、森が、白く! 白樺に染まっていくぅ…………」
「ドライアド様が気絶したあああッ!?」
ゲルド麾下のみならず、傀儡国から来た元奴隷や捕虜……作業員まで騒がしい。
振り返れば植物村人が倒れていた。 奇絶である。 なら仕方ないね、と思った。
だが歴戦のクラフターは慌てない。 牛乳バケツを口に詰めとけば大抵解決するのを、この世界で学んだから。
「ゴポッ、ゴポポポポポッ!?」
「本人まで白く染められていくぅう!?」
飲め。 そして楽になれ。
吐くな。 飲め。 もっと口を開けろ。
全く。 飲ませ難くて適わん。 スプラッシュポーションにクラフト出来ないものか。
「白樺……白いの怖いの……」
「お願いです! もうやめてあげて下さい!」
「どうか! どうか御慈悲を!」
別の植物村人に頭を下げられたので、此方も下げる。 礼儀正しい者は好印象だ。
クラフターは頷く。
その気持ちを忘れてはならない。
マルチにおいて必ずしも同調する必要はないが礼節を大切に。 人を助ければ、助けられる機会もあるだろう。 損得勘定で考えるなら未来への投資だと思う。
「ナニしてんですか。 白樺で森を侵すなって事です」
辛辣同志にツッコミされた。
だがクラフターは首を傾げる。 白樺は成長が早く複雑に枝分かれしないから、伐採に適しているのに。
いや分かった。 白一色なのが問題なのだ。 植林場ならまだしも、という事だ。 違う苗木を植えよう(枯木は除く)。
「もうそれで良いです」
早速4つ固めて植えて骨粉を撒く。
ジャングルの木を生やした。
巨木。 デカい。 御立派。 映える。
辛辣同志。 コイツを見てどう思う?
「なんでデカいのを!?」
いや、生えた。
「嘘乙! 4つ固めるやり方はもう狙ってるじゃねーですか! 私だってクラフターですよ舐めないで下さい!?」
チッ。 バレたか。
仕方なし。 ダークオーク(黒樫)を生やす。
「それは4つ固めないと成長しない特殊な木……私もう疲れました。 遊んでないで建設は進めて下さいね……」
しまった。
クラフター、クラフトの中でクラフトを忘れた。
本望を忘れる失態を猛省。 再びツルハシを取るとブンブン振るう。 石ハーフを敷設する。
「白い……ふふふっ……道まで白い……」
「しっかりお姉さま! あそこをご覧下さい、別の木が生やされ始めましたよ!?」
「樫や松があります! なんか本来森にない木もありますが、白くないです! 寧ろ黒い感じです!」
「あら本当ですね……心が清らかな黒に染まる様で癒されます……」
「清らかな黒ってナニ!?」
「目の光が失われていってますよぉお!?」
グロウストーンと木フェンスを併用した街灯を一定間隔で製作しつつ、道路工事は進められた。 暇があれば傍に植木をする。 松明も忘れない。 だが目に付く所、光量補填箇所はグロウストーン埋め込み式とした。
「何故、道を作るだけで大騒ぎになるのか」
「その疑問はたった一言で解決します。 アイツらがクラフターだから、です」
「我々が達せない領域か」
「逆に達しないで下さい。 アイツらは今回、社会貢献しているだけマシですが……普段は好きな事だけやって好きな物を好きなだけ作って、好きな様に生きていますからね。 感謝より怨みが募っても仕方がないレベルで」
「リムル様の心情が察せられる……」
一方で都市郊外、闘技場もみるみる進む。
戦闘見物をする施設と聞いているので、外壁や床は三重構造にした。
黒曜石をサンドするように内外を化粧ブロックで覆っている。 実用性のみならず見た目も気にしてこそクラフターだ。
「おーい、仕様変更を頼みたいんだけど」
リムルが来た。
どうだ見ろ。 外壁は終えた。 後は内側だ。
「いやぁ心苦しいんだけど通訳してくんない? ちょいと大きく直すだけだけど。 お前らなら仕様変更も楽勝だろ、じゃあヨロシク!」
「───だそうです」
なん……だと?
この広さに合わせた外壁を造ったのに!
大規模建設の手直しとか、どれだけ大変だと思っているのか。 ましてや黒曜石。 これを撤去するだけで時間が掛かるのに。
「そう荒ぶるなよ、普段馬鹿みたいに作ってるんだから良いだろうに」
久し振りにキレちまったクラフターは、思わず手が滑る。 飛んでいったは弾丸だ。
「恐ろしい早撃ち、俺じゃなきゃ見逃せないね」
リムルの眉間を貫通して後頭部から抜けていく。
スライム野郎は平然としている。 どうやら拳銃は効果がない様だ。
「てか、なんで拳銃持ち歩いてるの?」
「コイツらにとって新アイテムですからね。 いつ何時でも実験出来る様にしたいのでしょう」
「物騒過ぎるだろ。 今更だけど」
次は戦車をぶつけよう。 ただぶつけた結果は既に得ているから、エンチャントを施したモノを。
「まぁでも……この現場とのやり取り、前世を思い出すなぁ。 背広側だったけど。 そして発砲された事はないけど!」
「……平和な国だったのでしょうね。 ですがこの国、というより世界は危険ですよ」
「……流石に言い過ぎたよ。 だがお前らだからこそ頼めるんだ。 普段はアレだけどな」
「───だそうです」
急にやる気が出てきたので頑張ります!
効率強化エンチャントを施された気分。 近くにビーコンがあるかの様だ!
「手の平クルクルしてんな」
「頭はクルクルパーですよ」
「通訳ちゃん容赦ないね……」
外壁を改変していく。
マルチクラフトなのもあり、早く進んだ。
「話変わるけど、打ち上げの方はどう?」
「……宴会?」
「それもあるが宇宙関連」
「ロケットを作り始めました。 載せる物はアイツらの1人で良いかなと。 死んでも構いませんし」
「何故だろう、叱る気が起きない」
「永遠の宇宙旅行をプレゼントするのでも、空中で汚い花火になるのも希少な記録です。 特に打ち上げ第1号だと聞けば、ヤツら馬鹿なんで喜んで犠牲になってくれるでしょう」
「その話、ベスターに?」
「既に」
「あ、そう……まぁ良いと思うよ? 打ち上げ場所や計画の詳細はちゃんと教えてね。 あとアイツらが死んでも責任取らないから」
「構いません」
「でも無関係者は巻き込むなよ」
「勿論です」
「ヨシ!」
良くないぞ。 闘技場の話だ。
ただの摺鉢状の建物。 美しさこそ意識したものの、面白味に欠けるのではないか。
ここは創意工夫が必要。 闘技場である事を利用し、中央部に注水して水上戦が出来る様にしてみる。 床や観客席の間に水路を設け、スイッチによるディスペンサー操作で水が中央部に流される仕様にしてみた。 丁度高低差も良い塩梅だ。 水バケツも想像より多く要らない。
ついでに中身を切り替える事で花火を上げるのも乙である。 取り敢えず試験的に上手くいくか確認。 ヨシ。
「こ、これは……」
「どうしたゲルド」
「彼等が仕様にない事を」
「水が流れる様にしたのか。 花火も上がってる、また勝手な真似を……いやでもコレはコレでアリだな」
「宜しいので?」
「面白いから許す! そうか、やっぱアイツらは……妬ましい」
「リムル様?」
「気にするな。 時々休めよ?」
「はっ……リムル様も」
ボートを用意しろ。 水は用意した。
食い物はゴブイチ、ミョルマイルや他の者が手配すると聞く。 我々も多少出すが、その分野に於いては後れをとっている。
我々の馴染み食糧、ベイクドポテトやスイカじゃラーメンやハンバーガー等に対抗出来ない。 他にも餃子、天麩羅……料理の幅も味も大差ある。 比較するのも烏滸がましい。 そして妬ましい。
料理研究している同志もいるが、本家には未だ敵わない。 建物にしても張り合うには更なる努力が必要だ。
……腹減った。 ベイクドポテトをパクつく。
「アイツらも休憩か? 空なんか見上げて」
「そうじゃね? ふかし芋食ってるし」
だがそんな苦難もクラフターは愛した。
ドンと来い。 上手くいったら詰まらない。
上手くいかない事を思う様にするのが開拓であり、生きた証を打ち立てるのが建築だ。
今もそうして生きていく。 他者に理解されずとも、自己満足であろうとも、人生に意味を持たせ、楽しければそれで良い。 それが行き着く答えである。
自己肯定し莞爾として頷いた。
クラフターはツルハシを再度振るう。 甲斐と達成、他にも作りたい事が山ほどある。
「早いな、また作業始めたぞ」
「良く楽しそうにやれるよなぁ。 俺達なんて捕虜だし、敵国の為にやる気なんか……」
「今更なんだ。 何かを残す、その意味をアイツらから教えられている気がする」
「そうなのか?」
「もう少し頑張るか」
「……仕方ねぇな、やってやんよ」
近くの作業員もツルハシを振るう。
そうだ。 そうしなさい。
クラフターは大歓迎だ。 その点、シズとヒナタにツルハシを渡しそびれている。 失念していた。
「彼等のお陰で、捕虜の者達もやる気を見せています。 リムル様はコレを見越して?」
「えっ? あー……そんなとこだな!」
「流石ですな!」
暫くすると、いつかの羽虫までやってきた。
思えばクラフターの雰囲気もなくは無い。 我々の熱意に釣られてやってきたか。 歓迎する。
「だから〜! この場所はアタシ達が占拠したって言ってるでしょ!」
「そうは言っても、此方もそれを認める事は出来ないのだ。 今リムル様にお伺いをたてるから、暫く待って頂きたい」
「ヤダ! だってアタシ達、前の迷宮を例の人間達に譲渡してこっちに来てるんだよ!? アンタ、そんな行く先の無いアタシ達を追い出そうってワケ?」
「そうは言ってないでしょう。 ともかく、コソっと彼等のチェストを漁ろうとするのはやめて下さい」
「チッ。 目敏いわね! アンタ、そんな細かい事言ってると、ウチのベレッタが黙ってないヴァッ!?」
叩き落とす。 チェストを漁った罪だ。
前言撤回。 羽虫を歓迎出来ない。 盗難は重罪。
気持ちは分かるが。
スポナー部屋や廃坑のチェストのみならず、村のチェストも村人の目の前で堂々開けるクラフターである。 俺の物は俺の物。 お前の物も俺の物なので。
……やはり羽虫もクラフターであった。
「いてて……暴力反対ッ!」
「今度は何事……って、ラミリスじゃねぇか。 何やってんの、お前」
「や、やっほ〜! 元気だったリムル?」
「……ははぁ。 こっちに引越して迷宮創ろうとしたな?」
だとしても認める訳にはいかない。
村人相手なら兎も角、クラフター同士は御法度。
相手によっては問答無用に八裂きにされていた事だろう。
これはトラップチェストの導入を検討か。
「え……いや、そんな事、無い……と、思うような、思わないような、そんな感じ……かな?」
「つまり正解って事か。 お前なぁ」
「あは、あははは……」
「そんなラミリスに良き物件を紹介致しましょう」
「えっマジ?」
「都市の地下を紹介しようと思っていてね? アイツらが造った地下空間があるんだ」
「案内しなさい!」
リムルが怪しく、羽虫を誘導。
ミリムの件もある。 不安になりついて行けば、案の定だった。
「ようこそ、魔都の地下都市へ。 機龍の格納庫もあるぞ!」
「おお!」
「最近はロケット作りまでしている」
そこはジオフロント。 憤慨するクラフター。
ミリムの一件で懲りなかったのか。 他人の創造物をぞんざいに扱い過ぎだ。
ビル崩壊……何徹もして修理した悪夢が今蘇る。
「色々気になるけど、ここは既に空き地が無いっていうか、例の人間の縄張りみたいで怖いし……別の場所無い?」
「チッ、アイツらに嫌がらせが出来そうだったんだが……まぁでも生活基盤を作るところからだよな。 闘技場の近くに迷宮を作るのはどうだ?」
「といいますと?」
どうも暴れる様子がない。
だが警戒しよう。 もし羽虫が住み着く様なら害虫指定不可避である。
最悪は殲滅だ。 ミリムの2の舞、3の舞は勘弁願いたいのだ。
「闘技場は娯楽や力比べの場としてだけでなく、商売、人寄せをする目的がある。 だが毎日するものじゃない。 じゃあ毎日やっても良さそうなもの……地下迷宮があってその攻略を冒険者に呼び掛ける、とか」
「具体的には?」
「迷宮をラミリス主導で創ってもらい、その管理運営を任せる。 で俺達は迷宮に向かう冒険者の懐から利益を得る。 そしてラミリスは迷宮と仕事、そして俺から小遣いを得られるという寸法。 お互い協力が必要なアイディアだが、どうだ?」
「え!? って事は此処に迷宮創ってイイって事!? しかも無職の引き篭もりという不名誉な現状を打破出来る!?」
そうでもなさそうだ。
嬉々としている。 通訳が今いないから内容は不明なれど、何故か我々までワクワクする。
間違いない。 クラフト話だ。
「あ、あのぅ……アタシに小遣いって、本当に本当なの?」
「マジだよ。 ただどれくらい利益が出るか判らないけど。 まぁ経費だなんだと色々掛かるから、それを差し引いて出た利益の20%でどうよ?」
「それって、どれくらいになりそうなのさ?」
「そうだな、1日1000人くらいの冒険者が来るとして、お前の取り分は金貨2枚位じゃないか?」
「げぇえ!? そんな大金が貰えるでありますか!?」
「あくまでも予想だし、上手くいくかどうか判らない。 でも住み着くつもりなら、お前に損は無いんじゃないの?」
クラフターが増え、創造物が増え。
素晴らしい。 クラフトは広がリング。
ウェルカム、マインクラフトの世界へ。
「なんならコイツらを手伝わすよ。 物作りに関しては並々ならぬ連中だぞ?」
「……厄介払いしようとしてない?」
「やだなぁ、そんな訳ないじゃん」
「本音は?」
「その通り」
「ちょい!?」
「でも真面目な話、連邦に住むという事はコイツらがより身近になるって事だ。 早めに慣れた方が良い」
「うわー、松明だらけにされて面倒が増えそう」
「松明如きで面倒だって言ってたら生きていけないぞ。 この後、君の元部下に挨拶しにいってあげた方が良い。 目のハイライトを消して絶望してるから」
「は?」
「トレイニーさんと妹さん達だよ」
「トレイニーちゃん!?」
慌しい羽虫だ。 今度は地上に飛んでいく。
そこには植物村人がいる。 ダークオークや松の木にブツブツ鳴いていた。
よく分からない事をするものだ。 伐採したいならすれば良いのに。
そして生やしたいものを生やせ。 この村人は骨粉もナシに木を急成長させる事が出来る。
「ふふふ……森が白黒しています……」
「トレイニーちゃん、どうしちゃったのさ!?」
「ラミリス様……お久しぶりでございます。 例の人間達に森の管理者の座を奪われてしまいまして。 今や森は白樺と偶に黒の……」
「リムル! なんとかしなさいよ! トレイニーちゃん可哀想じゃない!」
「何とかしてきたさ。 結果はコレだよ。 取り敢えずポテチ食わせとけば回復するから大丈夫」
「扱い雑過ぎッ!?」
「ラミリスも食うか?」
「戴く!」
まぁ好きにするが良い。
クラフターの数だけ考えがある。 自己流を強制しないし、否定もしない。
羽虫と鳴き合い始めたのを見ると、知恵を合わせている様に見える。 それもまたヨシ。 マルチ故の発展に期待する。
「───迷宮は闘技場の近くに創る事にするわ。 案があれば言って頂戴」
「トラップや魔物は欠かせないよなぁ。 その辺大丈夫そう?」
「魔素があれば勝手に湧いて住み着くよ。 トラップは複雑でなければ作れる」
「どうせなら凶悪にしようぜ? 爆発する宝箱とか首と胴体がお別れしちゃうヤバイ系とか! 試験はコイツらにヤらせよう、死んでも問題ないからな!」
「……よっぽど溜まってるのね」
「いっそ地形生み出そうぜ!」
此方も山程やりたい事がある様に、向こうもあるのだ。 良い事だと思う。
「ムリムリ生めない! そんなエネルギー維持出来ないよ!」
「ムリは嘘吐きの言葉だァッ!」
無理しない事だ。
あるのは大規模建築に挑んだは良いが、途中で意欲が尽きて建設放置。 未完成の建物が鎮座する事態。 或いは妥協しての粗悪品が生まれる事態である。
「やらずしてどうする! それとも迷宮妖精兼魔王様が出来ないとでも?」
「ダメなものはダメなんだって! そもそも魔素だってどうするのさ! 低濃度を浅い階層だけに広げるなら兎も角、深い階層まで考えると問題あるよ! その時はアンタが魔素放出するなり手伝いなさいよ!」
「くっ! ヴェルドラがいてくれたなら! 流石にまだ無理か!?」
「諦めなさい」
「いやまだだ! 癪だがコイツらに相談するぞ! 通訳ちゃーん!」
リムルがハァンと鳴くと、辛辣同志が駆けて来た。 ナニか。 我々に伝える事があるのか。 また仕様変更なら、今度はエンチャント戦車をぶつける。 ネザライトの剣も可。
「はいはい、どうしました?」
「コイツらに火山地帯とか創らせる事って出来るかな?」
「たぶん」
「マジで!?」
「聞いてみましょう」
バイオームを再現出来るか聞かれたから、なんちゃってバイオームなら出来ると答えた。
火山はネザーをイメージすれば良いだろうか。
溶岩バケツを大量に用意すればイける。
雪原は雪を掻き集めれば出来るだろう。
珍稀なキノコバイオームもキノコや菌糸を用意すれば、それとなく再現出来よう。
「だそうです」
「うーん……でも流石に温度や自然を感じさせるモノまでは難しいか」
「残念ですが」
なんだ。 答えたのに不満な顔をされた。
ムーシュルームを見せようと思ったのに。
あのキノコが生えた牛はキノコバイオーム特有の希少生物で、その有用性も高い。 ボウルで乳搾りすればキノコシチューが取り放題。 飢える事がなくなる。
悪戯で殺害したり、キノコを鋏で採取、ただの牛にしなければ良い。
「なら竜を連れて来るのだ!」
懐かしくも聞きたく無い声が聞こえた。
渋々振り返り現実を確認。 やはりミリムだ。
「え? 何で此処にいるの?」
笑顔満開ピンキーストーム。
ジト目全開クラフター。
またナニか破壊する気だろう。 させない。 ワルプルギスの時と異なり、今の我々の装備はひと味もふた味も違う。
銃や戦車を試す。 ネザライトの剣は有望。
「フフン。 何やら面白そうな事をしておる様な気がしてな。 ワタシを除け者にするとは、いい度胸だな」
「いやスマン。 除け者にしたつもりは無いよ。 出来たら招待するつもりだったし」
「そうなのか? だがこういうのは計画の内から参加するのが面白そうだ」
「まぁ、そうかも。 ところでお前の国は大丈夫なの?」
エンダーチェスト、作業台に触れ始める創造主。
武器の選別……ッ! 吟味開始……ッ!
頭では目紛しいOSIOKI計画……ッ!
クラフターの目、殺る気スイッチオン!
その色は出力中RSの如く紅い。
荒らし許さん慈悲は無い。
「まぁ、な。 ワタシは優秀だから……決して、勉強が嫌で逃げて来たワケじゃないの、ダァーーッ!!?」
「ミリムーッ!?」
鉄から即席戦車(エンチャント付加)をクラフト、主砲で吹き飛ばす。
間髪入れず戦車上部に取り付けてある機関銃を砂埃に向けて撃ちまくる。 他の者も倣う様に携行拳銃を乱射。 瞬時に弾幕を形成させつつ、負傷スプラッシュポーションを投げまくる。 動きを封じた隙に光の矢を放ち位置をマーキング。 障害物越しでも見える様すると、狙撃したり地面を掘り進んで足元を掬う様に剣で攻撃。 そのままTNTをギッシリ詰めた地面の中に引き摺り落とし着火。 地面を盛り上げる大爆発の中に沈めた。
「なんて事してくれてんだーッ!?」
「ちょ、ちょっとミリム大丈夫!?」
全て刹那の出来事。
インベントリやスロットから即座に召喚ないし、装備・展開可能なクラフターだからこそ出来る荒技である。
村人だったら、こうはいかないだろう。
だがここまでやってもミリムを倒せない。 諦観に似たものも感じている。
「けほっ……また面白い物を作ったのだな! お前達といると飽きないのだ!」
ほらね?
笑顔満開ミリムが砂埃の中、起き上がる。
「ミリム、怒って良いぞ。 少なくとも俺は怒りたい。 地上に馬鹿デカい大穴開けやがったからな!?」
「瞬時に埋め立てられるんでしょうけどね」
「そうだな……って、ミリムごと埋め立てようとするんじゃねぇ!?」
溶岩を流し込みつつ、後は普通に土で埋めていく。 普通に脱出された。
駄目か。 だが何故かネザライトを試す気になれなかった。 それは最後の手段だからだろうか。
「大きな爆音がしたので駆け付けました!」
「何事ッスかリムル様!」
「ああ、リグルにゴブタ。 見ての通りだ。 ミリムとアイツらが戯れ合っただけだよ」
「戯れ合いで……さすが魔王様といいますか」
「この人達も命知らずッスよね……」
また別の手段を考えよう。
今は整地と建設、そして頼まれるであろう迷宮創りの手伝いだ。
面白い事は続く。 剣よりツルハシとスコップの手は止まらない。
忘れ去られている様な人物もいる気がしますが……。
たぶん大丈夫でしょう(殴。