リムルと喧嘩。 日頃のストレスで再び衝突。
大抵はクラフターが悪いのです。
進めなきゃですが、進まない感……。
「大森林に住まう魔物達への挨拶、疲れるよ」
リムルがゲンナリしているのは恒例だから、クラフターは気にも留めない。
それより闘技場と迷宮細部の設備工事と試験運用に注力している。
特に迷宮は手伝っているだけで楽しい。 元々ダンジョンやアスレチック製作の経験があるクラフターだ。
罠の設置は勿論、褒美となる宝石やツールをチェストに入れるのも忘れない。
細かな事は辛辣同志通訳の下、羽虫ことラミリスと相談しつつ楽しんでいる。
「疲れてるのは、お前らの所為もあるんだからな!? 特に上位種族絡み! 100年くらい戦争と掠奪行為をしてきたっていう牛頭族(ゴズ)と馬頭族(メズ)をシメてたのは許すけど、長鼻族(テング)からの苦情は非があるぞ!」
喚くスライムを無視。 迷宮にトラップチェストを仕掛ける。 TNTを組み合わせ、開けたら爆発する様にしてみた。
なんちゃってバイオームもクラフト中。 途中の階層にはセーフハウスも造る。
内装は釜戸、作業台、共用チェスト、ベッドといった拠点セットだ。 食糧も置く。
見た目も拘る。 雪原ゾーンならカマクラだ。 ジャングルならツリーハウス。 砂漠は砂岩の家。
「テングの代表で、モミジという娘が挨拶に来たんだよ。 テングといっても鼻は普通で、少し肌が赤いくらいの。 山に住んでいるけど、山の鉱物資源採掘や、既に住んでいる者は構わないって話をされた。 だけど、それ以上は傲慢な態度で不干渉を望んできた。 俺らの庇護は要らないって。 だがそれも最初の話!」
ラミリスによる魔法も加わり、10階層毎にポータルも設けられた。 入ると100階層構造迷宮の内、95階層に飛ばされる。
この階層には休憩所となる森を基調とした町を創った。 住民は植物村人や羽虫仲間等だ。 取引も出来る。 緑に溢れていて気持ちが良い。 此処で存分に休んで装備を整えてから再出発して貰いたい。 ただし96階層へは、ちゃんと進んで来た者にしか行けない仕様になっている。 この辺も魔法。 不思議だ。
……尚、我々が地上開拓を進めた所為で、棲家を追われた森の住民達の避難所にもなっているらしい。
だがクラフターにはどうでも良い話だった。
「その翌日、ナニがあったと思う? モミジ達が号泣して会いに来て『申し訳御座いません! 人間・スライム風情だと見下していた事をお赦しください!』と乞いて来たんだぞ!? 詳しく聞けばお前ら、山にトンネルやら豪邸やら作るに飽き足らず、棲家の山を平らに整地しようとしたんだってな!? 俺がテング達に嫌がらせしたみたいになったじゃねぇか、巫山戯るなよ!?」
煩い。 取引でもなしに。
辛辣同志を呼んで収めてもらう。 作業の邪魔だ。
「今度はどうしたんですか?」
「聞いてくれ通訳ちゃん。 コイツら、森に住まう知性ある魔物達とトラブルばかり起こしてるんだ」
「いつもの事じゃないですか」
「まぁ、そんなんだが。 ただ森が連邦領になった以上、森に住まう多種族とギクシャクしたくないというか」
「手遅れですが一応、言ってみましょう」
なんか云われた。
知性ある村人や集落と問題起こすなと。
面倒だ。 地上の広大な森に、一体何種類の生物が住まうと思っているのか。
それも知性の有無で分別しろと。
全てに配慮出来る程クラフターは器用ではない。
同時に善人では無い。 悪人のつもりも無い。
差別するくらいなら無差別に対応する。
その方が公平だ。 或いは利になるか否かで判断する。 やりたい事をやる。 好きに振る舞う。 それが世界との関わり方で生き方である。 気紛れを混ぜれば、ひとつの人生だ。
「ああそうかよ!? じゃあ言い方変えさせて貰うわ、お前らは"荒らし"だ! それも森だけの問題じゃないレベルの! 少し、いや大きく自重しろ! "テンペスト"(嵐)の意味が違う意味になっちまう! 手遅れだけど!」
巫山戯るな。
キレたいのはクラフターだ。
何人たりとも創造の自由を阻害する権利は無い。
付与した覚えもなかった。
「世の中、自分の思い通りにならない事ばかりなんだぞッ!」
その割に自分の思い通りにさせようとする。
その差は何だ。 教えろ。
「上等だ! 分からせてやる!」
リムルが怒る。
先に仕掛けたのは向こうだ。
スライム形態から水を飛ばしてきた。 何を馬鹿な、と堂々受ければ痛い。 刃の如き切れ味に驚愕である。 水が痛いなんて。 ファイヤーチャージを撃たれた訳でもなしに。
対して興味深く観察する辛辣同志。
褒めこそすれ、叱りやしない。 我々もそうする。
「水刃ですね。 水圧カッターと言うべきでしょうか、IRPの武装に出来たら面白いかも知れません。 距離、圧力の問題がありますが……」
「今の距離で、この攻撃喰らって首繋がってるのオカシイからね? 今更驚かないけども!」
だが不思議な攻撃なんて数多ある世界。 直ぐ気持ちを切り替えて戦闘態勢へ。
取り敢えず左手に盾。 右手に鉄剣。 防具もダイヤ装備の耐久値をケチって鉄装備。 だが革より良い。
「武闘会で白黒付けても良いけど」
リムルが人型になる。 手には既に刀。
目は怒りに燃え、引き攣った笑顔を浮かべる。
「大衆の面前で恥をかきたくないだろ?」
クラフターも笑顔で対応。
剣を振るって挑発行為。
上等。 何方が上かな?
「勝っても負けても思う様にならないと思いますけどね。 寧ろクラフトを宣伝出来たと嬉々とするでしょう」
「あー、勝訴も敗訴も笑顔で掲げられちゃ困るな。 なら、尚更に此処でお仕置きしないとなぁ!?」
「あまり迷宮を壊さないで下さいよ」
「ラミリスとコイツらが幾らでも直すさ」
「怒り心頭ですね……ラミリスさん呼んでこよ」
この際だ。 滅却するのも有りか。
ただリムルに勝てるだろうか。 初期の頃なら兎も角、今は強い。 人の時の姿がシズ似なのも殺り難い。
「先ず潰す! 次はベッドの上だ! 俺が満足するまで殺りまくる! 復活した瞬間が死ぬ瞬間だ、良いだろ、どうせ生き返るんだからな!?」
剣戟を始めるリムル。 早い。 軌道が見えない。
此方は剣ガード。 盾も使う。 嵐の様に激しい剣劇に耐久値が擦り減るが、互いに様子見でしかない。
「少しは! 大人しく! しやがれッ!」
成長したなぁ。
往なしながら、しみじみ思う。
多忙の合間を縫い、ハクロウとの訓練や自主練をしていたリムル。 それを陰から見守っていた創造主。
嫌っているが、仲間のリムル。
努力する姿まで憎めないのだ。
まぁ隙あらば仕留める気持ちもあったが。
「ちょっと何してんのさ!?」
「見て分からない? 戯れあってるんだよ!」
「殺意に溢れる戯れ合いね!?」
「これじゃ足りない位だ!」
「その割に本気じゃないみたいだけど。 いや本気出して欲しくないけど! 迷宮が壊れて迷惑するから! というか既に一部の壁が崩れてるんですけど! 直ちにヤメテェ!?」
ピタリと動きが止まる。
反撃しようと思ったが、此方も止めた。 無粋な気がしたからだ。
なんだかんだリムル達の影響を受けているのだろう。 だとして、これも自由意志での行動。 束縛とは違う。 ならこれで良いのかも知れない。
「……まぁ良いさ。 戦争が起きた訳じゃないし。 迷宮にトレント達、森に生きる者達の居場所も作ってくれたし。 それに、なんだ」
刀を収めつつ、急にしおらしくなるリムル。
シズの姿の所為か、不覚にも嬉しくなってしまう。 彼女を助けた経験は今でも自慢なのだ。
「お前ら奴隷商人からエルフを助けたらしいじゃないか。 東の帝国絡みだけど……その者達の棲家も迷宮の同じ階層に用意出来そうだからな。 何も考えてない様で考えてるのなら……とにかくだ! 今回はこれくらいで済ませてやる! 勘違いするなよ、許した訳じゃねぇからな!」
頷く創造主達。
やはりマルチは良いなと。 でなければ、この経験を互いにする事は出来なかった。
確かにそれ故の問題はあるが、それ以上の利益を得る事が出来た気持ちになる。
それはダイヤモンドを得た時の様な歓喜ではなく、内側から湧き上がる温かさだ。
「アタシも許した訳じゃないわよ」
「へ?」
「迷宮直しなさいよ! ほら、そこの壁!」
「……俺は書類に忙しいから。 じゃ!」
「ちょっと!? アタシとコイツらのスキルがあるといってもね、ゼロコストの最強無欠じゃないのよ!?」
「迷宮創り頑張れよ! 収益は君達次第!」
「待てリムルーッ!」
仲良く追いかけっこをする羽虫とリムル。
そうだね。 それもマルチだね、と頷く。
「私も許した訳じゃないですよ」
空気化していた辛辣同志よ。 突然どうした。
幸福感に満ち溢れた時に、そんな黒い笑顔で。
「此処に来る前、私の部屋に戻ったのですが荒れていました。 仕舞っていた下着やらレポートが床に散乱。 加えてチェストが漁られた痕跡。 お前ら……忍び込みましたね?」
スニーク姿勢で肯定する創造主。
ロケット部品や図面を拝借しました。 ロケットランチャー開発に役立った。 礼を云う。
「で? それはどこに?」
アイテムスロットからブツを見せた。
鉄製の棒で、先端にクリーパーカラーの卵の様なモノが付いている。
金属棒は再利用型チューブランチャーで、先端に取り付いてるのは爆弾。 トリガーを引けばロケット機関で爆弾が推進、飛翔させる事が出来る。 着弾で爆発。 云う為れば携行型TNTキャノンである。
これは凄い。 凄いぞ。 革命的だ。
威力もそれなりだし、何より携行出来るのはデカい。 流石、我々の娘だ!
「ありがとうございます。 それで?」
ナニを怒ってるのか。 分からず首を傾げた。
アレか。 リムルに試射しなかったからか。
だが此処は閉所だ。 使えば自爆と同義。 クリーパーごっこは遠慮した。
「違うそうじゃない……勝手に娘の部屋を荒らして、しかも部品を私事に……アレが無いと不安定で爆発する恐れが……」
震えながら近付いてくる。
いけない。 ナニかがトリガーとなり起爆動作に入ったか。 クリーパーカーが飾りでないなら、そう云う事だろう。
全てを悟り閉目する。 もう駄目だ。 助からないぞ。 両手で束縛された以上、盾もブロック挟みでのダメージ軽減も望めない。
「そんな馬鹿親に、宇宙旅行をさせてあげましょう。 今すぐに!」
取り敢えず親孝行の雰囲気ではないのは理解出来たクラフター。
首にリードを付けられ、トロッコにブチ込まれ、大型ロケット・ランチャの場所まで拉致されると、無理矢理円筒に翼が生えた乗り物……ロケットとやらに括り付けられる。
嗚呼! 逃げられない!
悟った瞬間、轟音と共に空より高い場所に飛ばされた。 青空から暗い星海に沈んでいくにつれ、凄い勢いで酸素ゲージが無くなり窒息ダメージ。 奈落死に似たナニか。
が、その前に大きな閃光に包まれ───。
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「ただいまなのだ! 竜を捕獲してきたぞーって、ラミリスもリムルもいないのだ。 アイツらは……何処でもいる筈なのだが、どこなのだ?」
「あら、ミリムちゃん丁度良いトコに」
「お前は……聞いてるぞ、通訳だな! して、丁度良いとは何なのだ?」
「あの馬鹿共は宇宙旅行に逝きましたよ。 さぁ見上げてご覧なさい。 今丁度、お星様が見れますよ」
「ん? おお! 何かが爆発したのだ!? そして流れ星! 流星群!」
「綺麗でしょう? 命の終わりは……」
ベッドから再起したクラフターは、未だに空から地上へ落下する自らの遺品を見上げる羽目になる。
キラキラしている。 経験値もだ。
いやぁ。 綺麗だなぁ。
一瞬見えた星の世界の方が素敵だったが、コレはコレで。 だがもうクリーパーごっこは勘弁して欲しいと思うクラフターだった。
リアルが厳しいのもありますが、進まない感。
オリジナルの所為としたくないものの……。