(今更感)
進展させねば……と。
武闘大会や迷宮の話を流してしまうと、マンネリ? してしまうかもという恐れもありつつ。
前回のあらすじ
創造主:娘の部屋荒らしたったwww
辛辣娘:私を怒らせて、そんなに死にたいか。
創造主:ロケットに縛られた。 草。
辛辣娘:空を見上げてご覧。
ミリム:何なのだ(੭ ᐕ))?
創造主:アッーー!!
BOOOM!(宇宙花火)
147.ヒナタとユウキ
「はい、始末書受理しまーす(虚)」
「……すみません」
辛辣同志がリムルに頭を下げていた。
予定に無い打ち上げをした為だ。 だとして我々なら謝らない。 いつもの事だ。
「いや良いんだよ、いつもの事だし?」
「マジすみませんでした」
「お仕置きする為だったんだろ。 それで何か被害が出たら怒っていたかもだが、今回は大丈夫だったし。 強いて言えば騒音被害があったくらいだ。 それに……何らか進展したなら良いじゃないか。 またひとつ、宇宙に近付いたんじゃない?」
「はい。 馬鹿が先に行ったのは複雑ですが、今回の打ち上げデータは有意義でした。 安全性を更に向上させ、目指すは月です。 宇宙ステーションも良いですね」
「夢が広がるな。 だが被害は広げるな」
「……なるべく」
世界は広い。
異世界も数多あるのだろうが、縛られたところでクラフターの道が断たれる事は無い。
この世界にしても大陸の外側はどうだろうか。
今なんて見上げれば、ほら。 月が浮かび星が輝く。 当たり前の光景でも、手を伸ばせば非日常の世界へ吸い込まれそう。
今現在に至っては、娘が星の世界へ旅立てる。
そんな気がする。 嬉しい話だ。
「何でアイツら嬉しそうなんだよ。 新しい扉開いちゃった?」
「まぁ嬉しかったんでしょう。 新しい世界を見た訳ですから」
「ひょっとして見せちゃいけないものを見せちゃったんじゃ? コイツら、地獄をも開拓するんだろ? 宇宙開拓なんて始まったらヤバいんじゃ」
「ナニ言ってんですか。 元からヤバいでしょ」
だがあの世界、過酷な環境であった。
既存の建築技術が通じない可能性もあるが、それ以前に空気が無いのがいただけない。
砂漠も寒中も雲上でも、ネザーの灼熱(溶岩・直火除く)や強力な加速度(衝突除く)にも耐える創造主達だが、虚無……奈落や空気の無い「無」の世界には無力なのだ。
他にもダイヤツルハシナシで黒曜石に閉じ込める、荒らし封印の例もあるものの。
「そうだな。 ヤバい件はこの地上でも散々あるからな。 問題だらけだよ全く」
酸素の問題なら亀の甲羅や水中呼吸ポーションを試したい。 だがあの急激な変化は普通じゃなかった。 水中というより奈落に近い。
「最大の問題はユウキさんですか?」
「ああ。 コイツらは世界規模の馬鹿だが、暗躍していたユウキは別の方向で危険だ。 前者は自然災害だとして諦められるが、後者は完全な人災だ。 何とか抑え込みたい」
「どっちも人災じゃ」
「かなり違う。 堂々派手に世界を荒らして笑顔で振る舞うんだぞ。 褒められるのも、その過程で偶然や気紛れで誰かを救う事があるってだけで」
回復薬で誤魔化すのも限度がある。
あの環境用の特殊な装備が必要か。
そこら辺は辛辣同志に任せたい。
今は、と額縁に収めた地図を見やる。
「今は子供達を救い出したいかな」
リムルが割り込んできた。
相変わらず邪魔だ。
「ファルムスはヨウム達が纏めるとして、組合本部のあるイングラシア、学園にいる子供達を何とか」
「学園にはユウキの息が掛かっているのでは? 組合傘下なのでしょう?」
「ああ。 シズさんがいるとはいえ、不安はある。 そこら辺はフューズ君に調べて貰う。 慌てても良い事は無いからな。 ウチとしては悟られない様に武道会を進める」
大陸の地図、その西側にあるイングラシアを指差すリムル。
クラフターは頷く。 そこにも邪魔者はいる。 というか、どこに行けどもいる。 イングラシアなら騎士団に追いかけ回される。
だとして、その程度で諦めていてはクラフターの名折れ。 故に同志は未だ学園や水路に潜伏していた。
更に西、ルベリオスも似た様なものだ。
「大丈夫でしょうか?」
「なる様になるさ」
「災害が起きても?」
「……なる様にしかならないさ」
今日もいつも通りに過ごす。
作って造って創る世界に浸かる。
我々はいつだって、マインクラフターだ。
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上層部の思惑も絡み、聖騎士団長の反乱と扱われた今回の騒動。
そしてテンペストに接触した責任を擦られ、西方聖教会と袂を分つ事になったヒナタ。
それが教会にダメージの少ない方法であり、老師の機嫌を損ねない方法だという事は本人や周囲も理解し弁明はしなかった。
だが納得は出来ない。 本当にコレが得策だったのだろうか。 今回の件で色々と考えさせられ、個々に思いを馳せる騎士達。
クラフターの所為で求心力が低下しているとしているが、対応を誤ったのは教会、我々ではないだろうか。
安易に彼等を邪険に扱う事は無かったのではと。
だが時すでに遅し。 こうなった以上、傷口が広がる前に塞ぐべきなのだ。 ヒナタは荷物を纏めると、いつかの様に外の世界へ踏み出る事になる。
「みな、元気で」
日が覗かせる中、彼女はルベリオスを出る。
ルミナスとしてはお気に入りを手放したくなかったし、匿う事も出来たのだが、本人の意思を尊重し出立させた。
「いつでも妾の元へ帰って来い。 ただ、くれぐれもあやつらの様になってくれるなよ」
と、クラフターへの敵意は相変わらずで。
他にニコラウス等、一部の側近にのみ伝えている。 他には告げず出てきた為、彼女を慕う騎士団の皆も見送りもいない。 だが不思議と寂しさはない。
寧ろ吹っ切れた様な顔になる。 シズやクラフターの与えたアレコレは良くも悪くも彼女の人生に影響を与えたのだった。
「ヒナタ様、俺もお供しますっ!」
だがそれは、他の面子も同じ事。
「フリッツ、貴方は大丈夫なの?」
部下の青年は、ついて行く事に決めたのだ。
「問題ないです。 今回、自分の狭量さに気付いたんです。 例の人達みたいに多くに触れて学ばないとって。 だから連れて行って貰いますよ。 それに……教会は教会で今後とも必要とされます。 だから人手不足でヒナタ様の護衛に人数を回せないんで。 まぁ、俺1人ってのは心配でしょうけど、任せて下さいよ! あんな滅茶苦茶な人達がそうそう……世界にいますけど大丈夫ですって!」
フリッツの想いがヒナタの心を温かくする。
今日まで務めてきたのは無駄ではなかった。
「フリッツ」
「はい?」
「……ありがとう」
小さな笑みは破壊力抜群だ。
機械的で綺麗だが女性としての魅力が無かったヒナタだが、ここにきて感情が溢れ始めた。
一方、フリッツも同様で。
(やべぇ、俺マジ役得なんじゃ……。 こんなのバレたら、他の皆に狙われる!)
動揺する心を押し隠し、普段通りの対応を心掛ける。
そんなフリッツの様子に気付く事なく、ヒナタは丸眼鏡を鼻の頭にチョコンと載せて、首を傾げてフリッツを振り返った。
そして、小さな笑みを浮かべたまま、
「うん。 頼りにしているよ? フリッツ」
その言葉が、トドメだった。
(皆、すみません。 俺は本気になってしまった様です)
ヒナタが上司としてではなく、守るべき女性となったのは、正にこの瞬間だったのだ。
「あ! 寝込みを襲うとかは駄目だぞ?」
「俺の事ことなんだと思っているんですか!?」
こうして2人旅が始まった。
ヒナタが先ず目指すはイングラシア。
ユウキは危険だし、シズ達に近付くなと警告されてはいる。 だが、どうしても子供達が気掛かりだった。
(記憶にある穏やかに微笑むユウキ……その笑顔を確かなものにする。 そして、子供達も助け出す)
新たな戦いの幕開けは間近だ。
が、そこには揺らめくツルハシの影がある。
良くも悪くも、いつも通りだ。
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「はぁ!? イングラシアにヒナタが!?」
同志から連絡があったから、そのまま伝えると大層驚かれた。 我々は悪くない。
「行くなって行ったのに……お前らまたナニかしたな!?」
リムルが批難の目を向けた。
だから悪くない。 疑わしきは罰せず。 法諺は知らないが、推定無罪の余地があるなら、そんな目は止めて欲しい。 これ以上"口撃"なり"目撃"してくるなら、粘着ピストンにクラフトして黙らせようか。
「ヒナタさんが自発的に動いた様です。 今回は」
辛辣同志が弁明。
それでこそ娘だ。 一言余計であるが。
「目的は、まさか自由学園の子供達?」
「恐らく。 今は潜入の機会を窺っている様子ですが、どうします?」
「俺達連邦が手を出したらマズい。 動いたのを悟られるのは良くないな……よし」
今度は明るい顔を向けられる。
止めて欲しい。 碌な考えをしてないだろうから。
「こんな時こそ、普段好き勝手してるお前らの出番だぞ! お前らが何処でナニしようとウチは知らん顔出来るからな。 ちょっとイングラシアのヒナタを助けて来い、世界を相手にしてるんなら、個人単位くらい余裕だろぉ?」
ニタァ、と君悪い笑みで詰められる。
クラフターは溜息を吐いた。命令されたり都合の良い様に顎で使われるのは嫌いだ。
だがそれ以上に暗躍してる連中は嫌いだ。
裏でコソコソしている害虫は駆除対象である。
なら良い機会じゃないか。
考えを改めれば、成る程。 今まで何かする度に文句を言っているリムルだが、今回は好きにして良いと云っている。
なら好きにしよう。 建材指定が無いなら、好きなブロックで造る様に、目的を果たす為なら好きにして良いのだ。
「リムルさん、嫌な予感が……」
「大丈夫だろ。 ウチは知らぬ存ぜぬだよ」
クラフターは頷くと、同志に連絡を入れた。
必殺エンチャントシリーズのネザライトの剣もインベントリに入れる。
IRPも準備させる。 研究中の戦車や銃、ロケランも投入。
目標はヒナタ。 今度はナニをやらかしてくれるのか知らないが、抵抗する奴は片っ端から斬り捨て御免である。
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同志から連絡を受け、自由学園の武装化を始めたクラフター。 屋上に地対空TNTキャノンを作り、校庭に水流・溶岩トラップを仕掛ける。 所々に蜘蛛の巣を撒き散らし、拘束を容易にする。
対クラフター戦でも見慣れたトラップだ。
掛かれば一晩で出来るレベルで要塞化した学園だったが、突然の事に学園関係者は騒然とした。
「みんな急にどうしたの!?」
シズが授業を中断して駆けて来る。
どうもこうも無い。 ヒナタが来るから備えている。
「ヒナタが? でもイングラシアには近付かないでって……そうでなくても、ユウキの息が掛かる場所に来訪だなんて……」
残念ながら、此処に来る可能性が高い。
透明化ポーションで監視を続けている同志が逐一報告している。 何らかのツール等で欺瞞しているが、奴を見逃す程、我々の目は甘くは無い。
「大目に見るけど、次は大目玉だからね」
監視しているだけで、これが分からない。
とにかくだ。 リムルに頼まれたのもある。 ヒナタの目的はなんであれ同行し、動向を見て、それからどうこうしていく。
臨機応変。 良い言葉だ。 クラフターは嬉々として危機に挑む。 ツルハシと首を振り回して互いに鼓舞する。
「つまり、何も考えてないんだね……」
シズが頭に手をやる。
嘆く事は無い。 増援も来始めているし、IRPやネザライト、新兵器も投入される。
ロケット開発に携わる同志は来れないが、念話を聞いていれば実況を楽しめる。
「遊びじゃないんだよ。 とにかく、ヒナタを止めなきゃ。 ユウキが何をするか分からないもの」
弟子同士が殺し合う事態になるか。
我々? 我々だったら、それもクラフターだね、の他人事で済ませる。
人様の人生だ。 どうこうする筋合いは無い。 される筋合いも無い。
「じゃあ、なんで今回は張り切るの?」
マルチだから。
助けを求められるなら助けるし、荒らしの様な災いは降り掛かる火の粉だ。 故に干渉し粛清する。
ヒナタに関わるのだって、やりたいからだ。 利益が出るかも知れない。 同志になるかも知れない。 そうでなくても、我々の障害にもなり得る人材だ。 行動を把握していても良いだろう。
「本当に、優しくて強い人達」
優しさの基準なんて知らない。
それも所詮、人様の物差しだ。 それに振り回される気は無い。 我々は我々でやりたい様にやるだけだ。
「うん。 でもね、これからどうするの? 私はヒナタが今何処にいるか分からないよ」
目的は予想出来る。
子供達の救助だ。 ヒナタの正義感的に放置出来なかったのだろう。 仕掛けるなら警備が薄く動き易い時間帯だ。 夜か早朝か。
子供達が部屋で寝静まる頃に、直接部屋に来る筈だ。 我々ならそうする。 そしてトロッコに乗せてリードを取り付けて拉致監禁。
「トロッコやリードは使わないと思うけど、他人の目を欺く魔法は使うかも。 でも凄いよ、ここまで予想出来るなんて」
馬鹿にしてるのか褒めてるのか。
何せ元の世界でも似た経験があるのだ。 他人の領地にいる村人を自領に攫う時とか。
「ごめん。 褒められなくなった」
褒める基準も他所の基準。 気にしない。
「私が気にするんだよ……兎に角、私も協力するよ。 ヒナタとユウキが衝突するなんて、間違ってる」
それも他所の基準。
だが同意しておこう。 厄介な存在がぶつかれば、面倒が増すだけだ。
などと思うクラフターだったが、その厄介者の中に自身が含まれるのを彼等は気にしない。 どこまでも自由気ままな創造主である。
そうこうしている内に、夜が来て早朝が来た。
食糧を運ぶ村人の出入りの中に、ヒナタと部下が混ざっているのを既に知り得ている。
様子を見て、行けると踏めば子供部屋にヒナタが突入してくる。 そこを取り押さえる。
シズと一部同志が、ベッドの下や廊下で待っている手筈だ。
因みに隣部屋はシズの手配で空き部屋に。 ここをクラフターは拠点化。 ベッドを置きリスポーン地点を更新。 チェストにこれでもかと武具を詰め、拠点を放棄する事も念頭にしたTNT自爆装置も組んでいる。 その際は全ロストモノだが、得体の知れない荒らしに利用されるより良い。
「……学園が一晩で軍事拠点みたいに。 あの人達のポテンシャルは未知数ね」
ヒナタが小声で鳴いているが気にしない。
牛乳をガブ飲みさせたくらいで言語共通が図れるなんて思っていない。 魚災の悪夢が蘇り、クラフターは顔を顰めた。
「ここね」
来た。 窓を開錠し中に入ろうとしている。
透明化ポーションもそろそろ限界だ。
已むを得ない。 隣部屋に移動して、有事にツルハシで壁をぶち抜こう。
ヒナタが窓を開錠し、中に入ると子供達と鳴き合い始める。 今すぐにでも殴り込みたい気持ちを抑えつつ、展開を見守る。
「お姉ちゃん、だあれ?」
「そんなに警戒しなくて良いよ。 リムルから話を聞いている……あと1人、クロエ・オベールの姿が見えない様だが、リムルの言っていた特徴通りだよ───」
長い。 いっそ自爆しようか。
いや落ち着け。 取り敢えずIRPにオープン・トークで座標を再度送る作業をして落ち着く事にする。
開示しての座標伝達は一応意味があって、見聞する同志が多ければ更なる増援が見込めるのだ。 面倒というのもあるが。
だが場合によっては危険だ。 荒らしが見ていた場合、荒らされる事がある。
だが今回は大丈夫だろう───そう考えていたクラフターだったが、これが後にトンデモない事に発展するとは、誰に予想出来ただろうか。
事故は起こるさ。
クラフターは忘れた頃にやらかす。
クリーパー被害の如く。
「なんだリムル先生の知り合いか」
「───信じてくれてありがとう。 詳しい説明をしている暇はない、一緒にリムルの所に来てくれないか?」
「リムル先生のとこ? 行きたい!」
「わかった。 だがもう1人、クロエという少女はどうしたの?」
「その、さっきから言っているクロエって子……だれ? 知らないよ?」
「なっ……」
まーだ時間掛かりそうですかね?
基本ジッと出来ないクラフターは、イライラが募る。 そこに鎮静剤の如くヒナタの部下がやってきた。
「遅くなりました!」
「フリッツ」
迷うな。 感じろ。 さっさと動け。
我々ならそうする。 やはり新人クラフター特有の雰囲気が時々見受けられる。
同時に期待した。 逸材になるやも。
やはりツルハシを持たせたい。
そして、マインクラフターになるんだよ!
「迷う必要は無いでしょう? だって、子供達を連れ出されたら困ります」
いつかの若造、ユウキまで来た。
弟子同士の対峙。
シズが恐れていた事態が起きてしまった。
「ユウキ・カグラザカ……」
「どうやらエサに食い付いたのは2人だけ、ですか。 まあ良いでしょう。 ヒナタ、君は小物では無い。 少しは子供達(エサ)も役に立った、という事でしょうか?」
共に隠れているシズを見やる。
手が震え、だけど唇をギュッと結ぶ。
今すぐ「止めて」と叫びたいのだ。 表情は哀しみ、僅かな怒り。
……シズの苦労は絶えない。 我々がいながら未だ泣く。 その原因は馬鹿弟子にあるのは明白だ。
「最初から罠を張っていたの?」
「挨拶もなしに質問? つれないな、ヒナタ。 まぁ……他にも罠張ってたのはいるけどね。 校庭に堂々と、そして此処にも」
「……例の人達?」
「それと、僕達の師匠だよ」
「ッ!」
挙句、此方に剣撃が来たものだから、創造主は咄嗟にシズを庇い盾ガードする。
強い衝撃。 抗議と不快感を伝える様に顰めて見せるも、ユウキは意地悪く笑うだけ。
「あっはっはっ! いやいや、またお会いしましたね! こんな形で残念です!」
「ユウキ……お願い! こんな事止めてッ! こんなの間違ってる!」
「間違ってる? シズ先生、一体、この中で誰が1番間違ってるんでしょうか?」
「何がそうさせたの? 教えて!」
「……その目がいけない」
「えっ?」
「その腐らず死んでいない、お前達の生き生きとしている不快な目がッ! 僕は1番気に入らないんですよ……こんな理不尽な連中、理不尽な世界。 思う様にならない事を思う様にして面白可笑しく過ごす。 それが出来たら、僕は、僕達、は……元の世界に置いても……どれだけ救われたのでしょう……この人達が最初から居てくれたなら、どれだけ救われたか」
「ユウキ……」
叫んだり震えたりしている。
威嚇か。 クラフターは壁をツルハシでぶち抜くと、戦闘力の低そうな子供達を隣部屋に避難させる。 ヒナタの部下も一緒だから、なる様になるだろう。
後は師弟問題。 我々の仕事だ。
「ヒナタ。 君もそう思わないかい?」
「何を今更」
「母親は宗教に傾倒し、娘である君は捨てられたじゃないか。 君の機械的で冷酷な性格の原因の過去だ」
「…………」
「おっとごめんね! 気に障ったかな? でも安心しなよ、この人達も似た事してるから!」
斬りたい。 だが我慢。 交渉次第で済むなら、それが良い。 我々も全ロストは勘弁。
「この人達にも娘がいてね。 といっても自己流で作った肉人形、ホムンクルスみたいだけど。 ハイクオリティでね、見た目も知識も殆ど人間と変わりない。 だけど、かなり冒涜的な作り方をした挙句、酷い実験をしたみたいでね。 ボロ雑巾にして飽きたらポイだ。 可哀想だよね?」
「───そうなの?」
シズに辛辣同志の事を尋ねられた。
ユウキは煽る様な笑顔を向けている。 ヒナタは複雑な心境の様だ。
クラフターは嘘偽りなく頷いた。 そうだ。 我々の娘はそうして生まれ、捨てられた。
シズに通訳して貰う。
「───あはっ!」
そして拾われた。 今、彼女は元気に生き生きしているよ。 君と違って。
「……相変わらず好き勝手ですね」
そして若造。 可哀想なのは、お前だ。
「はい?」
クラフターはネザライトの剣を向けた。
その貼り付けた狂気の顔も気に入らないが、文句を垂れ見下す思考は共感出来ない。 情報収集は立派だが、都合の良いところだけ取捨選択し、皆に垂れ流す。
それは自分が変わる気が無いからだ。 同情して欲しいからだ。 共感して欲しいからだ。 同時に他人の意見を尊重する気がなく、自己中な考えから世界を荒らしているだけだ。
世界を変えられても、自分の物差しを使う限り絶対に都合の良い世界は訪れない。
誰もいないクリエーティブ世界(モード)でなら迷惑は無いだろうが、折角のマルチにいるのに、勿体無いぞ。
自ら世界を狭める愚かな行為だと、何故気が付かない?
前の世界で何があったか知る由もないが、この世界に来てまで尚、楽しめない時点でお前の負けだ。
「……誰もがアンタらみたいに好き勝手生きていける程、強くないんですよ。 弱肉強食という意味では間違ってないんでしょうが、巻き込まれた側は溜まったものじゃない。 それにその意見、そっくり返させて貰いますよ」
もう良い。 言葉は不要だ。
というか、通訳を挟むと効率悪い。
さっさとやる事やってズラかる事にしよう。
「良いでしょう。 リムルさんの所為で子供達が安定し利用価値も無くなってしまいましたし。 最後の荒事は、やっぱ暴力ですかね」
暗闇からニュッとまたも影。
目に虹彩の無い、綺麗な黒髪の女の子。
シズとヒナタが抜剣する中、クラフターは首を傾げた。 なんだか、何処かで会った事ある様な。
「ユウキお兄ちゃん、わたし達を助けてくれたんじゃ、ないの?」
一方、金髪が悲しみに暮れた顔で鳴いた。
「あはは、バレちゃった? 利用出来そうだから生かしてるだけだよ。 アリス、そんな悲しそうな顔したって無駄だぜ? 利用価値が無くなったら殺すし、逆に言えば利用出来る間は生かしておいてあげるよ」
「なんて事を言うの……ッ!」
シズは激昂。 ヒナタは歯軋り。
「ユウキ、私達を操るだけじゃなく子供達までも!」
「それにもう1人少女が居る筈よね? クロエ・オベールは何処にいる!」
あ。 思い出した。
そうだ。 そうだった。
「残念だよね、せっかく蟲が育って、ヒナタも僕の手駒として良い具合だったのに。 それに母親に捨てられた絶望の思いを抱いたまま"感情を凍結"してあげたから、ヒナタいい表情してたのに。 本当に残念。 今じゃ正義漢じゃないか。 詰まらないよ。 ところでさ、クロエ・オベールって誰?」
そう。
ユウキの隣に立つ少女はクロエだ!
いやぁ。 大きくなったなぁ。
元の世界の動物や村人の成長速度を見ているクラフターは、こんな事で驚かない。 寧ろ懐かしさを感じた。
小麦を与えて急成長を促したんだろう。
「ユウキ。 昔の誼で懺悔するなら命迄は取らない。 今すぐ謝罪すると誓え。 そして、罪を償う為に白状しなさい」
「あはは、何で? 僕が謝る必要無いよね。 この世界って弱肉強食じゃん? 弱い奴、騙される奴、利用される奴が悪いんだぜ?」
「ふざけるな!」
何か鳴いて剣戟を始めた。
これ以上の交渉は無駄だろう。 命を何とも思ってない奴が命乞いしたところで、何も響かない。 殺すのが妥当かも知れない。 向こうも此方を殺したいだろうし、文句はないだろう。
たぶん、いや恐らく……殺してるんだ。
殺されもするさ。
「ヒナタだけじゃなくシズ先生もいて、副担任もいて、多勢に無勢ですか。 なので此方も強力な味方を連れてきましたよ。 既に隣にいたのに、紹介が遅れてすみません……勇者です。 ぱちぱちぱちー!」
「どこまでも巫山戯るな!」
「勇者? いえ、そんな、まさか」
シズが動揺しているが、今はそんな場合じゃない。 流石のクラフターも理解出来る。
戦えないならばと、直ぐに隣部屋に押し込むと丸石ブロックで壁を補修した。
ヒナタの部下と護衛の同志がいる。 後は自力で脱出するなりして貰う。 此方は目の前に手一杯になる予感。
「おや、シズ先生は退場? だけど副担任はいっぱいだね! どう? 狭い子供部屋で百人組手とかやっちゃう感じ? そんなにいないけどさ!」
「……ユウキ、魔王カザリームに操られているのか? それともお前自身がカザリームなのか?」
「え? ああ、あはは。 うんうん、そうだね、そうかもよ? 僕が、いや俺がカザリームだ! なんてね。 あはははは、本当、ヒナタって面白い事言うよね」
さて、どうしよう。
爆笑を続けるユウキは殺すとして、クロエまで殺すのは気が引ける。
というか、なんで敵側にいるんだろうか。 かつての模擬戦で水流の檻を突破されたのが、そんなに気に入らなかったのだろうか。
「カザリームはね、僕の片腕になっている副総帥のカガリ女史だよ」
「洗脳や誘導じゃない? お前の張った根は深くまで浸透していそうね」
「副担任にあっという間に抜かれたけどね」
危ないからコッチに来なさい。
何とかクロエの誘導を試みる。
小麦、駄目。 ステーキ、駄目。
焼豚で頬を往復ビンタ。 駄目だ。 虚な目を続けるばかりである。
「…………勇者を何処で手に入れ、支配下に置いたのかは分からないけど。 どうやらお前も勇者も話が通じないようね」
「君も支配されてみる? 今なら同郷のよしみで幹部待遇で仲間にしてあげるけど?」
「ふざけるな! 貴様への情けは必要無さそうだ。 今此処で断罪する!」
「だろうね、君ならそう言うと思ったよ。 さて、これだけペラペラと秘密を暴露してあげたんだ。 ほら、黒幕って頼まれもしないのに秘密を暴露するだろう───これだけ盛大にフラグを立ててお膳立てしたんだし、精一杯頑張って僕を倒してみてよ。 もしかしたら覚醒して僕達を倒せるかも知れないぜ?」
世界の半分をやろう、と云ったらクロエはこちら側に来てくれるだろうか。 無理か。
取り敢えず剣を構え直す。 大人クロエはどれくらい強いのか未知数だ。 だがリスポーン覚悟だろう。 何とはなしに、そう思った。
と、此処で茶を濁して余る濁流念話。
『この馬鹿親共がッ! 何て事してくれやがりましたか!?』
辛辣同志が脳内で叫ぶ。
へ? 何の話?
身に覚えがあり過ぎて、これが分からない。
『ロケットを発射しやがって!? 座標入力したら発射しちゃうから、するなって担当に云ったのに!』
座標入力?
いや担当同志に云ってくれよ。 今、クロエとユウキとの戦闘で忙しい。
ロケットはまた作れば良い。 協力するから。
『座標を入力すると、その座標に向かって落下する様に設定されてるんです! そして、その座標はイングラシア自由学園なんですよッ!?』
何でそうなった。
『オープン・トークでIRPに座標伝達してたでしょ! それを担当が指示と間違えてロケットに入力しちゃったんです!』
マジヤベェじゃん。
『ヤバイんですって!! さっさと戦闘を終わらせるなり逃げるなりして下さい! その時、ワザと馬鹿デカい騒ぎを起こして学園から人を退避させるなりする様に! 爆弾は積んでませんが、それなりの爆発は起きる可能性がありますから! シズさんがいるなら協力して貰って! とにかく全てを急いで!! 墜落予想時間は───』
リスポーン覚悟。
取り敢えずシズに伝える。 校庭の同志にも伝える。
皆には逃げて貰おう。 うん。
建物は壊れてもまた造れるから。
他国にロケット……。
始末書で済むのでしょうか……。
絶体絶命(一部クラフター所業)。