イングラシアにロケット墜落。
自由学園破壊。
ヒナタ死亡?
「うーわッ、やりやがった!」
辛辣から報告を受けたリムルが凄い顔するものだから、クラフターは失笑した。
武力行使でリムルを処刑するのが難しい昨今、精神攻撃は数少ない有効手段である。
「笑ってんじゃねぇよ! どこをどうしたらロケットを他国に落下させられるんだよ!? いやお前らにしては、その程度で済んで良かったとするべき!?」
「すみません本当」
「こりゃ始末書で済まないぞ」
嘆くな。 壊れたものは直す。
それに1発だけだ。 誤射で通せ。
「などと供述しており」
「ざけんなゴルワァ!? 完全にお前らが悪いだろうがッ! 発射したところは連邦は勿論、他国からも見えた可能性が高い。 言い訳なんて出来ないぞ!」
「とにかく、イングラシアの状況を確認します」
「……俺もそうする。 急いでイングラシアに緊急連絡を。 ロケットの件と学園、ヒナタや子供達の事、ユウキの事、色々ある……ハァ〜ッ、嫌な予感が的中するなんて。 やっぱお前らに頼むんじゃなかった……」
「後悔先に立たず。 今を何とかしましょう」
その通り。 前を向け。 我々もそうする。
マグマダイブして全ロストした時、クリーパーに自宅を爆破された時、大海原で迷子になった時。 他にも色々あるが、過ぎた事を悔やんでいても仕方ないのだ。
「いや反省して? 大いに反省して?」
喚くな。 今を何とかするのが先決だ。
先ずイングラシアの同志と連絡を取る。
状況を確認した。
学園の校舎が吹き飛び、校庭はボコボコ。
投入されたダイヤ装備やネザライト装備を何人分も喪失。 試作戦車や銃も無くした。
整地用の土や再建用の建材が必要。
一方で村人の被害は確認出来ていない。
飽くまで爆発に対して、であるが。
元より戦闘に参加していた荒らしの出処は不明で、対抗していたヒナタは大将のユウキとクロエとの戦闘で致命傷。 挙句に大将を逃した。
荒らしを逃す……失ったモノに対してコレだ。 かなり痛い。 荒らしは逃せば、また荒らす。 これは経験則。 だが確実性がある。 故に危険視せざるを得ない。
また、クロエは他の子より先に大人になっているとか、それでいて敵対しているとか、首を傾げる事象も確認された。
知りたいのは、荒らしやヒナタ達の行方。
やりたいのは、学園の再建。
とにかく、とクラフター。
マルチなのだから、調査するにも建設するにも分かれて行う。 それは各々に任す。
現地クラフターは散り散りになると、それぞれ自由に行動を開始。 イングラシアに限らず他国の同志も同様であった。
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フリッツは慟哭し、それでもヒナタを背負い走っていた。 背から冷めていくヒナタという現実を痛感しながらも、捨て置けずシズと子供達と走る。
「……ッ、教会へ!」
弟子達の殺し合い、衝撃の光景で動揺、放心しかけていたシズが思い出した様に声を荒げた。
「そのつもりです! 他に頼れる場所なんて」
「違う、そうじゃないの」
シズは手短に話す。
「祭壇に彼らのベッドがあった筈! ヒナタをそれに寝かせて!」
「一体何を」
「良いから!」
「分かりました!」
最寄りの教会に駆け込み、一縷の希望に縋る気持ちで。
(頼む神様ッ! 時間を、チャンスをくれ!)
彼等が祈るはルミナスにか。 それとも。
やがて見えた教会に転がり込むと、祭壇に置かれたベッドにヒナタを寝かす。 すると。
「ッ!?」
なんとヒナタが光の粒子になって消えてしまった。
「そんな、ヒナタ様……ヒナタ様ぁッ!?」
かと思えばベッドにヒナタが横たわる。
健康体となった全裸で、ポンッと。
「こ、ここ、これは一体全体!? 蘇生魔法の効果でもあるんですか此処は!」
フリッツは動揺するも、シズや子供達は喜びはすれど驚きは見られない。 慣れている、といった様子だ。
「良かった……私と同じで」
「え? いや、えっと、説明を!」
「例の人達は死んでもベッドから復活する事は知っている?」
「噂程度には……まさか!?」
「うん。 どうやら上手くいったみたい」
「例の人達のベッドに、その様な効果があったなんて」
「全員に効果があるかは分からないけど。 私はそうだったから」
驚きつつも安堵するフリッツ。
まさか迷惑系建築魔の残滓に助けられようとは。
……放っておいても、ルミナスが何とかしそうであるが。 世界線が違えばリムルもファルムス絡みで殺された(この世界ではクラフターの影響でそうならなかった)シオン達を生き返らせたし。
再誕は誰かの特権ではない、という事か。
問題なのはベッドで寝るという楽で博打な蘇生方法という点。 復活条件が曖昧で確実性がない。
だが今回は、そんな曖昧なモノに助けられた。
ヒナタを寵愛しているルミナスが知ったら、さぞ悔しがる事だろう。 クラフターがそれを知ったら、ザマァと思うだろうが。 精神攻撃は有効手段。
「ここは……」
「ヒナタ様!」
やがて目を開けるヒナタ。
思わず抱き付くフリッツ。
「良かった! 本当に良かった!」
「……私は生きているの?」
「そうよヒナタ。 よく頑張ったね」
「シズ先生……」
「お姉ちゃん良かったね!」
口々に良かった良かったと頷く。 ヒナタもよく分からずとも、皆が何とかして助けてくれた事は分かる。
温かな気持ちに応えるように、フリッツを抱きしめ返そうとして……止まる。
「フリッツ」
「はい」
「寝込みを襲わないでって言ったよね?」
「はい……はっ! いやこれは不可抗力、ぐはっ!?」
やや締まらない結果になった。
だけど奇跡も魔法もあるんだよ。
救いだって、あって良い。
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「救いは無いんだよ!」
今回の件に関わったクラフターの代表はリムルに捕獲され、イングラシア自由学園の校庭で火炙りの刑にされていた。
同志はリードでネザーフェンス、その高い場所に取り付けられ、ヨーヨーの様にピョンピョン跳ねている。
足元は火を付けられたネザーラック。 延々と燃え盛る炎と煙に燻られる同志。 表情は無である。 こんなんでもダメージが無いのが救いだ。
「今回の事件は全てコイツらの仕業です。 焼くなり燻るなり好きにして下さい」
「いえ、あの、既にされてますよね? あと学園で子供の教育に悪い事はしないで欲しいといいますか、処刑場にしないで欲しいといいますか」
「学園長。 コイツらの存在が既に教育に悪いのです。 コイツらの悪質振りを世に知らしめる為にも、公開処刑した方が良いのですよ」
「私刑はやめましょうよ。 それこそ教育に悪いかと……」
「散々虐められた身としては、これくらいじゃ足りませんがね! 学園長だってそうでしょう!?」
「同意を求めないで下さい……私にも家族がいて、今ここでクビになる訳にはいかないのです……」
「なら尚更に怨みがあるでしょう!? 業火じゃ足りないくらいの憎しみもッ!!」
「勘弁して下さい……色々と」
多くの村人に観察されるクラフター。
いくらダメージが無いとはいえ、気分が悪い。
これはアレか。 リムルの精神攻撃か。
やりおる。 物理攻撃以外にも、リムルは出来るらしい。 スライム如きと油断していた。
「お母さん。 あの人達、首が絞まってるのに、なんで平気そうなの?」
「シッ! 見ちゃいけません!」
様々な反応をされている。
指差す者。 困惑する者。 睨む者。
だが笑う者はいない。 これだけ身体を張っているのに。 これはクラフター流の洒落だ。 リムルは我々を利用して芸を披露しているに過ぎない。
ほら。
笑いなさい子供達。 我々も笑って見せよう。
「絞首されてるのに笑い始めた!?」
「ひいいいいいッ!?」
「怖いよぉ! うぇ〜ん!」
「帰りましょう! 今日の事は忘れなさい!」
おかしい。 皆がゾンビを見た様に逃げていく。
首をグリグリ動かして周囲を見る。 ゾンビはいない。 いたら即斬り捨てるというのに。
「どこまでも巫山戯た馬鹿共だ! これでもか! これでもか、このっ!」
リムルが鞭を打ってくる。 痛い。
笑いを取れなかった事への怒りか。
ここで死ぬ訳にはいかない。 死ねば遺品をばら撒いてしまう。
下は火だ。 いくつかは焼却されてしまう。 それは嫌だった。
「はぁ、はぁ……やっと苦悶の表情に」
「もう止めましょうリムル先生。 このままでは学園が取り壊しになります」
「既に壊れてます! コイツらの所為でね!」
「物理的にではなく社会的にです。 それに、再建作業なら彼等の仲間が始めてくれています。 この速度なら1週間以内には授業が再開出来そうですから」
「学園長はもっと怒って良いと思います」
フェンス側面に土ブロックを付ける。
その上を足場にし、頂点のリードの根元を殴って解く。 もれなく解放された。
そのまま飛び降りると、着地の瞬間に水バケツ。 ダメージ無く降り立った。 すぐさま火を消し校舎の再建、校庭の整地作業に加わった。 作業せず意味なく死ぬのは嫌なもので。
「はぁ……もう良い。 疲れる」
「ところで、その。 今回の件の詳細は?」
「国家に関わる有事の一端です。 細かい事は省きますが、ユウキ理事長は世界の支配を目論む悪党でした。 その悪事が大きく出たのが、この騒ぎとなります」
「なんと……いえ、その様な事が」
「残念ながら。 調査はこれからですがね」
「この爆発も?」
「そ、それは……コイツらがユウキと戦う過程で発生したもので。 やり過ぎたんですよ、コイツらは。 故にお仕置きをした訳なんですが……効果は無さそうですね」
リムルに睨まれながら、されど気にせず作業する。 校庭の整地は直ぐ終わるとして、校舎は前より立派にする。
様々な建材やセンスを盛り込み、せっせと建物を造っていく。 時々悩み手が止まりながらも、今までの経験を活かして作品を創り上げた。
「相変わらず副担任は凄いですな」
「参考になりませんがね。 逆に駄目」
「修繕費が掛からないのが唯一の救いです」
「だってさお前ら。 救いはあったぞ」
リムルが鳴いた。 振り返れば、苦笑していた。
クラフターも笑顔で応える。
笑ってくれた。
同情でも、それが嬉しかった。
祭壇……ベッド……儀式……うっ。 頭が。
ヒナタリスポーン。
Q.入信したいのですが。
A.そういうのとは違います。