寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

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前回のあらすじ
イングラシアにロケット墜落。
自由学園破壊。
ヒナタ死亡?


149.救いと笑顔

 

 

「うーわッ、やりやがった!」

 

 

辛辣から報告を受けたリムルが凄い顔するものだから、クラフターは失笑した。

武力行使でリムルを処刑するのが難しい昨今、精神攻撃は数少ない有効手段である。

 

 

「笑ってんじゃねぇよ! どこをどうしたらロケットを他国に落下させられるんだよ!? いやお前らにしては、その程度で済んで良かったとするべき!?」

「すみません本当」

「こりゃ始末書で済まないぞ」

 

 

嘆くな。 壊れたものは直す。

それに1発だけだ。 誤射で通せ。

 

 

「などと供述しており」

「ざけんなゴルワァ!? 完全にお前らが悪いだろうがッ! 発射したところは連邦は勿論、他国からも見えた可能性が高い。 言い訳なんて出来ないぞ!」

「とにかく、イングラシアの状況を確認します」

「……俺もそうする。 急いでイングラシアに緊急連絡を。 ロケットの件と学園、ヒナタや子供達の事、ユウキの事、色々ある……ハァ〜ッ、嫌な予感が的中するなんて。 やっぱお前らに頼むんじゃなかった……」

「後悔先に立たず。 今を何とかしましょう」

 

 

その通り。 前を向け。 我々もそうする。

マグマダイブして全ロストした時、クリーパーに自宅を爆破された時、大海原で迷子になった時。 他にも色々あるが、過ぎた事を悔やんでいても仕方ないのだ。

 

 

「いや反省して? 大いに反省して?」

 

 

喚くな。 今を何とかするのが先決だ。

先ずイングラシアの同志と連絡を取る。

 

状況を確認した。

学園の校舎が吹き飛び、校庭はボコボコ。

投入されたダイヤ装備やネザライト装備を何人分も喪失。 試作戦車や銃も無くした。

整地用の土や再建用の建材が必要。

 

一方で村人の被害は確認出来ていない。

飽くまで爆発に対して、であるが。

元より戦闘に参加していた荒らしの出処は不明で、対抗していたヒナタは大将のユウキとクロエとの戦闘で致命傷。 挙句に大将を逃した。

荒らしを逃す……失ったモノに対してコレだ。 かなり痛い。 荒らしは逃せば、また荒らす。 これは経験則。 だが確実性がある。 故に危険視せざるを得ない。

また、クロエは他の子より先に大人になっているとか、それでいて敵対しているとか、首を傾げる事象も確認された。

 

知りたいのは、荒らしやヒナタ達の行方。

やりたいのは、学園の再建。

 

とにかく、とクラフター。

マルチなのだから、調査するにも建設するにも分かれて行う。 それは各々に任す。

現地クラフターは散り散りになると、それぞれ自由に行動を開始。 イングラシアに限らず他国の同志も同様であった。

 

 

 

 

 

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フリッツは慟哭し、それでもヒナタを背負い走っていた。 背から冷めていくヒナタという現実を痛感しながらも、捨て置けずシズと子供達と走る。

 

 

「……ッ、教会へ!」

 

 

弟子達の殺し合い、衝撃の光景で動揺、放心しかけていたシズが思い出した様に声を荒げた。

 

 

「そのつもりです! 他に頼れる場所なんて」

「違う、そうじゃないの」

 

 

シズは手短に話す。

 

 

「祭壇に彼らのベッドがあった筈! ヒナタをそれに寝かせて!」

「一体何を」

「良いから!」

「分かりました!」

 

 

最寄りの教会に駆け込み、一縷の希望に縋る気持ちで。

 

 

(頼む神様ッ! 時間を、チャンスをくれ!)

 

 

彼等が祈るはルミナスにか。 それとも。

やがて見えた教会に転がり込むと、祭壇に置かれたベッドにヒナタを寝かす。 すると。

 

 

「ッ!?」

 

 

なんとヒナタが光の粒子になって消えてしまった。

 

 

「そんな、ヒナタ様……ヒナタ様ぁッ!?」

 

 

かと思えばベッドにヒナタが横たわる。

健康体となった全裸で、ポンッと。

 

 

「こ、ここ、これは一体全体!? 蘇生魔法の効果でもあるんですか此処は!」

 

 

フリッツは動揺するも、シズや子供達は喜びはすれど驚きは見られない。 慣れている、といった様子だ。

 

 

「良かった……私と同じで」

「え? いや、えっと、説明を!」

「例の人達は死んでもベッドから復活する事は知っている?」

「噂程度には……まさか!?」

「うん。 どうやら上手くいったみたい」

「例の人達のベッドに、その様な効果があったなんて」

「全員に効果があるかは分からないけど。 私はそうだったから」

 

 

驚きつつも安堵するフリッツ。

まさか迷惑系建築魔の残滓に助けられようとは。

 

……放っておいても、ルミナスが何とかしそうであるが。 世界線が違えばリムルもファルムス絡みで殺された(この世界ではクラフターの影響でそうならなかった)シオン達を生き返らせたし。

再誕は誰かの特権ではない、という事か。

問題なのはベッドで寝るという楽で博打な蘇生方法という点。 復活条件が曖昧で確実性がない。

だが今回は、そんな曖昧なモノに助けられた。

ヒナタを寵愛しているルミナスが知ったら、さぞ悔しがる事だろう。 クラフターがそれを知ったら、ザマァと思うだろうが。 精神攻撃は有効手段。

 

 

「ここは……」

「ヒナタ様!」

 

 

やがて目を開けるヒナタ。

思わず抱き付くフリッツ。

 

 

「良かった! 本当に良かった!」

「……私は生きているの?」

「そうよヒナタ。 よく頑張ったね」

「シズ先生……」

「お姉ちゃん良かったね!」

 

 

口々に良かった良かったと頷く。 ヒナタもよく分からずとも、皆が何とかして助けてくれた事は分かる。

温かな気持ちに応えるように、フリッツを抱きしめ返そうとして……止まる。

 

 

「フリッツ」

「はい」

「寝込みを襲わないでって言ったよね?」

「はい……はっ! いやこれは不可抗力、ぐはっ!?」

 

 

やや締まらない結果になった。

だけど奇跡も魔法もあるんだよ。

救いだって、あって良い。

 

 

 

 

 

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「救いは無いんだよ!」

 

 

今回の件に関わったクラフターの代表はリムルに捕獲され、イングラシア自由学園の校庭で火炙りの刑にされていた。

同志はリードでネザーフェンス、その高い場所に取り付けられ、ヨーヨーの様にピョンピョン跳ねている。

足元は火を付けられたネザーラック。 延々と燃え盛る炎と煙に燻られる同志。 表情は無である。 こんなんでもダメージが無いのが救いだ。

 

 

「今回の事件は全てコイツらの仕業です。 焼くなり燻るなり好きにして下さい」

「いえ、あの、既にされてますよね? あと学園で子供の教育に悪い事はしないで欲しいといいますか、処刑場にしないで欲しいといいますか」

「学園長。 コイツらの存在が既に教育に悪いのです。 コイツらの悪質振りを世に知らしめる為にも、公開処刑した方が良いのですよ」

「私刑はやめましょうよ。 それこそ教育に悪いかと……」

「散々虐められた身としては、これくらいじゃ足りませんがね! 学園長だってそうでしょう!?」

「同意を求めないで下さい……私にも家族がいて、今ここでクビになる訳にはいかないのです……」

「なら尚更に怨みがあるでしょう!? 業火じゃ足りないくらいの憎しみもッ!!」

「勘弁して下さい……色々と」

 

 

多くの村人に観察されるクラフター。

いくらダメージが無いとはいえ、気分が悪い。

これはアレか。 リムルの精神攻撃か。

やりおる。 物理攻撃以外にも、リムルは出来るらしい。 スライム如きと油断していた。

 

 

「お母さん。 あの人達、首が絞まってるのに、なんで平気そうなの?」

「シッ! 見ちゃいけません!」

 

 

様々な反応をされている。

指差す者。 困惑する者。 睨む者。

だが笑う者はいない。 これだけ身体を張っているのに。 これはクラフター流の洒落だ。 リムルは我々を利用して芸を披露しているに過ぎない。

ほら。

笑いなさい子供達。 我々も笑って見せよう。

 

 

「絞首されてるのに笑い始めた!?」

「ひいいいいいッ!?」

「怖いよぉ! うぇ〜ん!」

「帰りましょう! 今日の事は忘れなさい!」

 

 

おかしい。 皆がゾンビを見た様に逃げていく。

首をグリグリ動かして周囲を見る。 ゾンビはいない。 いたら即斬り捨てるというのに。

 

 

「どこまでも巫山戯た馬鹿共だ! これでもか! これでもか、このっ!」

 

 

リムルが鞭を打ってくる。 痛い。

笑いを取れなかった事への怒りか。

ここで死ぬ訳にはいかない。 死ねば遺品をばら撒いてしまう。

下は火だ。 いくつかは焼却されてしまう。 それは嫌だった。

 

 

「はぁ、はぁ……やっと苦悶の表情に」

「もう止めましょうリムル先生。 このままでは学園が取り壊しになります」

「既に壊れてます! コイツらの所為でね!」

「物理的にではなく社会的にです。 それに、再建作業なら彼等の仲間が始めてくれています。 この速度なら1週間以内には授業が再開出来そうですから」

「学園長はもっと怒って良いと思います」

 

 

フェンス側面に土ブロックを付ける。

その上を足場にし、頂点のリードの根元を殴って解く。 もれなく解放された。

そのまま飛び降りると、着地の瞬間に水バケツ。 ダメージ無く降り立った。 すぐさま火を消し校舎の再建、校庭の整地作業に加わった。 作業せず意味なく死ぬのは嫌なもので。

 

 

「はぁ……もう良い。 疲れる」

「ところで、その。 今回の件の詳細は?」

「国家に関わる有事の一端です。 細かい事は省きますが、ユウキ理事長は世界の支配を目論む悪党でした。 その悪事が大きく出たのが、この騒ぎとなります」

「なんと……いえ、その様な事が」

「残念ながら。 調査はこれからですがね」

「この爆発も?」

「そ、それは……コイツらがユウキと戦う過程で発生したもので。 やり過ぎたんですよ、コイツらは。 故にお仕置きをした訳なんですが……効果は無さそうですね」

 

 

リムルに睨まれながら、されど気にせず作業する。 校庭の整地は直ぐ終わるとして、校舎は前より立派にする。

様々な建材やセンスを盛り込み、せっせと建物を造っていく。 時々悩み手が止まりながらも、今までの経験を活かして作品を創り上げた。

 

 

「相変わらず副担任は凄いですな」

「参考になりませんがね。 逆に駄目」

「修繕費が掛からないのが唯一の救いです」

「だってさお前ら。 救いはあったぞ」

 

 

リムルが鳴いた。 振り返れば、苦笑していた。

クラフターも笑顔で応える。

笑ってくれた。

同情でも、それが嬉しかった。




祭壇……ベッド……儀式……うっ。 頭が。

ヒナタリスポーン。
Q.入信したいのですが。
A.そういうのとは違います。
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