メスガキ悪魔分からせ。
遺伝子組み換えクラフター誕生(一時的)
帝国軍の飛空船団及び戦車隊壊滅
今回のあらすじ
迷宮戦や本隊戦。
あとおねショタ。
帝国軍本隊は飛空船団と戦車隊の壊滅を知る事なく、首都攻略と迷宮攻略とで部隊を分けて侵攻。
首都攻略の部隊は偵察や陣地設営を行い、迷宮攻略の部隊は一足先に迷宮内に侵攻を開始……しようとしたのだが。
「ミニッツ少将! 入口が塞がれています!」
出来なかった。
見やれば、そこには黒紫の一枚岩が迷宮入口を完全に塞いでいるではないか。
魔法を使おうともビクともせず、押しても引いても駄目な状況だった。
もうお馴染みと化した黒曜石だ。
当然、こんな事する奴はクラフター以外いない。
黒曜石は一般創造主が設置出来る最硬強度を誇るブロックだ。 撤去するにはダイヤツルハシを使うしかない。
それか、余程の力の持ち主か。
残念ながら此処にいる帝国軍に、その様な力は無い。 その結果が今の状況であった。
だがその目的はナニか。 荒らされたくないとしても、使用目的を思えば考え難い。 迷宮内はトラップやモンスターが蔓延るダンジョンであり、引き込んでしまえば帝国軍に打撃を与える事だって出来る筈だが……。
「戦争が始まったものだから塞いだんだろうな。 だとして、こうも強固な蓋があろうとは」
唸る少将。
迷宮を攻略出来ないとなると、内部にあるだろう目的の希少アイテムが回収出来ないのだ。
強欲な上層部が知ったら文句を垂れるだろうが、現場がそうならどうしようもない。
だから、ミニッツ少将は直ぐ切り替える事にした。
「仕方ない。 連絡用の部隊だけ残して、後は首都攻略部隊と合流する。 首都を陥落させてからでも遅くあるまい」
と、この様にして。
迷宮攻略35万の大半は首都攻略に回され首都攻略約20万と合流。 コレに集中する事になる。
それは戦力が集中する事であり、リムル達には都合の悪い事であった。
だが、帝国軍にとっては幸運だ。
迷宮に入ったら、そこではそこの大量虐殺が始まっていただろうから……。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
マインクラフターは邪魔者が入らぬ様、迷宮入口を塞いで、そのまま迷宮を楽しみ……80階層で死闘を繰り広げ始めた。
相手はゼギオンとかいうデカい虫。
元はカブトムシとクワガタが合体したような姿であった。 かつてリムルに保護され配下となり、今や、やや人型に近付いている。 だとしてナニか。 倒すばかり。
既に多くの同志が肉塊の代わりに遺品を撒き散らし、そこら辺を散らかしている。
それだけ相手は猛者。 ヒナタより強い。 裏ボス存在、ウィザーに相当するかも知れない。
「地を這う蒙昧なる者共よ! 偉大なるリムル様に付き添う古株とはいえ、迷惑ばかり掛けおって! 貴様達が如何に矮小な存在か理解させてやる、御覚悟なされよ!」
吼える虫。
漆黒の外骨格に、金色の関節が覗く。
虹色の剣のような角が一本額の中央から伸びて、その左右に外骨格と同色の漆黒の触覚が靡く。
その特殊鋼材の外骨格は、リムルの趣味により改造が施されて、魔鋼との同化が完了している。
今ではアダマンタイトとも呼ぶべきダイヤモンドを超える強度と、生物らしき柔軟性を兼ね備えた他に比する物無き性質を持つに至る。
彼こそが迷宮の絶対強者。
最強の守護者、蟲皇帝。
インセクトカイザー、ゼギオン!
……とかいう話は創造主にとって御託ッ!
コイツは許せない事をしているのだ!
時空間荒らしという重罪行為をッ!!
空間歪曲防御領域、空間支配領域。
ゼギオンの空間支配能力は、マインクラフターにとって重罪に値する時空間荒らしに似ている。
マルチにおかずとも、世界に負荷を掛ける時空間犯罪は容認出来ない。 ましてやゼギオンは意図的に起こしているときた。
こんな事が許されて堪るか。
創造主は戦い続ける。
世界の為、皆の為。
我々の愛する俗世の為に。
"消えろイレギュラァァァァァッ!"
……勿論、勘違い。 無駄な戦いだった。
後、ラファエルさんとかいないのに、なんでこうなってるのとか突っ込んではいけない。
更に言えば戦時中にバトってるのも。
「笑止」
吶喊した同志を嘲笑うゼギオン。
奴は恐ろしく速い手刀を繰り出し、攻撃を見逃してしまった同志は横に吹き飛ぶ。
フルエンチャントダイヤ防具だったが、かなりのダメージだ。 村人なら即死級の威力。
圧倒的力。 だが闘志は尽きぬ。 常人には耐えられぬ衝撃を受けようとも、地面を転がりながら他同志の弓矢を取得、そのままゼギオンに矢を放つ。
……防具が付いてなさそうな首に喰らった筈なのに、ヘルメットの耐久のみ削れてるのも今更だ。
「意気込みは良し。 だがその程度」
回避された。
そのまま突撃してくる。 咄嗟に黒曜石展開。
「甘いッ!」
黒曜石が破壊された。
次元切断による空間断絶。 なんと恐ろしい力。
尚の事、早く……早く倒さねば!
壁向こうからコンニチワしてきたゼギオンに卵を投げまくって牽制しつつ、創造主は後退。 小さなニワトリが時々現れてはゼギオンの周りで鳴き始める。
「妙な真似を。 だが慈悲は無い」
卵如きで止められそうにない。
だが、これには策があっての事。
時空間異常には時空間異常で対抗してやる。 必要なのは時間だ。
「次元等活切断波動!」
卵を投げていた同志が空間に斬り裂かれる。
普通死ぬ。 ところが空間耐性が多少あるのか、ダメージと共に動きが刹那的に鈍くなる程度だった。 ヤベェ。
「耐えるか。 伊達に世界に分布した訳では無い、という事か」
元の世界から空間異常を経験してきた影響かも知れない。 或いはエンチャント。 何にせよ、都合が良い。
創造主は卵を投げて投げて投げまくる。 その意図を理解出来ず、ゼギオンは無視した。 虫だけに。
「死ぬが良い」
一瞬で詰められた。 即座にエンダーパールを投擲。 ワープする前に溶岩バケツをぶち撒け、TNT着火。 爆発する瞬間には離脱した。
爆煙がゼギオンを包むが、あんなので倒せると思っていない。
「瞬間転移といい、この爆発物。 そんな小細工が通じるとでも? リムル様より授かりし、この外骨格は並大抵で崩せるモノではないぞ」
煙に揺らめく影に卵を投げまくる。
"足りない"のと、戦闘に巻き込まれてニワトリの数が減らされる恐れから、創造主は釜戸を大量に置き始めた。
適当に木材や石炭、溶岩バケツを燃料に。 焼くモノの原木やジャガイモ等を大量に詰め込む。 もれなく釜戸は一斉に自動で稼働していく。 ゼギオンを囲む様に。 見ようによっては儀式会場だ。
「何を馬鹿な真似を。 トドメだ!」
ここで破壊しなかったのが相手の敗因となった。
「ぐっ!? 急に身体が重く!」
身体が鈍くなるゼギオン。
この場にいるニワトリと創造主も鈍くなっており、まるで時間の流れが遅れている錯覚に陥った。
いや。 時間だけじゃなく空間も異常だ。 重くなった感覚は、これが原因である。
「能力を 行使 しようにも 思う様に 動けぬ とは! 貴様 達、一体 何を した!」
吼えてるも、創造主には言葉が分からぬ。
だがもし答えられるならば……世界に負荷を掛けた、と答えよう。
マインクラフターは狭い空間内に大量の動物類を詰めたり、大量の釜戸を稼働させる事で時空間に支障を及ぼせる。
それは本来、問題行為であり百害あって一利もない。 行動が儘ならなくなるばかりか、下手すると世界が崩壊する。 故に時空間犯罪は大罪であり、多くのクラフターが忌避すべきものなのだ。
"我々の支配は難しい様で何より"
こんな手段には頼りたくなかったが、まぁこれも実験だと思えば。
創造主はカクカクした動きで頑張って手足を動かして、ゼギオン用に別のネザライトの剣を向けた。
それもエンチャント付きである。 だが他と違うのは、虫特効のエンチャントが施されている事にある。
既にこの世界の虫系モンスターに有効なのは確認済みだ。 恐らくゼギオンにも効果があるだろう。
「ぐっ!」
ゼギオンも地面を這う様に抵抗するものの、動けてるのは果たして創造主の方だ。
先程までの優位性は既に失われているのだ。
創造主は引導を渡す様に剣を振り下ろす。
"じゃあ死ね!"
ズバッと。
小気味良い音と共に、強力な外骨格ごとゼギオンは両断された。 動かなくなった。
"悪は滅びた"
創造主は勝利の余韻に浸かる間も無く、直ぐに周囲の片付けに入る。
このまま放置すると、症状が重くなる。 遂に動けなくなってからでは遅いので。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
「何やってんだアイツら」
管制室にいるリムルが呆れた。
迷宮内もモニタリングしていたのだが、そこに映る馬鹿とゼギオンの戦闘や、地上の迷宮入口が塞がれているのを知ったが故に。
「迷宮入口を塞いだのは、迷宮に荒らしを入れたくないからですね」
「いやいや入れてくれよ。 罠や蔓延るモンスターはアトラクションとしてじゃなく、ちゃんと役に立つんだから」
「そこなんです。 アトラクションとして参加する者は許してるんですが、荒らしはお断りしてるんです。 純粋に楽しんでくれないばかりか、破壊活動をされるのが嫌みたいで」
「アイツらの方が荒らしてるだろうに」
マイクラ思考回路からか、荒らし(帝国軍事部)の迷宮参加は許せなかったらしい。
「お陰で首都に敵軍が集中してしまったよ。 戦時中に迷惑掛けやがってアイツら……」
「すみません」
「君が謝る事じゃない。 あー、じゃあゼギオンと戦っていたのはアトラクションを楽しんでの事なのかな?」
「いえ、荒らしだと勘違いして戦っていました」
「は? なんで?」
「ゼギオンという者は空間支配能力があるみたいですが、それの所為かと」
「よく分からないんだが」
「アイツらは時空間を歪ませる行為を嫌います。 なので気に入らなかったんでしょうね」
「そうだとして……そんな能力相手の奴に勝っちまうなんてな……」
モニターを再度見やる。
そこには息絶えたゼギオンと、ツルハシを振り回すクラフターが映っている。
「迷宮内の配下は、仮に死んでも生き返る事が出来るから良かったものの……外じゃ決闘の類はしない様に伝えてくれ」
「……分かりました」
モニターは切り替わり、外の景色へ。
首都郊外で展開するゲルド部隊、その先にはマイクラ軍事部の戦車隊が壁の様に並ぶ。 先頭に機龍ことIRPが鎮座。
その前面には軍事部によって対戦車塹壕が掘られ、歩兵にも効果が期待出来る蜘蛛の巣が、有刺鉄線の様に彼方此方に設置されていた。 ワイヤートラップや地雷は友軍誤爆の恐れがある為、見送られた。
突破された場合に備えては、首都内に守備隊や義勇兵の人間と魔物の混成部隊がいる。
烏合の衆ではあるが、隊長格はテングの少女モミジだ。 「なんで?」と思うが、どうやら忠誠心を示す為なのと、色々あってベニマルに嫁入りする事にしたかららしい。
『旦那様の為に勝利を捧げるのです!』
良いところを見せたい、というのと外堀を埋めていくスタイルだった。 微笑ましい。
「この布陣で突破されるとは思いたくないが、万が一もある。 その場合、首都の守備隊だけじゃ心許ない。 最悪、俺も出る」
「ベニマルさんの時も?」
「何の話?」
「いえ、なんでも」
「……? 見た限りじゃ、帝国軍は首都手前に陣営を設置している。 迷宮攻略の部隊も合流していっているから、対応に追われているな。 本格的な首都攻略は明日以降かと思う」
リムルは知ってか知らずか、モミジとベニマルの件をスルー。 今の話を続ける。
戦時なので浮ついている場合ではないのだが、辛辣同志としては少し話して欲しかったり。 乙女ですもの。
「悪魔の1人、カレラを付けてるし大丈夫だ。 それでも突破される様なら市街戦。 地下に籠城する形になる。 そこまで行ったら手遅れだろうけど」
「軍事部が何とでもします。 大丈夫です」
「何でもされたら困るがな……」
クラフターの今までの所業を思うリムル。
シオンの汚料理を兵器転換したり、IRPを犬の散歩感覚で動かしたり、ロケットを誤射して他国に堕としたり。
隣に立つ通訳ちゃんはマトモそうに見えるが、ロケットに親を括り付けて打ち上げている。
物作りに携わる者達が、皆狂人じゃないと願っているが、やはり不安なリムル。 マトモなのは俺だけか。
「民間人には手を出すなよ。 ロケットを帝国に打ち込むのも禁止だ」
「既に伝えてあります」
「不安だなぁ……戦争って勝ち方があると思うんだよね。 前世は平和な国だったから、考え方は間違ってるかも知れないけどさ……」
「戦争に良いも悪いもあるんですかね」
「こちとら侵攻された側だ。 悪いのは向こうだろ」
時間は無慈悲に進み、戦争も変わる。
早速モニターには動きが見られた。 創造主がスニーク姿勢で右往左往している様子が。
「あああ……碌でもない事考えてるよ絶対」
今までの経験からズバリ当てるリムル。
予想は出来ても、止められない。
分かっていたつもりでも、いざ被害に遭うと頭を抱えたくなるのだった。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
マイクラ軍事部は悩んだ。
帝国軍事部が陣営を設置したのだ。 どうするべきか。 悩ましい。
"もうね、誘ってるとしか思えない"
地面を掘り進み、真下にTNTを詰め込んで吹き飛ばす工作戦術か。
IRPで砲撃するアウトレンジ戦法か。
戦車隊で正面から堂々戦うが礼儀か。
いっそIRPを突撃させるか。リスクを考えれば正面は避けたい。 しかし軍事部としては従来のクラフト品や方法より、新しい兵器を試したい。
彼らの悩みはソレだ。
クラフター相手に陣営なんてやってはいけない。
ファルムスの時もそうだった。 纏まれば吹き飛ばしたくなってしまう。
余程防衛に自信があるなら良いが、そうでなければタダの的。 時に実験台扱いをするクラフター。
元の世界で例えるなら、固定目標……村相手にMODを試す、みたいなものかも知れない。
"よし。 堂々正面から叩こう!"
結論を出し、笑顔を擡げるクラフター。
IRPは砲撃しながら敵陣に突撃。 後続は戦車隊でいく。 最終的には殲滅であるが、IRPの格闘能力を試す。 戦車隊は援護。
勝ちに行くというより、兵器を試す形だ。
クラフターは善は急げとばかりに、慌ただしく動き始める。 IRPが敵陣に移動を開始、戦車隊が後を追う。
「ゲルド様、彼等が移動を!?」
「……我等は守りに徹するのみ」
クラフター達の進撃を、ゲルドは見送る。
自分まで持ち場を離れる訳にはいかない。
なる様にしかならぬ。 そう諦めの視線も込めて。
何より彼等を止める体力は無い。
やがて聞こえてくる悲鳴や爆音に頭を抱えつつ、首都の守りを維持するゲルド達であった。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
「機龍、来ますッ!?」
見張りの兵士が叫ぶ。
次の瞬間。 砲撃が雨霰と降り注ぎ、兵士の肉が弾け骨が飛んだ。
酸鼻をきわめる帝国陣営。
守りに徹してると思われたクラフターが、突然攻撃してきたから混乱状態だ。
「防御結界はどうした!」
「敵弾貫通! 意味を成しません!」
「くそっ! 特殊砲弾か何かか!?」
ただのTNTである。
だがしかし、マイクラ創造物だからなのか結界を貫通して地表に着弾。 次々とテントや兵士達を爆散していった。
「噂の二足歩行兵器は虚仮威しじゃないという事だな……」
大将、カリギュリオは唸る。
機龍……IRPの存在は帝国も知っていた。
だが所詮見た目だけ。 消えたヴェルドラに似せた、或いは騙る兵器であると帝国は見下し問題にしなかった。 この瞬間までは。
尚、本来なら秘匿すべき大型兵器IRPの情報が漏れたのは、クラフターが犬の散歩の如く野外で稼働させていた所為である。
能力も、試験光景からある程度推測された。
ついで、格納庫に出入りする場面も見られており、地下の存在もバレている。
とはいえ、そこに行くにも首都を攻略しなければならない。 事今に至っては先ず守らねばならなかった。
それに、以前よりチューンナップされ、武装も強化されている。 帝国の参考にしている情報は既に古いのであった。
「此処にいても被害が拡大する! 残っている戦車を中心に態勢を整え迎え撃つ! 全体前へ!」
大将は、砲撃の音に屈せず命令を飛ばす。 聞いた恐慌状態の兵士は、何とか意識を保たせ迎撃行動へ。
「敵の編成状況知らせ!」
「はっ! 敵は機龍を先陣に、背後に戦車隊を連れています!」
「数は此方が上! 怯むな!」
クラフターの数に対して、帝国軍事部は圧倒的だ。 連邦軍を足しても、まだ少ない。
その事は双方理解している。 故に帝国軍は数と現代兵器群で蹂躙しようとし、連邦軍は効率の良い防衛陣形を構え、クラフターは好き勝手楽しんでいる。 なんか、クラフターはいつも通りな気がするが。
「向こうから態々射程圏に入って来てくれるならば、一斉砲撃で討ち取ってくれる!」
帝国の誇る戦車砲を一斉に喰らえば、あのデカブツも無事では済まない筈。
砲撃には驚かされたが、今は戦車の装甲が耐えてくれている。 その程度なのだ。
機龍の装甲もそうであろう。 そう考えた。
後続の敵戦車の存在については、帝国の型落ちを真似て製造した物の様だ。 そんなもの、即座にスクラップに出来よう。
間も無くして、機龍が見えてきた。
「走りながらで構わん! 射程に入り次第撃て! デカブツ相手だ、当たるぞ!」
「主砲撃ち方よーいッ、テェッ!」
撃ち始める帝国戦車。
何発もの砲弾が機龍に命中。 黒煙が巨体の上半身を包み込むも、機龍は止まらない。 それどころか無傷ときた。
「なんだと!?」
驚く大将と兵士達。
帝国が誇る技術が、力が通用しなかったのだから。
「くそっ! 脚部に集中砲火! 転倒させろ!」
左右の脚に砲撃を始める帝国戦車。
ところが、よろける事もなし。 そのまま速度を落とさず向かってくるではないか。
機龍の姿勢制御が優秀であるのもそうだが、そもそも機龍の外殻はエンチャント黒曜石。 迷宮の入口を塞いでいた黒曜石を更に強化したモノだ。 迷宮の入口をどうにか出来ない時点で、機龍に立ち向かうのは無謀であったのだ。
「迷宮都市まで撤退急げッ!?」
敵わないと考え、命令を下す。
だが時既に遅し。 機龍の機関砲が唸り、幾つかの戦車の装甲を貫通。 機械的な部分が故障したか、内部の戦車兵がやられたか動かなくなる。
「装甲を抜く弾丸!?」
機龍は動かなくなった戦車を蹴り飛ばし、逃げる戦車や歩兵に当てる。
戦車は兎も角、歩兵はひとたまりもない。 そのまま潰されて、地面にシミを作る。
それに飽き足らず、逃げ遅れた戦車や歩兵を踏み潰し回る。 その様は圧倒的。 恐怖を具現化した様な恐るべき兵器だった。
「な、なんという防御力と機動性だ……」
それで終わらない。
運良く逃げ出せた様に見えた残党戦車と歩兵群に砲身が向けられる。
今度はTNTキャノンではない。 レールガンだ。 電気をチャージし、砲弾が撃ち出されたと思えば、残党が木端微塵。 帝国軍を全滅させてしまった。 それでも運良く生き延びた兵士も散見するが、戦うのをとっくに諦め敗走している。
「うわああ!?」「化け物め!」「退避ーッ!」
悲鳴を掻き消す勝利の咆哮を上げる機龍。
後続の戦車隊は獲物を奪われてお怒りだったが、それは上空で見ていた悪魔もであった。
「ねぇ君達。 抜け駆けは良くないなぁ?」
情報武官カレラだ。
肩の長さまで伸びた眩い金髪、媚びぬ青い瞳の少女の姿に、羽織る軍服、下はスカートの組み合わせ。
見た目こそ可愛いが、暴れるのが好きで手加減を知らぬ、暴走したら手がつけられない危険人物でもある。
男女の識別を気にしないクラフターからしたら、軍服や強さに興味がある。 あとエリトラナシで飛行・滞空する辺りとか。
「玩具で遊びたかったんだろうけど、コッチも同じなんだよね。 代わりに君達が遊んでよ?」
IRP内部、コックピットに警報が響く。
BBが強大な魔素、或いは何かしらの力を感知した。 パイロットは即座に対応。
上空のカレラに多重ロックオン、背中のハッチが開くと対空誘導弾連続発射。 全てカレラに飛翔する。
「重力崩壊(グラビティーコラプス)」
刹那。 誘導弾が勢いよく地面に墜落。 爆発した。 IRPの機体も倣う様に地面に崩れる。
突然の事に、パイロットは驚愕する暇もない。
カレラが核撃魔法の一種を発動したのだ。 星の重力磁場が狂い、局地的な超重力力場が発生。 限定的な超圧縮空間の影響範囲に巻き込まれたIRPが押し潰されたのだ。
だがBBが姿勢制御再演算。 対重力エンチャントを機内で構築。 機体に付加。 RS補助動力装置稼動。 IRPのパワーを増幅させ、子鹿の様に震えながらも暴威に抵抗して見せた。
「あははは! 凄いね、その玩具! でも、どこまで耐えられるかな?」
引き続き警報。
このまま圧縮が続いては危険だ。 BBの予想では全エネルギーが1点に収束、小規模な超新星が地上に発生する。
爆発か、何もかも吸い込む超重力か。 クラフターには分からない話だが、何とかしないといけないのは理解出来る。 宇宙開発に役立つかなとか考えてる場合じゃない。
パイロットは機体を操作。 この重力下では砲撃も思う様にならない。 エンチャントを施し、何とか対応させる。
鍵盤を叩き、即席エンチャントを砲弾にも施す。 砲身をカレラに向けた。
「おお? その状態から攻撃出来るのかな?」
トリガーを引く。
起爆タイミングを演算処理されたTNTが飛んで行く。
そしてカレラに着弾、爆発。 彼女は避ける事なく笑顔で受け止めて……煙が晴れる時は更に笑顔であった。
予想はしていたが、やはり強力な魔物やら悪魔にはTNTは効果が薄い。 次はレールガンを試さねば。
「あっはっはっ! 良いよ良いよ! ここまでレジスト出来るとは思わなかった! もうちょっと君と遊んでいたいけど……お互い仕事に戻ろっか? リムル様に叱られたくないからね。 今回は君達の勝ちで良いよ!」
ところが悪魔は勝手に満足し、去っていく。
重力異常が直り、警報が止む。
何か。 負けた気分だ。
パイロット……クラフターは項垂れた。
改めて思う。 この世界は化け物だらけだと。 対抗するには更なる進化が、創造が必要だ。 同時に創るのが楽しみである。 人魔共に成長していく。 そんな感覚は嫌いじゃない。
それに……あの悪魔は軍服だった。
"彼女も誘うしかないね。 軍事部に"
こうして悪魔達は軍服というだけでそれぞれロックオンされてしまった。
それが幸か不幸か、判断はそれぞれである。
さて。 まだ残党はいる。
掃討戦だ。 迷宮都市にいる荒らしだ。 迷宮内で遊んでいる同志はアテにならないから、このまま進軍。 滅ぼしてくれる。 戦車隊も活躍したがっているし。
加えてIRPのレーダーは、ドワルゴン方面、海路を行く飛行物体群を捉えていた。
行くか。 荒らし許さん慈悲は無いのである。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
「……結果オーライだな、うん」
迷宮内、管制室。
リムルは死んだ目でモニターを見て言った。
軍事部が勝手に行動し、帝国軍本隊を倒し、カレラとドンパチ。 落ち着いたと思えば、そのまま迷宮都市にいる残存部隊を目指して移動を再開。 最早、帝国が一掃されるのも時間の問題であった。
「カレラには後で叱っておこう。 アイツらに必要以上に手を出すなと」
「たぶん、悪魔達は目を付けられたと思いますよ。 軍服でしたし」
「軍服で?」
「軍事部が興味を持った様です」
「……俺、知らねー。 アイツらが悪い」
責任放棄しようとも、全ての思考放棄は許されない。 戦争は続いているのだ。
「残るは此処、迷宮都市地上部分。 あと海上、というより空に航空戦力を確認した。 飛行船部隊300隻もいる。 油断ならないな」
「IRPに対空兵装を積んでいます。 馬鹿達も個人で飛行する方法がありますし、迎撃は可能です」
「そうだな。 カレラにミサイル放ってたし」
「撃墜されましたけどね。 まだまだ対策や改修の余地があります。 悔しいですが燃えますね」
「あー……うん。 任せる」
目を輝かせ、張り切る辛辣ちゃん。
対してリムルは虚な目に。 ファンタジー世界に現代兵器やSFが蔓延っていくのは良い、それで皆が守られて幸福になるなら。 リムルも現代日本の知識等を用いて列車や通信技術の開発を進めたし、クラフターが似た事をするのは許せる。
問題なのは、コントロールを益々離れる事なのだ。 辛辣ちゃんは貴重な馬鹿達の通訳であるのに、そんな彼女が馬鹿サイドに堕ちていく様がもうね……。
「やっぱ娘なんやなって」
「へ?」
「いや……何でもない」
全ては考え方次第。
連邦・義勇軍に一切の損害が出ず(ウルティマは残念でしたが)、勝手気儘な連中……自然災害的な連中が侵略者を葬ってくれたと考えよう。 うん。 悪くない。 そう無理矢理納得しておく。
代わりに、帝国兵達の魂を利用して魔王を量産するとか出来ないリムルなのだが、まぁ、自身や配下が強化されなくても大丈夫だろう。 マインクラフターが何とかすると信じよう……。
「だけど、こうも一方的とは」
「私達の創造が通用して良かったです」
何処か安心した様な辛辣ちゃん。
そんな彼女に、リムルは言う。 たぶん創造に酔って、命を蔑ろにしてるんじゃないか、という危機感と嫌悪感があったのだ。
「……死んだ帝国兵にも家族がいるんだろう、と思うと同情の余地はあるが」
遠回しに。 だけど言わんとしている事を察して、辛辣ちゃんは真顔で返す。
「これは戦争、命を奪い合うと分かって送り出してるんです。 知らぬは罪です。 何より、こっちだって家族はいます。 殺さなきゃ殺されます」
「分かってる。 だけど、生き返るアイツらが嬉々と一方的に殺戮してるのは、少し違くないか?」
「その感性は否定しません。 でも侵略してきた帝国が悪いです。 殴ってきた相手に殴り返して、文句を言われる筋合いは無いです。 それとも最初から此方が降伏すれば、血が流れない保証があると? 仮にそうだとして、それはテンペストだけ? 西方諸国は? 帝国に支配された後は? それを考えれば、テンペストが帝国を食い止めて正解だったのでは? その方が流れる血は少なかったと思います。 正直言って、未だ混乱から立ち直れない剣と弓矢な西方諸国のみで戦車や銃を使う帝国に勝てるとは思えません」
それは飽くまで、個人の意見だ。
西方諸国に帝国が攻め入る事態になっても、圧倒的な力を前にして、無血開城をする様なら死傷者は少なくて済むかも知れない。
だがそれすらも可能性である。 帝国が先に手を出した件、宝欲しさに迷宮を攻略しようとした件を踏まえると……殺されはしなくても、かつて竜の都に駐屯していた傀儡軍みたいな振る舞いをされたかも知れない。
下手すると、更に酷かった可能性も考えられる。 風紀が乱れた行為……奴隷化や陵辱、強盗が蔓延っても、おかしくないのだ。
やはりそれすらも、可能性の話でしかないが。
「そうだな。 ファルムスの時もそうだったが……アイツらがその内、笑顔で敵対したら堪らないなと思っただけさ」
「確かに、リムルさんを倒そうとする時はある様ですが。 心底嫌ってる訳じゃありませんし、他に敵がいる内は大丈夫ですよ」
「敵がいないと困る状態っていうのは不安」
「もし敵になっても……リムルさん達は強いですから。 その時は、お仕置きして下さい」
「生き返る連中だしな。 加減は要らないな」
苦笑するリムル。
モニターに視線を戻せば、戦車隊が迷宮都市の帝国連絡部隊に砲撃しているところ。
地上戦力は一掃されると見て良い。 リムルが気にするべきは、例によって後始末であろう。 西方諸国方面へ抜ける気だろう飛空船団も災害を前に勝手に沈む。 そう思えるくらいには、何だかんだクラフターを信用しているリムルだった。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
「こ、降伏だ……参った!」
迷宮都市地上部。
戦車で押し掛けたら、敵対していた帝国が友好状態になった。 だとして荒らし行為が許される訳じゃない。 即座に殲滅。 戦車による砲撃を再開しよう。
「そこまで。 聞こえている?」
辛辣同志の声がした。 この場にいない。 念話でもない。 各戦車やIRPに取り付けられた無線機からだ。 電気信号とやらか。 念話の出来るクラフターには必要無いが、これはこれで面白いから許す。
「ついでに帝国兵も許して下さい。 モニターを見る限り、そこの部隊は降伏しています。 これ以上の戦闘は無意味ですよ」
無意味かどうかは我々が決める事。
戦車砲が撃ち足りない。 もっと撃たせろ。
「十分戦闘記録は残せたでしょ。 シズさんに言い付けますよ」
卑怯なり。 止めるしかないじゃないか。
シズに説教されるのは嫌だ。 あの妙な迫力は好きになれない。
「そうして下さい。 今からそこにいる兵士らは捕虜です。 リムルさん達の部下が間も無く来るので、大人しく明け渡して。 この戦争の交渉相手にしたり、情報を抜き取るのに使うので。 間違っても実験台や材料にしないで下さいよ」
メスガキ悪魔は首を捻って情報を取得、死体はポイしていた。 アレは良いのか。 クラフターは訝しんだ。
ウチはウチ。 他所は他所、か。
一方でアレソレの者を見習えと云う者もいる。
矛盾や理不尽な連中は数多いる。 気にしていたら進めない。 自由にさせて貰いたい。
そう思ったクラフターだが、振り返れば何時も自由だった。 好きに生きよう。 気持ち良い人生だ。
「これで地上はクリアですね。 次は遠方の飛空船団ですが……」
其方も好きにやらせて貰おう。
北方にも西方にも同志はいる。 慌てる事はない。
IRPの弾薬を補給したら、再出撃だ。
戦争は続く。 このレベルならマイクラ軍事部じゃなくても良さそうだが、何が起きるか分からない以上、人手は多い方が良い。
何よりも、軍事部はこの状況を楽しんでいる。 参入はしても降りる同志は殆どいない。
クラフターと村人とでは、命の重さが異なる。 片や復活可能。 片やハードコア。
思考も異なる。
村人がクラフターの戦争を非難しようとも、本人達は気にせず好きにやる。
つまり、戦争を楽しんでいるのだ。 この戦場における命とは、彼等にとって人生を楽しむ為の部品に過ぎない。 重そうに見えて、時々軽いのだ。 それが沢山あればある程に。
政治なんて、知っちゃこっちゃない。
ぐちゃぐちゃ煩い。 勝てば良かろう。
創造。 破壊。 他も楽しんだもの勝ち。
良くも悪くもクラフターは、いつもそう。
そして……都合の悪い奴はぶっ飛ばす。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
マインクラフターの登場で、多くのキャラの影が薄い。 その割にネームド的なクラフターが出ている気がする。
出来れば、もっと絡ませていくべきだろう。
……いや。 多くの人魔が、この世界に存在しているし、クラフターと共に活躍している者はいる事だろう。
ただ多くの人魔と国、組織がいる世界だ。 全てをただの1人で観測は出来ないだけ。 言い訳かもだが。
だが貴方の人生という作品内に全人類及び魔物等が出て来ない様に、また相手の人生に必ずしも自分が出演している訳ではない。
ファルムス軍や帝国軍の兵士が万単位で、一瞬の内にクラフターに殺された事もだ。
顔も名前も知らない相手を、見ようともせず砲撃やら何やらで吹き飛ばしてきた。 そんな者達はクラフターの人生に一瞬だけ出たか、そもそも出ていない。 だが他の誰かにとっては"登場人物"だった筈だ。
それが不幸かどうかは、人それぞれだ。
そして"弟"君についても人それぞれだ。
存在を忘れられている弟君……とは、通訳やロケット開発をしている辛辣同志の弟だ。
ほぇ? 弟いたの? となるかもだが、いたのだ。 なんなら辛辣の上に姉もいる。 姉は残念ながら亡くなっているのだが。
(焚書処分参照)
さて。 そんな弟君。
リムル達の世界に造られた湖底研究所で生まれ、マイクラ世界に送られる。 その後、先輩達に誘われるままマイクラ軍事部に入部。
暫くして帝国軍事部に対抗する力として参戦要請。 そうしてリムル達の世界に多くの先輩達と共に派兵されて来た……という経緯があった。
「僕が生まれた世界。 思い入れはないけど、争いは止めないと。 その架け橋となる為に頑張るぞ!」
彼の役割は、姉同様の通訳だ。
最前線には出向かず、後方で村人達と交流、取引、情報の整理。 他兵站任務……だったのだが。
彼はショタ……見た目が幼かった。 庇護欲に駆られるのだ。 まるで精神作用系スキルの如く刺激される。
それが災いしお姉さん達に"廻される"事に。
「情報通り摩天楼が何基も聳える大都会だなぁ……うわっ!?」
魔国連邦周囲の地形を把握しようと、摩天楼に昇ったら、有翼族のハーピィに攫われて天翼国に。 そこで、お姉さん達のペットにされる。
「可愛い子が、あんな所にいちゃ駄目よ。 お姉さんみたいなワル〜い魔物に攫われて"食べられちゃう"んだから♪」
「どう? ハーピィの翼の心地は?」
「ネムの抱き枕にしてあげても良いの」
「や、やめ……あぁ……」
だが現地クラフターの協力で何とか脱走。 すると今度はケモ耳お姉さんに攫われて獣王国へ。
「フォスはフォスって言うです! どうですか? 特別に触らせてあげた尻尾。 ふわふわです?」
「それとも、ぺろぺろされるのが好み?」
「良い匂い♪」
「ふわあぁぁ……」
同じ様に脱出するも、今度は女聖騎士に"保護"を名目に西方諸国へ拉致された。 暫く国を転々としたが、同部屋にされる辺り……不健全な目に遭ったとだけ述べておく。
シズやヒナタに保護されたら、また違ったのかも知れないが、残念ながら会う事はなかった。
「や、やっと……連邦に戻れた……」
そうして、身も心も弄ばれた弟君。
ようやっと連邦軍の後方部隊に合流した頃には、帝国との戦闘が粗方終了していた。
「大変。 今治療してあげますからね」
戦闘による負傷者と間違われ、角が生えたピンク髪の者……シュナに治療されそうになったが、慌てて逃げた。
すっかりお姉さん不信になってしまっていた。
また、先輩達にしてもそうだ。 目先の利益や創造に囚われたのか、部隊から弟君が消えたのを気にもしてくれなかった。
戦争じゃなくとも、多少の危険は覚悟して異世界入りしたのに……こんなのって、あんまりだよ。
「もう嫌だ。 お家帰りたい……」
運命は残酷だ。
死ぬより良いだろと言ってしまえば、死ななきゃ何されても構わないと解釈されかねない。
誰も守ってくれない。 気にしてくれない。 良い様に弄んでくる人魔達。 そんな不信感。
これの所為で自分の姉、辛辣ちゃんに会っても喜びが素直に湧かず、打ち解けるのに時間が掛かったのは仕方なかっただろう。
「こんな架け橋は、世界はいらない! クラフトや情報を手土産に帝国に亡命してやるっ!」
少年は飛び出し、ユウキがいる帝国に向かう。
これが今後どう影響するのか。 この時は本人も誰にも分からなかった……。
マイクラ、ブロック要素が。 ががが……。