寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

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前回のあらすじ
帝国地上軍壊滅。
弟君、帝国へ。

今回のあらすじ
弟君、帝都にて。
海上ドラゴン戦。
飛空船団全滅。
ユウキの生死?

今回、かなり長め。


遅くなりました……。
評価、お気に入り登録、いつも ありがとうございます。 励みになります。


157.末期と影

力の差は歴然でも戦争は1日2日と終わらない。

継戦中の連邦軍と帝国軍。 加えてマイクラ軍事部。

次の獲物は海上を行き西方諸国を攻め入ろうとする飛空船団になりそうであったが、ここまで来て問題が起きてしまう。

 

 

「弟が行方不明?」

 

 

IRPを地下格納庫に一旦収め、補給を済ませている間、クラフターは説明した。

 

君の弟が突如消えたのだと。

 

されども心配要らぬ。 新世界に来たから冒険しているだけだ。 放置すれば良い。

帝国領に向かったのが最後の目撃談。 飽きたら戻って来るさ。

クラフターは楽観的思考だった。 仲間意識はあるも、特段組織的でなし。 縛り合わない。 創造主は自由に生きる。

 

 

「弟とは面識が浅いので、どういう性格か知りませんが……アンタらと違って復活出来ない筈です。 それなのに戦争相手の帝国に向かうなんて何を考えているのか……何かあってからじゃ遅いですよ」

 

 

あっても近隣の同志が何とかするさ。

仮に1人のクラフターが離反したから何だ。

どうという事はない。

ましてハードコア状態の相手。 我々が遅れを取る気がしない。 帝国軍に寝返ったとしても、荒らしとして処理する。 能力は我々と並だろうし。

 

 

「あのね、クラフターには違いないんです。 それもアンタらの世界で軍事部に入り、大なり小なりクラフトを教えられている筈。 その技術や知識が帝国に流れたと危機感を持って下さい」

 

 

心配症だな。 基礎に足して戦車はクラフト出来ても、精密兵器でもあるIRPを製造出来るとは思えない。

知識があったところで、帝国が我々の概念に沿う創造が行えるとも思えない。 良くも悪くもだ。

そもそも。 1人のクラフターに変えられる戦局は如何程か。 村人相手なら兎も角、完全装備の創造主相手に敵うまい。

 

 

「非常識な連中が何を言っているんです」

 

 

そうだとして、戦争は短期で終わる。

今更ジタバタしても遅い。 帝国は血を流しすぎた。

 

 

「帝国そのもの以外は? あの国にはユウキがいるんですよ。 世界を混沌の渦に堕とそうとする連中が、弟そのものを悪用しない筈がない」

 

 

我々には関係ない。 自業自得だ。

奴が選んだ道だ。 基本干渉しない。

 

 

「冷血ですね」

 

 

血なんて関係ない。

 

 

「それでも私の弟です。 私だけでも調査に」

 

 

駄目だ。 ハードコア同士をぶつける利点がない。

 

 

「そうやって、いつもいつも!」

 

 

だからこそ。

創造主はネザライトの剣や銃を装備。

 

 

「……えっ?」

 

 

我々が向かおう。

なに。 急に帝国を観光したくなっただけ。

ついでに弟を連れ戻す。 簡単だ。 飯の用意でもして待っていて欲しい。

 

 

「……お願いします。 弟を助けて下さい」

 

 

クラフターは頷き、地下鉄で帝国領に向かう。

道中、レールが破壊されていたり丸石が充填されて手間取ったものの、何とか手前まで辿り着く。

十中八九、弟の仕業だろう。

ここから読み取れるは拒絶だ。 心の壁だ。 ナニがここまでさせたのか。

 

そして、何をしているのか。

 

湖底研究所の2の舞いにならない事を願いながら、創造主は透明化のポーションを飲み帝国に潜入していく。

 

願わくば、息子が無事でありますように。

 

だが現実は非情。

弟君はユウキらに接触。 情報を与えてしまっていたのであった。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

「なるほどねー。 色々ありがとう」

 

 

帝国領の、とある密室。

待ち構えていた様にいたユウキと出会った弟君は、良い餌になってしまった。

マイクラ世界にいた所為で、多くの知識は通用しなかったり、とっくに知っているモノで詰まらなかったが、IRP等の情報は使えそうだと判断された。

 

 

「世界を混沌に堕としたい、という意味なら協力出来そうだね。 今後とも宜しく!」

「は、はい……宜しくお願いします」

 

 

笑顔で握手を求められ、オドオドしながらも握り返す弟君。

もう引き返せない。 目の前のユウキという人物が、それを許さない。 そう思わせる感覚に襲われる。

予め得ていた情報以上に、ユウキは危険だった。

実際に会って初めて分かった。

ここに来て、一時的な感情で動いてしまった己を後悔する弟君。 だがもう遅い。

 

 

「そう硬くなるなよ! でさ、まだ向こうは君が裏切ったとは思ってないよね。 そこで連邦に潜伏して情報を報告して貰おうかな。 出来れば機龍を奪って帝国に持ち帰って欲しいんだけど。 そうすれば君も帝国に認められて居場所が手に入るよ?」

「そ、それは……」

 

 

"使い捨ての駒じゃないか"

 

喉元まで出掛けた言葉を飲み込んだ。

軍事部は、そこまで間抜けじゃない。

自身が部隊を抜けて帝国にいる事は既にバレている可能性がある。 下手すると殺されるだろう。 クラフターは裏切り者……荒らしには容赦しないのだ。

そんなお尋ね者の状態で機密の塊であるIRPの奪取なんて困難だ。

ユウキはソレを分かった上で言っている。

 

此処にも居場所なんて無かった。

弟君は悟り、目の前が刹那的に暗くなる。

 

 

「もう友達だろ?」

「ッ、分かりました。 やって来ます」

 

 

言葉の薄さを感じながら部屋を後にする。

絶望感に足取りがフラつきながらも、とにかく此処を離れたい気持ちで一杯だ。

 

道中、ユウキの秘書であったカガリ女史とすれ違った。

 

 

「飲み物お持ちしたのですが」

「い、いえ! お構いなく!」

 

 

逃げる様に帝国を後にする。

ユウキも怖いが、お姉さんも怖い。

 

 

(今更、皆に謝っても……)

 

 

門限を過ぎた子供の様に、戻れるとは思えない。

だからって、ユウキの言いなりになって連邦と敵対するなんて。

 

 

(これからどうしよう……)

 

 

そんな思考も疲労で薄れていく弟君。

それでも余計な事を考えずに済むと思えば、悪くないのかも知れない。

 

インベントリを開く。

あるのはベイクドポテト、仮拠点セット。 松明に土や白樺木材、丸石といった簡単なブロック。

護身用の木剣や盾、エンダーパール。 軍事部支給の自動拳銃。

ツールは鉄ツルハシに鉄スコップ。 鉄斧もある。 それぞれエンチャントも付く。 これだけあればサバイバルは可能だ。 寧ろ贅沢なくらい。

 

 

(数日は持つ。 どこかで野宿しよう)

 

 

夜の、闇深き帝都を歩く。

科学文明の恩恵により、灯篭に代わり街灯が設置されるようになった帝都だが、未だ全区画を網羅してはいない。

 発展を続ける帝都ではあったが、闇を全て駆逐するのはまだまだ先の事となりそうだった。

 

 

(ワキツブシが甘いなぁ。 取り敢えず松明を刺しておけば良いのに)

 

 

マイクラ思考に犯されている弟君は思った。

実際、クラフターが帝都にまで手を出していれば、西方諸国同様に闇を払い除けた筈。

彼等の思考的に、建造物が乱立する区画の光源が確保されていないとか、大問題であるし。

なのに数年間、クラフターが帝国の存在を知りつつ改修しなかったのは、現地の軍事部が強かった事や、他に忙しくて放置していたから。

つまり偶然にもクラフターの魔の手から逃れていたのだが、その気になれば引っ掻き回すのは容易であろう。

ギィのいる氷の領土にもチョッカイ掛けているのだ。 怖いもの知らず、ではないが、思考が色々ズレている。

 

 

(ん? アレは?)

 

 

とぼとぼ歩いていると、目の前に人影。

慌てて物陰に隠れ、スニーク姿勢。

薄暗くて視認し難いが、豊満な胸……女性の様だ。

鞄を持ち、何やら急いでいる。

戦時下の、こんな時間に。 怪しい。

 

 

(だからなんだ。 例え僕の様に亡命希望者だとしても……)

 

 

そう考えたら、余計放置出来なかった。

自身は間違えた選択をしてしまったが、お姉さんには間違えないで欲しいから。

 

 

(あーもう! なんで僕は!)

 

 

結局後を付ける事に。

エンダーマンを模った漆黒パーカーのフードを被り、闇に溶け込む。

こんな時、ワキツブシが甘い空間で良かったと逆に感謝した。 明るければ目立つ格好である。

 

そして、直ぐにも危惧していた事が訪れる。

お姉さんの目の前に突然別の人影、男の人が立ち塞がったのだ。

 

 

(ッ!)

 

 

そのプレッシャーに、アイテムスロットから素早く護身用の木剣……ノックバックエンチャント付きを右手に持つ。 左手にはシールド。 防具はパーカーの上になるので未着用。

新人にしては素早い反応。 軍事部の先輩達に色々教わった結果であった。 あとゾンビやクリーパーに追いかけられたりとか。

 

 

(帝国の諜報員!? 恐らく他にも……!)

 

 

それはそうと、相手は只者ではない。 帝国の者に違いない、お姉さんは直ぐにでも殺されそうな距離に詰められる。

想定されるシナリオは、お姉さんの亡命がバレて、始末されようとしている……だ。

 

 

「こんな夜中にどこへ行くつもりだ?」

「あら! 近藤中尉ではありませんか!」

 

 

お姉さんは慌てる素振りを見せず、悠然と切り返す。

弟君には分かる。 アレは人を騙す口調だ。

やはり友好的な関係ではない。 元の世界においても似た事はあった。 笑顔で騙されての大型建築の手伝いとか。 軍事部へ誘われての入部は、学ぶ事も多かったから良しとして。

 

 

「君はカリギュリオ軍団長の参謀のミランダ、だな? 戦時作戦行動中に、何故帝都に戻っている?」

「怖かったですわ、近藤中尉! 実は私、閣下に密命を受けて、帝都に戻ってきましたの───」

 

 

返事をしつつ近寄り、近藤の胸にしな垂れかかるお姉さん。

今までの経験から、見ていて良い気分ではないものの、冷静に状況整理に努める。

 

 

(コンドウ……ユウキ・カグラザカもだけど、報告にあったシズエ・イザワやヒナタ・サカグチいう日本人と似た発音な気がする。 この人もそうなのかな? ミランダは分からないけど、参謀って事は指揮官を補佐する将校さんかな? でも直前までの行動と、今の行動からして……)

 

 

逃げたいミランダからしたら、近藤が邪魔であり消したい筈。

近藤はミランダが逃げようとしているのを知っていて、敵前逃亡として殺す。

互いに騙し合い……負けるのは。

直感だった。 止めなくちゃ!

敵も味方も、利益も不利益も関係なく思った。

 

 

(間に合え!)

 

 

エンダーパールを投擲。

ミランダにぶつけて、そのままワープ。 体当たり。

 

これがミランダの運命を変える出来事になった。

本当なら、この後、近藤に小型拳銃で こめかみ を撃ち抜かれてアッサリ死んでいたのだ。

 

それを裏付ける様に、先程までミランダの頭部があった場所を1発の弾丸が通り抜ける。 ギリギリのタイミングだった。

 

 

「なんだい!?」

 

 

驚き、近藤から離れるミランダ。

 

 

「邪魔が入った」

 

 

近藤は乱入者を優先。 懐から拳銃を出して、目にも止まらぬ早撃ち。

最初から構えていたシールドで防ぐ弟君。 衝撃が伝わり、左腕がジンジン痛む。

 

 

「くっ!」

 

 

構っている場合じゃない。

衝撃に多少よろけつつ、反撃。

ミランダが近藤から離れているのを確認し、木剣を横に振る。 それを素早く回避したつもりの近藤だったが、剣先が衣服に掠った瞬間、大きく後方に吹き飛んだ。

エンチャントの力は伊達じゃない。

 

 

「むっ!?」

 

 

僅かに目を見開く近藤。

対する弟君、スロットを切り替え、木剣から拳銃に持ち替える。

そのまま吹き飛んだ先に何発も発砲。 下手な鉄砲数撃ちゃ当たるとばかりに。

静かだった夜の帝都は、最早戦場だ。

 

 

「お姉さん、逃げて!」

 

 

叫ぶ弟君。

突然の出来事に混乱する中、ミランダは逃げるのが最善と判断して走り出す。

が、他の諜報員……情報局の者も集まり始め、囲まれてしまった。

 

 

「既に手遅れだったよ、坊や」

「ッ!」

 

 

数も実力も向こうが上。 先程の射撃の手際良さもあり、ミランダは諦観した。 こうなっては助かる余地はないと。

 

普通なら絶望的。

 

だけど弟君は諦めない。 マイクラ世界で先輩達に学んだクラフトは、コツさえ掴めば希望の糸を幾らでも引き寄せる事が出来るものだったから。

 

 

「終わってない!」

 

 

お姉さんの側により、丸石ブロックで防壁を展開。 豆腐状にして即席シェルターをクラフト。

 

 

「一瞬で!?」

 

 

突然の壁に驚きつつも、直ぐに発砲を始める諜報員達。 ところが通常の拳銃弾程度で丸石が抜ける事はない。

それでも絶えず銃撃音が響く中、弟君はツルハシに切り替え、地面を掘り進む。

 

 

「うおおおおっ!」

「なにしてんのさ!?」

 

 

知らない人が見たら狂っている。

だけど、クラフターにとっては普通の事。

その人外の作業速度は瞬く間に地面にトンネルを形成していった。

 

 

「坊や、まさか連邦の?」

「良いから入って!」

 

 

出来た穴に無理矢理押し込む弟君。

自らも入り、直ぐ上を丸石で蓋する。 隠れる目的なら、蓋はシルクタッチによる元の素材の使用が好ましいが、無い物ねだりしても仕方ない。

 

 

「このまま地下に潜ります!」

 

 

掘り進める弟。

助かる打算はある。 今は座標計算しつつ、地下鉄路線座標に進んでいる。

路線に出たら徒歩で西に退避。 帝国領手前の地下鉄駅に辿り着いたら、常備されているトロッコで一気に連邦領に脱出する。

帝国に行く際、マイクラ軍事部からの追手を妨害する為に路線を破壊してしまったが、些細な問題だ。 何なら先輩達がとっくに直している事だろう。

とにかく、お姉さんを逃すのが最優先。

 

松明を刺して光源を確保しつつ、やがて地下鉄路線の空洞に出た。

ここまでくれば安全圏まで少しだ。

 

 

「線路? 地下にこんな所が」

「お姉さん、この線路を辿って西に向かって。 連邦領に出るけど、帝国よりマシな筈だよ」

「……どうして逃す?」

「えっ?」

 

 

ミランダは困惑したままだ。

元々西側に逃げるつもりだった彼女だが、仮にも軍属。 戦時下の連邦からしたら敵である。

目の前の可愛らしい少年のスキルを見るに、連邦の人間だ。 更に言えば例の人達の仲間。

助けて貰う義理どころか、殺されて文句は言えない立場なのだ。 お互いに。

 

 

「私が誰か知っていての行為かい?」

「逃げるつもりだったなら助けようと思って」

 

 

苦笑いで応えられた。

どうも、ミランダが裏の組織【ケルベロス】の3人のボスの内"女"である事は知らないらしい。

 

 

「可愛いのは見た目だけじゃないのね」

「わぷっ!?」

 

 

なら利用してやろう。

そう、豊満な胸で少年を包み込む。 香水系呪術と幻術系のチャームを併用し、支配してやろうとするミランダ。

そうすれば、連邦で亡命するにも利用するにも駒に出来る。 そう思ったのだが。

 

 

「やめて下さい……」

 

 

まさかのレジスト。 払い除けられた。

これには少し驚くミランダ。

アピールするには若過ぎて、魅力が伝わり難かったのかも知れない。

実際はお姉さん達に酷い目に遭わされて来た結果、免疫力(といって良いのか分からないが)が出来た所為なのだが……。

 

 

「早く行って。 僕は行けない」

「なんでだい?」

「先輩達を裏切ったから。 下手すると殺される」

「……そういう事」

 

 

自分と似た境遇なのかも知れない。

男共を散々利用してきたミランダだが、不思議と小さく可愛い男の子に同情してしまう。

こんな幼い見た目でも、厳しい世界で色々苦労してきたのだろうと。

 

もっとも、想像とは違う裏切りなのだが。

ミランダは帝国という船が連邦に敗北して沈みそうだと乗り捨てたが、少年はお姉さん達に弄ばれて世界が嫌になり逃げ出した。 かなり高低差が激しく風邪を引くレベル。

 

 

「と言っても、坊やも帝国にはいられないだろ」

「ええ、まぁ」

「やっぱり私と来なよ」

 

 

ケルベロスは西側にも根を張っている。 その伝手を頼れば、生きていく事は出来る。

1人の少年の道を作る事くらい、造作もない。

なんなら、そのスキルは色々役に立つ。 部下にいても痛くない。

ところが、少年は首を横に振った。

 

 

「お気持ちだけ受け取ります。 追手が来た時、お姉さんを巻き込むから」

「それを言っちゃあ、私もだけどね。 これからは帝国から怯えて暮らさないとだし」

「似た者同士ですね」

 

 

互いに苦笑して、人の温もりを感じ合う。

ついでとばかりに、ミランダは少年の額に口付けして別れた。

 

 

「あっ……」

「気持ちだよ……元気でね、坊や」

 

 

鞄を持って、ミランダは線路を西へ行く。

少年……弟君は小さくなる背中を視線で追いかけて、やめた。

 

 

「残置諜者じゃないけど」

 

 

路線を東へ行く。

連邦に戻れない。 かといって帝国にも。

なら罪滅ぼしとして、敵国に工作をしよう。 自分も軍事部だ。 破壊の為の創造は多少なりとも学んできた。 実践する時が来ただけの事。

 

 

「自己満足なのは分かってる。 先輩達に許して貰えるなんて思ってない……いや、少しは思っちゃってるかな」

 

 

自虐の笑いと少しの涙。

拭った後の手にはツルハシ。

後悔先に立たず。 それでもお姉さん、ミランダを助けた事は後悔しない。

 

 

「武器も材料も現地調達だ。 先輩達なら、マインクラフターなら上手くやる。 僕もそうするだけだ」

 

 

その後。

帝国において軍事施設が爆発、装備品の紛失、戦車や飛空船が消えたり部品の喪失で動かなくなるといった事が多発。

見えぬ敵の存在……それが自分達の領地、それも懐に潜伏している事実。

噂では連邦のスパイ、小柄な少年だか少女の仕業だとも囁かれたが真相は不明。

更に本隊が壊滅した噂や、夜の帝都における銃撃戦の話も合わさり、帝国国民は恐怖していくのだった……。

 

だけど。

本当の恐怖、混沌を招こうとする人物は別にいる事を、多くの者はまだ知らない。

 

 

 

 

 

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「帝国領で暴れるなよ」

 

 

帝国領での爆発事件等の報告を受けたリムルが露骨に嫌な視線を送るから、濡れ衣だと辛辣に述べた。

何でもかんでもクラフターの所為にするのは如何なものか。 世界は我々のみで回ってるとでも考えているのか。

村人のみならず、並大抵の創造力では敵わぬ化物だらけの世界である。 犯人なんて不特定多数にいる事だろう。

 

 

「弟関係です……すみません」

「弟?」

「部隊を抜けて、単身帝国に向かったのです。 理由は分かりませんが、今馬鹿達が連れ戻しに向かってます。 その際、何かあったのでしょう」

 

 

辛辣が擁護する様に受け応える。

たぶん、領内で弟を巡る戦闘だ。

現地と連絡が取れないので確認出来ないが、戦闘に忙しいのだと思う。

……という事は普通に我々の所為ではないか。

急に気不味い。 視線を逸らす。

 

 

「民間人に被害が出てなきゃ良いけど。 とはいえ本土攻撃と見做されるのも……あまり戦争を泥沼化させたくないんだけどなぁ」

「帝国は混乱状態でしょうね」

「……相手の戦意が無くなったとしよう。 これで戦争意欲が削がれたなら、大人しく敗北を認めてくれるだろうし」

「此方側の残敵を掃討したら、交渉の席に着かせる事を考えましょう」

 

 

最悪の事態としては、弟が完全に寝返って荒らしになっていた場合だ。 そうなれば殺害対象の仲間入り。

出来れば避けたい事案。 他の同志なら容赦なく斬り捨て御免であるが、弟は辛辣と同じくリスポーン出来ない。 何より貴重な通訳。 生かしたいのが本音である。 特殊技能者は優遇したい。

回収しに向かった同志が上手く纏める事を願おう。

 

 

「会議中失礼します」

 

 

突然、室内に入ってくる1本角。

ソウエイだ。 影が薄いなりの仕事をしている連邦の諜報員的な村人だ。 コイツを筆頭に他に何人もいる。 ソーカとかいう奴とか。

 

 

「ソウエイか。 どうした?」

「帝国から来たと思われる女を捕縛致しました。 亡命を希望していますが、どう致しますか?」

「帝国から来た女?」

「ミランダと名乗っています」

「ミョルマイルが言っていた裏の組織、ケルベロスのボスの1人が? よし連れて来い。 軽く尋問する。 油断はするなよ」

「はっ」

 

 

リムルとソウエイは部屋を出て行った。

相変わらずハァンハァン分からない。

辛辣に通訳して貰ったところ、帝国から村人が逃げて来たとの事。

クラフターは頷く。 分かる話だ。

本隊は軍事部に殲滅されたし、今度は本土で爆発騒ぎ。 人の家に土足で踏み荒らしたばかりに亡国の危機。 逃げたくもなる。

 

 

「殆どお前らの所為ですよ。 猛省して下さい」

 

 

荒らし死すべし慈悲は無い。

荒らしを荒らして文句言われる筋合いもない。

そして命と土地と資源と、他にも貰える物は貰う。 荒らしに利用される位なら善良なる我々が再利用する。 その方が創造物も報われる。 湖底研究所の時もそうである。

 

 

「やり過ぎだって言いたいんです。 侵略されたといっても本土には民間人もいるんです、そこまで手を出したら我々が荒らしでしょう」

 

 

クラフターは溜息を吐きつつ、取り敢えず了解した。 ファルムスの時も思ったが、リムルは甘い。

国家を荒らし組織の様に見るクラフターとしては、そこに住まう村人は殲滅対象なのだ。 非戦闘員の村人だろうが、荒らしの国民に違いなく、戦争が終わっても憎悪の念から、いつまた荒らしてくるか解った物ではない。

危険な芽は根絶やしにしておきたいものだ。 全て取り除くのは酷く困難だと知りつつも、しないより良い。

 

そんなクラフターの思考を危険思考とするなり短絡的だの脳筋だの身勝手だの考え無しとするのも人それぞれ。

それでも何だかんだ「訳ありなら、後は任せる」と投げるのもクラフター。

何だかんだ他者の意見を尊重出来る部分もあるのだ。 少しだけど。

 

 

「───通訳ちゃん、尋問に来れそう?」

 

 

リムルがひょっこり戻って来た。

辛辣を連れて行こうとしている。

何か。 相手はクラフターでもあるまいに。

 

 

「弟と思われる話もあるんだよ。 聞いた方が良いと思ってね」

「……分かりました、参加します」

 

 

行ってしまった。

後に残るクラフター。 心中虚しく仕方なし。

この隙間を埋める為に残党狩りに参戦してこよう。 そうしてさっさと荒らしを終わらせよう。 弟の件は後だ。

 

……などと軽率な行動に出たのだが、まさかドラゴン戦になるとは思わなんだ。

 

 

 

 

 

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残党狩り。 そう挑んだ戦いは創造主に良くも悪くも衝撃を与える出来事になった。

事件はギィ・クリムゾンの住まう氷土の大陸より南下、ドワルゴンより北の海域周辺にて発生。

西側諸国へ侵攻する凡そ300隻からなる飛空船団が、この海上……空路を移動中であった。 これを迎撃するべく、エリトラ飛行隊が襲撃。

残党といってもクラフターが勝手に決めつけているだけで、西方を侵攻する為に数が多い。 とはいえ、飛空船は連邦側で撃沈した経験がある。 今回もその流れで終わるだろうと思った。 欲をかけば、メスガキ軍服悪魔の所為で手に入らなかった飛空船を鹵獲する所存。

 

 

「人型存在が空を飛んで向かってきます! マントを装備している事から、連邦の例の連中かと!」

「空中戦は想定してなかったな。 分が悪い」

「仕方ありませんね。 私が出ます!」

 

 

すると船団からある村人が飛び出して来たのだ。

最初こそ空を飛ぶ村人なんて珍しくないから、その手かと驚きもしなかった。

ところが、村人は大きな緋色のドラゴンに瞬く間に変貌。 まさかの事態である。

 

 

「なっ!? まさか灼熱竜ヴェルグリンド! 帝国の守護神はヴェルグリンド様だったのか!!」

 

 

輝くばかりの緋色のドラゴン。 その幻想的で美しく、力強い飛翔こそはクラフターの想像にも住まう最強格の生物だ。

 

 

「巻き込みたくありません! ザムド少将、貴方達飛空船団は退避しなさい!」

「は、ははっ!」

「我等にはヴェルグリンド様がついている!」

「勝てるぞ!」「帝国万歳ッ!」

 

 

エンドラとは姿が違うものの、何方にせよ狩りの対象に違いない。

飛空船は後回し。 逃げていくし、ドラゴンとの戦いに巻き込まずに済む。 ゾンビが現れた際の村人の如く。 家もなし、賢明な判断を下せる村人には改めて有難く思う。 元の世界でもそうなら良いのに。 トロッコだの縄だの用意せずに済む。

さてもドラゴンだ。 早速エンドラ戦を思い出して雪玉を投げまくった。 空中戦は苦手だが、雪玉は連射出来る安定感が良い。

 

 

「きゃっ!? この冷たさは……ゆ、雪玉? 情報通り、ふざけた真似をするのね! それとも私が灼熱竜と知っての狼藉かしら?」

 

 

効果がない。 思えば、イングラシア郊外のドラゴンもそうだった。

それでもモノは試しでやるものだ。 次は別の方法を試す。 IRPをぶつけてやる。 来るまで時間は掛かるものの。

 

 

「世界を謳歌する自由人よ。 竜種の存在に平伏しなさい! バーニングブレス!」

 

 

ドラゴンの口から細い光線のように、超高速の火炎放射。 ガストやブレイズの火の玉の比ではない。 速くて回避出来ない。

 

一部同志直撃! 熱い!

 

マグマ内の光景に似た景色が視界一杯に!?

クラフターが忌避する光景に顔を歪めつつ火だるまになったのは一瞬で、火炎耐性ポーションを飲む間もパールを投擲する間も無く死亡してしまった。 同志は空中で遺品を撒き散らし散っていく。

ああ……下は海。 海底からの回収か。 深度にもよるけれど、大変なのは変わりない。

 

 

「少しの間とはいえ形を残すなんて。 やはり普通の人間じゃないわね」

 

 

胴体防具無しだったとはいえ即死級とは。 凄まじい火力だ。 エンドラのブレスとは訳が違う。

一方、掠った同志は辛うじて生きていたのだが、様子がおかしい。

 

 

「でもどう? アルティメットスキルが上乗せされたブレスは。 生き延びた方が辛いんじゃないかしら。 加速破壊効果でチカラが暴走して大変なんじゃない?」

 

 

状態異常だ。 身体の芯から熱い。

インベントリを開かないと詳細不明なれど、先ず空腹異常だ。

いつもなら即座に牛乳で中和するが、勝手が違う事で手を止めた。 いや、奮いまくり震いまくって振るいまくる!

 

 

「あ、あら? なんで元気なの? なんでツルハシやスコップを振り回してるのおお!?」

 

 

創造だ! 創造したい! クラフトしたい!

良性ポーションをフルでドーピングした以上の力が漲ってきた!

我等マインクラフタァァァァァッ!!

クラフト出来ん事はないいいいッ!!

元気溌剌!

よく分からないけど整った!

この勢いでドラゴンを討つ!

 

 

「なら!」

 

 

攻撃しようとしたら、消えた。

否。 凄い速度で上空に移動した。 ロケット加速では追いつかぬ勢いに驚愕である。

 

 

「終わりにしましょう。 普通じゃなくても所詮は人間に毛が生えた程度。 私の手の中から抜けられはしないのよ!」

 

 

またも光線の様な火炎放射。

それが何本も放たれては、何人もの同志が消し炭に。 次いでと炎の柱が複数、天と地を結ぶ。

それは炎の檻。 創造主は囚われる様に火柱に囲まれた。

かつての、シズの比ではない。

だが今更に臆する創造主でもなかった。

既に火炎耐性ポーションは服用済み。 もう炎は怖くない。 寧ろ進んで入浴。 副作用でハイになれるから喜んで。

 

 

「自ら炎に入るなんて。 飛んで火に入るお馬鹿さん……えっ? なんで燃え尽きないの? まさか一瞬で耐性を得たの!? しかも炎の中を垂直に泳いでるのアレ!?」

 

 

火柱を昇れば宇宙にも行けそう。

いや流石に無理か。 されど宇宙まで届く昇降機の発想。 悪くないのではないだろうか。

 

 

「で、でもね! ここからが本番なのよ!」

 

 

またも火炎光線を吐くドラゴン。

何を無駄な、と思った次の瞬間。 大きな爆発発生。 海面に近い者ほどダメージが大きく、下方の同志は蒸発してしまった。

 

 

「熱耐性があっても水蒸気爆発は耐えられないようね!」

 

 

それだけではない。

小さな紅い雨が下から上へ降り注ぐ。 何の冗談か。 喰らえば熱くなるではないか。

 

 

「それは対象の熱量を、運動量を強制的に増加させるもの。 適度なら体力上昇効果があるけれど、行き過ぎれば消耗する。 それが最大効果ともなれば、自分で生み出した熱量で、その身を焼き尽くす!」

 

 

更にハッスル!

何でも何とかなる熱意に溢れる!

空中戦がなんだ!

ネザライトの剣や弓矢を振り回してドラゴンをさっさと排除してやる!

そしたらクラフトだ! オラオラである!

世界がクラフターを待望している!

そう! 世界との一体感があった!

クラフターは火だるまになりつつ咆哮!

 

"もっと熱くなれよおおおおお!!"

 

 

「だからなんでよおおお!? なんで燃え尽きないの!? 逆に元気になってるし! レジストしてる感じじゃないですし!」

 

 

マインクラフター、熱中症!

ヴェルグリンド、大困惑!

 

創造主の興奮は水不足や体温の故障ではない。

元よりそんなもの関係ない彼等。 空腹状態にはなったものの、地上ならともかく、エリトラによる空中移動に差し支えない。

空腹による飢餓感、瀕死になるオワタ式になっていくのはマズいものの、それも気にならぬ程に創造力に掻き立つ創造主。

そう。 ヴェルグリンドによる能力で上がってしまった熱量は体温的な方ではなく。

創造力、クラフト意欲だったのだ!

オマケで攻撃力や俊敏性。

悪魔に遺伝子コネコネされても大丈夫だったのだ。 格(世界)が違います。

 

 

「もう物理的に潰して差し上げます!」

 

 

きた。 速い。 だが捉える。

ドラゴンの背中にパールを使うまでもなく取り付くと、ネザライトの剣を刺しまくる!

 

 

「なっ、キャアアアッ!?」

 

 

振り落とそうとするドラゴンだが、今のクラフターには暴れ馬程度に過ぎない。

いや、それ以下だ。

針山で針を抜差しして遊ぶ様に、機関銃の如き早さで剣を刺し抜き繰り返した!

 

"ブスブスブスブスブスブスッ!!"

 

 

「痛ッ!? 剣が通用するなんて……ッ!」

 

 

スニークでも振り落とされる間際、TNTを背中に設置、火打ち石で着火。 起爆して離脱する嫌がらせ。

ドラゴンの表層に何発もの爆煙が巻き起こる。

更に土や丸石ブロックを塔の様に設置した。 これを基点に金床を落としたり水バケツをひっくり返す。 が、コレらは効果がなかった。

やはりエンチャントを施した武具でないと難しい。

 

 

「この程度で、ちょこまかと! 死ね!」

 

 

ドラゴン発狂。

大木の様な尻尾を振り回し、何人もの同志がノックバックで吹き飛んでいく。

 

 

「もうお仲間は少ないわね? 降参したら?」

 

 

周辺空域を見やる。 残り同志は少ない。 この人数と得た結果からして勝利は困難だ。 幾ら力を増したとはいえ、空中での限界点が見えていた。

万事休す? いや違う。 まだ我等がクラフトは残っているのをお忘れか?

 

 

「まだ余裕の顔を出せるとは……えっ?」

 

 

やがて始まる爆発音。

それは聞き馴染んだTNT。 それがドラゴン周辺で次から次へと空中で響き渡る。

キャノンによる攻撃、それも命中するよう起爆タイミングが計算された砲撃だ。

ドラゴンにダメージは通らない。 だけど、突然の攻撃は驚きを持って迎え入れられる。

 

 

「今度は何!?」

 

 

ドラゴン共々離れた地上を見やれば、そこで疾走する人工龍。 機龍ことIRP。 移動式多目的キャノンであり、改造され続ける大型二足歩行戦闘兵器。

それが進路上の木々を薙ぎ倒しながらも右腕部に備えられた主砲からTNTを発射しつつ、背中から対空誘導弾を何発も連続発射。 全てドラゴンへと飛んでいく。

BBにより演算されたそれらは、走行しながらという不安定さに関わらず、寸分の狂いもなく次々にドラゴンに向かう。

 

 

「また妙なモノが。 でもね、その程度!」

 

 

ブレスを吐かれると、弾が空中で爆散。

1発もドラゴンを当たる事なく終わってしまう。

 

 

「アレが連邦の兵器? "弟"を模したなんて言う者もいるけど大した事ないわね……なっ、飛んできた!?」

 

 

機龍、飛び道具を諦め自ら飛んでいく。

大きな質量は弾丸となり、ドラゴンに体当たり。

突然の事に対応出来ずモロ喰らったドラゴンはノックバックで吹き飛び……海面に落下。 叩きつけられ大きな水柱を上げた。

 

 

「くぅ……!」

 

 

次いでにIRPも落下。 着水。 水飛沫。

ドラゴンは直ぐ浮き上がり空へ上がる。 IRPはそのまま沈む。

湖底研究所でのIRP研究、技術も参考にしていた筈だ。 きっと沈んでも大丈夫だ。

寧ろ沈んだ方が有利かも知れない。

 

 

「上がってこない? 溺れたなら結構……ッ!」

 

 

突如、水面から幾多の水柱が、いや誘導弾が飛び上がる!

慌てて回避行動をとるドラゴンだったが、次の瞬間。

 

一閃の線が見えたと思えば、ドラゴンの片翼が消し飛んだ。

 

 

「え……っ」

 

 

驚く間も無く、ドラゴンは海に堕ちていく。

再び大きな水柱が上がるも、今度は何も上がってこない。

 

"勝ったな"

 

クラフターは独りごちた。

レールガンが命中したのだ。 様々な結界や防御方法を持つ人魔達に、果たして効果があるかとか、そもそも水中から発射出来たのかとか、命中したところで倒せるのか心配やツッコミはあったものの、結果が出たのでソレで良し。

 

 

「そんな馬鹿な……」

「ヴェルグリンド様が負けた?」

「退却急げ! 皇帝ルドラ様をお守りするのだ!」

 

 

あ。 鹵獲したかった飛空船を忘れていた。

もう遠くにいる。 逃げている。

落胆するクラフター。 戦闘が大変だった割に得たモノは意外と少なく感じたからだ。

どうしたものか。 最早少ない同志が、それでもと飛空船を追いかけたものの、返り討ちに遭う可能性が高い。

なに。 空中戦やIRPの実戦経験が出来ただけ良しとしよう。

 

せめてドロップ品があれば……。

遺品回収ついで、IRPと共に海底捜索。

水中呼吸ポーション等を使用しつつ、ジャックオランタンで水中を照らす。

すると同志の遺品に混じって倒したドラゴンの村人形態……少女を発見した。

驚くべき事に息がある。 悩んだ創造主だったが、結局回収する事にした。

アレだ。 エンドラ卵的な。 役に立つかどうかはさておき、戦利品代わり。

 

……卵ほど容易でないが。

松明での回収ではなく、船やトロッコ、リードを駆使しての村人運搬式。

連邦に運ぶのに偉く苦労しそう。 でもやると決めたらやる。 達成感は待ち構えている。 マインクラフターはそれを知っている。

 

因みに。

戦闘海域周辺では、前からいたクラフターが大陸と島を繋ぐ大橋を造っていたのだが……どさくさで大破。

ギィや、その配下、海域に棲まう海獣に破壊されるよりも酷い。

軍事部と現地クラフターは揉める事になったのだが、マルチ生活では珍しい光景でもなく、いつも通りに事は進むのであった。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

「追手だ! 迎撃せよ!」

 

 

逃げた飛空船に追いついたクラフターだったが、流石に300隻を相手にするのは厳しかった。

だが飽くまでクラフターのみの場合。 IRPがいるから怖くない。

更には軍服悪魔達も来た事で解決の兆しが見えた。 あいや、全艦撃沈されたら困るけど。 1隻くらい鹵獲させて。

 

 

「あら。 またお会いしましたわね」

「また一緒に遊ぼうねぇ♪」

「……ボクは見るのも嫌だ」

 

 

それぞれ好き放題に暴れ始める。

バイキングというヤツか知らぬが、喰われていく飛空船。

乗船していた者は次々死ぬ。 首は捻られては捨てられて。 遺伝子を弄られ崩壊し。 重力変動で船底を抜け沈んでく。

IRPも負けじと砲撃。 同志の座標伝達と自前のレーダーによる計算で次々船を破壊した。

 

 

「ば、馬鹿な……これは悪夢だ……ッ!」

「なら目覚める先は温かなベッドだと良いですわね。 あの者達の様に。 私達が魂を喰らうので、そんな事にはならないでしょうけど」

「テスタロッサ。 間違ってもアイツらの魂まで喰わない方が良いよ。 物作りへの衝動や世界を楽しみ尽くす思考に支配されそうになるから」

「ウルティマの様子がオカシイんだけど」

「カレラも気を付けなよ。 魂が純粋というか、逆に汚染される……とにかく、ボクは警告したからね」

「あの娘に此処まで言わすとは」

「笑い事じゃないね、こりゃ」

 

 

良し。 いくつかの船は奪取!

操船なんてボートくらいしかないクラフターだが、そこは数多の創造物を扱ってきた腕がある。

早速、それっぽい円形の操縦桿らしきものに手を掛けた。 空駆ける船を操舵。 舵を切る。

上昇。 下降。 加速。 減速。 ヨシ!

 

 

「操船なんて、どこで学んだのでしょう」

「関係ないでしょ。 私達は魔法でちょいとやるだけだし」

 

 

戦闘で空いた舷側の穴は、取り敢えず土や丸石で塞いでおいた。

後はコイツを連邦へ持ち帰る。 他の者は軍服悪魔と残党狩り。

剣振るい、弓絞り、時にTNTで船体に大穴を開けてやる。 おお、なんと脆い船よ。 持ち帰る分は大幅に改造しなくては。

 

 

「精鋭が……こんなにも簡単に!?」

「近藤中尉らがいてくれたならば!」

 

 

村人がゴミの様だ!

クラフター、無双状態に嬉々とする!

IRPの活躍も大きい中でも際立つ船上戦。 エンチャント強化されたネザライトの剣や弓矢、銃火器に加え、ドラゴンに強化して貰った創造主だ。 戦闘特化村人相手でもゴリ押せる。 村人は特殊防具や武具を装備している様子だが、難なく斬り捨てられた。 軍服悪魔もいる。 楽勝である。

 

尚、本来乗船してたかも知れない"元帝国"軍人、近藤中尉は本土での騒ぎでいなかった。

もしいたとしてもクラフターと原初の悪魔複数相手だ。 他と違い戦いになったかもだが、それでも奮戦虚しく死んでいた可能性が高い。

その意味では不幸かも知れない。 されど友である皇帝ルドラの側にいれなかった方が、本人には不幸であっただろう。

 

そんな友、皇帝ルドラは後悔を口にしていた。

戦争とは別の、クラフターには知っちゃこっちゃないけど重要そうな事を。

 

 

「……ギィとのゲームに勝つ事叶わず、事今に至っては自由を謳歌する理不尽共に敗退する、か。 人である内に……約束を何ひとつ果たせず終わるのか。 ヴェルグリンド、タツヤ・コンドウ、皆の者……済まない」

「……皇帝陛下」

「ダムラダ、今回で最後になりそうだ。 余は疲れた。 正義之王(ミカエル)の暴走を抑えるのにも限度がある。 絶対的な"正義"など、突き詰めれば"邪悪"と大差ない。 万人が認める正義など、存在しないのだから……」

 

 

クラフターがヒャッハーしている戦場の後方で、重要人物が何か言っている状況。

ただ、内容自体は通じるところがある。

世界を統一し、人々が安全に平和に、貧困、飢えがなく幸せな世界を創る……。

純粋にそう思ってたかはさておき、クラフターの正義も人それぞれだ。 荒らしは許せないが、それだって人によっては正義の行いである。

……やっぱ許せない者には悪だけど。 荒らし死すべし慈悲は無い。

 

 

「故に、余が余である内に命ずる。 余を倒せる者を探し出せ。 アレは、暴走すれば……ミカエルは文明だけに飽き足らず、この世の全てを消し去るだろうから───」

 

 

だから、その言葉は創造主達からしたら問題のあるもの。 "ソレ"は荒らしに違いない。

そしてソレに遭遇した時、クラフターは容赦しない。 屈する気もない。 楽しい世界の障害物として排除する。 そこに種族やスキルは関係ない。 平等に荒らしに過ぎないからだ。 それ以上でも以下でもない。

 

それ以上、皇帝ルドラが語ることはなかった。

周囲の者は悟るように閉目し、直ぐに行動に移す。 かつての皇帝を乗せた船は、帝国へ舵を切った。

 

創造主達は飛空船を鹵獲した事に上機嫌であったが、逃げる旗艦を見逃す程甘くはない。

鹵獲した飛空船を無事に回収する方が大切だけど、荒らし絶対許さないマンなクラフターだ。 視界の角に小さくも入り込んだ時点で潰す事は決定事項である。

 

 

「逃げてる奴がいるねぇ」

「仕方ないなぁ。 コイツらに残党押し付けて、ボクらが行こう」

「そうしましょう」

 

 

殿は数える程度まで減っていた。

それでも命の限り、悪魔達を抑えていく帝国軍。

 

 

「悪魔が来る!」

「デーモンロード? いやもっと危険だ、転移魔法で皇帝を逃せ!」

 

 

皇帝の近衛は悪魔相手に死闘を繰り広げる。

クラフターは残党を始末し、追いかける。

 

なんであれ。

創造主にとっては楽しめればソレで良い。

勝ち負けは後回し。

ドラゴンや皇帝がどうなろうが、帝国がどうなろうが、それこそ世界がどうなろうと楽しめればソレで良いのだ。

 

世界は遊び場だ。

 

ただユウキらやギィらとクラフターは違う。

同じ卓上にいながらも、新たな遊び……次々に想像を膨らませ創造していくところが大きな違いなのである。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

「今度は誰が来たんだ? いや言うな。 言えなくても言うな。 絶対碌でもない、一般人じゃない奴だ。 俺は知っているんだ」

 

 

緋色ドラゴンの村人形態を放り込む。

圧迫感のある小部屋にいたリムルは疲れた様にハァンと吐き捨てた。

かと思えば喚いた。 良いぞ。 その反応は。

海底からボートに乗せて浮上させ、陸路をトロッコやリードで引き摺ってきた苦労の価値はあったというものだ。

 

 

『告。 マスターは初対面です』

「大賢者、そうじゃない。 そうじゃないんだ」

 

 

元の世界でも村人を拉致する事はあるから、今更に悩む事はない。 多人数でもなしに。

ところが、リムルはそうじゃない反応。 きっと運搬方法が分からないのだ。 後で我々の運搬術を披露してやろうか。

転移魔法とやらで労せず出来るのだろうけど。

 

 

「で、結局誰なんだ? 聞きたくなくても聞かなきゃならない状況だからな」

 

 

気絶したままの村人ドラゴンを介抱するリムル。

何だかんだ受け入れる姿勢は寛容だ。 普段もそうなら良いのに。 創造物に対する文句を減らして欲しい。 荒らしの様に破壊している訳でもないし。

 

とにかく状況を進めねば。

リムルの手伝いをして、さっさと村人を起こしてやる。

クラフターは村人の口をこじ開け、回復ポーションや牛乳を飲ませる。 これに尽きる。

 

 

「ゴポポポッ!?」

 

 

吐くな。 飲め。

何故皆そうする。 白目を剥きおって。

我々なら幾らでも飲めるのに。 村人は飲料物でも腹が満たされるのか。 満腹なのか。 故に拒絶するのか。

最近クラフターは、そう疑っている。

 

 

「だからソレやめろや!? 善意なのは理解出来るけど共感出来ないんだよ!?」

 

 

リムルに止められた。

まぁ良い。 回復はさせた。

だが起きぬ。 ベッドもナシに器用なものだ。 思えば水底でも寝ていた。

……その場合、リスポーン地点を選ばないのではないだろうか。 ベッドを持ち運ぶ必要がない上に、ネザーで寝て起きるクラフト生活も可能なのでは。 なんて羨ましい熟睡スキル。

 

 

「とにかく、白濁に塗れてしまった女性にも色々聞こう。 弱ってるみたいだけど、魔素量が凄いから普通じゃないのは違いない」

 

 

とはいえ困る。

いつまで寝てる。起きろ。

いつかのシズもそうだった。 あの時は同情等から手を出さなかったが、今回はそうはいかない。 コイツ荒らし側にいたし。 ドラゴンだし。 つまり敵だ。 手荒にいく。

小部屋の外壁を黒曜石で補強すると、拳を握る。

 

 

「急に殴り始めんなよ!?」

 

 

クラフターは右拳で殴りまくる。 なに。 友好度が下がっても構わない。 どこの村所属か知らんし。

あいや帝国か。 だとして関係ない。 荒らしの国だ。 あそこは。 痛くも痒くもない。 寧ろ滅ぶものなら滅んでしまえ。

 

 

「うぐっ……こ、ここは? ふぎゃっ!?」

 

 

起きた。 けど荒らしだ。 殴る。

 

 

「やめろやめろ。 何の為に連れてきて回復させたのか分からなくなる……って、お前らは存在からして意味不明で理不尽だったな、うん」

「……雰囲気からしてテンペストね」

「ご名答。 そして俺は国主リムルだ」

 

 

リムルに止められ、やっと止める。

共に荒らしを甚振り、苦悶の表情になるのを見て愉悦に浸れば良いのに。

 

 

「くっ……力が出ない。 でもルドラが助けに来る。 私を置いていく筈がない!」

「ルドラ? 皇帝ルドラか。 やはり帝国絡み、それも呼び捨て。 重要な娘さんみたいだな」

「そうよ。 私は竜種がひとり、ヴェルグリンド。 そこの妙な人間達に負けたけど、帝国はまだ負けてない」

「ほらな。 やっぱり面倒連れてきたよ。 しかも竜種だよ。 どうしてくれんのこれ」

 

 

咎める視線を送られた。

知らん。 この場に辛辣同志がいたならば、通訳して貰って受け答え出来ただろうが、今はハァン合唱会でしかない。

クラフターはまたか、と首を横に振った。

 

 

「やれやれ、じゃねえよ!? それ俺がしたい態度だからな!」

「強くても馬鹿な部下を持つと大変ね」

「部下じゃねえよ!? 強いて悪友! 竜種だろうと2度と間違えるな馬鹿!」

「……苦労してるのは理解出来たわ」

 

 

どうしよう。

ここに居ても立ち尽くすだけだ。 クラフト要素があれば良いのだが。 或いは冒険。

 

 

「残念だけど、帝国軍は全滅───今連絡があった。 皇帝を乗せた飛空船団も全滅だ」

「なっ!? う、嘘よ。 それにルドラは!」

「皇帝は転移魔法で逃げたってよ。 お前を置いてな」

「そんな……ああ。 もう壊れていたのねルドラ……もう、私がいる意味は……」

「転移先も分かっている。 部下の悪魔達に追撃して貰っている。 戦争は終わりだよ」

 

 

木の棒と石炭で松明を作った。

作業台無しで作れる手慰みだ。 しんみりした空気感漂うのは、クラフターの気持ちの様だ。

ああ……クラフトしたい、と。

 

 

「……ウチで言う事聞いて大人しくするってなら、ルドラの所に連れて行ってやる。 死んだ後に、だけどな」

「好きにしろ。 ルドラなき今、私は……」

「ルドラとの仲は、俺には分からない。 勿論、コイツらも。 だから深く聞く事はしない。 それに、俺らの目的は別にある。 ユウキって奴だ」

「ユウキ? クーデター仕掛けて、失敗して殺されたと聞くけど」

「なんだって!?」

 

 

煩い。 高く鳴くな。

相変わらずなスライムとはいえ、不快感の中には慣れぬものがある。 連邦の万単位の村人往来は耐えられても。

 

 

「リムルも大事な人を失ったのね」

「いや敵だ。 願わくば殺す事なく封印程度に済ませてやりたかったけどな。 駄目なら殺すつもりだった」

「そう。 良かったじゃない、手間が省けて」

「……嫌な予感がする。 ユウキは確実に死んだのか?」

「その筈よ。 情報局は優秀だもの」

「アイツは力を隠し持っている。 クロエだっている……そうだ、クロエ!」

「えっ?」

「術者が死んだなら呪縛から解放された筈なんだ! なら連絡のひとつやふたつ寄越して良い筈だ。 なのにそれが無い!」

 

 

クロエ。

久し振りに、その名を聞いた。

元気だろうか。 他の子供達より先に大人に成長して強くなっていた女の子。

何故かユウキと共に荒らし組にいたが、帝国のどこかにいるのだろうか。

 

 

「奴はいつ死んだ!?」

「戦争開始直後……」

「帝国の陸上部隊が壊滅した時辺りか? だとしたら日がそんなに経った訳じゃないけど、それにしたって……」

「帝国領の話なのだから、拘束されている可能性は?」

「なくはない。 けどクロエは勇者だ、滅茶苦茶強い子なんだ。 ちょっとやそっとで捕まるとは思えないし、そうだとしても脱出するなりなんなりする筈なんだ」

「勇者……?」

「いや何でもない……すまん、急用ができた。 直ぐに帝国に向かってユウキの生死を確認したい……いや待て。 生きてると仮定したら、奴は次の手を既に打ってくる。 ならその先は?」

「まさか!」

「クーデターは終わってないぞ!!」

 

 

だから煩い。

リムルに視線を送る。 向こうも見つめ返してきた。 かなり強い意志を感じる。

 

 

「直ぐに皇帝が転移した場所に向かう! お前らもついて来い!!」

 

 

クラフターは頷いた。

冒険の時間。 それを察して嬉々とする。 間違っても犬の散歩ではないのは理解していた。




クラフト要素……クラフト……(震声。
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