寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

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前回のあらすじ
天地対抗世界大戦、開戦。
核、反物質爆弾起爆未遂。
ミリムの作戦でリムル、死を偽装。

今回のあらすじ
連邦以外での戦闘。
某所で衛星兵器?
別の某所ではヤンデレ?
また別の某所では対消滅が……?


投稿開始日を見ると、約1年経つんやなって
(遠目



161.各地と戦闘

 

 

「リムル様が消えた!?」

 

 

村人共が騒がしくて寝れない。

日没前に羽虫が引き上げたから、リスポーン地点を更新したいのに。 おちおち眠れない。

仕方なく迷宮都市地下に設置されている、本司令部とやらに出向く事にした。

 

 

「魂の繋がりが途切れた……」

 

「いやまさか……我らの主だぞ!?」

 

「ディアブロや悪魔達はどうした! 現地にいたのだろう、何故連絡の1つもない!?」

 

 

娘と弟に訳を訊く。

リムルが死んだと狼狽しているらしい。

馬鹿馬鹿しい。 クラフターは鼻で笑う。

すると、赤鬼がハァンと叫んできた。

 

 

「お前ら、何故笑う!」

 

「ベニマルさん、通訳します」

 

 

あの悪食スライムが簡単に死ぬか。 死ぬものなら、今まで苦労していない。 我々が何度殺害を試みたと思っているのだ?

火にも負けず銃弾にも負けず。

シオンの汚料理でも死なぬ体を持ち、数多のモノを捕食する悪食である。

我々が何か創造した後に、"何故か"発生する山の様な苦情処理をもしてくれる丈夫な体でもある。

そんな世にも珍妙な青色スライムなのだぞ。

 

 

「褒めてるのか貶してるのか。 だが確かに、リムル様が死ぬ筈がない。

きっと我々は試されているのだろう」

 

「苦情が出ているのは自覚してたんですね」

 

 

仮に死んだとして、なんだ。 羽虫駆除を諦めるのか。 荒らし尽くされ無に返される様を見過ごすのか。 その程度の世界なのか。

我々はソレを望まない。 創造と快楽の無い世界にされては堪らない。

様々が無意味になるからだ。 貴様達はどうだ。

 

 

「そんな事はない! リムル様は種族を超え手を取り合う平和な世界を望んでいた!

奴ら天使共の様な、世界を滅ぼす事は望んじゃいない! リムル様がいなくても天使共は倒す!」

 

「まぁコイツらとは共存したくないでしょうが」

 

 

クラフターは頷く。

そうだ。 その通りだ。

確かに、この世界は面倒だし残酷を道理とする過酷な世界だ。

ちょっとクラフトすれば騒がれるし。

それを理由に殺そうとする奴もいるし。

理不尽である。 ある時は殺戮非道を止める癖に、部下の悪魔的行いは黙認している気がする。 おのれリムル。

 

 

「核や反物質爆弾を開発、起爆寸前まで持ち込んだ奴に言われたくないと思います」

 

「取り敢えず、無邪気に悪魔的所業をしているのは反省してくれ」

 

 

だが嘘じゃない。 偽りなく生きてきた。

嫌なこともあったが良いこともあった。

それはマルチだったからこそ。

1人では、生きていけなかった。 あいや生きていけた気がするが、誰かいた方が楽しい。

そう。 それが君達村人と過ごして得た事。

マルチだからこそ色々出来た数々の思い出。

改築。 開拓。 悪戯。 実験。 盗難。 自爆。

 

 

「そういうのを止めろってんです!?」

 

「苦情の原因はそういうのだからな!?」

 

 

良い事も悪い事も含まれる事だ。

反省は少しだけしている。

 

 

「大いにして? 人魔によっては元の世界に帰って欲しい意見もありますからね?」

 

 

そんな喜怒哀楽に触れてきた。

その喜びを失いたくはない。 故にクラフターは全力を尽くす。 そして世界を、人生を楽しみ尽くす。

シズにも教えた。 逆に教えられもした。

世界は楽しさで満ち溢れていると。

そんな世界を我々は守る。 やりたいからやる。

 

単純に荒らし殲滅祭を楽しみたいのもある。

 

 

「「それが本音だろうが!?」」

 

 

それに村人も参加して欲しい。 共に楽しもう。 それが生きるという事なのだから。

クラフターはお辞儀をして見せ締めた。 村人、暫し硬直。 からのハァン。

 

 

「願われずとも、そうする。 お前達ほど意気が良い訳じゃないが、いつだってそうしてきたからな」

 

「そうですね。 良くも悪くもです」

 

 

こうして村人とクラフターは気持ちを整理した。

 

各国でも同様の意見となり、人魔とクラフターは天使に団結して抗戦の構えを見せていくのだった。

 

 

 

 

 

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2日目の昼前。

クラフターが寝て起きて、少しした時だ。

全世界に向けて、ヴェルダが再び姿を見せた。

 

 

『今の状況を教えてあげるよ。

ボクの愛する娘───魔王ミリムが、ボクに逆らう魔王の一角を滅ぼした。

そう、滅んだのは魔王リムル。

新参だが、君達人間に最も馴染みのある魔王だね。

魔王の2柱はボクの古き友であり、ボクに恭順の意を示してくれた。

最後まで諦めずに戦うのも良いけど、諦めるなら苦しませないで死を与えるよ。

絶望し苦しむくらいなら、さっさと死を選んだ方が良いんじゃないかな?

君達人間の住むそれぞれの国家の首都に対して、7日目に神の雷を落とす事にする。

だけど、それまでは手出ししないと宣言しよう。

理解出来るかな?

苦しまずに死にたい者は、逃げ隠れたりせずに首都に滞在すると良い。

ボクは慈悲深いからね、約束は必ず守られるだろう!』

 

 

初日と同様、天に巨大なビジョンが映し出されて告げたのだ。

一部クラフターは、天に唾を吐く。 矢を真上に射て、落ちたモノを喰らい自らを射抜いたのだ。 愚行であった。 元の世界でもやっていたが。

だがそれだけ天使……羽虫荒らしにはムカついている証左でもある。

1日目で飽き足らず、調子に乗り続けやがって。

荒らし許さん。 慈悲はない。

クラフターの怒りの火に油を注ぐだけで終了。

 

一方、各国の指導者達の間で議論が交わされた。

其方は怒りではなく混乱である。

リムルが消え、一部魔王は敵に寝返った。

事実ならば、人類はあっさり殲滅されてしまう。

では黙って殺されるべきか? 最善策は?

それらを話し合い、意見を求め合う。

 

世界有数の大都市を持つイングラシアの首都と、東の帝国の帝都は次の様に話が進む。

 

 

「魔王リムルが? 人類にとって畏怖的存在でもあり守護者の象徴でもあった、かの者が?」

 

「事実であれば、イングラシアのみならず、全ての西方諸国、加えて帝国……いや世界そのものが滅んでしまいますぞ」

 

「既に都市部で国民が混乱しています。 我先に逃げる者、運命を受け入れ残る者」

 

「どちらにせよ天使は全てを殺戮する気だ。 逃げるにしても、永劫の逃亡生活など出来よう筈が無い。

虱潰しに殺し回られるだけよ」

 

「ならば残りの魔王、そして何よりも」

 

「うむ。 あの"創造主"達に賭けよう」

 

「普段は厄介者以外の何者でもないが、今や我らの味方。 存分にやらかして貰おう」

 

「何より連中は諦めない。 ならば、元より世界に住まう我々が諦める訳にはいきますまい」

 

「然り。 その上で我々に出来る事をするのだ」

 

 

なんと、クラフターの存在は人類に勇気付けていた。 迷惑な存在であるのは違いないものの、創造物を、建築物類を愛し、世界の危機に立ち向かう彼等の姿勢は本物だから。

その熱意は言葉が通じずとも多くの者には理解出来た。 世界を越え、言葉を越え、人魔を越え、元の世界に帰れるにも関わらず世界の守護者となろうとしている。

だからこそ、そんな英雄達の為に、勇者達の為に。 いや……それらを超越した伝説の為に動くのだ。

 

 

「国民には出来るだけ首都に留まる様に伝えます。 魔王達や創造主に迷惑を掛けるくらいなら、自宅で祈っていた方が良いですから」

 

「一部の国軍部隊を動かし、治安維持に努めましょう」

 

「国軍が装備しているのは、あの者達の作った高品質の武具。 低ランクの少数天使なら、何とか対処出来ます」

 

「出来る事をするだけだ。 直ぐに実行せよ」

 

「直ちに!」

 

 

これは指導者達のみならず、国民の大半も同じ意見である。

かつてクラフターは街中に突如現れては、好き勝手に増築、改築、新築、その他改善、整備や修理をされてきた。

その様はありがた迷惑で、国民によっては恐怖の対象になる事もあった。

戦争で家族が彼等に殺された者もいる。 一部から恨みもあった。

一方で警備の手が届かない様な村落にも現れ、無償で食糧や物資の提供、防衛設備工事をしてくれた。 感謝する者も多い。

意見は分かれる。

だがそれでも。 それでも今は。

皆、同じ意見であった。

 

 

彼等に賭けよう、と。

 

 

そうして人類は纏まりを見せていく。

 

特にリムルとクラフターに関わりのある者達程、敗北を信じられなかったのも理由のひとつであった。

 

 

「何を馬鹿な。 アイツが簡単に死ぬ訳がない。 特にアイツらは死んでも諦めず愚直に立ち向かう連中よ。

そんな簡単に倒せるなら、私が既に滅ぼしていたでしょうよ」

 

 

とある委員会の初代委員長は、こう言った。

 

 

"ファルメナス"という新生王国の国王やその周囲の者達も、これで民を守るのが容易になったと安堵する。

周囲に逃げた者や近隣の村人達をも首都にて受け入れる程の徹底振りを見せたとも言われる。

 

 

「旦那が死ぬ訳がねーよ。 ヴェルダってヤツも大した事ねーな、騙されてやがる。

それにアイツらがいる。 どうとでもしてくれる」

 

「そうね。 彼等の存在を考慮してないわ。 それとも甘く見てるのかしら」

 

 

若き国王と、王妃で、そのような会話があったと記録されている。

 

こうした信頼傾向はジュラの大森林(クラフターによって、一部大植林場)周辺国家にて多く見られた。

そして他の国、テンペストと国交を結んでいたドワルゴン、ブルムンド、サリオンもそうした国家であった。

そうした国家の首脳達の反応は早かった。 通信会議にて魔王・創造主達の勝利を信じると発言、各国首脳の心を傾けるのに成功する。

こうして大半の国は、そうした者達の意に沿って、勝利を信じる道を選択したのだ。

 

ヴェルダが意図した程に、世界は絶望に包まれなかった。 だが混乱が生じたのも事実である。

 

ただまぁ……。

クラフターを信じる村人には悪いが、他人の都合に関係なく好きな事をする彼等だ。

信頼があろうがなかろうが好きな事をする。

 

 

ジュラの大森林を"一部"植林場にしたり開拓で切り拓いたりしてきたし。

 

核や反物質爆弾を起爆しかけるし。

 

隙あらばルベリオスを滅ぼしそうだし。

 

色々駄目になったら、あっさり世界を見捨てて元の世界に帰りそうでもあるし。

 

 

今は世界を、創造物を守る為に動いてはいるものの、それだって荒らし駆除祭りを楽しむのが主目的。

正義感で彼等は動かない。

快楽、愉悦、土地、創造。 これだ。

 

が、理由はどうであれ。

世界に住まう人魔にとっては助かる話だし、利用出来る内は利用する。

それはお互い様だ。

 

そしてまた、ヴェルダにとっては改めて忌々しい別の創造主と認識され、本格的に敵認定される事になる。

創造主は1人で十分だと。

マルチクラフターからしたら、度し難い思考だと唾棄する話である。

そもそも、何が創造主だと云うだろう。

世界を無に返す奴をクラフターとは認めない。

 

そんな快楽や愉悦を求め生きる連中に、村人達が己の命運を賭けるのは皮肉である。

それでも願わずにはいられない。 力あるものに縋りたい気持ちは、否定出来ない。

例えそれが、クラフターであってもだ。

 

 

 

 

 

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場所は変わりルベリオス。

大陸西部に位置する宗教国家。

クラフターは、ここを欺瞞の国と罵り、裏の支配者であるルミナス達を嫌う。

表向きは結界だの聖騎士だので人間達が守られ幸福が約束された、魔物許さないマンなルミナス教が布教されている聖地である。

それだけならまだ良かったが、真の支配者は魔王ルミナスと、その種族……吸血鬼であり、人間の"幸福の血"を啜るべく人間達は管理されているのだ。

クラフターにはルミナスが人間を豚や牛同様に家畜扱いしている様に見え、実際に似たようなものだろう。

逆に管理される事で、争いが減るのは良い事だと捉える者もいるだろうが……。

いや、それもまだ良い。 クラフターも元の世界で村人に縄を繋ぐし。

だが駄目な事がある。 魔物許さないルミナス教の神ルミナスの正体は魔王ルミナスの事であり、彼女は吸血鬼だ。 魔物なのである。

そんな魔物がルミナス教の神とやらで、魔物でありながら魔物を否定している矛盾。

人間を騙し管理しているから仕方ないのかも知れないが、破壊とは別に嘘偽りを嫌うクラフターとしては許せない部分があった。

故に核や反物質爆弾を撃ち込み、村人と吸血鬼を"霧"や"影"にでもして消し飛ばそうとしたり……それら爆弾の開発前から悪く思っている。

昔マッピングの為に、この辺に訪れたら、聖騎士達に攻撃された件を許した覚えはない。

 

だが、今は大分落ち着いた。

 

お互いに思うところが無い訳では無いが、ヒナタが連邦に襲撃した後からは大人しくなったかに思える。

良い事だ。 出来れば、そのまま全て消えてくれても良かったが、それは贅沢が過ぎた。

 

なんにせよ、今は今。

天使が襲撃するから、クラフターは嫌々ながら此処も防衛している。

考えは合わずとも、建造物は素晴らしいものがある。 これを壊すなんて、勿体ない。

 

それにだ。

天使以外の敵も襲来すると我が子らから連絡が来た事で、いよいよクラフターは真面目にやらねばならなくなってしまった。

友軍であった筈の大陸西部の魔王、ダグリュールが裏切ったのだ。

ソイツら巨人は最寄りの国となる此処、ルベリオスを目指している。

この所為で、天使に加えソイツらとも戦う羽目になったクラフター。

流石にルミナス達と現地同志だけでは無理な襲撃イベント。 天と地で挟まれては耐えられない。

 

なので。

シオン率いる連邦軍とマイクラ軍事部含め増援がこの地にやって来る運びとなる。

 

 

「ええい! リムルの配下は兎も角、忌々しい創造主共の手を借りねばならぬとはッ!」

 

 

郊外。 隣のルミナスが煩い。

おっと手が滑った。 卵がルミナスに飛んでいく。

 

 

「相変わらず野蛮な奴らじゃッ!」

 

 

手で払われた。

が、なんと卵は割れず。 振られた方向に進路を変えて、その先の木にぶつかった。

そして……ニワトリは生まれなかった。

何という技法だ。 卵を割らずして進路を曲げるとは。 また未知を見た。

相変わらず楽しい世界である。

 

 

「ニヤニヤしおって……貴様らが敵なら容赦しないものを!」

 

 

でも世界と国は規模が別だよね、と頷く。

欺瞞の国くらい放置で良くない?

世界は広く、この国で終わらない。

それでも貴重な土地と建物と群勢がいる。 守らず滅んだ後に来ては遅い。

辟易するクラフター。 こんな国と村人でも味方なのだ。

何故、こんなのが味方である必要があるのか。 逆に問いたい。 あいや答えは出ていても。

 

 

「シオン達が増援として来ているし、アダルマンもいる。 其方の統制は大丈夫であろう。

都内は聖騎士、日光に耐えられる配下やヒナタもおる。

貴様達と比べたら信用出来る。 逆にお前達は信用ならん。

分かるか? いや分からずとも聞け。 妾がいる理由は、貴様達の監視も兼ね……何をしておるのじゃ!?」

 

 

クラフターは卵をぶつけ合っていた。

何とか軌道変更を試みているのだ。 卵を投げられては、右腕を振るう。

駄目だ。 割れるばかり。 その内、小さなニワトリが周囲を埋める。 畜生。

 

 

「馬鹿者共めが。 リムルの苦労が目に浮かぶようじゃ。

あやつには、死んだフリなぞさっさと止めて、早く戻ってきて欲しいものよ。 此奴らの後始末係は御免じゃ」

 

 

欺瞞の国の神(笑)がハァン。

勝手に呆れて、どうぞ。 クラフターはシたい事をシていくのみである。

やがて、西方より軍勢が現れた。 大中様々な巨人の群である。 連絡にあった通り、敵はやって来たのだ。

 

 

「はぁ……来たぞ。 ヴェルダと繋がりがあってか、裏切り者と化したダグリュールと配下達が」

 

 

ルミナスが腕を上げる。

その先には荒らし巨人の群。 既に見た。

クラフターは卵の投擲を中止。 装備を決戦仕様に切り替え、各々行動開始。

的はデカい。 その上、強いらしい。

けれどクラフターは怯まない。 失敗を恐れぬ猛者だ。 海千山千の創造主だ。

今更に怯え逃げ隠れしない。 邁進あるのみ。

敵は怒れる大地。 天からは破滅を呼ぶ天使共。

クラフターはやぁやぁと天地を駆けた。

 

 

「今世の創造主は、コレ位が丁度良いかの」

 

 

吶喊する者、しない者。

そのまた創造して見せる(魅せる)者。

天地に挟まれ四苦八苦?

いえいえ、天地に創造してきた者は云う。

 

連中の天下にいなければ良いのです。

 

この世界を創りし創造主……星王竜ヴェルダナーヴァがいたならば、どう制していたであろうか。

それとも、静観を決め込むか。

その上で神慮は何想ふ。

 

因みに今現在いる創造主、その内の一部クラフターは天使より天上、星の世界でナニかしていた。

クラフターがする事だ。 クラフトに決まってる。

問題はソレがナニかという事。

 

空より高い星の世界。

宇宙。 上も下も右も左もない、空気もないし他にも色々ない闇の世界。

ジ・エンドに似て、けれど、それ以上に過酷で美しい"宝石"の世界。

美しくも過酷な環境から見下ろす"青き星"も、その宝石の1つ。

ダイヤモンドの様で、その中でも多くの輝きを放つ星。 リムルやシズ達が暮らす丸い星。

見方によってはリムルのスライム形態に見えるので、時々眉間に皺が寄るものの、それでも創造主が愛するものが多くある。

 

そんな光景を見られる、この宇宙で。

かつて同志が放逐されるように2度程打ち上げられて以降、内1人は憐れ漂うスペースデブリになっていたのだが……。

 

いつの間にか進展があった様子。

 

そこで思う事は、荒らし死すべし慈悲は無い。

良くも悪くも、何処にいても、いつも通りなクラフターなのであった。

 

 

 

 

 

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最前線となる位置にシオンら親衛隊や、スケルトンのアダルマンの軍勢……ゾンビやスケルトンが位置していた。

先手必勝。 突撃した時に、目の前のゾンビとスケルトンの何体かは倒した。 反射的に。

 

 

「ちょーっとお待ち下さい!? 確かにアンデッドですけど、味方ですからね!?

聖都を守るアンデッドってのに色々思うところはあるのかも知れませんし、私もかつて教会に裏切られた身ですから、私も思うところが無い訳ではありませんが!

それでも止めてー!? 苦労して装備や軍勢を整えたんですよおおお!?」

 

 

かつてのスケルトンがハァンと悲痛に叫ぶ。

アンデッド共は攻撃してこない。 結構良い装備をしているから危険だと思ったが。

ふむ、と頷く。

どうやら友好的な奴らしい。

元の世界では敵でしかないから、紛らわしくて仕方ない。 名札でも下げて欲しい。

特にガチ装備のアンデッドとか、見ていて落ち着かない。 元の世界では、この手のモンスターに酷い目に遭ってきた。

取り敢えず倒してしまった者の装備は剥ぎ取る。

勿体ない。 後で防具立てにでも飾ってしまおう。

 

 

「あああ……迷宮や頑張って稼いだお金で、袖を振り揃えた装備がああ!」

 

「元気を出せ、アダルマン。 巨人共もそれなりの装備を所持している。

奪われたなら、奴らから奪えば良い!」

 

「装備を奪われては更に厳しいでしょう!? 数では此方が圧倒してますが、可愛いスケルトン達では太刀打ち出来ぬかと」

 

「戦う前から弱気でどうする! 彼等を見てみろ、既に我々より前に出て戦い始めているぞ!」

 

「装備を着けずに戦うなら、返して欲しいんですけれどもね!?

ああ、場合によっては七曜の老人共より怨めしくなりそうです!」

 

「リムル様の部下になったなら、つべこべ言わず活躍して見せろ! 私は往くぞ!」

 

 

巨人共がTNTキャノンの射程圏内に入る。 軍事部砲兵隊、攻撃開始。 砲撃である程度の人数を吹き飛ばしつつ、戦車隊が突撃。

主砲射程圏内に進軍すると同時、一斉射。 巨人共を吹き飛ばしていく。

一撃で粉砕出来たものと、爆風や破片が喰らった程度の中途半端な者で分かれた。

此処で注目すべきは、後者は驚くべき再生速度で回復をした事だ。 傷が塞がる。

元気に動く様に、クラフターは「ああ、こういうタイプね」と納得して頷く。

 

 

「むぅ……奴等の回復速度といい、恐怖を感じず堂々進む姿。 奴等には恐怖がないのでしょうか」

 

「それは彼等とて同じ事。 怯まず進め!」

 

 

エンダードラゴンもクリスタルがある限り回復していた。 この世界での魔物の場合、クリスタルの類が無くても自然治癒力は高く感じる。 皆が皆ではないが、今更に驚きやしなかった。

なら一撃で粉砕すれば良い。 直撃を狙い、剣等の携行武器ならば攻撃力を最大にしたもので「やりすぎ」てしまえば再生出来ず倒せる。

特に「やりすぎ」の面ではアテがある。 座標伝達が済んだから、間も無く来るだろう。

IRPは忙しいので、別のモノだ。

きた。 空より光の柱が突如と聳え立つ。

 

 

「光線ッ!?」「神聖魔法!? いや違う!」

 

 

天に伸びる光の柱。

突然の事に驚くシオンとスケルトン。

その柱は移動し、地表の巨人共を蒸発させていく。 耐えられる者はおらず、次から次へと軍勢は光に包まれ影となり、消えて逝く。

 

 

「新手の魔法? いや、彼等の力ですね!」

 

「恐らくは」

 

 

明らかに巨人のみを攻撃している事から、天使からの攻撃ではない光線。

その正体は予想通り、クラフターの攻撃だ。

宇宙……軌道上に浮かぶマイクラ軍事衛星からのサテライトビームである。

空より高く、星と共に高速で動きつつ、地表までの遠距離攻撃を正確に行なっていた。

驚くべき技術力だ。 この短期間でここまでの物を作り上げるとは。 マインクラフター、恐るべし。

 

 

「凄いですな。 次々と巨人が消えていく」

 

「我々も前に出よう!」

 

「巻き込まれそうなので様子見てからで」

 

「……それもそうか」

 

 

マイクラ軍事部は核や反物質爆弾の開発のみならず、宇宙空間の軍事利用にも着目。

地図で見るような俯瞰視点で世界を見る事が出来る宇宙。 大陸全土、いや星全体を見る事が出来る此処から攻撃出来たなら……それはもう最強なんじゃね、と。

ただ地表とは異なり、様々な常識や経験が通用しない為に開発は難儀した。

だが何度も死んでは生きるを繰り返している宇宙同志と連絡を取り、データを収集。

過酷な環境下に対応出来る防具、宇宙服のプロトタイプデータをチェック。 改良を施し、宇宙空間での作業可能な防具を開発。

次には速攻で個人用ロケットで軍事部同志を打ち上げ、先駆け宇宙同志と合流。

救助しつつ、そのまま軍事用人工衛星のクラフト開始。 BBとも連携出来る様にしつつ、地表を宇宙から攻撃出来る絶対兵器を目指していき、開戦までには何とか実用化に漕ぎ着けた。

兵装はサテライトビーム以外にも、大気圏内外両用誘導弾、自衛用兼スペースデブリ除去装置の小規模ビーム砲等がある。

また、攻撃以外にも地表を監視する機能を持たせてある。 元々の目的は此方のみだったが、クラフター的には色々試したかったのだ。

結果、兵器そのものとも化した。

あと、宇宙にまで攻撃出来る手段を村人達が持っているとは思えなかったが、バケモノだらけの世界だ。 なんなら同じマインクラフターが敵になれば難なく破壊出来るだろう。

その可能性を危惧した軍事部は、一応、IRPの外殻同様、衛星の外壁はエンチャント黒曜石で作る。

また今後、宇宙開発での拠点にも使える様に、内部にメンテナンスルームが設けられ、仮拠点としても機能する様にされた。

当初とは違う目的が合体していった結果、かなり大きな軍事衛星と化してしまったが、たぶん大丈夫だろう。

……なんかもうそれ、人工衛星じゃなく宇宙基地なんじゃね、という意見もありそうだが、今は置いておく。

 

後で知る事になる辛辣同志としては、色々複雑な思いを抱える事に。

が、平和利用の為だと何とか飲み込む事になる。

創造物とは、最終的には使い手次第なのだ。

クラフターはソレを知っている。 一応。

 

 

「約10万いた筈ですが、既に半数は消滅しましたな」

 

「うむ。 やはり彼等の力は凄いな」

 

 

戦況はクラフターが有利。

後方で控えるシオン達もそう思えた。

ところが、戦場は突如として変化を見せる事となる。

 

 

「むっ! アレは?」

 

 

アダルマンが気づき、指差す方向を見た。

そこには身体中を鎖にて何重にも縛られた、痩せぎすの男。

身長2m半ばという、巨人と言うには小柄な部類に入る。

だが、鎖で封じられていて尚迸り出る苛烈なる気配は、他のどの巨人よりも目を引いた。

クラフターの本能が、その男の危険さを訴える。

他とは明らかに違う。

 

その男、闘神とも、荒ぶる鬼神とも、恐れ称されたフェンという者。

ダグリュールの弟であり、そのエネルギー量の予測値は兄を凌駕した。

それはなんと、竜種レベル。 とんでもない化物がいたものだ。

あー……いや。 クラフターは「またこのパターンか」と逆に冷静になった。

どこぞの神的な龍がいる世界も、次から次へと強い奴が現れる様に。

ただ、それが現実に起きると冗談じゃないどころではない。 味方なら良いが敵なのだから。

その内、惑星ひとつやふたつ、破壊出来る奴が出てきそうだ。 既にいるかも知れないが。

核とか反物質爆弾を作れる奴も含めて。

 

 

「とんでもない奴が出てきたな!?」

 

「はい。 此方の損害は軽微とはいえ、このままでは一気に殲滅される恐れもあります。

いくら彼等がいてくれるにしても……」

 

「魔王ルミナスも控えているとはいえ、流石に厳しい状況、という事か!」

 

 

衛星砲がボス級に放たれる。

耐えられた。 光の柱の中、影が揺らぎ続けるばかり。 消滅する気配がない。

突貫工事でクラフトしたビーム砲であったから、威力不足だったか。

おのれ。 荒らしの癖に生意気だ。

クラフターは首を横に振る。 楽はさせてくれないらしい。

 

 

「やはり厳しいか!」

 

「あの鎖、グレイプニールか!? だとすれば危険ですぞ?」

 

 

一旦、後方に下がる。

シオンとスケルトンに加え、ガドラとかいう老人が鳴いていた。

荒らし殲滅に参加しなくても良い。 邪魔じゃない所にいる分には。

 

 

「ガドラか。 なんだ、それは」

 

「はい。 古文書に記された言い伝えなのですが……神話の時代、悪神を竜帝が封じた、と言われておるのです。

三兄弟の2人は改心しましたが、一人は凶暴な性格のままであったが故に、神の鎖により封じた、と。

その神の鎖が、聖魔封じの鎖、グレイプニールと呼ばれているのですじゃ」

 

 

しかしどうするか。 取巻きは軍事部が戦車砲やTNTキャノンで倒し、残りはエンチャント弓矢や銃火器、ロケランで吹き飛ばせる。

それでも息がある奴はエンダーパールで接近、回復して動かれる前にダイヤ剣、ネザライトの剣でトドメを刺している。

だがアイツは駄目だ。 衛星砲を照射され続けているのに、動きを鈍らせるのがやっとだ。

戦車砲やキャノン、ロケランやIRPの集中砲火も試すべきだが、現状の様子から無意味に終わりそうでならない。

 

 

「事実だと思うか?」

 

「恐らくは……ワシは、撤退も止む無し、と具申致します」

 

 

衛星砲の耐久値、ゼロ。 砲身融解。

照射強制停止。 現地宇宙同志が修理に入る。

宇宙服と宇宙空間での活動方法が改善された事で、作業を効率的に、そして、ある程度安全に行える。

とはいえ。 直ったところで倒せまい。

代わりに誘導弾を雨霰と地表に突き落とした。

大物は倒せずとも、取巻きは倒せようと。

 

蒼き星に放たれていく大量の誘導弾。

大気の摩擦熱というより───弾頭に受ける空気が余りの速さで逃げられず、圧縮されて熱を上げていくというべきか───の所為で火の玉となったものが高速で地上に堕ちてくる。

その様は流星群。 それは途中で燃え尽きる事なく次々と地表の巨人に降り注ぐ。

爆散していく巨人達。 抉れる大地。

それでも強者はくたばらない。 厄介極める。 結局、剣と弓矢と銃火器は必要だ。 戦闘続行。

 

 

「撤退はしない。 我らは、この地の防衛をリムル様より命じられている。

撤退は、リムル様の意に反する行為だ。

現状、リムル様が姿をお隠しになった以上、我らは自己判断によりこの大戦を終息させる事を許されているのだろう。

だが! それは、この地を安定させた後の話だ。

命令は、遂行せねばならない。

それがリムル様への忠誠の証であり、今戦い続けている彼等の行為と、リムル様の作戦立案の正しさを証明する事であるからだ。 異論はあるか?」

 

「───御座いません」

 

「良し」

 

 

刹那、フェンが動いた。

戦場を風の様に駆け抜けて、凄まじい速度で此方にやって来る。

 

突然の事に軍事部は対応出来ない!

 

戦車の砲塔が間に合わず、そのまま戦車が次々と殴られた。 エンチャント装甲にも関わらず、かなりの耐久値が削られる。

そのままノックバックで吹き飛び、地面を転がる。 そのまま後続のアンデッドを巻き込んだ。 次いでにアダルマンも巻き込みそうになる。

 

 

「な、なんという速度、いや力だ!?」

 

 

シオンが叫ぶが、気にしてられない。

今直ぐ動けるのは、随伴歩兵のクラフター。

俊足のポーションを飲み干して、一気に間合いを詰める。 囲い込むと飛翔斬。

エンチャントされたネザライトの剣だ。 効果は期待出来る。

ところが、奴は巨体に似合わず素早く腕を振るう。 纏めて殴られた。 凄いダメージ量とノックバック発生。

周囲のクラフターはアッサリ吹き飛ばされる。

アイアンゴーレムにさせるより痛い。

だがタダではやられない。

ベテラン勢は、左手で盾を構えてダメージに備えつつ、右手のスロットを変更、剣から弱体化スプラッシュポーションへ。

殴られる直前、奴の足下へ投擲。

吹き飛ばされた後に割れたソレは、確実に奴を効果範囲に巻き込んだ。

 

状態異常を与え、そうすれば或いは。

 

が、新兵器衛星砲で何ともならなかったのだ。 そんなので何とかなるか分からない。 今は無傷の巨人が聳え立つのみである。

だがクラフター。 やれる事をやっていく。

 

 

「彼等を助けないと……」

 

「ふむ。 ワシを前に、高見の見学とは……随分、余裕だのう?」

 

「ッ! ダグリュール、いつの間に!?」

 

 

背後で新たなハァン。

またか。 また新手か。

シオンの背後を嫌々見やる。 裏切りの魔王ダグリュールがいた。

相変わらずデカい。 ゴーレムよりデカいかも。

見るのは久し振り。 ワルプルギス以来か。

今は敵らしいから、倒さねばならないが。

しかし、いつの間にいたのだろう。 エンダーマンみたいにワープでもしたか。

何をされようが何でも出来そうな奴がいる世界だ。 リムルにしろ誰にしろ。 驚くのも疲れる。 気にする暇もない。

黙って抜剣。

ポーションと金林檎で出来る限り強化すると、エンダーパールで一気に決めに往く。

 

 

「甘いわ!!」

 

 

ハァンと叫ばれた。

大気を震わせる程の気合が放たれ、その圧力により剣が止められた。

余りにも超高密度の闘気により、斬撃はダグリュールの肉体に達する事が出来なかった。

 

正しく、化物。

 

軍事部クラフター、咄嗟に防御行動。

剣ガード。 或いは盾。

ほぼ本能からくる行為だった。

相手は規格外。 下手するとウィザー級以上。

別同志は剣から咄嗟に黒曜石に持ち替え。 防壁展開。 相手の視界から消える。

 

 

「悪足掻きだ!」

 

 

黒曜石の防壁は呆気なく殴り壊された。

まるで砂利や土の如し。 なんという力。

だが既に防壁裏にクラフターはいない。

効率強化ダイヤスコップで地面に潜って退避済み。 良くも悪くもいつも通りに。

 

 

「大地の下に潜ったか! 愚かな!」

 

 

今度は地面を思い切り叩くダグリュール。

大きく大地が揺れ、さも地震。

同時に地面がドゴンと陥没。 まだ浅い層にいたクラフターが飛び出してしまう。

 

 

「どこまでも甘かったな!」

 

 

空中に浮かぶクラフター。

足をジタバタさせつつ、死を悟る。

エンダーパールは間に合わない。 不死のトーテムも所持していない。 空中なのでブロックも設置出来ない。

情けなく盾を構えるのが精一杯。

リスポーン覚悟。 刹那。

 

 

「甘いのは貴様じゃ!」

 

 

薔薇のような甘い香りとともに、一筋の紅の閃光がダグリュールの脳天に落ちた。

そして、フワリと舞い降りる銀髪の少女。

漆黒のドレスに身を包み、輝く意思を知ら示す金銀妖瞳(ヘテロクロミア)が美しい。

魔王ルミナス。

この地の支配者が参戦した瞬間であった。

同時に命拾いしたクラフター。

 

 

「ふん。 貴様の様なヤツは、勝ち誇る瞬間に隙が出来る。

妾とて、貴様の防御を突き崩すのは困難故、意に沿わなかったが創造主共々様子を伺っておったのだ。

油断したな、ダグリュール。

悪く思うなよ。 そこで暫し寝ておるが良い」

 

 

落下ダメージを回復ポーションとベイクドポテトで回復させつつ、周囲を確認。

いつの間にかルミナスが戦場にいる。 まぁ手伝ってくれるなら、それで良い。

どうやら我々を囮にして、ダグリュールを屠った様であるが……それで荒らしを倒せたなら、まだ良い。

だが見ろ。 生きている。 平然としている。

 

 

「ふむ。 ルミナス、か。 そして貴様達の認める創造主、か……確かに、油断した。

だが、果たして問題があると言えるのか?

ワシにダメージは無いぞ?」

 

 

ルミナス達、村人の表情を凍らせた。

シズの説教前後の笑顔を見た我々に似る。

 

 

「今ので終わりか? では、次はワシの番だな。

心せよ! 気を抜くと、即死だぞ!!」

 

 

絶対的な暴威が戦場を支配する。

随分と凄い荒らしに出会ったものだ。

シズの気迫を物理にしたら、勝るとも劣らない感じかも知れないな。

今度こそ死ぬかも知れない。

 

だから……それが何だというのだ?

 

相手が気に入らないモノなのだから、倒すまでアレコレ試す。

いつもの事だ。 また続けるだけだ。

 

 

 

 

 

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もう1人の弟、グラソードは剣士である。

同じ戦場の別の場所にて、クラフターと対峙し剣を交えていた。

だが剣のみではクラフターに勝目はない。 剣圧は凄まじく、エンチャント剣と防具でも厳しいものがある。

改めて恐ろしい敵ばかりだ、この世界は。

クラフターは辟易しつつも……笑った。

理不尽な暴威に抗ってこそ、そこに価値が生まれていく。 この感覚は好きだ。

 

 

「くかかかかか! 噂通り妙な人間共よ!

通常であれば鎧袖一触であろう存在に見せかけておき、この粘り強さ!

かような戦士と相見えた事、武人としての誉れよ!」

 

 

剣のみでは厳しい。

ハクロウもそうだったが、相手の得意分野に合わせる必要はない。 試合でもなしに。

そんな礼儀、荒らしには特に必要はない。

剣には剣を、弟には弟をなんてしていたら、とっくに死んでいる。 弟……息子もそうだ。 短期間だけだったとはいえ、帝国領にいた時、正々堂々なんて事をしていたら終わっていた。 色々試し、駄目なら逃げても良い。 道は1つじゃない。

さても今は色々試す時。

ノックバックで相手を吹き飛ばし距離を稼ぐ。

弓矢を絞って見せる。

 

 

「ぬっ! この程度で時間を稼いだつもりか!」

 

 

来た。 蹴られた地面が大きな砂埃を立てた。

だが、それがクラフターの狙いだ。

弓矢を絞って見せていた手が、次にはエンダーパールを持つ手に変わる。

砂埃に投擲。 ワープ。 すると、どうだ。 奴の背後に自然と回り込む形になる。

それも視界に映らぬ砂埃の中。 相手をワープに続き惑わした中、そのまま弓矢を持ち直し、ガラ空きの背中を射抜く。

 

 

「やりおる! だがその程度!」

 

 

素早い振り返り、剣ガードで弾かれた。

想定の範囲内だ。 はい次。 連撃の手を止めない。 反撃を許さない。 やるからには本気だ。 その方が楽しい。

 

 

「地面に潜ったか! いや空と二手に分かれての挟み討ちと見る!」

 

 

例によって効率強化ダイヤスコップとツルハシをそれぞれの手に持ち、地面を潜る。

一方でエリトラとロケット花火で空に上がる同志。 また一方ではそのまま地表で戦闘を継続。

それぞれのタイミングを見て、それぞれの方向から攻め入る。 同志の隙は他が埋め、敵の隙は都合の良い同志が攻める。

空から弓矢やスプラッシュ。 避けられたら、その隙を地表同志が弓矢や剣撃。

ガードか回避された先、敵の足下からは潜っていた同志が斬り上げる。

自然と連帯が取れていた。 打ち合わせもなしに。 マルチとはいえ、ここまで出来ると快感に襲われる。 気持ちが良い。

 

 

「やはり知恵なき獣でもなければ、戦に不慣れな素人でもない。 かといえ玄人かと思えば既存に囚われぬ戦法!

誠、面白い戦士に出会え、打ち合えたものよ!」

 

 

周囲を気にせず、続く戦闘。

剣のみ同士ではなかったが、互いに興奮を抑えられない。 戦争ではある。 殺し合いである。

されども、この死合は……。

 

 

「兄よ、某は死に場所を見つけたぞ!」

 

 

敵ではなく、同志として出会えたならば。

だが最早。 ならば今を最高の瞬間にしていこう。

 

クラフターは戦い続ける。

戦場の1コマに過ぎぬ戦闘も、いずれ終わる。

その間にも時間は流れ、別の場所でも戦争は続いていくのだった。

 

 

 

 

 

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戦争はクラフターにとって祭りである。

ワイワイ騒ぎ、暴力と創造力を遺憾なく振るう事が許された無礼講(一部創造物の使用は禁じられているが)。

剣で肉裂き、矢が射抜き、血潮が噴き上がる。

東で西で。 荒らしと戦士が散って逝く。

が、全員が直接戦闘をしている訳ではない。 兵站組といった後方支援班がいる。

戦時であろうと兵器や食べ物の生産は続けねばならない。 研究も続けられる。 諜報員や指揮官も重要な存在だ。

それらを受け持つ地味なクラフトは確かに存在し、必要とされた。 戦闘員の為だけでなく、民が飢えぬ為にも、村人も大変良く奮闘していた。

 

 

「物資の備蓄には常に気を配って!」

 

「必要な国、地域のシェルターに配送を!」

 

「地下鉄が無事な内に!」

 

「使えるものは何でも使う気で!」

 

「あ、でも核爆発や対消滅はヤメテ」

 

 

そう。 表舞台に上がらぬクラフターや村人もまた、ある種の戦場で戦っているのだ。

弟君や姉の辛辣同志が、その例だろう。

剣や弓矢を振り回すだけが戦争ではない。

特に弟君は物資面にも気を配り、慣れぬ指示をしつつも頑張っている。 縁の下の力持ち、という奴だろう。

その為、先輩クラフターから2つ名を貰った。

その名も「お荷物」だ。

他意はない筈……たぶん。

 

さても東西南北。

大陸のみならず、世界を越えて祭りは続く。

 

その一部地域でしかない、北の地。

武装国家より北。 帝国との戦争時、竜種が暴れて荒れ狂った海と氷土も祭り会場。

天使はいないが、魔獣が空と海で吼え、氷土に住まうギィの配下の悪魔達もまた鳴いた。

 

 

「ですから、お引き取り下さい、諦めて下さい、いや本当お願いします」

 

 

原初の青、レイン(ヒラリー)は願う。

帝国との戦前から、というか下手するとマッピング時代から、ギィの領地の氷土に向けて立派な橋を掛けようとするクラフターに鳴く。

 

 

「よく飽きず続けられますね……」

 

 

疲れこそ見せないが、呆れ顔が出てしまっており、メイド服が台無しに。

そんな姿も気にもせず、クラフターは戦い続ける。 なにと問われたなら橋と。 自分と。 あと悪魔とか海獣とか偶に襲撃してくるドラゴンとか。

 

 

「今は勇者クロエとの大事な時だというのに……」

 

 

空中からゴミを投げ棄てる様に、魔法弾を力なく放つ青色。 架橋工事に夢中のクラフターは気付く事なく直撃を喰らう。

即死こそしなかったものの、ノックバック発生。 足をジタバタさせつつ海に落下。

 

極寒の海に落下したところで、クラフターは死なないが、息をしなければ溺死してしまう。 真っ直ぐ、足を動かさず海面に浮上。

刹那、デカい海獣にパクられた。

が、噛まれなかったのでノーダメ。 丸呑みされた。 即消化されるとか、なんらかの状態異常で即死しなければ、何とか。

エンチャントされたネザライトの剣を振るい、腹を切り裂き、脱出。 海面で溶岩バケツをぶち撒け、黒曜石の人工大地を作ると、そこを基点に土を積み上げ未完の橋に舞い戻る。 エリトラの時もある。

 

 

「はぁ……最初こそ橋は簡単に壊れましたが、今は中々壊れ難くて困りますね。

あの黒紫の石なんて、中途半端な攻撃や核撃では壊れてくれませんし」

 

 

何度目か分からぬ溜息。

流石に主の前で、この様な真似はしないだろうが、その気持ちは皆も思うものだった。

最初こそレインが出るまでもなく、もっと格下の悪魔達が相手にしていたのだ。

ところが、いくら橋を破壊しても核撃しようとも、クラフターを吹き飛ばそうとも何度でも蘇るさ、とツルハシとスコップを振り回すのだから困り果てた。

主のギィは面白がっているものの、配下としてはホイホイ侵入者を許す訳にはいかないのだ。

排除・破壊命令が下された訳でも無いが。

 

だが今は、今はマジ止めて欲しかった。

勇者クロエが呪いの最後の命令を遂行し、3日以上ギィとドンパチ戦闘中なのだから。

そこに混ぜるな危険な奴等を混ぜたら、とんでもなく危険に決まってる。 悪魔達は知っているんだ。

 

 

「天使がいる場所に行って、遊んでいれば良いものを……ッ!?」

 

 

青色が何かに気付く。

視線を追うと空に飛翔体。

あのドラゴンだ。 ギィの配偶者なのか知らぬ白い奴だ。 人型になると白く綺麗な村人に変身する奴だ。

時々此処にやってきては、ブレスで氷漬けにしてくる邪魔者でもある。

クラフターはやれやれ、と弓矢を構え……様子がナニか違うのに気付いた。

ソイツは此処を素通り、橋の向こうへ行こうとしていた。

 

 

「"白氷竜"ヴェルザード様!?

今は駄目です! 行ってはなりません!」

 

 

青色が止めに入ろうとして、次には轢かれた。

真っ二つだ。 青色が。 空中衝突事故発生。

ドラゴンは気にするでもなく、そのまま氷土へ。 轢き逃げだ。

だがクラフターは驚かない。 今更なんだ。 この世界のドラゴンなら移動しているだけでも危険な存在だ。

接近戦を仕掛けるか弓矢で遠距離戦を挑むか問われるなら、後者を選ぶ。

接近戦は体表面に取り付く余裕がある時。 そうでなければ、正面に棒立ちは自殺行為である。

青色は愚かにも、そうしてしまった。 近付いた方も悪いね、と頷く。

だが仕方なかったのかも、とクラフター。

ギィの配下だし、相手はギィの大切なドラゴン。 傷付けるのは極力避けたかったのかも知れない。

 

さても此方はクラフト再開。

今の内に架橋工事を進めよう。

 

と、思っていたが。

氷土がドカンドカンと騒がしくなった事で手が止まった。

気になって仕方ない。 次から次へと壁が立っていく。 そんな苦難を与える世界を愛しているが。

ツルハシとスコップの手を剣や弓矢に変え、ボートで海の先を往く。

海獣に襲われ、半数以上の同志はリスポーンしてしまったが、それでも何とか氷に上陸。

クラフターは音の鳴る方へ駆け出したのだった。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

北の地にて。 ギィと勇者クロエ、そんな2人の戦いを眺めていた"白氷竜"ヴェルザード。

その場にクラフターは"まだ"いなかったが、それでも楽しそうなギィを見て、唇を噛み締める。

その内心に渦巻くのは、激しい炎。

怒り。 いや、嫉妬であった。

兄である"星王竜"ヴェルダナーヴァがギィを認めて以降、ずっとヴェルザードは嫉妬していたのだ。

冗談めかし、ギィに本心を悟られる事の無いように。

最近は兄とは違う気色の"創造主"が現れて、それはそれで余計に心を乱れさせるものであったが……。

 

ともかく、その心に去来するのは、先日受けたメッセージの内容。

マインクラフター同士の念話がある様に、竜種同士の特殊な以心伝達念話がある。

その念話を受けた。 それは滅んだ筈の兄であるヴェルダナーヴァからの念話であり、彼女を驚愕させるに十分であった。

 

 

───ボクの為に、ギィと忌まわしき創造主共を滅ぼしてくれ。

 

 

内容を思い、溜息を1つ。

ユウキとの諍いや、魔王リムルがギィに依頼した内容は知っている。

クラフターは知ろうと知らなかろうと知っちゃこっちゃない内容だが。

なので、悪意なく邪魔してきそうな架橋工事中の混ぜるな危険連中に、時々嫌がらせをしてはいた。

ギィが彼等の愚行に笑顔を向けるのも気に入らなかったのもある。

 

しかし……。

ユウキに宿る悪徳の意志、アンラ・マンユ

の正体が、ヴェルダナーヴァであったとは……。

 

ヴェルザードは悩んでいた。

いや、本当は悩む必要など無いのだ。

彼女は元々、ギィを監視する目的で近づいたのだから。

 

ただ───。

 

そう、ただほんの少しだけ、ギィと過ごした時間が楽し過ぎただけなのだ。

傲慢なギィ。

馬鹿なギィ。

優しいギィ。

冷酷なギィ。

恐ろしい、ギィ。

そして、兄が認めた友としての、ギィ。

色々な顔を持つ彼と過ごすのが、好きだった。

だけど、兄がギィを殺せと言うのなら、自分は……。

それに、ギィは決して、自分にあのような顔を見せない。

あんなに楽しそうに戦うなんて。

なんなら、兄の足下にも及ばぬ"創造主"に対しても。

かつてのギィの親友、ルドラとも非なる行動なのに。

 

ギィは大人が子供を相手にするように、"私"を傷つけないように配慮していたというのに。

その時だろうか。

彼女が、自分の心に芽生えた嫉妬を思い出したのは。

あの兄が認めた、ギィ・クリムゾンという魔王に。

 

そして───。

 

(ギィは、私には優しいの。 でも、横に並ぶのを許してくれない)

 

───それは、お前が弱いからだ。

 

(私は強い。 私は、最強たる竜種なのよ!)

 

───いや、お前は弱いよ。 現に、ギィの横に立つ資格は無いのだろう?

一方で創造主はどうだ。 最強たる竜種のひとり、ヴェルグリンドを倒している。 命までは獲らなかったけど、その力があるから、ギィは彼等にも笑顔を向けるんじゃないかな?

 

(それは───)

 

───力が欲しいか? 力さえあれば、ギィの横に立つ事が出来るぞ。

 

(でも、それは私の願いではない……)

 

───果たしてそうかな? 力が無いから、ギィはお前を見ないのだ。

 

(力があれば、もっと強ければ、ギィは私を見てくれるの?)

 

───当然だとも。 それどころか、お前の望みを叶えてくれるだろう。

 

(ああ……力が、力が欲しいわ)

 

その言葉を聞き、どこかで邪悪な意思が嗤った。

 

 

───さあ、その嫉妬を解き放つといい。

 

 

あの言葉、キーワードが脳裏に響く。

そう、ヴェルザードの心に刻まれていた能力を解き放つ、そのキーワード。

そして、"星王竜"ヴェルダナーヴァにより封じられていた嫉妬の封印が解かれる。

 

 

───ギィを創造主共々殺して、お前の好きにすると良い。

 

 

兄の許しは下りた。

 

決まれば即行動。

ギィの元へ飛翔する。 邪魔するレインを両断し、架橋工事に興じるクラフターを取り敢えず無視し、先ずは好きなギィの元へ。

 

 

「ギィ、私ね───ずっと貴方を───」

 

 

彼女は目覚めた。

自分の欲望に忠実な、嫉妬の女神。

その欲望のままにギィとマインクラフターを殺し、自分のものとする為に。

自分の欲望に忠実に、盲目的に一つの意思に従って。

皮肉にも、それはマインクラフターにも通じるものである。

そして、その上で創造か破壊かで分岐する。

残念ながら、彼女は破壊側だった。

つまり、荒らし。

マインクラフターは嫉妬の女神と対峙する。

荒らし許さん慈悲は無い。

 

 

 

ところで、この荒らしは分からない事がある。

どんなに強かろうと荒らしなら、殺す対象なら殺さねばならない。

だが慌て即座に行動する事が、最善策とは限らない。 時に情報は戦を制す。

此処には強い奴しかいない。

対してクラフター、軍事部の様な装備は現状ない。 天使戦に出払っている。 なので、今あるのは、あくまで護身程度の装備。

だからBBに念写を送信、救援を期待。

敗北するにも何か得ようとしたのだが……出てきたワードに首を傾げた。

 

修羅場。 ヤンデレ。

 

えっ。 なにそれは(困惑)。

BBの分析から出て来るワードはリムルの元の世界の情報も混ざる故、分からない時がある。

説明を求めれば、かような惨状を表す際のタグ的なものらしい。

結局分からないから、クラフターは首を傾げ続けるしか無い。

取り敢えず、現地にいたギィとクロエにお辞儀しておく。 挨拶は大切。

だが荒らしドラゴン、手前は駄目だ。

 

 

「よぉ。 流石に面白い状況じゃねーが、手伝ってくれるなら歓迎するぜ?」

 

「ゲホッ……副担任さん……?」

 

 

クロエが目や耳や鼻や口から赤液をドロドロ出している。

ウィルス系の話もクラフターには分からない(少なくとも、この場の者)が、状態異常なのは分かる。 猛毒に似た症状だ。

即座に牛乳バケツの端を口に捩じ込み、口内に白液を撒いた。 飲め。 こういう時は悩んでいる場合ではない。

 

 

「んんッ!? んんんッ!」

 

「相変わらず容赦ねぇのな。 だがこれで、呪いは消えたか。

俺の苦労は少し、いや、かなり減ったな」

 

 

念写、念話で情報共有しつつ状況確認のち、戦闘体制に移行する。

ギィは中立だとしても、ドラゴンは敵対している。 もう目線が駄目だ。 エンダーマンだったら次にはワープしている。

 

 

「貴方達も来たの? 良いわ。 纏めて氷漬けにしてあげる」

 

 

とにかく倒さねば、とクラフター。

クロエ、それまで持ち堪えて見せろ。

頭をひと撫で。 勇気付けると、各々は構えた。

 

 

「先生……」

 

 

黒曜石の防壁でクロエを隠蔽。

刹那、左右に剣持ちが分かれ出て、牽制の雪玉攻撃開始。

片方が囮になる間、もう片翼の同志が天井にエンダーパール投擲。

ドラゴンの背中の上にワープすると、落下ダメージも気にせず飛翔斬の姿勢。

 

 

「無駄よ」

 

 

ドラゴンは両者を苛立ち気に睨みつけると、次にはブレス。 受けた同志は鈍足異常を食らう。 攻撃はノックバックで失敗してしまう。

 

 

「凍らない体質なの? でも随分痛そうにして。 なら、そうね。 もっと痛がって?

そしてもっと苦しんで? その様を私に見せて?」

 

 

牛乳ガブ飲み。 状態解除。

あの範囲攻撃は厄介だ。 盾や防壁で防げなくはないが、ノーダメは難しい。

強化ポーションを飲んでも、これでは牛乳で良性効果も中和されてしまう。

だが何とかする。 何とでもなる。

クラフターはいつでも、そうしてきた。

 

 

「貴方を殺して、ギィを殺して……! そして、私を見て貰う! 貴方でもない、他でも無い、紛れもない私だけを!!」

 

猛攻に耐えながら、感情の波を受けながら、クラフターは氷の様に冷めた顔で、つらつら思う。

クラフターはクラフターであると。

あくまで物作りのエキスパートだ。 それは決して他人様の作品や感情を完璧に理解出来る能力ではない。

物を主に視覚情報として受けるだけだ。 後は人それぞれの感情が湧いていく。

時に彼女の様に嫉妬心に狂う者もいる。

そこから荒らしになった者もいる。

その苦しみは理解出来る。

だがそれすらも、完全ではない。

彼女の苦しみを理解した気になれるだけだ。

寄り添う事、同情は時に迷惑だろう。

だが荒らそうと、消そうとする行動だけは共感出来ない。 寄り添えない。 許す事は出来ない。

 

だから。

 

 

「消えろ、マインクラフターッ!!!」

 

 

咆哮。

睨む。 ダイヤの剣を振るう。 そして云おう。

 

───消えるのは、お前だ。

 

 

 

 

 

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北の地でドンパチしていれば、当然の様に新大陸……南の地でも戦闘が発生している。

此方も架橋工事が進められており、また同じ様にして内陸が気になったクラフターがボートで先行したところ……此処を支配しているレオン達と、愉快な荒らし組が戦っていた。

その中には見知った者もいる。

緑色……ミザリーというギィの配下もいた。 ワルプルギス以来だろう。 倒れてるが、たぶん平気だ。 放置。

 

 

「あら? いつかの創造主様ね。 いつでもどこでも、いそうでいないと思えば……やっぱり現れるか」

 

「……外の者は……そうか。 お前達を、敢えて入れたのか」

 

 

倒れているレオンに回復ポーションを投げつける。 コレは助けないと死にそうだ。

よしよし。 良いぞ。 ムクリと立ち上がった。

味方は多い方が良いと頷く。

 

 

「あらあら。 救世主にでもなったおつもりで? でも残念。 今のワタクシは昔よりずっと、強くなって戻ってきた。

そこにいるレオンに復讐する為にな!」

 

 

取り敢えず目の前の徒党は荒らしだ。 親玉的な奴は見覚えがあるからだ。

ユウキの側にいた、耳長で胸が豊満な村人。

怒りを醸し出している。 レオンに向けられる視線の方が強く感じるが、我々にも少なくない怒りが向けられていた。

 

 

「それに、貴方にも少なくない怒りはありましてよ? ゲルミュッドはともかく、中庸道化連の仲間、クレイマンを殺したのですから」

 

「……お互いに、ままならんな。 お前をここまで歪めさせてしまったのは、俺が原因だとしても……」

 

「そうね。 這いつくばって靴を舐めるなら、命ばかりは助けてあげても良くてよ?」

 

 

剣、弓矢を持ちつつ周囲を確認。

レオンの部下らしき剣士が取り巻きと戦っている。 が、押されている。

レオンに至っては、先程まで倒れていた事から、まぁ……戦局は良くないと云えた。

なんにせよ、構える。

レオンは何でも、教子クロエの幼馴染だ。

ここで死なれては、あの子が悲しむ。

シズとも浅からぬ関係がある様だし。

それに何よりも。

 

荒らし許さん慈悲は無い。

 

やはり、コレに尽きた。

相手の怒りの要因が何であれ、コイツらが荒らしである事に違いない。 ならば倒すのみ。

座標も伝達した。

軍事部か、誰かしら救援も来る。

それまでは生き延びたいところ。

 

 

「まぁ良いでしょう。 レオンを先に殺したかったのですが……纏めて葬ってくれる!」

 

 

怒りに任せた荒らしが来る。

我々も、お前には怒らねばならない。

荒らし良くない。 絶対、と。

そうきてクラフターは剣を振るった。

ぶつかる想い。 互いに引けない。

 

 

「死ね! マインクラフター!!」

 

 

創造もしない。 夢も見ない。

かつて、彼女が美味しそうに食べていたシュークリームの味も忘れてしまったか。

それを作ろうと邁進しないのか。

それ程までに、過去を掘り返すか。

今生きる理由を歪ませてしまうか。

世界に溢れる希望をも思い出せないか。

楽しい思い出は彼女にもあった筈だ。

お前も我々と同じマルチだった筈なのだ。

周囲の存在が、それを匂わせる。

凋落したからなんだ。 やり直せた。

未来に進めた。 絶望に捕まらなかった。

それなのに。

 

刮目せよ。 天下創造の頂を。

 

─── 1度や2度の失敗に囚われ続ける奴に、世界を相手取り、圧倒的な理不尽に捻じ伏せられても、何度でも立ち上がってきたマインクラフターが、お前に負ける筈がない!

 

 

「遊びは終わりよ!」

 

 

防壁展開。 何らかの魔法弾を防ぐ。

注意を此方に向けさせてる間に、エンダーパールで別の肥満体質な荒らしに接近。

その荒らしは、騎士に集中していたが、容赦無く横腹に一閃。 荒らしに正々堂々1対1で殺し合う義理は無い。

 

 

「ぶふぉぅッ!!」

 

 

ソイツはエンチャント効果で燃えつつ、大きく壁に吹き飛んだ。

そのまま燃え尽きれば、焼肉が出来そうだ。 食いたくないけど。 リムルの真似はしない。 豚や牛、鶏の焼肉なら食すが。

 

よし。 次の獲物は何奴だ?

 

 

「フットマン!」

 

「ティア、あかんわ。 下がっとき。 この兄さんら、洒落が通じんわ」

 

 

不意打ちで1体は吹き飛ばせた。

殺せはしなかっただろうが、時間は稼げる。

他は難しい。 既に此方を取り囲む様に警戒を始めている。

小柄な涙目の仮面を被る村人に、道化とやらの格好をした奴だ。 後者は特に強そう。 小細工は効果が薄そうだ。

 

 

「アッシの見立てでは、君では話んならん。 会長とアッシ、2人でどうにかっちゅうとこやけど……。

魔王レオンに別嬪な悪魔の嬢ちゃんが居るし、コイツらに限っては何度でも復活して戻って来る習性があるやろな。

分が悪いのは認めましょ。 その上で、どないします、姐さん?」

 

 

ハァンハァンと鳴く荒らし。

状況を把握している仕草に感じる。 脳筋ではない、とクラフターは評価した。

この手の荒らしは厄介だ。 戦闘の手法もだし、引際も知っている。

もし逃げてしまえば、また何処かでやらかす。

出来るなら、全員この場で処刑したい。

 

 

「ラプラス、臆する事ないわ。

レオンは既にボロボロ。 ギィの腰巾着もティアに劣るわ」

 

「確かにアッシ等はまだ、本気を出してはいませんが、ね……」

 

 

鳴いてる間にも、悪魔ミザリーが立ち上がった。

よし。 良いぞ。 自然治癒能力も高いらしく、体力は十分そうだ。

ポーションを無駄にせず済んで良かった。 次は渡すにしても、ベイクドポテトにしておこう。

腹が空いては戦は出来ぬのだ。 コイツが回復と同時に腹を空かせたかは知らないが。

 

 

「姐さん、その嬢ちゃんの存在値が跳ね上がりましたで。

覚醒魔王級ってヤツでっしゃろか? 姐さんよりは劣るものの、ティアでは話になりませんわ……」

 

「───抑えていた力を解放させて貰いました。 役者に不満しかありませんが、いつまでも遊んでる訳にもいきませんので。

ここいらでカザリーム様方には退場して貰います」

 

「あら。 あらあらあら。 まさか力を隠していたのがバレてないとでも?

ワタクシも本気で相手にしてないのは双方理解していた様だけど……そこまで言うなら終わらせてあげましょう。

ワタクシも力を解放して差し上げます!」

 

 

悪魔も向こうも、なんか強くなった。

第2段階という奴か。 ウィザー戦の苦労を思うと苦い顔をしてしまうクラフター。

とはいえ、やるだけやるか。

レオンに強化ポーションを投げつけつつ、自身も浴び、不死のトーテムも所持しておく。

出来れば我々がくたばる前に、軍事部なり誰か来て欲しいものの。

継戦はしたい。 でないと荒らしにこの地が制圧されてしまう。 それは避けたい。

 

 

「な!! まさか、これほど、とは」

 

「手加減していたから勘違いしてしまったのね。 お可愛いこと。

でもね、ワタクシは最強の力を手に入れたの。 幾ら貴方達が束になっても敵わないような、ね……ッ!」

 

 

刹那。 近くの同志が謎の風で吹き飛んだ。

肥満荒らし同様、壁に衝突して、やっと止まる。

小ダメ。 とはいえ驚いた。

ベイクドポテトを齧りつつ、思考する。

いやぁ、参ったな。 冗談じゃないと。

盾ガードしつつ、様子を見る。 下手に刺激したくない。 エンダーマンの様なワープを見せられても困る。

取り敢えず丸石で即席トーチカを作った。

 

 

「姐さん、無茶苦茶でんな。 いいでっしゃろ、アッシも覚悟を決めましょう」

 

「忌まわしい貴様達の息子……あの坊やの様に小賢しく考えた様ですが、無駄でしたわね!」

 

「このままでは任務の遂行が……申し訳ありません、私の見立てが甘かった様です。

せめて、極魔対消滅法による自爆相殺を狙いますので、後の事は……」

 

 

ごちゃごちゃ煩い。

クラフターは弓矢を射る。 避けられても、負けじと雪玉を乱射し牽制弾幕形成。

その状態で接近。 溶岩バケツをぶち撒け、戦いつつ己の都合の良いステージを作っていく。

その合間を縫うように、弱体化ポーションや猛毒ポーションを投擲。

当たらずとも牽制効果を得ていく。

兎に角、戦い続ける。 対抗出来るし、希望と意味があるのであれば。

 

 

「まだ貴方達は……流石はギィ様の認めし創造主達、ですね。 その姿勢は……時に羨ましくもあります」

 

「子がそうなら親もそうだったわね。 良いでしょう、幾らでも小賢しく悪足掻きしていれば良い。

ですが、最後に勝つのは此方側、中庸道化連、そして会長のワタクシ、魔王カザリームだ!」

 

「……成る程な。 クロエも認める理由が少し分かったよ。

ならば、俺もやらずにはいられない」

 

「まっ、どうせやるなら本気でやりましょうや。 その方が楽しいやろ」

 

 

劇は再幕される。

世界中で天使の戦いと同時に、地上に溜まった憎しみや恨み、嫉妬も交差してぶつかり合う。

 

それでも、クラフターはクラフターである。

他者の思い出に浸らない。 荒らしを倒す。

そして開拓と建設の楽しい日々を再度送る。

今はその為に、マルチに協力して各地戦場で奮闘するのみだ。

 

一部、知っちゃこっちゃねぇと建設工事や開拓、資材収集に勤しむ同志はいるが。 架橋工事してる者とか。

それもまた、マイクラクオリティか。

 

 

「ほな、いきまっせ!」

 

 

道化が鳴く。

次には短剣……ナイフとやらが飛んできた。 複数だ。 扇状に広がる事で、命中率を上げている。

連邦にきた狐娘も装備していたが、投擲も出来たとは。 クラフトしてみようか?

取り敢えず今だ。 素直に受けるのも馬鹿らしい。 盾や剣ガード、防壁で防ぐ。

刺さった。 爆発した。 ナイフが。

 

 

「面白いやろ?」

 

 

盾や防壁は兎も角、剣ガードの同志は吹き飛んでしまう。 下手するとTNTやクリーパーのゼロ距離被曝より痛い。

防具が無かったら、即死レベルだ。

次は避けるか、防壁でやろう。

 

 

「まっ、そんな兄さんらも面白いやっちゃな。 身体がバラバラになっても良い威力を受けて、五体満足で動けるんですもん。

話に聞いていても、直近で見させて貰うと不思議な感覚やな。 防具が相当良いものとしても、な。

さて、次は何見せてくれますん?」

 

 

涙目の仮面の方をチラ見。

剣士と戦っているから、放置しておく。 逆にそうするしかない。

目の前の道化は油断ならない。

親玉もだが、有難い事にレオンと緑色が抑えてくれる。 肥満野郎は起きてこない。

ならば目の前を集中だ。 簡単には死ねない。 インベントリの中身と経験値が無駄になる。

 

エンダーパールを投擲。

ワープ時のダメージを受けつつ、移動に合わせて剣を振り下ろす。 避けられた。

 

 

「単純でんな。 そんな見え見えの攻撃からの、どんな動きを見せます?」

 

 

それは予想していたから、真下に鈍足化のスプラッシュポーションを割る。

相手はバックステップ。 そこにシルクタッチで採取していた蜘蛛の巣を、同志が仕掛けた。

 

 

「おっ!?」

 

 

絡まって動けなくなったところを、TNT着火。 ついでに溶岩バケツをぶち撒ける。

刹那、爆発。 先程の仕返しだ。

爆煙が晴れると、姿が見えない。 やったか。

 

 

「あちゃー、ワイの弟がやられてもうたー、なんてな。 残念、ありゃ分身体だったんですわ!」

 

 

別の角度から、荒らしの声。

向けば奴がいる。 なんて奴だ。

強い。 クラフターは確信する。 取り敢えず牛乳バケツを飲み干した。

そのまま雪玉を投げる。 これでワープするなら、エンダーマンだ。

が、普通に左右にフラフラと避けられる。 別に期待してないが。 当たってもノーダメだし。

 

 

「で、アンタはどうなんでしょーな!」

 

 

隙を縫って、殴り飛ばされた。

ノックバック発生。 しかも今度は蜘蛛の巣に引っ掛かる感覚に襲われた。

先程の蜘蛛の巣はTNTで吹き飛んだから、相手の仕掛けた罠であろう。

身体をよく見る。 糸が絡まっている。

剣で壊すのもありだが、相手が突っ込んできたので止める。 代わりにコーラスフルーツを食してワープ。 蜘蛛の巣から離脱。

対して荒らし。 驚きもせず構え直す。

出来る。 ますます強い。 キレる荒らしだ。

 

 

「強い事は認めんとなりまへんな。 クレイマンを殺した仲間っちゅーのは許せへんけど。

その時いたリムルっちゅースライムは、この戦争序盤で死んだと聞くけど、本当はどないやろな?

アンタらは簡単に生き返れるんやろ。

……リムルは悪友ほっといて、何処でどうしてんやろねぇ?」

 

 

剣を振り回す。 弓矢で射抜く。 自爆する。

全て軽々と避けられる。

丸石防壁の裏に隠れて、雪玉ブロックをクラフト。 2つ縦に重ねた。 その上にカボチャを置くと、スノーゴーレム完成。

道化に向けて雪玉を投げ始めた。 直ぐ倒されても良い。 これを量産していく。 味方は作るもの。

 

 

「はっはっはっ! 作り物で対抗ですかい。 けど雪玉なんて当たっても痛くありまへんでぇ」

 

 

時間を稼ぎつつ、架橋工事に使用するべく携行していた鉄ブロック分解。

インゴットにすると、作業台ナシで短剣のクラフトを試みた。 木の棒1本、鉄1個。 剣なら鉄2個だから、コストは半分だ。

やってみた。 出来た。 なるものである。

これをさらっと量産。 スタック出来るのは便利だと思いつつも、これを雪玉感覚で相手に投擲していく。

避けられたが、矢と同じ様に壁に刺さった。 回収出来る。 コストとしてはまあまぁか。 余裕があれば鉄屑でも試す。

場合によっては、羽毛と矢尻が必要な矢のクラフトより低コスト。 しかも投げるのみならず、剣の様にも使える。

リーチと耐久値が低そうなのは不便だが、使えそうだ。

 

 

「ほう? 真似しよる」

 

 

更にTNTとナイフを組み合わせた。

それを投げた。 投げた先で爆発。 面白い。 ここまで作業台無しでクラフト出来るのも評価出来る。 どんどん投げる。

 

 

「ちょちょいちょいちょい!? 多過ぎや!」

 

 

連続爆発。

慌てている。 良いぞ。 効果は抜群だ。

軍事部の手榴弾や、微妙な負傷ポーション、TNTトロッコとは別の使い方も出来そうだ。

起爆はスプラッシュ同様、接触式の様子。 直接攻撃には適していると思う。

TNTの様に時限式に出来るなら、それはそれで別の使い道も生まれそうだ。

夢は広がリング。 被害も……荒らし行為に使われなきゃ良い。 目の前の奴みたいに。

 

 

「チェインエクスプロージョン!?

いやいや、兄さんらの魔法はワイらの魔法とはちゃいますもんな。

独特の特性を持ち、短所と長所の見極めが難しいものの……」

 

 

爆煙の合間から、ナイフが飛んできた。

それを避けるも、今度は頭の横で突然爆発。 横に吹き飛ばされてしまう。

 

 

「此方の攻撃も効くのは、有難いことで」

 

 

吹き飛びつつ、敵から目を逸らさない。

地面を蹴って向かってくる。 ナイフを投げた。 避けられた。

土壁展開。 背後に隠れる。 少し横にずれる。

 

 

「罠だと見え見えでっせ」

 

 

そのまま飛び蹴りされると思ったら、飛ばれて上から降ってきた。

即座に天井展開。 今度は丸石。

 

 

「そのまま壊して……うほぅ!?」

 

 

突き抜けてきた足に、ナイフを振る。

が、即座にナイフガードされ。

 

 

「マジかい!」

 

 

そのまま起爆。 爆発ナイフを振った為だ。

結果、双方巻き添えの自爆攻撃成功。

互いに壁同様吹き飛んで、遠くの位置に転がっていく。 痛い。 けどまだ余裕。 向こうも自然回復が早い。 直ぐ戦える姿勢になる。

 

 

「未来予測も出来ん。 本能で対応させてもらいやしたが、こりゃ互いにキツい戦いでっせ。

つっても、やるだけやらせてもらいますが」

 

 

増援はまだか。

流石にキツい。 ファルムスや帝国の集団戦とは違う損耗だ。 各個人の荒らしがハイレベルだ。 長くは持たない。

周囲を見やる。 一進一退。 やはり自力で切り拓くしかない。

そう思い、再びナイフを構える。

他に、他にクラフトかクラフターがいれば。

 

そう願ったからか。

軍事部や村人が壁を壊して雪崩れ込んできた。

待たせるな。 焦がれたぞ!

 

 

「ここに来てテンペストからのお客さんですかい。 どんどん盛り上がりますなぁ」

 

「悪いがこれ以上の楽しみはない。 さっさと消えて貰うぞ道化共」

 

「名乗る者でもない。 この場限りだからな」

 

 

司令部にいたベニマルと、森や植林場で偶に見かけるソウエイが現れた。

後は軍事部。 装備はネザライトが主で、時に銃火器を手に持っている。

が、新兵器が混ざっている。 それはお互い様で、お互いの手に持つ物を凝視し合った。

けしからん。 後で色々聞かねばならない。

 

 

「雑魚が群がったところで、何が出来る? 貴方に限っては得物に頼らないといけない様ですし」

 

「この刀か? なら試してみるか」

 

 

刹那。 ベニマルが瞬間移動。

次には耳長の背後に立っていた。

まるでエンダーマンだ。 否。 俊足ポーションより速すぎただけだ。

まぁ……ハクロウや他も似た事してたし。 これも今更だろう。

 

 

「ぐっ、あぁ!?」

 

 

そして悲鳴のハァンを上げる耳長。

見やれば片腕が無い。 斬られたらしい。

 

 

「ほら。 返すよ」

 

 

そんな腕を奪ったらしい、ベニマルが耳長に投げ渡す。

いや返さなくても良いのに。 クラフターは眉間に皺を寄せた。 余程自信があるにしても、慢心してはいけないと教えたい。

 

 

「ぐっ……よくも!」

 

 

腕を回収、エネルギーにして取り込み、失われた腕を生やして見せる耳長。

やはりな。 クラフターは首を振った。

奪えるものは奪った方が良い。 返すな。

我々もかつては片腕で世界を相手にしてきたが、やはり両腕使えた方が便利である。

つまり多少の戦力の低下を起こせたなら、回復させる真似は要らない。 格好付けての煽る行為は、時に相手を苛立てさせる。

今回の相手は荒らしだが。 だとしても、かような行為で愉悦に浸るのは同意出来ない。 荒らし行為と同義だ。

どうせやるなら、徹底的にやってからだ。

慢心して飯ウマの最中、クリーパーに爆破でもされたらギャグだぞ、ソレは。 油断大敵。

 

 

「クロベエに何度も鍛え直して貰ったから、大分変色しているが……アイツらの剣より劣るとは言わせねぇ」

 

 

此方を見て不敵に笑うな。 戦車ぶつけんぞ。

外では戦車隊が取り囲んでいるのだ。

一斉射でお前ごと建物を吹き飛ばしても良いんだぞ。

 

因みに。

レオンのいる大陸と連邦のある大陸とは海で隔てられているから、陸路で行く場合、橋なり海底トンネルなり必要なのだが……橋は完成していない。 そう、橋は。 代わりに海底トンネルで戦車隊や一部の同志はやってきた。 あと一部村人。

そうでなくても、ボートで横断後、現地で戦車等を組み立てる。 クラフターなので。

ただし、ベニマル等はポータルの類でワープで来ていた。 移動のロスタイムは無いのである。

クラフターに、ネザーゲート以外の転移方法を作る事は今のところ出来ない。

故に羨ましい方法なのだが……その内、自力で作りそう。 BBもいる事であるし。

 

 

「つべこべと……! 消えろ!」

 

 

親玉、レオンでなくベニマルに向かう。

我々だったら防衛行動をとってしまうが、ベニマルは、なんと棒立ち。 どっしり構える。

 

 

「ほらほら! どうした!?

さっきは大口叩いといて、今じゃ打つ手無しかぁ!?」

 

 

オラオララッシュしている耳長。

ベニマルは振動している。 殴られているからではなく、避けているからだった。

どうも、感情的になり過ぎて、相手の技量を見れないでいる様子。

つまり、ベニマルの方が格上だ。

その内、やり返される。 我々もそうする。

 

背後にいた影薄ソウエイ、道化を相手にしつつ、隙を見て糸を伸ばし耳長の腕を拘束。

動きが一瞬止まった。 ベニマルが、すかさず攻撃を入れる。 拳で。

 

 

「うっせぇ!!」

 

「ぐはっ!?」

 

 

炎を纏ったパンチを1発喰らい、火玉となり吹き飛んでいく耳長。

地面に叩きつけられた後、暫くして鎮火。 同時に大人しくなった。

ベニマルも強いなぁ、と淡々と思う。

得物を使わないで、拳1発でコレだもの。

我々の拳では辿り着けない。 戯れか止むを得ず使うのが拳である。

カリオンが連邦に来た時も思ったが……。

改めて認識した。

この世界と我々の拳の重さの違いを。

 

 

「あ、姐さん!」

 

 

寄っていく道化。

先程とは違い無防備だ。 その隙に斬ろうと思ったが、やめた。 今までの行為からして、これすらも罠かも知れない。

そうでなくても、刹那的にマルチを感じてしまい、剣が鈍ったのもある。 取り敢えず盾を構えておく。

ビビリで結構。 荒らしを侮り過ぎてはならない。

 

 

「やり過ぎじゃないのか?」

 

「エネルギー量は向こうが上だったんだ。 手加減出来る訳ないだろ」

 

「それもそうだな」

 

 

ベニマルとソウエイ、ハァン会話をしつつも、それ以上の追撃はしない。

連中の述懐を聞くのみである。

 

 

「なぁ、ラプラス……ワタクシはどこで間違えたんだろうな?」

 

 

目は虚空に向けて、耳長は鳴いた。

クラフターは盾の構えを解かない。 けれど、見守りはする。

 

 

「最初は、ワタクシ達が楽しく暮らせる場所が欲しかっただけだった……。

その近道が魔王になる事で、魔王になって……で、調子に乗ってしまったのかな……」

 

「ええですやん、そんなん。 誰かて調子に乗る事はありまっせ!」

 

「そうだ、思い出した。 人間の癖に魔王を名乗るレオンがムカついたんだ。

ツマンネー事に拘って、レオンに喧嘩売って……今じゃぽっと出た癖に自由に生きる連中に嫉妬して……。

ははっ、寝た子を起こすように覚醒させちまったんだったな……。

そしてワタクシは殺されて、ずっとレオンと……今なんてアイツら、マインクラフターを恨んで生きてきたのよね……。

でも、不思議ね。

どうして、そんな事にずっと───。

ワタクシ達は、ただ彼らの様に楽しく生きて……。

ラプラス、お前は間違える、なよ……ワタクシ……、みたいに、失敗す、るぞ……また、楽しく──────」

 

 

耳長の意識は、深い闇の底へと沈んでいく。

 

 

───ああ、そうだ……クレイマンにも謝らないと───。

 

 

それが、耳長が、カザリームが最後に思い浮かべた言葉だった。

 

 

「姐さん? カザリーム様!? おい、アカンて、しぶといのダケがアンタの取り得やん!

諦めたら、そこで終わってまうやん。 嘘やん、こんなんないわ……。

ワイは騙されへんで、ふざけんなや! また一緒に、楽しく───。

ワイ等を置いて、勝手に逝ってまうんか!?

う、うぁ、うおおぉ―――ん!!!」

 

 

号泣するラプラス。

それは余りにも無防備で、ベニマルの動きを止めるのに十分だった。

クラフターとしては、荒らしは荒らし。 経緯がお涙頂戴でも、やらかした事を水に流せない。 出来るなら、このまま全員無力化して貰いたい。

この後、反抗を続ける様なら倒すまで。

盾を構えたまま、剣に力が入る。

 

 

「え、そんな……嘘だ、カザリーム様!?」

 

 

涙目の仮面のティアは力無く座り込み、現実が受け入れられないのか放心してしまった。

殺すなら今か。 そう思った時。

 

 

「ほぉーーーっほっほっほ! 今こそ、これの出番ですね!」

 

 

 突如、機械仕掛けのような不自然な動きで、肥満野郎が跳ね起きた。

手には、禍々しい丸い玉を持っている。

その手に持つ玉を天に翳した時、それは起きた。

 

 

『やあ、ボクの名はヴェルダ。

 どうやらカザリームが敗北したか、洗脳が解けてしまったのかな?

ま、どっちでもいいけどね。

さて、長く話すのも何だし、ボクはさっさと目的のモノを回収させて貰うね』

 

 

玉が光を放ち、空中に諸悪の根源なユウキ───ヴェルダ───とやらの姿を描き出す。

その像は形を結び、姿を明確に現した。

そして言葉を発した。

告げられた言葉に、村人系は動きを止めた。 話に興味がある訳ではなく、その目的を察する事が出来なくて迷った為だ。

加えて、感じる謎の威圧感。

本体が降臨したのか、或いは分身体なのか。

その辺より格上だろうメイド悪魔やレオンでさえも、感じる覇気に圧倒され、迂闊に行動する事が出来なくなっている様子。

油断なく身構えるのみである。

クラフター?

取り敢えずトーチカを作って背後に隠れた。

スリットから弓矢を構えて身構える。 ここまで戦闘が長引くとは。 増援が来たとはいえ、どこまで持つか。

やはり自爆か。 核自爆か。 対消滅も捨て難い。

 

 

「何やと……? カザリーム様を、洗脳してた、やて!?」

 

 

一方、道化……ラプラスはキレた。

 

 

「貴様ぁ! ワイの、ワイの仲間達を何やと思っとるんや!!」

 

 

滅多にない怒りを道化から感じる。

だが、相手にその声は届かない。 道化に興味を持つ事なく、淡々と何らかの目的に沿って行動する。

奴は周囲の反応を気にする事なく、右手を耳長に向けて翳した。

その瞬間、耳長の燃え残った肉体から光が分離し、ヴェルダの手へと吸い込まれていく。

クラフターは戦慄した。 そして思い出す。

リムルの捕食を。 雰囲気は違えど、思い出したものは仕方ない。

 

 

「させるか!」

 

 

ソウエイが神速の突きを奴に放ったのだが、その突きは像をすり抜けてしまう。

クラフターも倣って弓矢を射る。 駄目だ。 同様にすり抜けた。

 

 

「実体を持つ幻影……?」

 

「これは!? 並列存在の一種?」

 

 

レオンとメイド悪魔が鳴く。

鳴いて解決するなら是非解決して欲しい。

取り敢えず他の方法だ。 出来る事をする。 肥満野郎を倒すとか、この後起きそうな戦闘に備えるとか。

軍事部は既にスタンバってる。 動きがあれば一斉射撃が入るだろう。 慣れた動きだ。

 

 

『ああ、ボクの事は気にしなくていいよ。これは単なる記録映像さ。

君達の行動を予想して話しているから、若干違和感があるかもね。

さて、目的のものは回収が終わったし、消えるとするよ。

そうそう、最後にプレゼントをあげようかな───』

 

 

アレか。 開戦時等に空にデカデカと映された映像の類だろうか。

混乱する事なくクラフターは観察する。

特に肥満野郎の持つ玉の行く先を追う。

玉は光を放ち終えると鼓動を開始し、肥満野郎の肉体を侵食し始めていた。

 

 

「気をつけろ! そこのデブが何か───」

 

 

ベニマルがハァンと叫んだと同時。

耳長の身体が発光し、強烈な光と破壊の力を周囲に解き放った。

 

BBから遅れて解析情報が。

なんでも、残った全ての聖魔混合エネルギーを暴走させて、圧縮爆発を生じさせたらしい。

自らの器の中で、最大限に魔力を膨張させた上で、それを一気に解き放たれたのだ。

閃光が走り、城の大広間を熱を伴わぬ滅びの光が満ち溢れる。

それは、圧倒的な殺傷力を撒き散らし、生きている者達へと襲い掛かった。

元凶荒らしの意思が耳長に与えていた自らの能力を回収するのと同時、その身に宿すエネルギーを操り、暴発の引き金を引いたのだと予想された。

うん。 よく分からない。 分からないが。

防御に専念しないとヤバいのは分かった。

帯電クリーパーの何体分かも分からん威力。 黒曜石は必須。 あいや、それすらも怪しいがやらねば。 やらずにいるよりマシ。

 

 

「ッチ!」

 

 

対応出来た者は少ない。

荒らしが燃えりゃ、次は世話が焼けるときた。

クラフターは助けるべく各々動く。 何故とは考えない。 故にと動く。

ベニマルみたいに爆発の閃光を全て回避するという離れ業は無理なので、盾や即席の黒曜石の防壁で難を逃れつつ、周囲の村人を保護していく。

 

カザリームから離れていたソウエイは、瞬時にフットマンを盾にするように位置取り、そこにクラフターが息を合わせての黒曜石による2重壁の防壁展開。 念の為に盾をも構える。

メイド悪魔は表情を変える事もなく、全身を覆う何らかの魔法を発動させたが、無効化出来たのは半分程度。

残りのエネルギーを浴びてダメージを受けたようだが、精神生命体とクラフターのポーション、防壁というクラフトの面目躍如により瞬時に外傷の再生を行った。

カザリームの傍でヴェルダに対する怒りを顕にしていたラプラスだったが、勘の良さ……というか、予知能力が命を救ったようだ。

爆発の一瞬前に反応出来ないでいたティアの元まで移動して、ティアに覆いかぶさりつつ結界を生じさせる。それでも背中に大怪我を負っていたが、辛うじて死を免れたようだった。

クラフターとしては荒らしなので、そのまま消滅して貰いたかったが、仕方なし。

そして、レオンの仲間達は。

レオンの生み出した防御結界とレオンが自らの身体を盾にして守ろうとしたところ、クラフターが割り込みの黒曜石の防壁。

部分的に破損、光が差し込むも、なんとか全員が無事だったようだ。

だが、自分の防御より仲間を守る事を優先したレオンは、無効化出来なかった滅びの光を浴びた事で動く事すら出来ない大ダメージを受けてしまっていた。

しかしそれでも、レオンの目には不屈の意思の光が輝いており、元凶の荒らしから視線を離さない。

それはクラフターも同じくして。

 

クラフターは盾を構えつつ周囲を確認。

今の攻撃は凶悪であったが、死亡した者は居ないようだ。

そんな状況を見て取りホッと息を吐くベニマルとクラフターだったが、その認識に小さな違和感が生じる。

その違和感は、肥満野郎から感じ取れた。

 

 

『どうだった? 花火、綺麗だったかな?

さて、ではプレゼントだけど、そろそろ混じった頃だと思う。

そこのフットマン君には、ヴェガの卵を与えた。

アルティメットスキル『アジ・ダハーカ』を移植した複製体だけど、性能は同等なんだよ。

今のカザリームの爆発エネルギーを吸収して聖魔気を獲得出来ていたら成功なんだけど、どうなっているかな?

まあ、成功でも失敗でもどっちでもいいんだけどね。

それじゃあ、精一杯楽しんでね。 バイバイ!』

 

 

映像が発した言葉の意味を理解する気はない。 したところで、碌でもない話だ。 荒らしと交渉する気もない。

今告げられた言葉が、ベニマル達村人にとって衝撃的だった様だが、今はそれどころではない。

生み出された邪悪な化物が問題だった。

肥満野郎がパワーアップしていく様子。

ヴェガだのなんだの、この世界の荒らしの戦闘能力についての報告は受けていた。

イベント時のユニーク共は、かなりの破壊活動を有する凶悪な化物ばかりである、と。

ウィザー級もピンキリというか、もう別の等級が必要なんじゃね、と思わす程にレベルの差が酷い。

そんな化物に対する有効手段は、圧倒的な攻撃力で捻じ伏せるか、罠に嵌めて消滅ないし封印するしかない。

対荒らしクラフターを参考にするなら、だ。

IRPは、そんな化物に対抗する手段としてクラフトされた訳だが、その肝心の兵器は連邦本土防衛で忙しく、余裕がない。

となれば、軍事部や我々一般クラフターが携行する攻撃手段で戦うしかない。

 

まぁ、何とかなる。 ならねば困る。

 

クラフターは改め抜剣。

警戒すべきは、1番元気そうな肥満野郎。

なら、コイツからか。

身体もネザライトの剣も、クラフト能力も健在だ。 荒らし潰すぞ徹底的に。

 

 

「ほーーーっほっほっほ。 見ましたか、ラプラス?

憎たらしいレオンとクラフターはたった今から、このワタシ、怒った道化アングリーピエロのフットマンが殺します。

カザリーム様の無念も含めて、今こそ、この怒りを晴らして見せましょう!!」

 

 

高笑いを続ける肥満野郎。

揺れる腹が憎たらしい。 というか煩い。

肥満を相手にするなら、ミョルマイルを相手にしていた方が良い。 あの村人とは取引出来るし。 何より荒らしじゃない。 偶に表情が怪しいが。

さても倒さねば。

俊足・攻撃力上昇のスプラッシュポーションを浴びると、再度吶喊。

剣を振るい、弓矢で射抜き、軍事部の銃火器や新兵器の火炎放射器が空気を膨張させゴゥゴゥと空間を賑やかす。

花火代わりに手榴弾や毒・鈍足・負傷のスプラッシュポーションが投擲され、これでもかと殺意マシマシ攻撃を続けた。

 

 

「アホか……今はそれ所やあらへんで……姐さんの最後の言葉を聞いてなかったんかいな……」

 

 

道化が何やら鳴いている。

いや泣いている?

どちらでも良い。 今は目の前だ。

攻撃を避け、隙を突いて攻撃を仕掛けてくる肥満野郎。 味方を巻き込んでもなお元気でいられるとは。

クラフターも似た事はするけれど。

 

 

「何や、フットマン。 君も既に壊されとったんかい───」

 

 

悔しそうなハァンが聞こえる。

まぁ荒らしも、ここまで追い込まれたのだ。

元より壊れた思想が更に壊れたのだ。 分からんでもない。 同情はしないが。

寧ろザマァと思う。 お前らに荒らされたモノはもう2度と元には戻らないのだ。

せめて心を晴らす意味で、今後2度と荒らさせない為にも、此処で消えて貰う。

 

 

「許さんでヴェルダ!!!」

 

 

怒りのハァンが聞こえた。

荒らしがどんな感情を抱こうが勝手ではある。

だが、云っておく。

お前達が泣こうが喚こうが、歓喜しようが絶望しようが、嫉妬しようが訴えようが、破壊しようが作ろうが───。

それらはお前達荒らしが犯した罪の数々が免罪され、正しいとした証明にはならない。

 

 

「───わかった。 無茶しないでよ!」

 

「ところで、君はヴェルダから何も預かったりしてへんやろね?」

 

「アタイには何も……多分、ずっとカザリーム様にくっついていたからかも。

ラプラス、アタイを一人残したりしないでよ……?」

 

「ははは、任しとき。 ワイは実は、カザリーム様より強いんやで?」

 

「うん。 知ってた」

 

 

何か鳴きつつ、道化は肥満に視線を向けた。

その目は既に全ての感情を飲み込み、一切の心の乱れは消えている。

魔人は飄々と立ち上がった。

そして我々の傍まで気楽に歩み寄り、

 

 

「なあ、一時休戦といこや」

 

 

そう、抜け抜けと鳴いたのだった。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

道化とベニマル達は共闘する事にしたらしい。

言葉が分からぬクラフターには何が起きたのか分からない。 どうも非常事態らしい。

肥満野郎は道化の仲間だと思っていたが、裏切りでもあったのか。

何にせよ倒す事に間違いない。

剣や弓矢、ナイフ、雪玉、軍事部の銃火器で牽制射撃を行いつつ、防壁を増やして相手の行動を制限する。

同時に囲い込む様に展開。 袋叩きの状態にまで持ち込んだ。

が、相手も時間が経てば経つほど動きが良くなる。 回避運動もさることながら、反撃頻度も増している。

牽制とはいえ弾幕を張って、動きを封じているつもりなのに。 一時的とはいえ鈍足、弱体化異常も与えているのに。 侮れない。

 

 

「段々と威力も速度も増してやがる。 このまま仕留めきれず、挙句に逃したらヤバいな。 ここでケリをつけたいところだが……」

 

「ご安心下さい。 この城は、大地からも隔絶した球状結界にて現し世と隔離しております。

先程ベニマル様とカザリーム様によりあけられた穴も、既に修復が終了致しました。

……何故か彼らの攻撃は抜けていきますが」

 

「最悪、ドカンと自爆だな」

 

「それで済めば良いんやけどな」

 

「冗談言ってる場合か」

 

 

ベニマル共め。 黒曜石の裏で鳴き合ってないで加勢しろ。 我々のみに任すな。

外で痺れを切らした軍事部が、戦車で外壁を破壊した後、狙撃銃とやらでドカンドカンと発砲してきているのだぞ。

その流れ弾が時々当たる。 痛い。 良く狙って撃って欲しい。 この下手くそ!

 

 

「じゃあ、ピエロ。 お前は何か、大技は持ってないのか?

再生力が高すぎるから、多少削っても直ぐに元通りになるぞ?」

 

「ラプラスと呼んでや。

で、質問への答えでっけど……スンマセンな。

ワイも、そっちの兄さんのように、対個人に特化しとるんですわ。 ワイに頼むより、奮闘中の兄さんらに任せた方が良いんとちゃいますか?」

 

「何だよ、使えねーな……お前さっき、カザリームより強いとか自慢気だっただろうが!?」

 

「アホ言いなや! 覚醒魔王化やセラフィム吸収とかの裏技を使われなかったら、の話ですわ。

あんな反則されたら、いくらワイでも勝てる訳あらしませんやろ」

 

 

外で軍事部が、特殊ロケットランチャーを用意。 構え始めた。

それは戦術反物質弾頭を発射する、個人携行型ロケットランチャーだ。 通常のロケランより大きく、卵型弾頭も同様に大型。 コストもデカいらしく、量産は難しい。

弾頭には識別の為に、エンダーマンの顔がペイントされていた。 ただし見つめてもワープはしないが。 して堪るか。

一方で核弾頭は帯電クリーパーの顔がペイントされた。 ただし近寄っても爆発しないが。 して堪るか。

何方も重量からか模擬弾での実験では真っ直ぐ飛翔せず、飛距離も大してなく、放物線を描いて飛ばす事が前提等、取り扱い注意な武器である。 しかし、個人携行型としては凄まじい威力を発する事が期待出来た。

初めは核弾頭を発射する様にしたが、放射線、放射能を撒き散らし周辺環境を汚染するデメリットから反物質弾頭に変更となった。

小型化のクラフトにエラく苦労したそうな。

それでも甚大な被害が及ぶ事は間違いない。 荒らしごと建物、いや地形が吹き飛ぶ事だろう。 時に止むなし。 荒らしを生かすより良い。

その危険性から娘、息子からは使用を大反対されているブツだが仕方ない。

平和のクラフトは素材が必要だ。 タダではない。 最悪で最善の手段も時には選択しよう。 単に試したいのもある。

 

 

「なんやろな。 ワイの勘が警笛鳴らしとるで」

 

「奇遇だな。 俺もだ」

 

 

IRPが動けないなら、クラフターが直接やらねばならない。

という訳でトリガーを引く。 荒らしがいる城に向けて、放物線を描いて弾頭が飛翔。 いや落下していった。

内部の同志、それを知り慌てて即席黒曜石シェルターを作る。 ベニマル達も入れる。

 

 

「おいおいおい、ナニが起きるってんだ!?」

 

「結界が持てば良いのですが」

 

「おいアンタんトコの兄さんらやろ! せめて意思疎通くらい出来んのかいな!?」

 

「生憎、ここに通訳はいないな」

 

「出来る事は祈る事だけです」

 

「祈る? 悪魔か鬼か道化か奴らか?」

 

「駄目なら駄目なだけだ。 笑える内に笑っとけ」

 

 

着弾。 ズドンと爆発。 そして消滅。

城の大部分が消えてしまった。

対消滅で周囲含めて半分以上は消し飛んだ。

威力を抑えたとはいえ、かなりの威力。 改めて自らの行いに恐怖した。

クラフターは身震いする。 今後も取り扱いは気を付けたい。

 

 

「……結界の意味がないとは」

 

「生きてるのか、ワイら」

 

「何が起きたんだ……いや、奴らが派手にやらかした事は分かる」

 

「周りが跡形も……それに、妙な感覚だな。 何か死んだ様な気がする。 錯覚か?」

 

 

即席黒曜石シェルターは崩壊。

にも関わらず生きているのは、不死のトーテムを複数持参していたからだろう。

軍事部には苦情を入れておく。 殺す気か。 いや死んだもんだが。 村人もソレに気付いてか否か困惑している。

それより荒らしだ。 肥満荒らしは?

確認した。 まだしぶとく生きている。 マジかよ、である。 取り敢えず再度臨戦態勢。

やっぱ化物だらけの世界だよ全くと。

 

 

「嘘やろ!? フットマンのヤツ、あの爆発エネルギーに耐えたんか!?」

 

「楽はさせてくれねぇな」

 

 

防壁を再構築。 退避場所を作り多少安全を高めとく。 外の軍事部にはもう撃つなよと云っておいた。 流石に2度目はリスポーンだ。

クラフターは防壁裏でポーションで回復、強化を重ね掛け。

下位金林檎を齧って抜剣。 いざ再出陣。

銃撃を重ね、悪性スプラッシュポーションを投げまくり、矢を放つ。

同志がナイフ爆弾を作り、受け取った者が思い思いに投げまくる。

 

ズガガガッ。 シュコッ。 パリン。 ドカン。

 

祭りは続くよこの後も。

クラフターは楽しむ。 荒らしは許せないが、戦闘のスリルは良い。 生きている心地がしたりしなかったりするから。

ハラハラ。 ドキドキ。 どこまで続くか、この刺激。 感じるからには全力だ。

 

 

「仕方ねーな。 持久戦になるが、やるしかねーか」

 

「だな。 他に手段は無い」

 

「しゃーなし、でんな。 何よりも生き残るのを優先、でんな」

 

 

一方、村人は覚悟を決めた。

だが、そんな悲壮感溢れる決意、我々のヒャッハー祭りは次の瞬間に崩壊する事になる。

 

 

「クフフフフ。 詰めが甘いですよ、皆様」

 

 

いつの間にやって来たのか、いつかの悪魔が突如肥満野郎の背後に出現し、その頭を掴んだ。

そして、そのまま地面へと叩きつける。

悪魔は振り向き、やれやれと肩を竦める。

 

 

「この程度の雑魚に、何を遊んでいるんですか皆さん?」

 

 

嫌味ったらしい爽やかな笑顔で鳴いてきた。

クラフターは剣からベイクドポテトに切り替えて、取り敢えずムシャムシャしてやった。

美味しいところをもっていきやがって。

小休止だ。 終わったら肥満野郎諸共、反物質手榴弾で吹き飛ばそうかなとか思ってしまった。




色々、リアル含めて不安な中……。
皆様、熱中症等にお気を付けて。
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