寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

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前回のあらすじ
巨人戦終了。
天魔大戦続行。

今回のあらすじ
引き続き各地での光景。
イングラシアでゴミ掃除。
連邦で迷宮戦。

間が開きました。
映画宣伝の影響もあり、再びクラフト案件。
クオリティの変動や終わるかどうか怪しい中ですが、宜しくお願いします。


163.幸運と邁進劇

蠱惑の大都市イングラシア。

大陸全土が戦火に包まれた今、漂う硝煙に混じるは思い出と大勢住まう村人。

それと荒らしの羽虫共。 対するは武装村人と軍事部。 走り回り常に忙しい。

同時に胸に迫る。 剣と弓矢と、後なんかよく分からないモノを飛び交わせているのだから。

 

 

「お母さん……」

 

「大丈夫よ。 聖騎士さんが、何よりあの人達が守ってくれるわ」

 

 

さても多くの村人は非戦闘員。 連中は元の世界の村人同様に教会や創造主が建築した頑丈そうな建造物に駆け込み、一塊となって怯え切っていた。

ゾンビイベントの如く。

それはまぁ良い。 想像の範疇だ。 邪魔しなければ良い。 問題は別に起きた。 ある教会の側を過ぎた時だ。

 

 

「国民よ! そこの魔女は、私に濡れ衣を着せ評議会での立場を失墜させた。

あまつさえ、我が父を弑しこの国に混乱を不幸を齎そうとしている。

賢明な諸君らならば、誰の言葉が正しいのか理解してくれると信じるものである!」

 

 

教会に向かって偉そうな武装村人共が喚いている。 戦場で羽虫と戦うでもなく。

一体何がしたいのか分からないから、クラフターは首を傾げた。 避難したいならすれば良い。 戦うなら戦えば良い。 なのに何方もしない。 愚言愚行に意味があるのだろうか。

或いは中にヒナタと仲間がいるからとも考えた。

敵と認識して詰めているのだろう。 アイアンゴーレムの様に。

だが、と首を振る。

潮流に喚くだけの傍流の図ならば、淘汰されて仕方ないねとも思った。

 

 

「この国の王子、エルリックと護衛騎士団団長ライナー。 評議会の席での失態を取り繕うべく、強引な手段に……」

 

「しかも、国王を弑逆し、その罪までヒナタ様に被せるつもりのようですな」

 

「非常事態に関わらず面子や権力を重視し、自国民の事を考えられない……ここまで馬鹿だったなんて……」

 

 

クラフターに政治は判らぬ。

理解するつもりも毛頭無い。 束縛を嫌い自由に生きる身だ。 心底どうでも良い事に拘らない。 好きにしている。 お互い様だ。 意に介さない。 時々道が重なり邪魔だと殴り合うけど。

同時に解せぬ事が多くある。

村人とは創造主の理解出来ない事を往々にする生き物だと知り得ているものの、未だ戦時に置いて呑気に鳴く者共に呆れる他ない。

それともゾンビにしか対応してないのだろうか。 猫を連れてくれば逃げてくれるだろうか。 クリーパーはそうである。 或いは水流で流すか。 エンダーマンには有効だった。

 

 

「これは聖教会を囲む国軍を慄く目で見つめる、周辺住民へ向けての演説ね。

この未曾有の危機に、国軍を動かしてまで国が一体何を始めたのかという疑問に対する回答……パフォーマンスに過ぎない」

 

「ヒナタ様……それを理解出来る人は残念ながら少ないですよ。 ヒナタ様は評判が良いとは言えませんし、対してエルリック王子は見た目は優男、女性人気は高い」

 

「大丈夫ですヒナタ様! 今なら男性人気ならヒナタ様の方が!」

 

「そういう事を争ってるんじゃない」

 

「さて、どうします?」

 

 

よし殺そう。

思い立ったが吉日。 太平の世に邪魔虫は要らぬ。

クラフターは羽虫に向けていた剣先と矢尻の一部を国軍に向け始めた。

なに。 村人は腐るほど居る。 ゾンビが湧かないのが不思議な程に。 少し減った位で何とも無いだろう。 ファルムスもそうだった。

 

 

「このままではヤツ等が突入してくるのは時間の問題です。

我々だけで脱出するなら突破可能ですが、それでは住民を見殺しにする事になる。 住民を守り抜く事は不可能ですよ?」

 

 

大した問題じゃない。

教会を包囲しているだけの無能だ。 包囲網を更に包囲していくクラフター面々。

相手は気付かない。 油断大敵。 敵は背中に居ないという驕りを何故出来た。 ただでさえ荒らしイベント発生中なのに。 街外周には羽虫が飛び交う光景が見えないのか。

我々の世界で同じ事をしたらクリーパーにゼロ距離爆破されるどころじゃ済まない。 或いは街中故の油断だとして。

まぁ良い。 敵の分には先手を取れる。

取り敢えず教会は破壊したくない。 造形は素晴らしいのだ。 TNT等の爆発物使用は避ける。

 

 

「こんな事なら聖都に移っておれば……外にいる者達に頼るのは?」

 

「今のヒナタ様なら彼等と会話が出来る筈です」

 

「……あまり頼りたくないのだけど。 贅沢は言えないわね、味方は1人でも多い方が良いから。

と、その前に。 奴等は何を要求しているの?」

 

「先程から、ヒナタ様を出せと言ってますよ。

あのライナーというヤツが、自分の力を誇示したいみたいですね。

何でも、ヒナタ様が最強と呼ばれている事が気に食わないみたいですね。

何なら、俺が相手してきましょうか?」

 

 

相手の始末、どうしよう。

クラフターは既に荒らしの調理方法を決め始めている。 見た目だけで判断して良いなら、取るに足らない武装村人でしかない。

普通に火矢で針火山にし、残党は剣で処理。 いつもの感じで良い。 どうせ詰まらない相手だ。 処理したら羽虫掃除に戻らねばならない。 いつまでも村人に構ってられないのだ。

あいや待てよ、と今更躊躇うクラフター。 スニーク姿勢で右往左往。

 

 

「この危機的状況で、何を悠長な……まさか本気で言っているの?

ライナーとは、そこまで大馬鹿者なの?」

 

「そのまさか、ですよ」

 

「私は既に以前ほどの力は無い。 引退した身よ」

 

「関係ないんじゃないですかね。

ライナーにとっては、ヒナタ様を大衆の前で圧倒して、自分の強さを誇示したいのでしょう。

その際に、甚振ってやろうという下心まで透けて見えてましたよ」

 

「で? 私が負けて見せれば、住民は助かるの?」

 

「何とも言えません。 ですが負けると言っても、それは死を意味します。

王を弑した罪を擦り付ける事こそが、エルリック王子の目的ですし。

ライナーと王子、二人の利害が一致した上でのクーデターでしょうから」

 

 

眺めているのも良いか。

このまま行けば憎きヒナタは大乱闘に巻き込まれる。 ゾンビピッグマンの如き大乱闘の開幕だ。 ソレを愉悦と高みの見物といくのも乙じゃないか。

偶には我々のみならず向こうも苦労を知るべきなのだ。 マッピングしているだけで針山にされ刺殺され全ロストする苦労とは比にならないだろうが、多少は苦痛を知れ。

とはいえヒナタが簡単にくたばるとは思えない。 最近はリスポーンもした事で、クラフター化も疑っている。 此処で仮に死んでも何処かのベッドで復活するだろう。 服すら纏わぬ全裸姿で。

 

 

「私が出るしかないわね。 その間に可能な限り防御を整えて。

何重にも防御結界を重ね、大聖堂を鉄壁の要塞に作り変えなさい。 所詮、気休めかも知れないけれど……何もしないよりは時間が稼げるだろうから。

期待は出来ないけれど……もしかすると、彼等が何かしてくれるかも知れないし」

 

「ですがヒナタ様……」

 

「安心しなさい。 死ぬつもりはないわ。

精々悪あがきして、時間を稼ぎます。 万が一死んだとしても……いえ、また生き返れるなんて甘い事は考えない。

だから、どんなに無様でも諦めないわよ」

 

 

そんな訳で。

突撃は今か今かと観察していると、逆にヒナタが教会からノコノコ出て来た。

 

 

「ひゃっはー! 出て来たな魔女が! 抵抗する様なら中にいる奴らは皆殺しだぁ!」

 

「避難してきた自国民を人質? 反吐が出るわね。 国を担う者の発言とは到底信じられない」

 

「お前の意見なんざ関係ねーんだよ馬鹿が! たっぷり痛ぶった後は可愛がってやんよ!」

 

 

暫し喧しいハァン合唱を交わすと、次には偉そうな奴が一方的にヒナタを斬り刻み、殴る蹴るのやりたい放題。

対してクラフターは笑顔で飛び跳ねる。

大分彼女と配下には苦しめられて、特にマッピングの時は人生の時間を無駄にしたから、こうして苦しんでいるのを見られてホンマ嬉しいわと。

 

 

「ぐっ! がっ……ッ!」

 

「いつまで保つか見ものだなぁ。 まっ、俺様は優しいからよ、直ぐお仲間もあの世に送ってやんよ、感謝しろや」

 

 

ヒナタは無抵抗。 されるがまま。

周囲も助けに入るでもなく傍観。

ダメージ計算でもしているのだろう。 ならば加勢するのは悪手か。 同じクラフターとして計算の邪魔はしたくない。 放置すれば死にそうだが、それすらも考えの内だと見るべきだ。

やがて倒れた。 全ロスト覚悟か。 身を粉にする姿勢は嫌いじゃない。 クラフターは感心して頷いた。

 

 

「ひ、ヒナタ様!」

 

 

その内にヒナタの仲間も出て来ると彼女に駆け寄った。 苦悶の表情だ。 良いぞ。 もっとだ。 更に苦しめ。 悲痛な姿を見れてクラフターは踊り続ける。

出来ればリムルに1番味合わせたいモノだが。 今いない者に強請っても仕方ない。

 

しかし……と一方で思う。

やはり我々の体とは違うと。

 

クラフターならば何処を斬られようが矢を頭部に受けようが猛毒を食らおうが瀕死の重傷を負う事になろうと命の限り立つ事が出来る。

ヒナタはシズ同様の帰還者……リスポーン経験者だ。 故に同じ様に立てると予想していた。 が、目の前の惨状から同様の身体を手にした訳ではないという事だと分かる。

 

 

「ぐっ……」

 

「口程にもねえな! 生意気なテメーには、そうやって地面に転がってるのがお似合いだぜ!」

 

 

思考する傍ら、無能で思考してない偉そうな奴が癇に障る高笑いで、哄笑する。

癪に触るからクラフターは荒らし認定し始める。

或いはそうに違いない。 殺したくなってきた。

リムルも時々殺意の湧く顔を見せる。 奴もいい加減潰したい。 "テンペスト"だし。 クラフターは衝動のまま今を生きる。

 

 

「貴様ッ! これは正々堂々とした一騎討ちではなかったのか!?」

 

 

気色ばんでハァンと叫ぶ仲間村人。

それを荒らし村人は鼻で笑い飛ばした。

 

 

「犯罪者に人権なんざねーんだよ。 なーに、俺達は慈悲深い。

泣いて許しを請うなら、死刑の日取りを少し先延ばしにしてやるくらいは考えてやるさ。

もっとも、その間はそれなりに感謝の気持ちを示して貰わないとならんがな。 ギャハハッ!!」

 

 

ニヤリと下卑た笑いを浮かべる荒らし。

相変わらず発言内容は読み取れないが、気に入らない事に変わり無い。

 

うーん……殺す。

 

クラフターはボチボチと武装する。

ヒナタは十分痛い目見た。 荒らしは見飽きた。

後はゴミ処理だ。 詰まるところ目の前の荒らしと天空を跋扈する羽虫駆除だ。 片付けだ。 その後は建築に忙しい。 宇宙開拓もあるし。

その障害となる、目障りなゴミは世から消えて然るべき。 我々の視界に荒らしが許されて良い道理は無いのだから。

 

都合の良い様に世界を創る。

自己中心の世界を生きる。

 

立場によって正義は違う。 弱き者は淘汰され強きが残る。 敗れた者は俗世から解放され、生き延びた者は亡者達の意志を紡ぎ歴史を作る。 道理だ。 或いは一理ある。

荒らしも荒らしなりの理由があるだろう。

だが都合が悪い事を容認出来ない。

結局、皆して他人なんざ知らなかった。

村人もクラフターも。 人魔に拘りもない。 気紛れで他者の為に創造し、合間に人生をやってきただけだ。 それのみを目立たせ評価する者もいるが、所詮は他人の物差しに過ぎない。

自分の人生は自分のモノ。 他人は他人。

無数の道が交わる機会があるだけだ。

気にしては前に進めない。 何も作れない。

介入してくる奴は「ああしろこうしろ」と自身の都合の良い環境作りの為に指図しているに過ぎない。

リムルがそうだ。 前に「世の中、思い通りにならない事ばかりなんだぞ」と偉そうに説教してきた事があったが、当人は自分の思い通りにさせようとしているから、そんな都合を云えたのだ。

騒ごうがヴェルダだのユウキだのが暴れようが関係ない。 相手の都合の良い駒になる気は無い。 利用出来るならされてやっても良いが、不利益被るのが判明し切っているなら付き合う理由が無い。

向こうがそうする様に、此方もやりたい様にやる。 やったもん勝ち。 それを障害としたなら実力行使も有り得た。 この戦争がそうであろう。 更に言えば毎日何処かで意見の押し付け合い、衝突は起きている。 規模の問題でしかない。 珍しい話じゃない。 いつも通りだ。

それはこれからも。 この先も。 マルチである限り何度でも。 逆に意見が無ければ詰まらない世界となる。

 

略。 マルチクラフト万歳。

 

 

「……お前達」

 

 

それを察してかヒナタが我々に語りかける。

身体中刻まれ、RSに塗れた様な赤い身体を無理に起こしながら。

 

 

「手を……貸して、くれ……」

 

「はっ、コイツらに言葉が通じる訳……」

 

 

相分かった。

刹那抜剣。 斬り込んだ。

道中と視界に荒らしがいるから倒す。 理想の創造に邪魔だから。

何より……悲痛な笑顔で助けを求められて、どうして見捨てられようか。

或いは助けたいから助ける。 理由は単純だ。

 

 

「なっ! コイツら!?」

 

「まさか言葉が通じたのか!?」

 

 

我々はマルチクラフターだ。

邪魔者に容赦しないが、共に歩む同志を見捨てろと学んだ覚えは無い。

好きに作り、好きに生きる。 今も好きにした。

 

 

「ありが、とう……」

 

 

礼が聞こえた気がする。

当然だ。 売られた恩は買ってくれ。

勿体無い。 などと思うのもまた、意見の押し付けに過ぎないが。

 

 

 

 

 

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衛星軌道上の軍事衛星経由、BB解析によれば、荒らし認定した武装村人は四千三百人。

塵も積もれば山になる。 塵山にしても数がいればそれなりの脅威だ。

ネザーに於けるゾンビピッグマンとの大乱闘、ファルムスや帝国軍との集団戦闘を経験しているクラフターは辛さ渋さを熟知している。

全員を相手取れる程に剣や弓矢、防具の耐久値は高くないし、そもそも味方の数が少ない。 まともに戦っては勝てない。

 

 

「彼等がエルリックの馬鹿共を抑えてくれている。 今の内にヒナタ様を回復、安全な場所へ!」

 

「大勢の国軍相手に……いや彼等ならば!」

 

「……此処まで派手に斬り込んで。 私も出来る限りの事はしなきゃならないわね」

 

 

とはいえ悲観する事でも無い。

ボスを倒せば良い。

ゾンビピッグマンの様なモンスター連中は最後の1匹まで襲って来るものの、束になっている武装村人には大抵ボスが付随していて、ソイツを潰せば何とかなるのを学んだ。

潰しても混乱のまま雑魚が襲って来る事もあるが、例えるならジ・エンドみたいなものだ。

あの世界もボスのエンダードラゴンがいて、他にエンダーマンが跋扈していたが、統率されていた訳でなし、無視出来るなら無視で結構な存在であった。

今回も似たものだ。 狙うはボス。 的を絞ればやりようはある。

単純明快。 詰まらない時もある程に。

事実、詰まらない存在を相手にしている。 仕方ないね、とも思いつつ剣を振るう。 荒らしとはそういうモノだ。

 

 

「くそが! 天使共を相手にしてりゃ良いものを図に乗りやがって!

おいテメェら、いつまでも遊んでねぇでさっさとブッ殺せ!

その後はヒナタとその仲間、連中に従って避難した国民を叛逆者として皆殺しだ!」

 

「で、ですが相手は数多の厄災を打ち払い、かの帝国軍も退けた勇士達……」

 

「それに何も国民まで手に掛ける事は!」

 

「数はコッチが上なんだよ馬鹿が! 多い方が正義なんだよ、そんな事も分かんねー馬鹿なのかテメェら?

これ以上文句言う馬鹿、逃げる奴、役立たずはこの場で殺す!」

 

「そ、そんな!」

 

「嫌ならさっさと奴らを殺せッ! 向こうは国に逆らう逆賊に過ぎねぇ!

犯罪者共に怯んでんじゃねーよ屑が!」

 

 

奇襲したから反応が鈍い。

ハァンハァンと鳴き合うばかりで甲斐がない。

気が付けば腹心まで斬り込めた。 楽出来る分には構わないが。 荒らしに時間を浪費したくない。

それに反撃を許す程、クラフターは甘く無い。

このままボスを一刀両断してサヨナラしようとしたその時。

 

 

「ヒナタ姉ちゃん! 先生! 助けに来たぜ!」

 

「みんな大丈夫!?」

 

 

妙に明るく聞き覚えのある声がしたので首を傾げた。

見やれば学園の教え子達にシズ、あと金髪の良く分からん村人であった。

 

 

「ゆ、勇者様?」

 

「勇者様だぞ……」

 

「勇者様だ! 勇者様が戻られた!」

 

「ま、マサユキ様だぞ! マサユキ様が戻られたーーーッ!!!」

 

「周りにいる子供達はお弟子さん?」

 

「あ! あの女性はギルドの英雄シズエ・イザワ!

今は自由学園の先生をされているという!」

 

「おお! 何と頼もしいパーティだ!」

 

 

首を傾げている間にハァン大合唱。

やがて時間を掛けず同じリズムで鳴き始めた。

うん。 煩い。 たぶん今までで1、2を争う。

 

 

「「マ〜サユキッ、マ〜〜サユキッ!!」」

 

 

大合唱の中、金髪が群集の前に進み立つ。

荒らしが血走った目で、その村人を睨み付けた。

様子からして荒らしではないが。 シズと共にいたし敵ではない。 だが何者か。 随分と村人に人気がある。 村人達のボスという雰囲気だ。

 

 

「それは間違いじゃないよ」

 

 

シズが通訳してくれた。

有難い。 ヒナタが一時撤退した今、聞けるのはシズしかいない。

 

 

「この人はね、イングラシア王国最強の勇者、マサユキなの」

 

 

…………へぇ。

クラフターは訝しんだ。 冷めた視線を送る。

 

 

「えっ、えっと……皆、スキルの影響を受けないものね。 私もリスポーンしたからか熱狂に当てられない、かな……」

 

 

クラフターは天を仰いだ。

マサユキとかいう村人……どうも欺瞞の塊が人の形となって歩いている様に感じてならぬ。

強そうに見えない。 なんならその辺の武装村人並か以下にすら感じた。 スノーゴーレムよりは流石に強いだろうけど。

クラフターは嘘偽りを嫌う。 一方、既に何処かで会った様な気もする。 帝国戦の最中であろうか。 故にナニかを感じてしまったのかも知れない。

とはいえ、かの荒らしの国……吸血姫共よりはマシな存在であろう。 そう自身に言い聞かせ無理矢理納得させる。 今は議論している場合では無い。

 

 

「うん。 今は目の前の争いを鎮めよう。 人を殺傷するのは嫌だけど……避けられない戦いもある。

けどマサユキの能力で、ひょっとしたら上手くいくかも知れない。 その時は協力して」

 

 

取り敢えず剣先を向け直す。

荒らし死すべし慈悲は無い。

道化の件があるので、必ずしも殺す必要は無いかも知れない。

だが基本は殺すべき存在である。

荒らした奴はまた荒らす。 見つけた膿は絞り出す。 醜い。 世の為にならない。

とはいえ、シズが哀しむなら生かすのも視野に入れたい。 荒らしクラフターへの処置同様、黒曜石の牢獄にでもブチ込んで実験体にでもしてやろう。

……我ながら甘くなったものだ。

 

 

「ごめんね」

 

 

シズが謝る事じゃ無い。

悪いのは荒らしだ。 更に言えばユウキとか、首謀者の存在だ。 或いはこうした世の中だ。

欺瞞に踊らされる村人も、ハァン合唱も苛つく事あれど、最も罪に問われるは別にいる。 無知も罪となる時があるが、数多を積極的に天秤に掛けたがる奴は、偉く強く悪い奴を擁護して媚びる奴だ。 そうなってくれるなよ。

1人分の荒らしが荒らしで、100人分の荒らしが英雄だなんて間違いだ。 荒らしは荒らし。 それ以上でも以下でもない。 クラフターがクラフターである様に。

 

 

「クラフターさん」

 

 

案ずるな、とシズの頭を撫でてみた。

我々はクラフターだと。 都合の良い様に創り変えるし、無ければ、やはり創る。

それだけの力が、我々にはある。 村人にも。

それはシズ。 君にも出来る。

政治は分からないが、そうだと云い切れる誇らしい自信がある。 世界を支えているのは、1人1人の努力である。 そして人の努力の可能性を信じている。

 

 

「そうだね、ありがとう。 助けに来たのに逆に元気貰っちゃった」

 

「あのー、先生同士で郷愁的な雰囲気に浸かるなとは言わないけど、助けて欲しいなー、なんて……」

 

「マサユキ兄ちゃん大丈夫だ!」

 

「そうよ! 勇者様が出るまでもないわ!」

 

「ここは任せてよ!」

 

「子供に任せるのは気が引けるんだけど」

 

「先生陣も出るから、ね?」

 

「いやまぁ、それなら……いや良くないけど、俺まで出ても足手纏いだもんな。

すみません、最悪は宜しくお願いします……せめて交渉面では役立ちたいと思います、ハイ」

 

 

先ずは交渉を始めるそうだ。

どうせ、いつもの流れになる。 説得出来ず殺し合いに発展してサヨナラだ。

それでも見守ろう。 今の内にポーションを飲んでスロット整理。

 

 

「えー……みなさん、落ち着いて下さい。 冷静に、そして僕に何があったか教えて欲しい」

 

「おお、マサユキ様が語り掛けてくれている」

 

「求められている事をお答えしなければ」

 

「しかし、どう伝えれば。 王が弑逆されたのは事実の様だが……そもそも冷静に考えてみればヒナタ様が本当に犯人なのか?」

 

「戦う理由も謎だ。 というか、無抵抗を貫くヒナタ様に一方的に攻撃するなんて……」

 

 

困惑のハァンが響く中、クラフターはそこら辺の地面を鶴橋で叩き割り丸石を採石。 続けてそこら辺の景観用の木を斧で切り木材を手に入れた。

間髪入れず作業台設置。 木材を加工して何本かの木の棒を作り、そのまま並べ立て石剣をクラフト。

これまた持ち込んだエンチャント台を設置、石剣に低レベルなエンチャントを施すと、教え子に配布。

 

 

「おお! 先生は相変わらずで安心するぜ!」

 

「石剣が淡い光を放っている……」

 

「いつもの事じゃない」

 

「ただの鉄剣より強いのは分かるよ」

 

 

シズは鉄剣と、いつかの金剣を所持していたが傷んでいた。 仕方ない。 特に金ツールは耐久値が最低レベルだし。

なので、金床とインゴットで鍛え直した。

大したエンチャントも施されていないツールだから、新しくクラフトしても良かったが、まぁ……ハァンに時間が掛かるから暇だった。

 

 

「なるべく使わずに済む事を願ってる」

 

 

そうだな。 そうだろう。 耐久値が減る。

 

 

「そういう事じゃないかな……」

 

 

何でも良い。 好きに使え。 それは君のだ。 使い方を強要しない。 蜘蛛の巣取りに使おうと畜産業に使おうと気にしない。

 

 

「クラフターさんなら、神話級の剣も掃除用具にしそうだよね」

 

 

シズが苦笑する一方、ハァンは続く。

早く終われ。 どうせ殺し合いが始まる。

クラフターは詳しいんだ。

 

 

「これはこれは、勇者マサユキ殿か。 懐かしいですな、私はライナー。

覚えておるでしょう? 護衛騎士団団長のライナーである。 今回は私が……」

 

「マサユキ様! どうか、どうかお許し下さい!! 王を、王に手をかけたのは自分なのです!」

 

 

武装村人の1人が飛び出して赦しを乞い始めた様子。 だがクラフターはどうでも良い。 意味を理解出来ていない。

 

 

「な! 何を言い出すか、貴様!!」

 

「おっと切り捨てさせないぜ!」

 

「餓鬼共が邪魔をしやがって!」

 

 

武装村人を斬ろうとした荒らしを教え子が間に割って入り止める。 これで殺傷沙汰が起きたら事案成立だ。

正当防衛として殺す。 過剰防衛? 知らん。

 

 

「ふ、ふははははは。 もうお仕舞いだ、私は破滅だ……」

 

「えっ、勝手にエリック王子が自身の悪行を告白し始めたんだけど。 教会の目の前っていっても俺は神父じゃないんだけど」

 

「マサユキ君、頑張って!」

 

「言い出しっぺだからね……こういうスキル持ちなのは自覚してるけど、時々辛くなるよ。 贅沢な悩みなんだけども」

 

「大丈夫、なる様になるよ。 いざとなればクラフターさんもいるから」

 

「シズさんまでリムルさんと似た事を……」

 

 

余りの丸石を更に加工して、階段ブロックとハーフブロックをクラフト。

即席トーチカ、防壁を作り出して次に備える。

ハァンが続く今の内だ。 一応シズが我々の為に翻訳して伝えてくれているが、あまり興味が無いので聞き流しつつの作業だ。

 

……なんでも、切り捨てられそうになった武装村人は、病気の家族の為に偉そうな奴の依頼に従ったという。

あと荒らし自身の告白により、事実関係は粗方判明したも同然の状況になったそう。

 

うん。 何でも良い。

取り敢えず荒らし確定。 殺して良い?

 

 

「けひっ、けひひひひ、けひゃあ! 殺す、殺おおおーーーすっ! 全員殺してやるぅ!」

 

「うおっ、ライナーが狂った!?」

 

 

荒らし発狂。

精神異常だ。 肥大化した自尊心が復讐と憎悪に塗り替えられている。 手持ちの薬や牛乳じゃどうにもならない奴だ。

クラフターは憐れな目を向けた。 こうした荒らしは元の世界でも出現するが、取るに足らない、排他される存在でしかない。

道を違えた同志の排除……余計に虚しくなる。

自分より優れた建造物やセンス、デザイン、生き生きした者を見て嫉妬に狂う。 その発散に物や人に当たる。 その方法が過ぎたものであれば始末される。 奴もその口だ。

だとして同情を誘う段階で度し難い。 殺す必要がある。 それで頭が冷えるなら苦労しないが、リスポーンしてまで繰り返す様なら、黒曜石の牢獄行きだ。 クラフターにとって死とは必ずしも解放を意味しない。

 

 

「悲しいな、剣でしか語れないなんて……って、俺を狙うのかよおおお!?」

 

「死ねぇ!」

 

 

荒らしが金髪に突撃した。

単調だ。 目の前にも防壁を作ってみた。 ぶつかった。 他愛ない。

 

 

「ぐあっ、この、たかが壁を作れる程度の能力で、物作りの才程度で図に乗るんじゃねえええ!」

 

 

叫んでる。 単純で良い。 生かすも殺すも分かりやすいからだ。

 

 

「マサユキ兄ちゃん、そんなヤツやっつけちゃって!」

 

「格好良いところ、見せてくれよ!」

 

「「マーサユキ! マーサユキ!」」

 

「子供達の声援が痛い! 何で尊敬の目を向けるの!? 君達の方が強いからね!?

ヒナタを庇ったなら、俺の事も庇ってよ! 先生方、あの本当、これ以上は俺には荷が重いです助けて下さいマジで!」

 

「そうみたいだね。 でも大丈夫そうだよ」

 

「はっ……?」

 

 

教会から人影が飛び出した。

今度は何だ、と思えばヒナタだった。 既に抜剣している。 怪我はもう平気らしい。

 

 

「コイツは私に任せて、"先生"」

 

 

嫣然の表情を向けられた。

好きにしろ。 シズ共々頷いて見せた。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

「うふふふふ。 痛かったかしら? もっと良い声を上げて、私を楽しませなさい!」

 

「ぎゃあああッ!!」

 

 

美しい表情から一転、ハァンと恍惚とした表情になり、艶かしく舌で唇を湿らせながら荒らしを痛ぶるヒナタ。

そんなヒナタに熱い眼差しを送る観戦者。

が、一部はドン引いた。

 

 

「人質の安全を確認出来た途端コレかよ。 ヒナタってリムルさんの言った通り恐ろしい人なんだな。

てかさ、子供や民衆に見せちゃ駄目じゃねコレ。 シズ先生は許せるの? ヒナタも先生の教え子でしょ?」

 

「人の痛みを知る良い機会。 だから良いの」

 

「良いぞヒナタ姉ちゃん!」

 

「そのままヤッちゃえ!」

 

 

子供が喜んでいる。

人の苦労に。 良くも悪くも良い御身分。 正にクソガキと云わざるを得ない。

荒らし成敗に快感を覚えるのは良い事だ。 世に平穏を齎せ。 逆に荒道を志さない事を願っている。

その為に伝えたいのは、大人だからと精神年齢が子供と違うと云い切れない事だ。 或いはそうである。 目の前の荒らしの存在が良い例だ。

 

クラフターはクソガキに云いたい。

人魔問わず皆が成長するとは限りません。 リムルの様な一部王様も創造主も偉そうに見えるかも知れませんが、実は精神年齢は君達クソガキと変わらないかも知れません。

大人に希望はございません。 地獄に堕ちなさい。 そこでネザライト採掘労働の刑です。 ひゃっほい。

 

 

「……成る程。 先生の教育の賜物と」

 

 

命の数だけ道はある。

無理に噛み砕き呑み込む必要は無いが、頭ごなしに否定するのも違う。

クラフターの中にも戦闘好きはいるし。 軍事部の例もある。 村人を虐待して愉しむ奴もいる。

ヒナタは其方系だったか。 思えば鶴橋や円匙より剣に生きる者だ。 連邦のダンジョンにでも連れて行けば喜んでくれそうだ。

 

 

「ヒナタ様……せっかく最近、イメージ向上していたのに台無しです……」

 

 

嘆きのハァンも聞こえるが。

確かに見方次第で台無しだ。 が、一部に熱狂的なファンを生み出す仕草、荒らしに容赦しない姿勢は評価に値する。

ある意味、ヒナタには非常に良く似合う。

上位者が下位の者を捕食する様を連想……あいや、リムルと非なる。 アイツの様な悪食スライム野郎が2匹といて堪るか。 生き様を否定しないが道が交差する時、己の生き様の邪魔となるなら容赦しないのもクラフターだ。

 

 

「き、貴様ぁ! 卑怯だぞ、剣に魔法を付与しやがって!」

 

「王を殺し、真実を知る者も殺そうとして、先程までは避難民を人質に私を散々斬り付けておいて、卑怯はないんじゃない?」

 

「黙れ黙れ黙れぇ!」

 

「黙るのは貴方よ」

 

 

出来れば全員黙れ。 けたたましい。

 

 

「犯罪者に人権は無いんじゃなくて?」

 

 

そうだ。 荒らし死すべし慈悲は無い。

 

 

「犯罪者はお前……ぎゃああ!?」

 

「私は"先生方"と違うわ。 住居侵入、不法滞在、建築、改造、盗難、整地、松明塗れといった事を日常的にしないもの」

 

「この行為が赦されて堪るかああ!」

 

「彼等風に言えば貴方は荒らし。 これ以上醜態を晒すなら終わらせてあげた方が世の為、国の為よ」

 

 

さりげなくクラフターの神聖な行為の数々を貶されたが目を瞑る。 その内彼女にも理解出来る日が来る。

 

 

「さて、そろそろ終わりにしてあげる。 君の不快な顔も、そろそろ見飽きたのでね」

 

 

ヒナタは剣を構えた。

遊びは終わりか。 ならもう良いや、と羽虫との戦支度を始めるクラフター。

羽虫駆除に戻りたいのだ。 この戦いは予想より詰まらなかった。 学びが少ない。 子供の教材としても物足り無い。

後始末はヒナタだけで済む。 そう踵を返そうとした時、多少興味を惹かれる事が起きた。

 

 

「な、舐めるなよ女狐めが! 貴様如きが、この俺様に勝てる訳がないんだ!」

 

 

荒らしが奇声を上げながら、剣を旋回。

そんな剣技が。 囲まれた時に使えるかも知れない。 クラフターはスニーク姿勢で凝視。 技を観察する。

 

 

「女だから生かしてやろうと優しくしてやれば図に乗りおって! 肉片となれい! 斬気烈衝波!」

 

 

ところがヒナタは斬撃をスルリと抜けた。

 

 

「ば、馬鹿な!」

 

 

まぁソレは予想の範囲だったから驚きやしなかった。 今までヒナタと剣を交えた時より強くなっているな、程度だ。

同時に強者相手には通用しないと学んだ。

 

 

「甘いわね。 彼等を見習っていれば、多少は楽しめたのでしょうけど……お休みなさい。 良い夢を」

 

「ぐぎゃぉおおおおおおッッ!!」

 

 

1撃で斬り捨て御免とした。

相変わらず強い。 剣が特殊なのだろう。

この世界では未だ未知のエンチャントが数多存在している。 そう思うとワクワクする。

それを改めて知れた。 それと荒らし技であろうが、剣を振り回す様を見れた。

収穫はあった。

クラフターは笑顔でジャンプする。

 

 

「仕返しは済んだわ。 貴方達、ありがとう」

 

 

何故か礼を述べられた。

クラフターは首を傾げた後、まぁ悪い気はしないから良いやと今に浸かるのだった。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

「俺達はどうすれば……?」

 

 

動揺する武装村人。

やはりか、と思う。 ボスを倒すと混乱する傾向にある。 ここがモンスターとの差だ。 見立ては間違いなかった。

この習性を日常の何かに活かせるだろうか。 村を作る時とか。 この世界の住民は扉だけで満足しない。

 

 

「皆さん! 何が正しく、何が間違っているのか。 この光景を見れば、一目瞭然だと思う。

賢明なる皆さんなら、僕が言わなくても正しい答えに気付いている事でしょう。

どうか、その答えを信じて欲しい。 僕も、そんな皆さんを信じたい!」

 

 

村人のボス的金髪、マサユキがハァンと叫ぶ。

皆の動揺の波が嘘の様に静まった。

 

 

「マサユキ様が我等を信じて下さっているぞ」

 

「我等は一体何をしていたというのだ!」

 

「マサユキ様の期待に応えねば……」

 

 

武装村人は剣を捨て始めスニークより深く跪く。

そうして、ただの村人になった。

金林檎を個々のゾンビに与えるより大きい、その劇的変化にクラフターは驚愕する。 金髪は金林檎以上の効果があるというのか。

凄い。 この金髪を縄で縛り拉致したい。 だって便利過ぎる。 誘導とか。 工事現場に村人が紛れる事態は辟易している。 ミリムなんてもっての他だ。

 

 

「勇者様が問題を解決して下さったぞ!」

 

「でも王子が王を……」

 

「大丈夫だ! 俺達には勇者マサユキ様がついている!」

 

「黒幕は、騎士団長のライナーだとさ」

 

「それでヒナタ様が……」

 

「だがそれを見抜き、ヒナタ様の窮地を救ったのはマサユキ様だぜ!?」

 

「流石は勇者様!」

 

「「マ〜サユキッ、マ〜〜サユキッ!!」」

 

 

黙れ害獣ホモ・サピエンスッ!!

クラフターは荒ぶる。 頭を振り腕振るう。

危うく前言撤回だ。

過去1、2を争うハァン合唱が響き騒々しい。

だがこのデメリットを補って余りある能力が金髪には潜在している。 荒らし剣技を早速実践披露する訳にはいかない。

 

 

「あ、あははは……上手く丸めるのに役立てばね、うん……俺の存在も役立って良かったよ」

 

「引き続き頑張ってねマサユキ君」

 

「貴方にも世話になったわね」

 

「流石、マサユキ兄ちゃんだ!」

 

「当たり前よ! だって勇者様だもの!」

 

「……万が一の時はマジで助けて?」

 

 

ハァン合唱に紛れ、クラフターは右手に縄を構えにじり寄った。

マサユキを拉致る。 地下に引き摺り込んでトロッコに載せて連邦行きだ。 戦争が終わったら重要建築現場用奴隷にする。 カカシですな。

などと妄想に浸り走り寄った刹那、強い衝撃がクラフターを襲う。 遠くに吹き飛ばされた。 何事かも訳も分からず痛みを堪能する間も無く遺品を撒き散らし、周囲を汚す。

まさかの1撃リスポーン。

突然の光景に同志は唖然としてしまった。 相変わらずの化物世界だ。 エンチャントダイヤ防具が霞んで見えて困る。

 

 

「うおっ! 狙撃!?」

 

「ッチ。 俺の"暗殺の必撃"の邪魔を!」

 

「誰だ!」

 

 

残された同志、臨戦体制。

ネザライトの剣と盾を構え、襲撃者を探る。

 

いた。

 

黒い聖服に身を包み、純白の羽の生えた村人。

間違いない。 荒らしの一味だ。 格好が。

 

 

「俺様は懲罰の七天使筆頭アリオス。 こうなっては仕方ない。 悪いが、全員死んで貰う!」

 

「クラフターさん、連戦になるけど大丈夫?」

 

 

大丈夫。 荒らしは殺るだけ。

元より野放しにする気は毛頭無い。 我々の今の目的は、こういった荒らしを駆逐する事にある。

 

 

「勇ましいね。 私も先生として、子供達に悪い所は見せられないかな!」

 

 

シズも抜剣。 共に構えた。

ヒナタも並ぶ。 師弟共同作業。

荒らし駆逐。 次いでに教育だ。 見ていろ子供達。 我々クラフターの姿を。

 

 

「副担が頭を滅茶苦茶に振り回してる!?」

 

「腕もだ!」

 

「いつもの事よ」

 

「いい加減ソレ止めて!? 子供が見てるんだよ!!」

 

「確かに、教育に悪いわね」

 

 

シズに斬られた。 次いでにヒナタにも。

痛い。 油断した頃に2人に攻撃されるのは、一体何なのだ。 言葉が多少通じる様になった筈なのに。 謎だ。 争いを止められない種族だとしても。 おのれ人間め。

 

 

「あのー、俺は下がってますね……」

 

 

金髪が巻き込まれなかっただけヨシとしよう。

あの村人を失うのはクラフターにとって大損失だ。 場合によりネザースターより貴重だ。 ピラミッドを作らずして効率が上がりそう。 村人だから移動も容易い。

 

 

「テメェら俺様を前に漫才とは、舐めやがって! そんなに死にたいなら望み通り殺してやるわッ!」

 

「来るよ。 構えて!」

 

 

連れ帰る為にも先ずは、と剣を振る。

荒らしを駆逐して帰る。 その後は村人相手に誘導実験だ。 ひゃっほい。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

相手が格上なのは初撃で理解していたクラフターは、武装村人の様に行かないと考えた。

とはいえ百戦錬磨の創造主が、こんな事で引くのは有り得ない。

今まで散々化物を相手にして来たのだ。 空飛ぶ巨大魚だの、道化だの、魔王だの。 軍隊も相手にした。 それらは創造力でもってして退けてきた。

これで人生辞めていたら、とっくに消えている。

なので苦戦を強いられる覚悟で挑んだのだが。

 

 

「チッ、俺様がたかが弓矢の弾幕に! 何、雪玉だと? 何処までもふざけた連中だ!」

 

 

牽制程度の弓矢や雪玉の幾つかが命中。

相手は驚きと困惑の顔を見せる。

クラフターも驚いた。

これくらい避けられて仕方ないと思っていたし、逆に一方的に攻撃されると予想していたからだ。 先程のヒナタの動きの様に、並大抵の攻撃は届かないのがクラフターの認識だ。

相手がドラゴンの様な巨体だとか、ミリム城の侵入者の様な防御特化だとか、エンダーマンの様な飛び道具無効なら分かるのだが。

 

 

「流石ね。 私には、あの天使モドキを目で追うのがやっとなのに。

……すみません先生、私が参戦しては彼等の邪魔になってしまいます。 ここは防御結界を展開させて、人々の盾になる事に専念します」

 

「謝る事じゃないよ。 私もそうだから」

 

 

ヒナタとシズが早々に引いてしまった。

仕方ない。 剣のみでの対応は困難を要する。 子供を数に入れても創造主からすれば邪魔になる。 その意味では後方支援程度に収めてくれた方が有難い。

ここでふと、ある同志が気付く。

インベントリを開いた時だ。 自身らに何故か幸運が付与されているではないか。

ツールへのエンチャントでなし、攻撃力強化等と並んでいる。 原因不明なれど恐らく金髪の影響か。 コレの影響で武装村人に毛が生えた程度の弾幕攻撃が通じていると察した。

 

 

「皆さんは、落ち着いて広場から離れて下さい! どこか逃げ込める場所があるなら……」

 

「勇者様が我々の心配をして下さっている」

 

「バカ、勇者様が全力を出したら俺達が巻き込まれるから遠ざけようとしてるんだよ」

 

「そうか……それで、あの者達に戦わせ、時間を稼いでいるのか」

 

「皆、逃げるなら王城が良いだろう。 あの場には、大規模防御結界が張られている」

 

「エルリック王子……改心したのか」

 

「……天使の軍勢が攻めて来たのならばともかく、あの結界を破るには時間が掛かる。

万が一城に侵入されても、中にも彼等の仲間が徘徊しているから防衛力は高いと見る。

勇者殿に安心して戦って貰う為にも、速やかに移動するが良い」

 

「皆! 聞いたな? 落ち着いて行動せよ、城ならば皆を十分に受け入れられる。

慌てて怪我をせぬよう、且つ速やかにこの場を離れるのだ!

後の事は勇者様達、そして我等が創造主にお任せ致す! 動ける兵士は国民の避難誘導を実施せよ!

我等が避難した方がマサユキ様達のパーティは活躍出来るだろう!」

 

 

何か後方の武装村人らが騒がしいが、振り返る暇が無い。 油断すればワルプルギスの時同様、ボコボコにされそうだし。

剣振り矢飛び。 雪玉を混ぜつつクラフターは戦闘続行。 広場から水を引く様に移動する村人を丸石の壁で庇いつつ、釣竿も振り回し、遊び心で荒らし剣技を試みた。 滅茶苦茶に剣を振り回しつつ突進。

 

 

「遊びは終わりだァッ!」

 

 

ものの見事に避けられました。

殴られて痛かったです。

 

 

「そうよ遊ばないで! 真面目に戦って!」

 

 

転がされる中、叱咤された。

シズよ。 君は味方だろ。

荒らしに同意するな。

 

 

「何やってんだよ副担ッ!」

 

「そうよ! 学園の模擬戦じゃないのよ!」

 

「大丈夫! コレは先生達のいつもの奇行妙技。 一見役に立たないけど、きっとナニか策があっての事だ!」

 

「よく分からないけど、がんばって!」

 

 

子供達が非難のハァンを浴びせてきた。

酷い。 頑張っているのに。 やはりクソガキ。

 

 

「……信頼を裏切ったら、また斬ってあげる。 私が斬られている間、貴方達は笑っていたし……今度は私が……ふふふっ」

 

 

負けられない戦いが此処にある。

罰を喰らうのは勘弁だ。 シオンの汚料理を喰らうよりマシだとしても、心が痛かった。

 

 

 

 

 

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旗色は作るもの。

戦闘。 採掘。 整地。 建築。 あらゆる創造。

クラフターの持つ全ての肩書きが、創造意欲へ駆り立てる。 創造主の過ごしたこれまでが、創造主のこれからを定めている。

それが我々だ。 マインクラフターだ。 改めて皆の目に焼き付けて貰えたならば、深甚に思う。

 

 

「舐めるな! 俺様が、貴様ら如きに負ける筈がねぇんだ!

真の創造主はヴェルダ様だ、断じて貴様らじゃねぇ! 何も残せず、何も生かせず生きた証を世界ごと消されて逝けやッ!!」

 

 

吼える荒らし。

相手の剣技猛攻で何人かは蒸発してしまったが、生き残りは盾で防ぎ、別角度の同志が弓矢や雪玉を連射して引き剥がす。

避けた先、エンダーパールでワープ。 急接近。 間髪入れずネザライトの剣を振り下ろす。 避けられたが、多少擦った。 後はエンチャントの効力で吹き飛び、ダメージを蓄積させていく。

 

 

「馬鹿な! たかが板切れで防げる威力じゃねぇんだぞ! なっ、今度は木造扉で防ぎやがった!

攻撃にしたって、人間の雑魚共の剣や弓矢に毛が生えた程度だと思えば、普通にダメージが貫通してきやがる!

アイツらの剣弓矢は特殊だってのか!?

忌々しい! 半端な実力じゃねぇ、噂以上に理不尽な連中だ!?」

 

「今更気付いたってもう遅いんだから!」

 

「そうだ! 副担はスゲェんだ!」

 

「なんだかんだ子供達の期待通りなのね」

 

「クラフターさんは生き続けるよ。 他人がどう言おうと、世界がどうであろうと、きっとね」

 

 

生きる。 作る。 この先も。

その誇りを胸に邁進する。

誇りは死を越えて往く。

故にマインクラフターは死しても何処かで復活を遂げ、何度でも創造の道を往くのだ。

それらはマインクラフターが到達し得る頂点にして万物への肯定だ。 愛だ。 真心だ。 失くせば忽ち失意のままに堕ちて消え逝くものだ。

己が駄目でも次の者が成し遂げる。 創造の礎となる。 全てを楽しむ覚悟がある。 その差が荒らしとの決定的差である。

 

 

「馬鹿な馬鹿な馬鹿なッ!?」

 

「行け副担ーッ!」「先生ッ!」

 

「そんな悪い奴なんか、やっつけちゃえ!」

 

「勝ってくれ先生ッ!」

 

 

剣振るい、果敢に攻め、散り逝く同志の遺品を踏み越えて、続々と荒らしに取り憑いては散って逝く。 それでも勢いは末端の一兵に至るまで止まる事を知らない。

 

 

「くそっ、次から次へと! がはっ!?」

 

「攻撃が通ってる!」

 

「でも副担の人数が減ってきた!」

 

「大丈夫よ! だって先生だもの!」

 

「そのまま押し切れーッ!」

 

 

音が何処か遠く聞こえてきた。

剣折れ矢尽き、鎧が砕け散る。

それでも命はある。 生きている。

抱えるその限り。

この荒らしのみならず、滅びの美学に囚われた片手落ち……ユウキだかヴェルダにしても、万が一にも勝ち目がないとして、それでも創造主の意地を見せ付ける事は出来る。

傲慢者は、その時知るのだ。

世を荒らし他者の不幸を貪り、滅亡せしめんとする徒党は、最期の一瞬まで苦痛に喘ぐのだと。

或いは連邦並びにマインクラフト世界への本土侵攻意欲を挫く結果になる。 そうなるよう命を費やす。

無論。 その価値は消え逝った武人達が証明している。 名誉の戦死を遂げた者達の戦列に加わる事は、それもまた誇りであり喜びとなる。 目眩く創造世界は続く。 その限りを尽くせる者に恐怖の色は無い。

いや……悲憤を抱え落ち延びる者を思えば、果てるのが役得と思えるのも確かだ。 少しは戦いに酔っている。

 

 

「ば、馬鹿なあああああッ!!?」

 

 

遂にズバッと一刀両断。

ドロップ品は落ちなかった。 泣きそうだ。 塩っぱいどころか苦かった。

苦労の割に得られた物が無い。 荒らし駆除の報酬に期待するのが間違いだとしても。

ふと勝者は浸かる。 酒精が染みた昔日を。

嘗めて飲み下した日。 鼻を抜ける辛味、苦味、僅かに甘味。 酸いも甘いも知る程に価値あるモノに感じる事柄。 人生に似たソレ。 今もソレに似たモノを味わった。

経験を積み上げた者だからこそ価値が分かり楽しめるならば、大人と云える存在も悪くないのかも知れない。

今日この瞬間も何れ忘却の彼方か、肴となりて糧となるか。 その時が楽しみだ。

 

 

「やりやがった!」

 

「さすが副担だぜ!」

 

「やるじゃない!」

 

「信じてました!」

 

「うん! やっぱり先生は凄いよ!」

 

「期待通りかしらね」

 

「お疲れ様!」

 

 

目を閉じポテトを齧る。

村人が歓喜に溢れる中思う。

落ち着いたら酒をクラフトしよう。 うん。

 

 

 

 

 

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連邦領、迷宮都市地下管制室から連絡。

各地同志とBB、並びに司令部……辛辣ちゃんと弟君の報告によれば、殆どの場所で勝利を重ねているとの事。

懸念は北の地。 ギィとクロエ、ドラゴンのドンパチが激化した様だが、軍事部PSもいるから何とかする。

後は不毛の大地なる場所にいる同志が遊び始めた勢いで、天空門なる羽虫共の本拠地へ繋がるゲートを発見した。

これは大きい。

踏ん反り返る荒らしめ。 今に見ていろ。 高みの見物も終わりだ。 絶対的な有利性に胡坐をかく元凶を完膚なきまでに叩きのめしてくれる。

とはいえ闇雲に吶喊する駆け出しでなし。 蜂の巣を突けば大騒ぎに違いない。 事前準備にと皆に報告して突入準備中。

最大限の決戦仕様を揃えて向かう。

加えて悪魔連中も乗り込む腹らしい。 それは勝手にすれば良い。 邪魔しなければ貴重な戦力だ。

 

 

「馬鹿も役立ちましたね。 敵本拠地に乗り込む手段が発見出来たのは大手柄ですよ。 リムルさんも久し振りに感謝するでしょう。

一方各地の残党は現地に任せて大丈夫ですね」

 

 

辛辣同志が云う。

それには同意するクラフター。 細かい事は村人と現地同志に任す。

手の空いてきた猛者は、北地か荒らし本拠地の天空城陥落を目指す。

 

 

「待って下さい。 敵は此処迷宮都市に攻め入る可能性があります。

最初は北地を畳み掛けると思っていましたがBBと大賢者さんとの相談で、此方側へ攻撃する可能性が出てきました。

ここまで相手の計画が上手くいっていない事や、各国と連邦軍の混乱が少ない事からリムルさんの生存を疑っているかもと。

イキナリ天空門を叩く前に、補給も兼ねて一旦迷宮都市へ後退して襲撃に備えて下さい。 外部での戦闘ならIRPも協力出来ます」

 

 

何処に出没しようと関係無い。

荒らし死すべし慈悲は無い。 迎え討って荒らし戦力を削り取る。

その上で堂々本拠地に攻め入り滅ぼす。 その勢いで天界も開拓だひゃっほい。

 

 

「本当、ブレないですね。 今回はその姿勢が有難いですが」

 

 

ともなれば天界に持ち込むは決戦仕様と建材。

連邦……迷宮都市も相応の備えをする。 何なら迷宮内部で未だ遊んでいる同志に任す。

何。 迷宮内はモンスターハウスだ。 クラフターがどうこうしなくても、魑魅魍魎によって荒らしは潰れる。

そうでなくても消耗したところを両断。

楽出来る時は楽をする。 わざわざ荒らしに苦労するのは馬鹿らしい。 丸石を焼く手間が嫌でシルクタッチで採石する様なものだ。

最も勢い余ってマグマダイブは駄目だが。

 

 

「天空門へは先行して悪魔達……テスタロッサ、ウルティマ、カレラさん達が。 頃合いを見計らいクロちゃん……じゃなかった、ディアブロさんとリムルさんが突入。

最終決戦に挑みます。 あと北の地、クロエちゃん達も放置は出来ませんので、誰か暇な者が向かってあげて下さい。 期待してます」

 

 

期待する割には雑である。

まぁ良い。 荒らしは全て潰す。

それに変わりない。 そこにいると分かっていれば全てを無に還す。

クラフターは強化ポーションとツールを再調達、回復しつつ建材等を準備して終戦に備える。

気が早いが、終わった後にやりたい事が色々あってワクワクする。 既に不毛の地や天界、宇宙開拓等、新天地への期待が膨らむ。

その為にも邪魔者は消す。

マインクラフターだからね。 仕方ないね。

さても、いざ再出陣。 イベントは未だ続く。

 

 

 

 

 

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辛辣同志達の予想が当たる。

各地の羽虫が忽然と消えたと思ったら、次には連邦に現れた。 荒らしは戦力を統合、集中攻撃に転じたと見る。

BB解析によると大凡威容の60万。 まだいるものである。 楽しめそうだ。

 

 

「呑気に遊戯に転じる暇は無いですよ先輩」

 

 

弟君から念話。

連邦地下のジオフロントにいるからか。

別に姉君でも何方でも良いが、何かね後輩。

 

 

「IRPは首都防衛に忙しく、60万も一片に相手出来ません。 他の先輩が対空TNTキャノンや矢の散弾装置で攻撃したり、連邦守備隊も迎撃していますが、駆逐するのに時間が掛かります」

 

 

結論を云いなさい。 どうして欲しい。

欲望はハッキリ云わなきゃ伝わらないぞ。

 

 

「首都より迷宮都市防衛を願いします。 迷宮内部に侵入されたら、いよいよIRPじゃ支援出来ません。

それに内部侵攻するとなれば、かなりの猛者が来るものかと。 万全の準備で向かって下さい」

 

 

相分かった。

空舞う雑魚羽虫は軍事部とIRPに任せた。

北地はPS同志に任す。

他の暇人は迷宮都市へ行くとしよう。

 

 

「それで頼みます。 あ、地上でガビルさんとゲルドさんがディーノっていう堕天使と戦闘中ですが演技なので無視して良いとの事です。

先輩達は迷宮に入って待ち構えて下さい。 迷宮内に住まう魔物や管理者のラミリスさんの支援はあると思いますが油断しないで。

或いは既にしてるかも。 何にせよ気を付けて」

 

 

いつも通りだ。

既に現地で遊んでいる同志がいる。 連絡がないから遊びに夢中か、荒らしと戦闘中だ。

創造主はポーションやツールの修復、取り替えを済ませてエリトラ飛行で現地に向かう。

地上では聞いた通りの戦闘が散発していたが、演技らしいので無視する。 出来れば観戦してみたいが仕方ない。 駆除優先だ。

が、黒曜石で入口が塞がっている。 中で遊んでいる同志の仕業に違いない。

仕方ないので効率強化ツルハシで破壊して侵入していく面々。 遊び場を独占とは。 けしからん。 一緒に遊ばないと。

 

 

「笑顔で入っていったであるな」

 

「今更驚きもない。 我々は我々に出来る事をするのみ。 ガビル殿にディーノ殿、続けるぞ」

 

「テンペストの住民は慣れてるのかよ……おっと、ゼロっていう奴に天軍総司令官の肩書きを見せられてな、俺も打ち合わせで中に入らないと駄目になった。 色々面倒は続くけど遊びは此処まで、じゃ後宜しく」

 

「……大丈夫であるか?」

 

「ガビル殿の心配には及ばん。 これもリムル様の考えの内。 最悪、中で遊んでいる者やディアブロ、他の者が助太刀に参るであろう」

 

 

中に入れば、既に松明だらけであった。

事後だ。 これではチェストは空箱だ。 スポブロも制圧されているに違いない。 あいや、この世界は松明を刺そうと湧き潰せないから、モンスターからのドロップ品は期待出来る。

つまりまだまだ楽しめるという事だ。 クラフターはひゃっほいと奥へ奥へ進んだ。

 

 

「で、どういう作戦でいくつもりだ?」

 

「ディーノさん、貴方のように消極的に戦っていても勝てませんよ?

叩くなら、一気に叩く。 戦力を集中させ、敵に休む暇など与えるべきではありません」

 

「馬鹿にすんなよ。 アイツ等に迷宮に引き篭もられたら面倒だし、そうじゃなくたって例の人間連中は脅威だ。

だからこそコツコツ叩いていたんだぜ。 作戦なんだよ、作戦」

 

「ぐ……減らず口を……例の人達を少しは見習ったらどうです。 天真爛漫で表情豊かですが基本的に寡黙です。 偶に喋れば『ウォッ』しか言いません」

 

「マイお前……」

 

「なにか?」

 

「まさか惚れてんのかぁ?」

 

「なっ!? 相手は敵ですよ! 貴方こそ馬鹿にしないで貰いたいですね!」

 

「言い争う時間も惜しい。 さっさと作戦を開始したい。

オレが受けた命令は、総攻撃による迷宮破壊だ。 故に、ヤツ等が迷宮に立て篭もるなら、それも良し。

どうせ迷宮を破壊するのだ、何も問題ないだろう。 さっさと迷宮への侵攻を開始するぞ」

 

「……ゼロは淡白だねぇ」

 

 

背後でハァンハァン聞こえるが、無視する。

どうせ虫だ。 後で駆逐する。

それよりどこまで攻略されているのか捜索だ。

まだ未到達の空間があれば戴く。 チェストがあれば尚良し。 当然中身も戴く。 鞍やクラフト不可なアイテム、レアアイテムだと嬉しい。 ただし腐肉、手前らゴミは駄目だ。 空腹時は救済となっても異常ステータスになり、結局腹が減る。 その意味ではパンがマシ。

 

 

「おいおい、無茶言うなよ! あの迷宮は難攻不落だぞ。

 一度失敗してるから言う訳じゃないが、マジであの中は不利なんだって。 例の人間共だけじゃなく、迷宮で出て来る相手は完全なる不死で、損害を無視出来る。 軍隊で攻めても、分断された上に各個撃破されるだけだっての」

 

 

遮る奴はブッ飛ばす。

戦時だろうと平時だろうと犇き喚くモンスターを斬り伏せながら、創造主は探索ひゃっほい。

その内荒らしも出現する。 慌てる時間じゃない。

 

 

「そうよ! それにね、地上部隊の中にも強いヤツがいるんだって。

冗談みたいに硬くて、ソイツのせいで攻撃が通用し難いのよ。 あの機龍とか呼ばれてる奴もそう。 今は首都防衛してるけど、いつコッチに滑り込んでくるか分からない」

 

 

地下じゃ地上の支援が期待出来ない。

IRPが特にそう。 あの巨体では閉所に入れない。

運用思想が移動式キャノンだし、近接戦闘より遠・中距離からの砲撃支援がメインの兵器だ。

地上での活動を考えて創造されてきたから仕方ないが。 それに砲撃程度で化物共は倒せない。 半端な奴なら兎も角……やはり、創造主自ら剣を振り回す事になる。

 

 

「そうだぞ。 このガラシャと一騎討ち出来る猛者もいる。

数で押しただけで簡単に排除出来るようなヤツ等ではないのだ」

 

「ディーノ、ピコ、ガラシャ……問題ないと言った。 マイ、君に天使達の指揮権を譲渡する。

全軍を指揮し、地上部隊を掃討してくれ。 君なら、遠距離攻撃に補正がある。

上空から天使達による神聖光弾の一斉射撃を行い、地上の敵を殲滅するのだ」

 

「……わかったわ。 私の能力による『命中率上昇』と『遠距離威力上昇』にもってこいの舞台ね」

 

 

それでも改良が続けられ、砲撃時の狙撃精度は格段に上昇している。 有効射程距離もだ。 その内に宇宙の目標物にも当てられるかも知れない。

 

 

「地上は任せる事になるが、構わないか?」

 

「ええ。 それで、貴方はどうするの?」

 

「オレとディーノ達で、迷宮に侵攻する」

 

「おいおい、何を勝手に……迷宮内だと、相手は何度でも復活するって……」

 

「問題ない。 オレが迷宮そのものを侵食する。

ヴェルダ様に授けられた真なる『邪竜之王』の能力を用いて、な」

 

 

しかし殆ど制圧されているな、迷宮。

詰まらん。 いっそ改造してしまうおうか。 既にそういう痕跡がある。 仮拠点セットとか。

 

 

「わかったよ、従えばいいんだろうが。 で、迷宮に入るのは俺とお前だけか?」

 

「迷宮には、オレとお前達3人で入る。

そしてお前達3人には、オレが迷宮を侵食する時間稼ぎを任せるぞ」

 

「……わかったよ。 いつ始める?」

 

「今からだ」

 

 

刹那。 強い振動が起きた。

地上で煌く閃光。

目視不可能レベルの羽虫達による一斉攻撃。

地上を熱波が焼き払い、クラフターとリムル達が創り上げた都市が瞬時に蒸発。

 

おお、何という事だ。

我々の苦労が。 努力の結晶が。

 

クラフター慌てた。

決して我々の仕業ではない!

核攻撃していない本当だ!

クラフター嘘吐かない!

 

 

「最初に云うのソコ!? 分かってますよ!」

 

 

そうだろう、そうだろう。

誤解されず幸いだ。

しかし荒らしめ。 クリーパートレイン的な事をしやがって。

都市を堂々吹き飛ばさず、姑息な手段を!

 

 

「いや、アンタらに罪を被せようとは微塵も考えてないと思うので安心して下さい。

それで衛星経由のBB解析によると……地上の被害なんですが、天使の集中攻撃で都市が更地になったのと、ゲルドさんとガビルさんの部隊が迷宮内部に撤退。

住民は避難済みなのでソコは平気でしたが、一部クラフターは都市ごと蒸発。 リスポーンしました。 攻撃が激しかったので全ロストでしょうね」

 

 

ソコまでの規模とは。 過去最高か?

何にせよ殺す。 荒らしは荒らしだ。 こういった事が何度も繰り返されては堪らない。

未然に防げなかったのは悔しいが、やられっ放しの創造主ではない。

やられたら、やり返す。 倍返しだ。

 

 

「核や対消滅攻撃は許しません」

 

 

くそっ。 真の敵は味方か。

 

 

「馬鹿云ってないで、それぞれ最寄りの戦場に復帰して下さい。

迷宮内で遊んでる馬鹿は敵に備えて!」

 

 

楽しむ余裕をくれない。

この意味でも荒らしは嫌いだ。 我々を束縛する。

何にせよ元よりの目的だ。

クラフターは迷宮の彼方此方にワイヤートラップやTNTをセット。

通路を丸石と土を混ぜて塞いだり、溶岩をブチ撒けたりと嫌がらせ。 ある程度すると適当な場所に潜伏。

壁の中でスニーク姿勢をしたり、透明化ポーションで荒らしに備える。

ここの住民も、何かイイ感じに参戦するかもだが、頼り切る創造主ではない。

邪魔する奴等に直接申し上げる。 それが礼儀というモノだ。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

「ゴズールとメズールがヤられたッ!?」

 

「ゼギオンがまたヤられましたーッ!?」

 

「クマラと配下も皆殺しに……」

 

「アピトの群勢攻撃にすら……」

 

 

迷宮地下に設けられている管制室にて。

オペレーターとなっているトレイニー含むドライアド達が悲鳴に似た報告を続々上げている。

ハァンハァン煩い。 眠れない。

同志が寝返って荒らしてる訳じゃあるまいに。

 

 

「荒らしてんですよ!? 迷宮の味方を続々潰してナニしてくれちゃってんです!」

 

 

辛辣同志まで叫ぶから、いよいよ諦めた。

ベッドの側を離れるとモニターに目を向ける。

同志が道行く先を塞ぐ魑魅魍魎を打ち払いながら、罠を作り壁を作り潜伏したりしている。

これのナニがイケないのか。

クラフターは首を傾げた。

 

 

「いけないから騒いでるんです! 馬鹿共が倒してるのは本来味方なんですよ!」

 

 

いや。 だって攻撃して来た奴もいるし。

荒らし駆除中に横槍入れられても詰まらない。 予め駆除するのは道理だ。

 

 

「横槍はアンタら! 横槍どころの騒ぎじゃないけれど!」

 

 

良いだろ迷宮だぞ。 死んでも復活する。

 

 

「アンタら同様、復帰するのに時間が掛かるでしょうが!

そうでなくても迷宮を好き勝手弄って! 管制室を見回しなさい、司令官のベニマルさん含め、シュナさんやラミリスさんが項垂れてますよ!」

 

 

知らん。 我々との付き合いが長い癖して、行動を読めないとは。

読み直し。 行動予測出来ないおまいらが悪い。

 

 

「ベニマルさん達もアンタら馬鹿の言葉が理解出来たら拳が飛んで来てますよ……」

 

 

一向に構わん。 寧ろ全員で来て欲しい。

そうして大乱闘だ。 何方が上かな?

 

 

「……もう良い。 とにかく、私達の対策の障害にもなるんですから、これ以上派手に動かないで下さい! 良いですね!?」

 

 

相分かった、とでも云えば良いのか。

管制室と迷宮にいるクラフターは1人だけじゃない。 いる数だけ意見がウロチョロしている。 束縛を嫌う創造主全員を管制なんて出来る芸当では無い。

 

 

「早々に諦めてます。 言いたかっただけ」

 

 

そうか。 好きにしろ。 我々もそうする。

 

 

「それが困るって云って……ハァ」

 

 

村人語じゃ分からん。 ハッキリ云う事だ。

 

 

「……荒らしに負けたら許さないから」

 

 

相分かった。

それだけには皆して頷いた。

そういう存在だ。 辛辣同志も分かって云っている。 文句は云いたいから云っているだけに過ぎない。 村人達も同様に。

本当は好きなんだ。 お互いに。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

「ッチ! やっぱいるよな、お前らは!」

 

 

荒らしの団体様ご案内ッ!

こんにちは! 死ねッ!

 

襲って来るモンスターを倒しつつ準備していたら、荒らしがノコノコ現れた。

弓矢を放ち、ワイヤーに触れ罠が作動し、感圧板とTNTによる地雷等が起動していき、彼方此方で爆音が反響して暴れ回る。

その白煙ごと貫いて、無数の火矢が弾幕となり荒らしに飛翔する。

それを剣ガードしている相手に対して、エンダーパールや俊敏ポーションで一気に間合いを詰めて斬り掛かる。

防がれても構わない。 エンチャント効力が発揮され、轟々と燃えながらノックバックで遥か後方へ吹き飛ばす。

時間を稼ぐ様に見せかけた次には、釣竿で引っ掛けて引き寄せてからの斬り付け。

逆に斬り返してくるならば、すかさず雪玉弾幕で牽制。 距離を取りつつ囮となり、透明化していた同志が背中に斬撃をお見舞いする。

避けられようとも、天井から一斉に砂利や砂、金床を落として窒息等を狙う。

マルチに対応中。 お互いマルチだし。

 

 

「ここまで敵がいないと思ったら!」

 

「コイツらの罠だったって事だ!」

 

「聞け、お前達。

オレは60階層に戻り、この迷宮の権能を奪う作業に集中する。

現在も侵食しつつ迷宮を踏破して来たが、未だ同調が進んでいない。

オレの領域が通用しない箇所が数多ある。

侵食にはまだまだ時間がかかるだろう。

このままでは埒が明かぬ。

後の事は任せるから、精々暴れて時間を稼ぐのだ」

 

「ああ、任せろ!」

 

 

1人がどっか行く。

追撃するにも3人が邪魔だ。 早く潰さねば。 逃げた奴が何処で荒らすかも分からない。

 

 

「……バーカ。 最初から当てにしてないっての。 でもヴェルダ様の手前、逃げられないし、リムルと敵対するのも……面倒臭ぇ!」

 

 

何やら鳴き始めた。

通訳がいないから何事かコレまた分からない。

 

 

「ていうか〜、アイツ超ウザイんですけど! 何様なワケ?」

 

「そうだな。 偉そうに命令するし正直、好かんな。 何故言いなりになるのだ、ディーノ?」

 

「そうだよ! ディーノ、アイツをやっつけちゃってよ!」

 

「そうだぞ。 殺るなら、ヴェルダ様にばれないように協力するぞ?」

 

「あー……今は目の前だ、目の前!」

 

 

攻撃しながら鳴いてくる。

交渉という訳でも無さそうだ。 なら関係ない。 続けさせて貰う。

丸石の防壁を即座に形成。 裏で素早くディスペンサーとRS回路を組み上げる。

クロック回路だ。 常にオンオフ繰り返す回路であり、ディスペンサーと繋げる事で連射装置が組み上がった。

中身は大量の矢だ。 取り敢えず弾幕を形成し時間を稼ぐ。

 

 

「即座に装置を作ったか。 だがその程度の速度と単純さで倒せると思うな」

 

 

当然の様に弾かれ、射線から外れて回り込んでくる。 それは予想していたから、TNTを火打石で起爆する。

 

 

「自爆!?」

 

 

間に丸石の壁、水バケツをひっくり返して被害拡大を抑えつつ爆煙に飲まれる。

同時にディスペンサーにより床や壁に大量に刺さっていた矢が爆風で吹き飛んだ。 散弾となり空間にいる者達を無差別に突き刺していく。

 

 

「ぐっ!? 矢が爆風で!」

 

「これが狙いだったか!」

 

「コイツらの剣や弓矢は普通じゃない、私達の様な者にも平然とダメージを与えて来る……ホント、理不尽な連中!」

 

 

致命傷は与えられずとも驚かす位は出来た。

しかし理不尽だ。 荒らし自体、理不尽な塊だが、ワケ分からんエンチャントを持っていたり能力を所持して実行してくる。

或いは、そういった能力があるからこそ、武力を持って威を示したくなるのかも知れない。

 

 

「でも負ける訳にはいかない!」

 

 

ピコとかいうらしい、少女が槍を構えた。

仕掛けてくる。

即座に黒曜石を展開。 クラフターは単純な身体能力は人間と大した差が無い。 クラフト能力があるのが唯一の差である。 その分野も方面が違えば村人達に敵わないが。

今は出来る事をするだけ。 そうしてきた。

数多の人外な化物共を相手に立ち回ってきた。

またするだけだ。 つまり、いつも通り。

 

 

「フォールンスピアッ!!」

 

 

強烈な一撃が黒曜石に刺さる。

ヒビが入り、次には破壊された。

あの黒曜石をだ。

効率強化エンチャントを施したダイヤツルハシでないと破壊に苦労する石を槍で。

だが裏にクラフターはいない。 既に地面に潜ったり横にズレて回避していた。

 

 

「くっ……届かなかったか」

 

 

化物相手では黒曜石は焼け石に水、いや鶏肋か。

無駄では無いが、この世界で頼り切るのは危険なのだ。 今まで黒曜石が何度破壊されてきた事か。

 

だが、お見事。 では返礼。

 

 

「うっ」

 

「ピコ!」

 

 

槍はクラフターも持っている。

そして、それを投擲した。 命中すると相手はパタリと地面に倒れて見せた。

余裕がありそうだったが、無力化出来たならヨシとしよう。 後2人も残っている。

 

 

「……おい。 何で最後、手を抜いたんだ?」

 

「あ、やっぱわかっちゃった? だってさ、余力残しておかないと、ここから逃げ出すのも大変じゃん?」

 

「なるほどね。 どうやら、俺の目的に気付いているみたいだな?」

 

「当然でしょ? アンタ、アタシ等とどんだけ付き合ってると思っているワケ? アンタの考えなんて、お見通しよ」

 

「オッケーオッケー。 それならいいんだ。

ゼロの自殺に付き合うのは馬鹿らしいし、隙を見て脱出するからそのつもりでな」

 

「了〜解! ガラシャも気付いてるみたいだし、上手く時間稼ぎしてくれると思うよ?」

 

「だと良いんだが。 正直さ、アイツら舐めてると洒落にならないんだわ。 連中、ゼギオンって超強いヤツを倒した事もあるからな。

ひょっとしたらワルプルギスにいた奴もいるかも知れないし。

本当、今直ぐにでも逃げ出したいくらいなんだぜ? ヤツらには冗談も通じないだろうしな……」

 

「ま、まあ頑張って? ガラシャがどれだけ頑張ってくれるか、それ次第だけどね……」

 

「よし、ゆっくりは出来ないだろうが今は休んでいろ」

 

「そうさせて貰うよ」

 

 

今度は片手剣と円形盾の荒らしが前に出た。

シンプルな武装はクラフターの武装と似ているモノがある。 持ち手も互いに戦闘慣れしている。

違いがあるとすれば、やはりクラフト能力の有無。 逆に相手は人外の速度や技量の持主である。

何方が上か、というのは武装だけで決まるものではない。 それもまた互いに熟知している事だろう。

派手は無く地味だが、玄人同士の剣戟が始まる。

 

 

「剣から釣竿だと!? ツルハシで壁に? スコップで地面に潜って回り込んでくる!?

雪玉といい、珍妙な真似を……待て。 何故水バケツ一杯から無限に水流が流れ出るのだ! 溶岩も同様に……何故木やサボテンが生える!?

長く生きてきたが、この様な戦闘は初めてやも知れん……お前達は何者なのだ?」

 

 

天井落としに使用した砂や土に植林して荒らし行為の阻害をしつつ、剣以外の様々なツールを駆使して攻め立てる。

荒らしは上手く動けていない。 狙い通り。 このまま撹乱からの回復を許さない。 すかさず吹き飛ばす。

その先には別の同志がバッチコイと剣を振る。

ガードされたが、やはり関係無い。 ノックバックエンチャントとフレイム効果で火球となり荒らしは転がる。

 

 

「くっ。 単体でも厳しいが……」

 

 

水流で消火されるも、水流の檻に囚われては自由が効かない。 そこを弓矢一斉射。 四方八方から撃ちまくる。

その対処に追われている間、地面を掘り進んでいた同志が相手の真下に到達。 上をツルハシで空けて間髪入れず剣で斬り上げた。 ノックバックで吹き飛ばす。

その先は天井。 荒らしは空中でターンし、足を天井に付けカウンター突撃をかまそうとしたが、そうはさせない。

クラフターはエンダーパールを足着く先に投擲。

ワープすると、視界一杯に映る背中をツルハシで思いっきり叩き落とす。 正々堂々正面から殺る気は無い。 そんなルールもなし。 勝ちに行く。 それだけ。

 

 

「ぐあっ!?」

 

「ガラシャ!」

 

「……降参だ」

 

 

剣を下ろされた。

荒らしの戦闘意欲が消えた。 だからと荒らしに違いなく、いつもならトドメを刺すところ。

ただ奥に逃げた奴が気になる。 今は急ぎたい。

 

 

「良いのか? まだ本気を出していなかったようだけど?」

 

「構わぬさ。 本来の目的としても、生きて脱出する為にも余力は必要だ。

まぁただ……お互い全力で戦える場所にて、本当の決着を付けたいものだな」

 

「そうか。 じゃ、休んでいてくれ。 残るは俺だけの様だけど……俺もテキトーに相手して、さっさと皆でズラかろうぜ」

 

「ヤバイぞ、ディーノ。 あの者達、情報以上に強くなっていた。

日々成長しているにしても、本気で戦えば負けはしないだろうが、消耗すれば脱出は難しいかも知れん」

 

「だよね。 ここには他にも強者の気配がある以上、消耗するのは自殺行為だもん」

 

「ピコの判断は正しい。 貴様も、せいぜい気をつけろよ?」

 

「ああ、わかった……」

 

 

最後の奴が出て来た。

外でドンパチ演技していた奴だ。

地上が粗方潰れたので此処に避難したか、その者達を追いかけて来たのだろう。

何にせよ、知ったこっちゃない。

立ち塞がるなら倒す。 これまで通りに。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

先陣を切った同志に遅れ、ジャンプ走りしていた某クラフターは、荒らしと邂逅した。

逡巡なく斬った。 慈悲は無い。

 

 

「ッ、何者だ? この辺りは既にオレの支配領域。 侵入された気配などなかったぞ?」

 

 

抵抗されては面倒だ。

勢いでジャンプ斬りを繰り返し押していく。

単調だったが不意打ちの勢いで余裕を与えず出来る限りの損害を与える。

 

 

「……なるほど。 貴様達は何人もいる存在であったな。 これは盲点だった。

……来なければ、生き延びたかも知れぬのに。

だが、所詮は早いか遅いかの違いでしかない。 このオレの糧となり、死ぬがいい」

 

 

何体もの獣的モンスターがスポーンした。

素直に飛び掛かるものは、さっさと斬り捨て御免とし、迅速に動き回る奴は水バケツを真下にブチ撒いて行動抑止。 鈍ったところを弓矢で射抜く。 他愛無い。

 

 

「ほう? オレの邪龍獣をこうも容易く葬るとは……。

創意工夫に優れる他は隠れているだけの雑魚ではない、という事か。

オレはゼロという。 この国を滅ぼすべく遣わされた、天の軍団を率いる者だ。

貴様を倒すべき敵だと認めよう。 語る口を持たぬ者だとして、容赦はせん!」

 

 

無聊を託つあまり、一時消え逝たが、どうやら戻ってきて正解だ。

僥倖が巡って来た。 直近には目の前の猛者……荒らしを倒す楽しみが。

落ち着いたら彼女に謝らねば。

そして星の世界。 共に見れたら幸いだ。

……更に願わくばクラフトを共にもう1度。

輝く同志や彼女は厭う者であり、憧れだ。 今更どの面下げて会えば良いか答えは出ない。 或いは機を誤ったか。

歳を旧りて尚も分からん事は数多ある。

けれども。 それでも。

クラフトが好きだったんだなって。 今更に。

 

 

「余所見する余裕があるか。 それか余程の死にたがりか。 何方にせよ死んで貰う」

 

 

故に鉄剣と盾を構える。

旧式装備の鉄防具。 半減した耐久値だが、まだ使用に耐え得る。 加えて金林檎や基本となるポーションで身体強化済。

他は弓矢や雪玉、エンダーパールといった飛び道具、壁や移動に使える土、丸石、罠になる水バケツや溶岩バケツ、TNT等。

軍事部が装備していた最新鋭の銃火器や最新エンチャントツール……ネザライトツールと比較すると見劣りする。

だが使い慣れた装備類だ。 戦闘向けでは無い己だが、やれる事は数多ある。 何故なら己もクラフターだから。

そしてクラフターだからこそ、やりたい事が再び出来たからこそ、死しても再び戻るであろう。 恐怖は無い。 邁進あるのみ。

 

 

「ふっ!」

 

 

攻撃を盾で防ぎ踏鞴を踏む。

敵から目を逸らさない。 隙を窺う。

圧倒的な力差は始めから分かっている。

その上で挑んだ。

少なくとも無駄死には避けたい。

剣から雪玉に切り替え、牽制弾幕。 距離を置き直様土と丸石の混合防壁を作る。

対クラフター戦ならば有効なソレ。 効率の良いモノでなければ、ツルハシとスコップ両方を使わねばならない厄介な混合壁。

だが化物相手に効果は薄い。 現に簡単に破壊された。 それは予想の範疇だから次に備える。

 

 

「土壁なんぞ役に立つとでも? 黒き壁の方がまだ強度が……何だと」

 

 

エンダーパールで相手の背後にワープ。

振り向くままに剣を斬り返す。 バックステップで逃げられた。

その場所は防壁を立てた場所。 同時に仕掛けたTNTが丁度起爆、荒らしを爆煙で包む。

 

 

「小癪な」

 

 

白煙が晴れる前に雪玉連射しつつ突撃。

手持ちを切り替え剣で斬る。 ガードされても振り斬る。 ノックバックエンチャント効力で遠方へ吹き飛ばす。

その先へ向けて弓を引く。 かと見せ掛けてからの再びエンダーパール。 相手の目の前に出現すると同時に剣を振り下ろし再びノックバック。

反撃されたなら、盾を構え防壁を作り防御。

破壊される前にツルハシやスコップで地面や壁に潜り透明化ポーションで身を隠し、隙を見て溶岩バケツをひっくり返し、床に埋め込んだTNTに火打石で着火、通路全体を爆煙に沈ませる。

視界一杯に広がる白煙。 揺れる影に残心。

 

 

「その程度の小細工で勝つ気か。 笑止」

 

 

荒らしは堂々している。

従来品が効かぬ事実。 暫時惚ける。

駄目か。 改めて化物世界だ。

連邦周辺で、彼女と平和に暮らしていた頃に相手したモンスターとは比較にならない。

油断した訳ではない。 だが、あの時の感覚が抜けていなかったのも事実。

未熟。 後悔先に立たず。 されど佇まいに悲壮漂う事は無い。

 

 

「だが中々に面白かったぞ。 少しは楽しめた事に敬意を評し、オレの力を見せてやる!

喰らえ、完全消滅覇(ゼロフィルウェーブ)!!」

 

 

衝撃波が突如襲う。

盾や壁で防げない。 喰らえば忽ちバットステータスが付与された。 強化されていた攻撃力は低下し弱体化。 俊足は鈍足異常。 良性が悪性に反転。 そういったスキル攻撃だと瞬時に理解する。

荒らしめ。 厄介者めが。 害悪。 塵芥。

取り敢え牛乳バケツ。 話はそれからだ。

 

 

「この攻撃は全ての波長、つまりエネルギーの周波数をゼロにする。

逆位相をぶつける事で、相殺し合うのだ。

それは生命にも適用され、天使や悪魔といった精神生命体でも例外ではない。

両方に有効である以上、貴様の様な存在であろうと無事では済むまい。

寧ろ、高位の者の程……何だとッ!?」

 

 

牛乳をバケツで一気。 中和完了。

ガッカリだ。 ドーピング禁止だ。 ここからは通常攻めだ。 エンチャントが無事なだけ良しとしよう。

 

 

「馬鹿な、一瞬で打ち消しただと!?

しかも全ての波動、生命の鼓動すらもゼロと帰する、完全消滅覇が無効化されるとは」

 

 

鉄装備で良くぞ持ち堪えたものだ。

それも個人で。 誇りたい。 だが終わりだ。

シングルでなくマルチの世界に生きる者である。 次々の者が成し遂げていく。 己が何するでもなく。 共に何するでもなく。

それをまた、後者の立場から背を見つめる時が来る。 だが確かな繋がりが心中にある。

 

 

「……しかしオレの攻撃を防いだ所で、貴様の攻撃がオレに通じない以上、結果は変わらん!」

 

 

その時はいつか。 今でしょ。

 

 

「遊戯は終わりだ……なっ!?」

 

 

増援が来た。 同志諸君。 久方ぶりである。

最新の剣、弓矢、軍事部装備、ネザライト製品。

こぞって波打ち押し寄せる。 荒波は荒らしをも飲み込む濁流となり押し流す。 その様は元の世界でもこの世界でも変わりやしない。

 

 

───やぁ同志。 遅かったじゃないか。

 

───悪い同志。 他の者に手間取った。

 

 

「時間を掛け過ぎた! それにしてディーノらは何をしている!

よもや、やられたと云うか! この短時間に!」

 

 

次々剣を振り下ろし、弓矢が吹き荒れ、数の暴力が、マルチクラフターの正義が荒らしを殺す。 殺し続ける。

荒らし許さん慈悲は無い。

様々な意見ある創造主なれど、一致した際の団結力は凄まじく、御覧の通りの結末を見届けるばかり。

 

 

「馬鹿な! 有り得ん! 猛攻を凌ぐべく創り出す絶盾が、悉く破壊されていくだと!?

創造力においても、奴等が上回ると云うのか! ヴェルダ様を超えて往くというのか!

かような非常識を認めろと云うのか!?

おのれ! おのれマインクラフターッ!!」

 

 

黙らっしゃい。 すっとこどっこい。

斬り刻まれていく荒らしを塵芥を見る目で蔑む。

怯えろ。 竦め。 クラフトを活かせぬまま死んで逝け。 技術があろうと独創性があろうと無かろうと亡くす時は亡くすのがこの世であると。 己が消えたが良い例だ。

陰は惨たらしい死で満ちた残酷を道理とする世界で、望む死に方や創造を皆が皆出来るとは限らない。

創世主ヴェルダナーヴァがどういった者かは想像の範疇を抜けないが、かの者もクラフターであるならば理解していた筈だ。

その上で己が消滅する事をも受け入れたであろう。 我々も何れはと運命を受け入れている。

だが今じゃない。 少なくとも荒らしに跋扈されたまま、相手が望むままに無様に消え失せる気は無い。

それこそリムルの言葉を借りるなら「思う通りならない事ばかり」なのだから。

 

 

「ゴボァッ!!」

 

 

同志のネザライトの剣を無数に刺され、遂に荒らしは終いである。

飛び上がり爆発四散する事もなく、その刹那に消え失せ、我々の望む通りとなった。

何でも上手くいかないと先程は云ったが、努力して得る望む何かはあるとも思う。

彼女が星の世界を目指し、同志が宇宙に行けた様に、己も望むモノが手に入る様、行動していきたい。

取り敢えず事今に至っては、荒らしを倒すという目標は達成出来た。 このまま撲滅運動に加わりたく思う。

クラフトは久し振りだが、なに。 同志もいるマルチクラフトだ。 彼女もいる。 なる様になる。

未来に希望を持つのは良い事だ。 少なくとも絶望して消えるより良い。 そうだろう?

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

ディーノら一行は、ボコッた後は大人しくなったから、クラフターは放置して他へ往く。

荒らし共を甚振り溜飲が下がったのもある。

一方で胸を撫で下ろす管制室の面々。

 

 

「敵も皆殺しか……」

 

「そうじゃないかと思ってたけどね……」

 

 

ベニマルとラミリスが疲れ顔で安堵した。

何が何だか。 クラフターも画面を見やる。

映るは同志諸君。 何やら懐かしい友の顔もあるが、そういう事もあるだろう。 祭りだし。

或いは、こうした出会い、再会をベニマル達も味わっている故のハァンか。 成る程。 理解し頷いて見せる。

 

 

「酷く違います馬鹿共」

 

 

隣の娘……辛辣同志は相変わらず辛辣。

 

 

「まぁでも……再会という意味では、私も嬉しく思います。 いえ、これからですけど……えへへ」

 

 

かと思えば急にしおらしくなる。

何だ赤らめて。 まさか爆発動作か。 クリーパー柄のパーカーだもの、可能性はあった。

思わず距離を取る。 此処がチェスト満載の倉庫で無い事がせめての救いだ。

 

 

「爆発しませんよ!? 確かに服装はアンタらの世界にいる緑のモンスター風ですけど!」

 

 

そうか。 見た目通りにいかないものだ。

そうであっても嬉しく無いが。

 

 

「とにかく! まだ戦争は続いてます! 北の地でも激戦が続いてますし、各地、連邦領でもIRP含めた面々が戦闘中です!

油断せずに荒らしを倒して逝って下さい!」

 

 

クラフターらは賛同し頷いた。

不穏に聞こえたが気の所為だろう。

天界とやらに行けるゲートを見つけたのだ。

何度リスポーンしようと諦めず吶喊し続ければ如何な荒らしも撲滅出来よう。

 

 

「そう上手くは……いえ。 アンタらなら上手くやってくれるでしょう。

敵の思惑がどうであれ、アンタ達マインクラフターの道を阻むなんて誰にも出来やしないでしょうから」

 

 

笑顔で言われた。

此方も笑顔で応、と頷く。

もう少しだ。 祭りは終わる。 荒れ果てる前に戦争は終わらす。

楽しい時間だった。 マルチはやはり楽しい。 問題も沢山出たが、美化出来る思い出となれば後は野となれ山となれ。

それをまた好きにするのがクラフター。 そこに何を作ろうか。 楽しみだ。 我々は常日頃楽しみ尽くせない日々を送っている。




大幅カットした部分もありますあります(殴。
今年も残り少ない中ですね(投稿現在。
来年まで、或いは以後も生き延びていれば良いのですが。
作者のリアルが荒れてきており、辛い中であります。
その中での少ない娯楽の1つとして、皆様や様々な作品との触れ合いを楽しんでいます。
読者の方々、書かれている作者の方々。
いつも有難う御座います。
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