「ギドひどーい! よくも私のお肉を!!」
「食卓とは戦場なんでやすよエレンの姉さん!」
「いいわよぅ。 じゃあカバルのもらうから」
「ギャー!! 丹精こめて育てた俺の肉がー!!」
建物に入っても尚、賑やかな連中だ。
余程腹を空かせていたらしい。 「テッパン」なる道具で焼かれた肉を取り合っている。
喧嘩は駄目だ。 諸君もマルチである事を自覚し、仲良くしなさい。
クラフターは思い、牛肉を1スタック64個用意した。 気前は良い。
「うおおお! 肉のお代わりを!?」
「やったでやす! 良い人達でやすな!」
「やったー! いっぱいある!」
そうだ。 仲良く食べなさい。 クラフターは頷いた。
僅かな食糧を巡って争う光景は見ていて痛々しい。 静観は出来ない。
有り余る食糧を無駄にするのも頂けないが、争うのも良くない。
今はたんと食べて元気を付けろ。 空腹は駄目だ。 体力が回復しないばかりか、走る事も儘ならなくなる。
出来る限り飯は持ち歩き、腹は満たす事だ。 冒険者としてのアドバイスである。
「スライムさん、スライムさん。 焼けた鉄板触れてるよ?」
「ッ!? 溶けるかと思った」
「そうならなかったとこみると、熱に対する耐性があるのかな?」
会話している仮面村人は落ち着いている。 肉を貪ってる3人も見習って欲しい。
あいや。 我々も初期ははしゃいでいたものだ。 今もか。 人の事は言えぬとクフクフと笑う。
「……あの人達は炎を扱えるの?」
「どうかな。 未だに知らない事ばかりやるしなぁ」
「……私もね、炎とは縁があって。 ううん、呪いがあるの」
火力が弱ってる。 火打石で火を作り直す。
効率を考えて、かまども設置。 肉を放る。 豚肉と鶏肉と兎肉も混ぜる。 肉祭りだ。 ただし腐肉、テメェは駄目だ。
「私が元の世界で最後に見た光景は、辺り一面の炎。 とても怖い音が鳴り響く中、住み慣れた町は紅蓮に染まっていた」
「……もしかして空襲か?」
「多分そう。 東京大空襲って言われてるんでしょ? 私の教え子……その子も日本出身なんだけど歴史の授業で習ったらしいね」
トーキョー? にっぽん?
そんなハァンが聞こえて振り返る。 普段は耳なぞ傾けないから、気紛れだった。
「……それで転生して?」
「ううん。 私は死んでないよ。 ある男に召喚されたの……ふとした気紛れからか、彼は私に炎の精霊を憑依させた。 それは炎を操る力をくれたけど……同時に呪いでもあったの。 この力……炎のせいで……私は大切な人達を失ってしまったから」
地名だろうか。 建物の名前か。 食物の名前か。 「テッパン」の親戚か。
若しくはその生まれか。 或いはそうかも知れない。 素敵な文化と創造に溢れてるに違いない。
にっぽんかぁ……親近感が湧いてきた!
「だからかな。 人と親しくなるのは少し怖かったんだけど。 やっぱり仲間っていいね。 最後の旅で楽しい人達と出会えたもの。 彼等はお互いを信頼してるし、遠慮なくケンカもするし。 良い冒険者だよ。 それは、あの人達もそうなんだろうね」
「……俺、もっとシズさんの話聞きたいな。 腹ごなしに散歩でもどうだ?」
何処かに行く。 クラフターもついて行く。
我々としても仮面の村人の話を……いや。
シズ、という個体らしい……の話をもっと聞きたいと思う。
ぼちぼちシズさんと……いや、イフリート戦ですかな。