寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

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ぼちぼち終わりへ向けて。


166.天空門と思い出

ヴェルザードの精神世界にギィ共々クラフターがズカズカ土足で上がり込みメンタルケア……なんて展開は流石に無かった。 あったらあったで精神が犯されそうである。

とりま原作通りギィによりヴェルダの支配から解放されたヴェルザード。 心の内に溜まった鬱憤を晴らし、ようやっと現実に戻る。

 

 

「───ただいま、ギィ」

 

「おう。 お疲れ」

 

 

クラフターに言葉は分からぬ。

されど要らぬ。 荒らしは既に消え去ったからだ。

後に残るは天界。 諸悪の根源を潰しに向かう。 荒らし許さん慈悲は無い。

 

 

「じゃ、さっさと天界でヴェルダをブッ飛ばしに行こうか」

 

「そうね。 さっさと黒幕を倒しちゃってリムル先生の所に行かなきゃね」

 

 

そしてクラフト生活に戻らねば。

開拓地がまだまだある。 作りたい建造物が山程ある。 最近は宇宙に注目している。 あの無限に広がり未知なる星の海。 天上に広がる宝石箱をひっくり返した様な幽玄世界。

元の世界でも新たな発見が続いている。 竹や桜やら。 興味が尽きない。 未だ楽しみきれない毎日を送っている。

 

取り敢えず今は荒らし潰す。

 

クラフターは空を飛び大陸西部、天空門なるゲートへ向かう。 既に数多の同志が備えている。 この最後の祭りに乗り遅れる訳には行かない。

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

扉を開け放ち、わらわらと突撃するは我等がマインクラフター。

荒らし拠点だ。 容赦は要らない。

無遠慮に剣振り走り、弓矢が飛び交いTNTを起爆する。 軍事部は挨拶がてら反物質ロケランをブッ放ちデカい呼び出しベルを鳴らす。

 

荒らし共、出て来いやッ!

 

が、来たのはヴェルダじゃなくミリムだった。

 

母を模したルシア本体……クラフターの影響で防壁能力を失ったのを機にトドメを刺し、少なくない悲壮感を抱えてフラリと現れたのだった。

 

辛辣ちゃんや弟君の存在がいるクラフターとしては、多少家族関係は理解しているつもりだ。

 

きっと事情を知れば悲しむだろう。

創造物を愛し、故に破壊された時は悲しいものだ。 逆に自ら壊すしかなかった時は虚しさもある。

家族を消すのは家畜の間引きとは違う。

少なくとも一緒にはしていない。

 

 

「相変わらずだな、お前達は……」

 

 

ミリムは出会った刹那、旧友に会った様な安堵感から少し口角を上げて見せる。

対して我々はスニーク姿勢で挨拶。

お互いその方が良かった。 ミリムには笑顔でいて欲しい。 ミリムもクラフターは面白い存在のままでいて欲しい筈。 陰湿な表情は互いに似合わない。 荒らし行為は未だ許していないクラフターであるが。

 

 

「分かっている。 ヴェルダの元へ向かうのだ」

 

 

ミリムが先行するから、後に着く。

その往く先々の壁には透明なカプセルが規則正しく並び設えられており、覗き込めば透明な液体が満ちていた。

 

クラフターは首を傾げた。

湖底研究所のクラフターは兎も角、多くの者は1ブロックも理解出来ないが、その1つ1つの透明の箱の中身に浮かぶのは、未だ生まれ出ぬ羽虫達である。

殺すにも弄るにも今がチャンス。 回収するならシルクタッチか。 はたまたエンダードラゴンの卵の様に、やや特殊回収か。

 

 

「構うな」

 

 

ミリムはそうした天使達に目もくれず、真っ直ぐに玉座を目指す。

クラフターの一部は遊び始めてしまうが、それでも倣って後に続く猛者もいる。 好奇心は猫をも殺す。 優先して荒らしを殺すべしと自制心が働いた者は多くはない。 だってクラフターだもの。

 

 

「お前達だものな。 来たい奴だけ来れば良い」

 

 

やがて辿り着いた、天界の中心部。

全ての中枢にして、天帝の座す場所。

諸悪の根源、荒らしのヴェルダは今、名実共にこのダンジョンの支配者として君臨している。 クラフターからすれば神殿なモノだから、さっさと倒したい。 そうしてこのダンジョンをゲットだ!

 

そんなルンルンなクラフターという異物に天空城の自動防衛システムがミリムの殺意共々反応。

警報が鳴り響き、守護機神(ガーディアンドール)が出現する。

クラフターからすれば変わったゴーレムだな、である。 あと敵拠点にいるのだから敵であろうな、である。 なら倒せば良いや、である。

しかしゴーレムらはミリムの持つ首飾りを見て、その動きを止めた。 その隙を突いて創造主は剣を振り翳す。

 

死ぬが良い。

 

 

「コレヨリ先ニハ、オ通シ出来マ……」

 

 

警告無視上等。

容赦なく斬り伏せ一刀両断。

敵ダンジョンにいる以上、全ては敵前提なので、容赦せず剣を振るう。

言葉も分からない。 だが荒らしを理解するつもりはない。 先手必勝。 やらなきゃやられる。 荒らしを見たら悪即斬。

 

 

「それで良いのだ」

 

 

そう言うなり、ミリムも無造作に拳を振るい、別のゴーレムを破壊した。

 

よしよし良いぞ。

ミリムを今だけは味方認定する。

この騒動解決後、振る舞い次第で再び荒らしと見做すものの。

 

さてもゴーレムは攻撃してこない。

理由なんて知らない。 が、都合が良い。 バッサバッサと斬り伏せまくる。 どうせ荒らしだ。 全て滅する。

そんな中、女村人が立ち塞がった。

 

 

「ミリム様、ご立派になられて……」

 

 

悪即斬ッ!

涙ぐみつつ、ミリムに近寄ろうとしたので斬り捨て御免であるッ!

 

 

「サロメ!?」

 

 

黒一色のドレスを着た、穏やかな感じの美女であった。 斬ってみてから思った。 切口からは成分不明の透明な液体が流れ出る。

千切れた胴体から毀れ出るのは、贓物ではなく精密な機械である。 変わった村人だ。

 

 

「いや違ったか……模した機械、か」

 

 

液体を瓶詰めしてみた。

悪意は無い。 純粋で底知れぬ好奇心からだ。

湖底研究所の連中も、こうして荒らし化したであろうに。 過ちを繰り返す。 けれどクラフトは止められない。

 

 

「悪趣味な」

 

 

ミリムが悲しそうに表情を曇らせる。

気持ちは分かる。 クラフターはぽんっ、とミリムの頭に手を置いた。

 

 

「慰めか? 優しいのか違うのか、相変わらず馴れ馴れしくて……何より分からんな……お前達は……」

 

 

我々も荒らしに同情しない訳ではない。

元の世界で例えれば元は同志だった者だ。 ミリムも知り合いが荒らしになったかで沈んでいるのだと予想する。

だが荒らしは荒らし。 斬り捨てろ。

記憶は足枷。 感情を持てば苦しむ。 他者への愛情は弱さとなり心を苦しめる。

それでも進む。 進む強さがミリムにある。 だから力強くあれ。 そう励ました。

 

 

「そうか。 うむ……偽物に惑わされている場合ではないな。 お前達の様に強く生きねば」

 

「……ああ……ミ、リム……様……ご、立派……に……ピッ───」

 

 

地面に崩れ落ちる変な村人。

クラフターは不器用にもミリムの頬に触れた。 そこを伝う雫を拭う為に。

 

サロメ。

幼きミリムを育て、教育した女性だった。

古き日、ミリムに看取られてこの世を去った女性……生きている筈がないのだ。

永劫の時を生きるミリムと違い、彼女はルシアに仕える侍女の1人でしかなく、何より人間であったサロメが、生きている道理はない。

 

 

「大丈夫。 もう泣かない」

 

 

手を払いのけられた。

未練は断ち切れたか。 なら良し。 クラフターは満足気にうんうんと頷き前を見る。 見て抜剣した。 荒らしが来たからだ。

 

 

「酷い事をするね。 せっかくミリムの為に、死者の魂を呼び寄せたというのに。 喜んで貰おうと思って、こっそり用意したプレゼントだったんだけど……君達には理解出来なかったか」

 

 

来たな。 ヴェルダとやらめ。

涼やかな声がより殺意をムクムクさせる。 リムル以上にムクムクだ。

そういや本人はナニしてる。 来るなら来い。 来たら事故を装って今度こそ葬れるかも知れない。

 

 

「ヴェルダか。 貴様、覚悟は出来ているのだろうな?」

 

「覚悟……何の事かな?」

 

 

後はコイツ倒してハイ終わりである。

大陸全土のボスクラスの荒らしは同志が片付けたし、暇を始めた同志は天界に続々集まって来ている。

最早決着した様なものだ。 後は野となれ山となれ。 整地したり穴掘ったり建物作ったりだひゃっほい。

 

 

「お前の自慢の四凶天将とやらは、全員敗北したようだな。 後はお前だけだぞ、ヴェルダよ。 ワタシ達を怒らせた報い、きっちりと受けるがいい」

 

 

ミリムも抜剣、突撃する。

クラフターも負けじと吶喊。 死ね荒らし。 死んで消えて無くなれ。 そして天界も我々に寄越しやがれや下さい。 我が刃に倒れよや滅びよや下さいお願いします。

 

 

「遊んであげるよ」

 

 

天性の動きによる剣戟が始まった。

先陣切ったクラフターは余波で吹き飛び切り刻まれるも、後続の群れが津波となり押し寄せる。

剣で駄目だと判断すれば、弓矢を打ち、軍事部が機関銃を乱射した。 総じてエンチャント済みだ。 有象無象の村人製とは違うのだよ。 村人とは。

 

 

「甘いね」

 

 

けれど回避されるか弾かれる。

なんて奴だ。 ラスボスだから簡単に終わっても詰まらないが。

だが狙い通り。

 

 

「滅びの時は、今!」

 

 

刹那。 ヴェルダの背後、天空門から続々と後続が雪崩れ込む展開に。

一般、軍事部、連邦軍、帝国軍の姿すらある。

 

団体様ご案内。 イケイケ同志!

荒らしを潰せ!

 

原作子作り近●相●トーク(?)なんてさせない。

アレがクラフターの狂気より上回るか同等か知らないが、何も言わせねぇよの精神で突撃を敢行する。

 

 

「何ッ!?」

 

 

やっとムカつくクール顔を歪ませられた。

取り敢えず挨拶代わりに同志が次から次へと思い思いの攻撃を始めた。

中には見知った奴もいる。 逆に来なきゃ何してんだと責めたいが。

 

 

「やれやれですわね。 相変わらず好き放題する連中ですこと」

 

「本当だよね。 ボク達が3人がかりで、何度突撃をお預けした事か」

 

「そうだな。 リムル様から命令を受けた時は、簡単な任務だと思ったのだがな」

 

 

軍服悪魔トリオが鳴いている。

服の癖に軍事部には入部していないそうだが、まぁ好き好きだ。

 

 

「ねえ、貴方達。 先行しておいて敵を倒せてないとは……私達がお手伝いしましょうか?」

 

「賛成ーッ! 殺せばお手柄だろうしね!」

 

「ミリム様も苦戦なさっているようだし、助太刀しても文句は言われないだろう」

 

「お前達、すまんが手を貸すのだ!」

 

「喜んで!」

 

 

増援続々。

最後の祭り会場は相応に盛り上がる。 こうでなくては。 楽しんだ者勝ちだ。

 

 

「ミリム以外と遊ぶのは面倒だな。 お前達に適した相手を用意してやろう」

 

 

刹那。 不思議な事が起きた。

 

ヴェルダの前に村人が2人スポーンした。

豪華な黒い衣装に身を包んだ老齢の男。

旧帝国陸軍正式礼服を着こなす短髪の軍人。

2人は不思議そうに戸惑った表情のまま、周囲を見回していた。

 

見覚えのあるスキンだ。

短髪軍服野郎なんて特に。

何故スポーンしたのか。 同じスキンが他にもいてもオカシイとは思わないクラフターだが、この世界においては滅多に見ないユニークスキンだと思っていたから意外だった。

 

 

「わ、私は確か少女に技を託して死んだ筈……」

 

「自分は何故ここにいる? 生きていた……いや、それは有り得ない」

 

 

ウルティマに技を託したダムラダと、クラフターに拉致され生死不明となった近藤達也だった。

だが、決して本人ではない。

2人の反応を見てクラフターは判断した。

 

 

「やあ、目覚めたようだね。 その身体の調子はどうかな?」

 

「これは、ヴェルダ様! すこぶる快調ですぞ」

 

「ヴェルダ様、お久しぶりで御座います。 自分を呼ぶという事は、何か任務でしょうか?」

 

 

ヴェルダを前に、ダムラダと近藤は忠誠を示す姿勢を取る。

荒らしに礼儀をするとは。 やはり同じスキン持ちの別人だ。 なら殺すまでだ。 何度現れようとも。 経験値TTのゾンビの如く。

 

一方、珍しい顔も見た。

その2人を見て軍服悪魔達が戸惑っていた。

ヘラヘラ荒らし行為に近い非道行為をする癖に、今更何をとも思うが。

そのスキンに思い出でもあったか。 だとしても断ち切って欲しい。 ミリムの様に。

 

ミリムも思ってか、彼女らに叱咤する。

良いぞ。 我々の言葉じゃ彼女らに伝わらない。

 

 

「騙されるな! それは、記憶のみを宿した偽者だ。 しかもヴェルダに都合良いように、記憶の書き換えも行われている……本人の魂は消滅したのだろう? 死者を蘇らせるなど、神にすら出来ぬ!」

 

 

ミリムの叫びに、悪魔も我を取り戻す。

対してヴェルダの陽気な声が届く。 また屑野郎の荒らし顔になっていた。 また歪ませねばならぬと決意した。

 

 

「正解。 さっきミリムには侍女を作ってみせてあげたからね、原理はそれと一緒なんだよ。 不思議な事に、生者の記憶は集められないし、一度しか利用出来ないんだけどね。 この記憶の宝珠メモリーオーブは、死者の記憶を再現出来るんだよ」

 

 

ごちゃごちゃ鳴いている。 いつもの奴だ。

その間に同志は荒らしを取り囲むように位置どりをし、ブロックでトーチカやTNTをクラフトしていく。

時間は有効に使いたい。 のんびり鳴いて余裕を見せていると痛い目に遭うと云う事を教えてやりたい。

 

……因みに近藤はクラフターに拉致られたものの生きている筈だが、どうもリスポーン実験に付き合わされたらしく、その影響が何かしらあった様だ。

早い話がバグである。 クラフターやそれらによるクラフトを無理に理解しようとしてはいけない(戒め。

 

 

「その宝珠を核として、天使達のエネルギーを集めて仮初の肉体として生み出したんだ、地上では活動出来ないけど、ここなら関係ないしね。 それに、技術のない人格を幾ら使っても、神智核に進化させてみても、強くはなかったからね……今度は強い意思を持つ者を再現してみたんだよ。 覚醒魔王10体に匹敵するエネルギーと、強固な意志。 どうかな、結構強そうだと思わないかい?」

 

 

ヴェルダは笑う。 荒らし顔。

その言葉の意味を理解出来ないが、悪魔達の表情が怒りに染まっていくから碌でもない発言だったのだろう。

ただ彼女達は基本的に我侭の様だし、自分の行為は許せても他人の行為は許容出来ないタイプだ。

つまり荒らしを喜ばしてしまっている。 奴らに構うな。 構う程に奴等は調子に乗る生き物だ。 冷静になって欲しい。

 

 

「どうやら、本当に死にたいようですわね」

 

「ボク、カチンときちゃったよ」

 

「ワタシを怒らせるとは、中々出来る事ではないぞ」

 

 

客観的に自分を見る事の出来ない悪魔3名は、好き勝手に怒りを表明している。

ミリムも同様だが、まだ冷静に見える。

 

 

「油断するなよ。 ヴェルダの相手はワタシがするが、長くはもたない。 さっさとあの偽者を始末するのだ」

 

 

そう鳴くのを合図に天上での戦いが再開。

 

祭りは続く。

だが何れ終わる。 今は楽しむだけだ。

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