亀裂がチラチラ。
「オーガだけじゃなく、リザードマンにオークの集落……次はどこからクレームが来るんだ?」
日が暮れ逢魔時。
帯刀集落を後にした時、日は沈む頃だった。
ハァンとしみじみ鳴くリムル。 スライムとて魔物であるか。 或いは湧き潰しへの懸念か。
「シズさん、コイツら何とか出来ない?」
「考え方が違うみたいで……」
かと思えばシズも鳴く。
黄昏時、綺麗な声が響く……その中で見上げた空。 沈み行く淡い光が闇との境界を生み出していた。 美しく、儚い刹那の輝き。
直後に観られるは満天の星空だ。 対する地上は魑魅魍魎が跋扈する危険な闇が広がった。
日没の幽玄さ。 光と闇の演出。
毎日決まって繰り返し、クラフターがどんなに松明をばら撒こうとも完全に抗う術はない摂理。
だがそれも悪くないと思える。 特にこの世界に対しては。
リムル達の様な奇妙なモンスターと会えたのだから。 闇が完全に打ち払われたなら、シズとの出会いも無かったかも知れない。
不満なのはクリーパーとかエンダーマンとかスポーンしない事だ。
世界が違えばモンスターも違うにせよ、火薬とパールが補給出来ないのは痛い。
「堂々し過ぎるんだよな」
「悪意は無いみたいだから……」
「無かったら作って良い理由にならないよ」
「ま、まぁでも……オークの皆は喜んでくれていたみたいだよ?」
「芋を無償で提供したんだろ? しかも干上がった土地に街を作って、そこの住居まで貸与して」
資材を抱え、村人にまみれて、クラフターはつらつらと思う。
建て続けたい。 俗世に自身がいた証を残し続けたい。
資材不十分の中での建築はしばしば妥協を必要とするし、質の悪い作品に対する際限なき増改築の日々を招くとしても、それもまた楽しい日々。
クラフターの本懐に帰属しているとも言える。 人生とは手に汗握る興奮の連続だ。
「リザードマンも喜んでたよ?」
「変な踊りでね。 湿地帯への侵入は咎められたけどな」
「……でも各部族の代表団が勉学の為に街に来たいって」
「……ナニを学べるって?」
「建築技術とか戦闘方法とか料理とか」
「特殊過ぎて無理じゃね?」
そうだ。 ネザーに行こう。
火打石も黒曜石も既にあるのだから、躊躇する理由は無い。
長距離移動にも使えるし、素材採掘もしたい。 なんなら元の世界へ帰れる手段にもなるかも知れない。
そうなれば貯めていた素材を此方へ移管出来る。 此方では中々手に入らない物品も数多い。
「シズさんが止められないんじゃ、いっそ力尽くでと思ったけど駄目か」
「危害を加えるのは反対かな」
「死んでもベッドから復活するんだろ。 ベッドを破壊すれば或いは?」
「……リムル」
「冗談さ。 ただコイツらが……ヤバい事をした時に、俺の責任になるだろ。 今は平和でもな」
「あの人達が嫌いなの?」
「いや……そうだな、嫉妬はしているかも知れない」
そうと決まれば作らねば。
ゲートは安全な場所に隔離して、丸石か何かしらで囲う。
稀にゲートからゾンビピッグマンやらが出て来るので危険なのだ。
逆にこれを利用したトラップタワー類を製作する事も出来なくはないが効率は悪い。
それより懸念事項がある。
ピッグマンは中性だから、攻撃さえしなければ良いが、ちょっかいを出して敵対すると奴等との集団と対峙し大乱闘に巻き込まれてしまう。
マルチにおいては他の者にも被害が波及する。 敵対するにも殲滅させるなど他者への配慮が必要だ。
そうだな。 街は発展して土地が無い。 地下に作ろう。 事故が起きるにも封じ込める。
ついでだから様々な実験施設を造るか。 都市部の地下秘密基地。 浪漫だ。
「アイツらにとって世界は遊び場なのかも知れない。 玩具にはなりたく無いもんだ」
「考え過ぎだよ」
「ごめんよシズさん。 でも、怖いんだ。 時々アイツらが。 何考えているのか分からない、アイツらが」
地下を掘る。 効率強化ツルハシを振り回し、都市の地下を抉っていく。
地下鉄計画も立てつつ、最深部にゲートと実験場を設ける。 地下なら村人に群がられる心配が無い。
念の為にディスペンサーやピストン、ワイヤーを用いたトラップを作る。
万が一を見越しての砂利シャッターも作る。
大規模な地下開拓は時間と労力、精神力を削るけど、出来た時の達成感は高い。
確かに得られていく結果はそのまま自信に繋がる。 それは飛躍への原動力となる。
「リムル様! 各部族の代表団が到着しましたぞ!」
「……分かった。 案内してやってくれ」
クラフターは今日もツルハシとスコップを振るう。
やりたい事は各々に沢山ある。 ほら、地上に集まっていく多種多様な村人もそうだろう。
夢想し実行し創造していく。 世界はそれを受け入れる。 我等を抱擁してくれる。
残酷で慈悲深い温もりに甘んじ、人々は今日も生きていく。
クラフターよ、大志を抱け。
どこかで原作側に修正したいところ……。
皆さんも日々辛い中ですよね。
作者も切羽詰まった職場の環境下、悪い雰囲気にいるので毎日息が苦しくなります。
作中のクラフター達の様に堂々生きたいです。 ですが独りではなく、作中のマルチの様に志を共にする仲間がいるのをどうか、忘れないで。