リムルは街の皆に名付けします。
あとクレーム処理……。
「へぇー……あんたの剣、ダイヤモンド製かい」
シズと共に街を出歩く度、一々呼び止められて困る。
が、クラフト絡みならと足を止める我々も我々か。 今や髭モジャと妙な親近感を沸かせる村人が剣を褒めそやす。
クフクフと笑みが浮かぶというものだ。 クラフトを学ぶとは全ての本質を学ぶ事。 分野はどうあれ、その姿勢は褒められて良い。
「刀剣ってのは、硬くしすぎると斬り付ける時にしならず折れちまう。 かといって柔らか過ぎても折れる。 そこに刀剣を作る難しさがある」
「んだ。 だけんど、彼等の剣は早々に欠ける様子がねぇだ」
「強力な魔法が込められているようだしな、そこに秘密が?」
「創るにしても、どう打ってんのか気になるべな」
エンチャントに息を呑んでいると見た。
ダイヤ剣自体は珍しくないから。 地下を掘り進めていればいずれ手に入るからだ。
問題なのはエンチャントにある。 質を問えれば様々な効力を発揮するソレらだ。
耐久や攻撃力を上げるのは一般として、アンデッド特効か虫特効で分かれるし、屠殺用にしてもドロップ増加を付加する。
間合いを気にするならノックバックを強化しても良い。
剣1本にしたって、クラフターによりけりだ。 正解は無い。
「剣ってどうやって作ってるのか、だって」
エンチャント台を製作して本棚で囲うと答えた。 それは高級施設を意味する。
クラフターによってはピストン回路を組んで、本棚の数を変更出来るようにし、弱強エンチャントそれぞれ出来る様にしている。
安易に製作は出来ない。 それ故に価値は大きい。
「えんちゃんと? えーと、そうじゃなくてね……剣そのものの作り方」
ナニ?
シズも剣を持っていただろう。
まぁ良いか。 クラフターは作業台を置くと作ってみせた。 こうするのだと。
「……棒と鉄塊を置いてどうしたんだ。 へ? 一瞬で剣が出来たぞ!?」
「たまげただ……」
試しに鉄剣を製作。 驚かれた。 何故だ。
簡単に出来るのに。 木の棒1本置いて、並列に2個鉄インゴットを置いてハイ完成である。
「火を使わない、打ちもしない!?」
「真似出来ないだな」
「なんとなく分かっていたけどね……」
取り敢えず剣はシズに渡す。 丸腰は良くない。 いくら我々がいるとはいえ、自衛手段はあるべきだ。
「ありがとう……うん、振り易いよ」
「しかし鉄にしても……ここまで純度が高いと錆びもしないんじゃないか?」
「ここまで綺麗なのは初めてだ」
「取り敢えず鞘がないから持ち歩けないかな」
「なら俺らが作っておこう」
シズは剣を預けてしまった。 なんでも後で受け取るらしい。
クラフターだったらインベントリに入れるだけなのだが。 シズは一杯だったのだろうか。
取り敢えず再度歩き始める。
舗装された道、左右に居並ぶ摩天楼。 色彩を得る為の植物や花々が良い形に目を楽しませる。 通行人のバリエーションも増えて楽しくなっている。 人口は確実に増えた。
だが綻びは無い。 松明とグロウストーンの街灯は十分照度を確保している。 異常なし。
「あのね」
徐に話しかけられた。
どうしたシズ。
「貴方達のお陰で、いろんな人が助かってると思うんだ。 私も一緒にいるだけで楽しいよ? 驚く事がいっぱい溢れて。 こんな事、今までなかったから」
射幸心か。 だがこんなものじゃない。
世界は広大で、常に探究心ある限り無限大の可能性が待っている。
「そうだね。 でも、その原動力ってどこから来るの? ううん、来たのかな。 どこまでも真っ直ぐで世界と向き合って楽しんで……苦しい事も打ち払う強さを持っている。 貴方達は日本から来たワケじゃないよね」
にほん?
前にも聞いたが、それは何だ。 テッパンの親戚か?
「ふふっ……ううん、国の名前だよ」
くに? くにとは?
「分かりやすく言うと地域、かな」
そうか。 ならバイオームもある種の国と言える。 ここもそうだな。
「貴方達の、元の世界にも?」
あったぞ。 数多の国が。 世界もあった。
「世界? ここみたいな、異世界の事?」
そうだ。 前にも話したが、ネザーにジ・エンドという世界があった。
ネザーは全体的に紅く灼熱で、マグマの海があり、危険なモンスターが蔓延る世界だ。 要塞もあった。
時計もコンパスも狂う。 水は瞬時に蒸発する。 ベッドに寝れば爆発する。
「ば、爆発するんだ……」
ジ・エンドは深淵に浮島が浮かぶ世界で、足を踏み外せば永遠の奈落が待っている。
一方、エンダードラゴンが巣食う所だ。 ソレは討伐したが。
エンダーマンなる黒く長身のモンスターも跋扈する。 町もあったか。
普段はそれらでなく、ここの世界の様に青空広がる下にいて、同じ様に建築に勤しんでいた。
誰に言われた訳でもなく、それが楽しいから。 人生が、世界が。
この世に自身の証を打ち建てていく。 それを自身や周囲が評価した。 生活に必要な事でもそうでなくてもだ。
時に誰かを助けもした。 喧嘩もした。 ウィザーという化け物をウッカリ召喚した時は死闘であった。 それすら今や良き思い出だ。
「楽しかったんだね。 でも、どうしてこの世界に来たの? リムルは転生だけど、私は召喚されたの。 貴方達は? 自力でここに?」
てんせい、は分からないが。
死んではいない。 召喚されたかは分からない。 だが周囲には仲間以外いなかった。
「……辛く、なかった?」
いや全然。 寧ろワクワクした。 新たな冒険が始まったのだぞ。
どんな世界であれ、楽しんでこそ人生だ。 その為の術……創造力を持ち得ている。
その力で明るい世界を進む。 それは生きとし生けるもの全てが持ち得る権利であり、そうであると信奉している。
それはシズ。 君もだ。 我々もリムルも皆全員。 明るく生きるべきだ。
「……うん」
だからこそ、不幸だと嘆けば笑わせよう。 助けて欲しくば手を繋ごう。
シズや皆を泣かせる奴はぶっ飛ばす。 建造物や世界を壊す奴も同罪だ。
「……みんな、強いんだね」
シズ。 何も心配するな。 慌てなくて良い。
我々創造主一同、クラフターは創る者達だ。
大なり小なり歩んだ道もクラフトされたモノなのだ。
目に見えなくても誰かが気が付かずとも、絶対に間違い様が無い。 自らの歩みを誇りなさい。
君は独りじゃない。 この先も、ずっと。
「ありがとう」
生まれた気持ちも、またひとつのクラフトだ。