ミリム・ナーヴァ登場へ。
リアルが心折に接してくる日々の為、中々書けない……。
33.初期起動と反省
『告。 地下から異音を感知』
花火本儀式から暫し経ち。
地上は日々賑わいの密度を高める一方、地下では模擬実験の限度が来てしまった。 大きな動作確認は此処では無理だ。
というわけで。
遂にIRPを地上で動かす事に相成ったのだ。
ドラゴンより小振りか同等程度のIRP。 派手に動けるスペースを地下に設けていない。
まさかジオフロントで暴れさせる訳にはいかない。 都市破壊は周回すれば快感だろうし、それはそれで記録出来るとしても。
そもそも地上での運用実験は予定していたのだ。
様々なバイオームで動けるのか。 TNTキャノンの精度は計算通りか。 格闘戦は可能なのか。 時期はどうあれ確かめてみるつもりであった。
「ま、まさかアイツら……」
キャットウォークから嘴の様な操縦席へ。
颯爽と乗り込み起動。 狭い操縦席が閉口する。
漆黒に支配されると癖で松明を付けたくなるが、次には計器類がRSトーチレベルに輝く事で一先ずの安心感を得た。
やがて目の前に投影されるように外部映像が飛び込んでくる。
パールモドキの応用らしいが、これまたよく分からない。 実用化したという事は解明された部分が多少あるのを示唆している。 にもかかわらず極一部しか知らない。
隠し事をされるのは気分が悪い。 IRP技術の独占は時に不仲の原因だ。 火種を生まない為なのかも知れないが。
取り敢えずの結果に満足するしかない。 その上で結局は口を開いた。
世界を直接目で見たいから。 意地悪な同志への抵抗もある。
そんな光景。 外から見れば半開きの嘴の中に、操縦者が咥えられている様に見える。
見る者に威圧感をも与える生物的特徴を一眼見ようと、キャットウォーク上には大勢の同志が押し寄せ見送った。
腕振り腰振り飛び跳ねて。 様々なダンスでパイロットを鼓舞している。
『概ね予想通りと思われます』
「で……それとは別にヤバいのが俺目掛けて来ている感じがする!? 最悪な組み合わせだよ!?」
未だ世界を直接見たいが故に。
慣れぬ操縦桿を押し引き、IRPの巨体が動く。 しゃがみ姿勢から立ち姿勢へ。
そのまま搬出路をIRPの二足が征く。 ドシンドシンと、しっかり自分の脚で歩く君主は壮観だ。
が、それなりにデカく作った搬出路はIRPからすれば狭き幅。
操作も慣れていない所為で、時々外壁に擦る。 付随して足場が破損した。 同志達が滝の様に溢れ行く。 許せ。
怒る様なら反論だ。 もっと道を広くしろと。
『破損音を確認。 地上へと近付いています』
「ええい! ヤツらの搬出出口に向かう! 最悪はアイツらに擦り付けてやる!」
出口の光が見えてきた。
狭き門を潜れば、そら。 お天道様がIRPに当たる。 黒きボディが照り輝く。
感極まり、操縦桿を大袈裟に捏ね回す。 咆哮するIRP。 さもドラゴンの如し威圧感。
「うおっ!?」
……誰かダメージを?
操縦席から落ちない様、スニーク姿勢で下を見やれば……リムルがいた。
うっかり蹴り飛ばしたか。 だとしたら悪い事をした。 腰を幾度か曲げて謝罪しておく。
「犬の散歩感覚でソレ出すなって言いたいが、それどころじゃない! なんかヤバいヤツが来てる! 俺が何とか出来ればやるけれど、最悪は協力してくれよ!」
早口ハァンだ。
ゆっくりハァンでも大差ないが。 理解出来ないし。 だが雰囲気から緊急事態である。
突如、計器の1つから音ブロックを応用した警報が鳴る。 高速接近中の飛翔体を捉えたらしい。 原因が知れた。
……が、この仕組みもよく分からない。
クラフト出来ぬ物を利用する件。
元の世界でも良くあったが。 鞍とか。
火薬もクリーパー狩りしなきゃ得られない。
この世界もそんな事で溢れている。 シオン級猛毒ポーションとか。
逆にだ。 ひょっとしたらこのIRP同様、クラフト方法を知っている者がいるかも知れない。
或いはロスト・クラフトか。 失われた創造の遺産なのか。 剣ガードを忘却した様に、廃れて忘れたのか。
今我々の理解の範疇にある創造が、現在の最高技術であるとは傲慢とした方が良い。
などとボンヤリ考えていた所為で対処が遅れた。
これまた突然に強い衝撃が巻き起こる。 目の前で大きな砂埃。 TNTが爆発したかの様だ。
「うおおおおっ!?」
IRPが揺らぎもしないのは流石の黒曜石製と褒めてやりたいところだ。
勿論、堅牢な機体だけではない。 移動手段が全地形踏破を目的とした二足歩行方式の関係上、自動姿勢制御に力を入れた結果であろう。
これは地下である程度成果が出ていたが、改めて立証された気分だ。 良くやった。 これだけは褒めて良いかも。
「来たぞ!!」
警告ハァンに弾かれて計器類を見る。
TNTキャノンの残弾数に変化は無い。 誤射ではない。 なら良い。 景観破壊及びリムル殺害犯にならずに済んだ。
仮にそうでも言い訳しよう。 1発だけなら誤射かも知れない。 許せと。
では原因は何だ。 クリーパーか。 遠地からのTNTキャノン攻撃か。 あり得なく無い。 搬出口が知れていれば座標計算上、砲撃は可能だ。 タイミングを合わせるのは難しい筈だが。 あと砲撃陣地の立地や距離。
「初めまして」
爆心地からハァンが聞こえた。
まさかのクリーパーだろうか。 いやクリーパーなら爆発四散する惨事だ。 この爆発規模もクリーパーよりかは上である。
巨匠と渾名される帯電クリーパーなら或いは……とも考えたが、それでも現状が上だ。
衝撃波だけで周囲の植林場が荒れたし。 何にせよ招かれざる客である。
「ワタシは魔王、ミリム・ナーヴァだぞ」
やがてピンク頭が現れた。 服の布地面積が著しく低い。 防御力がなさそうでいて、傷一つない。 強い。 確信する。 アレは間違いなく迷惑な村人だと。
無邪気な笑顔が余計に思わせる。 無自覚系荒らしクラフターかも知れない。
この後の行為次第では討伐対象だ。 このまま踏み潰してやろうか。
「お前とソコのドラゴンが、この街で1番強そうだったから挨拶にきてやったのだ!」
「え、ナニ? 今回はコイツらだけじゃなく俺も原因なの? 責任逃れ出来ないの? いつも通りだけども」
足下で交渉を始めるリムルとピンク頭。
こんな迷惑クリーパー系相手に優しさを見せるとは。 いや交渉か。 火薬を貰いたいのかも知れない。
「てかいきなり魔王かよ!? 普通最初に来るのって四天王(最弱)とかじゃないの!? いや非常識集団が側にいる時点で色々アレだけどさ!?」
憤慨している。 交渉に難航している。
クラフターはガッカリした。 まぁ、交渉が成立しないのは良くある事だ。 火薬ともなればそうだろう。 クリーパーを狩り立てた方が安上がりか。 そうですか。
「……改めましてリムルと申します。 なぜ私とアレが強いと思ったのですか?」
「ふふん。 それでオーラを隠したつもりか? この『ミリムアイ』にかかれば相手の隠しているエネルギーなど、丸見えなのだ……もっとも……ソッチのドラゴンと人間達は分からなかったのだ。 これは面白いと思って、尚更に放置出来ぬというものだ!」
「新しい玩具を見つけた子みたいな反応してるよ! 危ない子だよやっぱり!?」
「ワタシの前で弱者のフリなど出来ぬと思うがいい! わははは!」
笑顔を見せるピンク頭。
無情なレート提示で我物顔というところか。
どうしよう。 ここはリムルに任せてIRPを動かすか?
ウッカリ踏まなければ良いだけだ。 たぶん。
「それで今日はどんな御用でのお越しでしょうか?」
「む? 最初に言ったではないか。 挨拶だぞ?」
「……それだけかよ!? けどまぁ戦わずに済むなら越した事は無いか。 大賢者曰く、測定可能な下段段階でエネルギーが10倍以上らしいし。 もし戦いになったら絶対に敵わないだろうし……」
よし。 取り敢えず歩かせよう。
操縦桿を押し引く。 片脚を上げた。 ピンク頭が陰で隠れる。
あっ。 ヤベッ。
「へ?」
「おー」
ドシンッ。
…………。
コレはやっちまったか?
ピンク頭を潰したか?
「ナニしてんだーッ!?」
ッベー。 マジヤッベーわ。
どうしよう。 クラフターは冷汗が出た。
いくらクリーパー的存在だからって、見た目は村人だし、リムルが交渉していたし。
最悪はTNTの様に爆発四散の可能性すらある。 IRPが壊れなくても、周囲が吹き飛ぶ。 このピンク頭の威力は未知数だ。
いや、だって、ねぇ……?
操縦に不慣れだったから……駄目?
「わはははは! 面白いヤツだな! まさかいきなり踏み付けてこようとは!」
ピンク頭のハァンが聞こえた。 かと思えば片脚が持ち上がっていく。
操縦桿は触ってないのに。 え、なんで?
「だがこの程度、ワタシには通用しないのだ」
刹那。
機体が浮き上がり、ひっくり返った。
ピンク頭が片手で持ち上げて放り投げたのだ。
おいおいマジか。 化け物か。
「ワタシと遊びたいというのなら、遊んでやる。 ただし! ワタシが勝ったら部下になるのだぞ?」
慌てて操縦桿を動かす。
転倒も考慮しているから、起きるのは造作も無い。
問題なのは村人関係だ。 今後の課題だ。
「あーあー。 俺知らねー!」
「何を言っている? お前も部下になるのだぞ?」
「巻きこまれたー!? おいお前ら! 何とかしろ! 俺も考えるから!」
敵対している。 然もありなん。
だが丁度良い。 ピンチはチャンス。
どうせIRPは化け物退治用に開発していた。
ここで実戦といこう。 それで問題を見つけて直していけば良い。 既に操縦に問題がある訳だし。
クラフターですし、ロボットばかりの描写は避けたいところ。
てか、この調子で作者はどこへ行こうというのだね……。