ではどう落とし込むか……。
「わははは! いっぱい来たな!」
外の騒ぎを聞きつけて、搬出路からゾロゾロと出てくる創造主一同。
ピンク頭の村人がIRPと対峙しているのを確認して皆思った。
いきなり実戦かよと。 しかもウィザー級かよと。 挙句に体格差がある。 不利だ。 IRP側が。
「今度は何を見せてくれる!? そのドラゴンだってお前達が造ったのだろう? これ程のモノを動かすなんて面白いじゃないか!」
「……ハリボテじゃないのは確かだよ」
「だが! 踏み付け程度じゃ魔王の誰も倒せないぞ?」
IRPは村人サイズを多少相手にする事も考慮している。
固定兵装のディスペンサー。 脚による格闘戦。
今はそれだけ。
それだけでも、試せねばならない。 それもまたクラフターだ。
創造にも色々ある。 作って終わりでは無い。
装置類であれば実際に使用して幾度と繰り返し、上手くいかない方法といく方法を知り得ていく。 トライアンドエラーだ。
マグマと水を利用した丸石製造機も、非効率な製鉄所や金塊所も、稼働中の半自動回収畑等もそうだ。
問題点を解決する為には、先ず問題と己を知る所からだ。
だから取り敢えず。 創造主は自ずと操作した。
頭部をピンク頭に下げる。 お辞儀ではない。
「おっ?」
ボタンを押した。
頭部内蔵式、固定兵装のディスペンサーから大量の矢が飛び出る。
既存技術のクロック回路より速い速度で、目で追えぬ速度の矢がピンク頭に襲う。
他にもファイヤーチャージも放つ。 地上は瞬時に針山になり、火の海に。
諸に受けたら無傷では済まない。
ところが。
「凄いのだ! これ程の攻撃、他の魔王なら火傷くらいはしたかも知れない! だが、ワタシには通用しないのだ! はっはっはっ!」
効いていない。 矢が弾かれている。 ダイヤモンド防具にすら刺さるのに。
火も当然の様に効いていない。 耐性があるのだろうか。
クラフターは狼狽した。
笑われた。 我々の技術が……笑われた。
それも極一部しか知らない技術を。 既存の創造を凌駕するBB系回路を。
くそぅ! くそぅ!
「普段やりたい放題のアイツらが悔しがっているのは新鮮だけどさ、諦めるなよ? 俺達配下にされちゃうよ? 先に手を……いや脚を出しておいて、その程度で済むのは有難いけど」
「もう良いか? これで終わりか?」
まだだ! まだ終わってなーい!
創造主は操縦桿を握り直し、前にやる。
脚でピンク頭を蹴り飛ばす。 もう八つ当たりに近い格闘実験。
だが質量差がある。 ダメージは与えられなくてもノックバックくらいは起きるか。
が、しかし。 これまた片手で止められた。 ノックバックも起きない。 剣ガードの比では無い。
「残念だったな! お前達には期待していたのだが……魔王の片鱗を見せてやろう!」
そのまま脚を殴られた。 破壊はされなかったが、ノックバックが起きる。 天高く打ち上げられる程の。
参ったなぁ。 これ程とは。
「マジかよ」
取り敢えず操縦桿を握り直す。 落下に備えてコックピットハッチ完全閉鎖。
減速して自由落下が始まる感覚を味わいつつ、慌てず騒がずTNTキャノンの砲身をマニュアルで合わせる。 発射警報が鳴る。
「おぉー! まだ何か見せてくれるのか!?」
搭載されている主砲……TNTキャノンは砲身が長く足下の村人には使用出来なかったが……距離が出来た今なら"足下"にも攻撃出来る。
やれる事はやりたいだけだ。 無遠慮にトリガーを引く。 撃つ。 撃つ。 撃ちまくる。
ドゴンッドゴンッドゴンッと心地良いフルオートキャノンの豪快な音が響く。
漏れなく地上は爆炎で埋め尽くされた。
「それまた面白い!」
撃ちまくりながら、ピンク頭にのしかかる様に機体も落下。 地面に叩きつけられた。
痛い。 落下ダメージを喰らう。 これも改善点だ。 ボートかトロッコを使えば或いは?
「うりゃ!」
そして当然の様に機体を放り投げられた。
辛い。 我々の技術が通じない事に。
砲撃を受けて未だ無傷のピンク頭。 ウィザー級もピンキリ。 いや、新たな脅威か。 シオン級か。
「面白い見世物だったぞ! それにそのドラゴン……黒紫の身体は随分と頑丈だな! 軽くとはいえ、ワタシに殴られて傷ひとつないとは驚きなのだ!」
最早これまでか。 否。 これからだ。
一度や二度の躓きで諦めて、何がクラフターか。 何が創造主か。
作って失敗してまた作る。 その繰り返しを続けたからこそ今世界があるのだ。
それに我々は失ったのでは無い。 得たのだ。
失敗でもない。 上手くいかない方法を知ったのだ。 別のやり方を試せば良いじゃないか。 それだけだ。
「じゃあ勝負もついたし、お前達は今日から部下に……」
「まだだ! まだ終わってない!」
機体の姿勢と同様、ションボリしている傍ら。 リムルが再び交渉を開始。
「ほう? お前はワタシに通用しそうな攻撃手段を持っているのか?」
「1つだけな」
「わはははは! いいだろう、受けてやるのだ。 ただし、それが通用しなかったら全員ワタシの部下になると約束するのだぞ?」
「分かった……では喰らえ」
決裂したらしい。
シズに擬態すると無謀にも突撃を開始するリムル。
八つ当たりしたい気分なのは分かるが、砲撃も格闘も効かない相手だ。
リムルがどうにか出来る手段を持ち得ているとも考え難い。
いや……多様性に富むスライムだったと思い出す。 質量を明らかに超過した物体すら捕食する。 可能性を信じよう。 仲間である。
リムルの手に得物は無い。 だが黄金に輝く液体が浮かんでいる。
なんだあれは。 金林檎の一種か?
『告。 対象のエネルギーが膨大過ぎる為、捕食不可能です。 通用する攻撃手段皆無……』
「大丈夫だよ」
『警告。 全ての攻撃は反射される可能性が高いです。 自動防御を発動……』
「こういう子供っぽい相手には……それ相応の対処法ってもんがある!」
パチィンッと小気味良い音が谺した。
リムルがピンク頭の口元を塞いだのだ。
いや金の液体を喰らわせたのか。
相手がクリーパー的存在と思うと鬼気迫る行為だが……。
ハッ! まさか浄化作用が!?
若しくは沈静化!
「……どうだ?」
暫し沈黙。 創造主達も見守る他ない。
中には剣ガードをしたり、トーチカをクラフトしたり塹壕を掘って隠れる者もいる。
爆発するかも知れないので。
「な、なんなのだこれは!?」
ピンク頭が興奮している。 いけない。 起爆動作に入ったのかも知れない。
IRPを動かして皆の盾になる。 戦闘中、黒曜石破損等のダメコンは発生していない。 信頼と実績の黒曜石である。
「くっくっくっ。 どうした魔王ミリム。 こいつの正体が気になるか?」
にも関わらずリムルは不敵の笑み。
周囲には先程の黄金。 気になる。 ピンク頭の興奮への危機感より知的好奇心が勝る。
IRPごと前のめりになった。 なにそれ。 教えろリムルと。
アレか? 決戦用上位金林檎の親戚か?
状況も逼迫していた。 相応のアイテムの可能性が高い。
「お前らもか。 ふっ、初めて優越感に浸った気分だな」
また笑われた。 だが気にしない。 聞くは一時の恥。 聞かぬは一生の恥。
あいや通じないのであった。 誰かシズを呼んで来い。
「こんな美味しいもの今まで食べた事がないのだ!!」
「蜂蜜だよ。 先日保護したハチ型魔蟲に採取してもらったものだ。 後でコッソリ食べようと思っていた俺のオヤツなのだが、上手いこと興味を持って貰えたようだ……ついでにお前らも」
それもまたクラフト方法を得て、そうでなくても色々試してみたい。
沈静化作用にせよ浄化作用にせよ。 シオンに金林檎を試した時は、ハッスルして周囲構造物を破壊しやがった。
だがその黄金ならば或いは上手く行くか。 シオンを沈静化出来るやも知れぬ。
或いはポーションの原料に出来るかも。 興味は尽きない。
「俺の勝ちだと認めるならば、コレをくれてやっても良いんだがな」
「だが……しかし……」
「うーん美味しい♡」
「あっ!!」
喰った。 美味しそうだ。 ついでに体力の最大値が上昇しているのかも。
「おっと早くしないと無くなりそうだぞ」
「ま、待て! 提案がある!!」
観察していると、今度はピンク頭から交渉を開始した。
凄い。 見た目は村人とはいえ、クリーパー的存在が話している。 特にソレと話すリムルの勇気に敬意を示したい。
「引き分け! 今回は引き分けでどうだ? 今回の件を全て不問にするのだ」
「ほほう?」
「も、勿論それだけではないのだ。 今後ワタシがお前達に手出しをしないと誓おうではないか!」
「勝ったな」
さても落ち着いてきた。
IRPの問題点は多く見つかった。 収穫は大きい。 真のクラフトはこれからだ。 改善改修に邁進するのみ。
「……ドラゴン」
「うん?」
「あ、いや……コイツらとは話が通じぬのか?」
「一応、通訳がいる。 だけどあまり伝わらないな。 どうした? 何か話したいのか?」
「……なに。 なんだか面白いヤツらだし、付き合っていけば退屈凌ぎになると思ったのだ!」
「まぁ退屈はしないよ。 通り過ぎて迷惑極まりない……今だって何考えてんだか」
よし。 善は急げ。 思い立ったら即実行。
IRPを格納庫へと戻す。 今の技術力では敵対勢力に対処出来そうにない。
研究だ。 何か方法があるはずだ。
創造主達は諦めない。 強いてそれが取柄だとも思う。
なにより、達成感は一入だ。 苦難の連続を超えた時の快感を皆は知っている。
何より物作りをしている時というのは、とても楽しいから。
漫画通りの方向へ……。