といっても、振る舞い等は妄想になります。
45.シズと剣道
「シズ殿、この辺にしておきましょう」
森の開けた場所、木剣の打ち合い響く場所。
いた。 シズとハクロウなる帯刀村人が。
後、ゴブタ仲間が何人か見受けられるが皆して倒れている。 やられたらしい。
チャンバラをしていた様子だが、此方に気付くなり手を止める。
「まだ……ひと合わせを」
「焦りに迷い、見せて仕方なし。 それにホレ、恩人達が来ましたぞ」
シズは息が乱れ、ハクロウは涼しげ。
格の違いはどうあれど、我々はシズへ駆け寄るのみだ。
「様子を見に来てくれたの?」
疲労感を隠しての空元気を見せてきた。
それも我々の所為だ。 途端に悲しくなり首を振る。 同時に謝罪した。 済まないと。
「急にどうしたの? 謝られる事なんて……」
いやあるのだ。
ツルハシとスコップを渡した時、気付いてやれなかった事を。
「え?」
剣だ。 他のツールと比較して愚弄した訳ではない。
だがクラフターに好き嫌いがあるのと同様、エンチャントに様々があり正解が無い様に、剣道も様々である。
特にこの世界に来て、改めて思い知らされた。
それを我々はあろうことか、視野が狭まると思想を押し付けた。 誠に済まなかった。 許して欲しい。
創造主一同、腰を曲げて何度も謝る。 決して煽ったり踊っている訳では無い。
「そんな……! 私の方こそごめんね……折角木こりや採掘を教えてくれたのに。 剣ばかり握って。 でも……子供達に会うにも、少しでも勘を取り戻したくて」
もう良いのだ。 一同はニコリと微笑む。
己の道を進みなさい。 我々もそうする様にシズもそうしなさい。
だが……と一拍。 剣を打ち合うというならば、我々も未だ教授出来る事があるやも知れぬ。
「……うん」
さぁ、構えろシズ。
様子から、もう一打ちする予定だったろう。
創造主は木剣を構えた。 エンチャント無し。 真物だ。
「ハクロウさん」
「良い良い。 思うがままに相対しなさい」
「……ありがとうございます」
シズが構える。 多少の疲労は見える。 しかし剣はブレない。
「───行くよ!」
踏み込まれた。
剣1本でやり合うなら、同条件で打ち合うべきだ。
そう判断し、ミリムの時の様にせず、やあやあと木剣のみで打ち鳴らす。
剣ガード。 意表突。 瞬時の左手持替。 踏込みノックバック。 全体重を載せた飛翔斬。
剣1本と発想次第で結構幅は広い。 それを思い出す。 若き頃の血が騒ぐ。 同志との喧嘩、戯れ、切磋琢磨していた駆け出しの創造時代。
夕日を背にして、影が激しく広間で揺れ動いた。
郷愁にも似た感覚。 まさか手汗握る剣から、此処まで得られるとは。
忘却の中に眠るのは思い出ばかりではない。 技術と熱意もだ。
シズに謝罪し懺悔する筈が、逆に息を吹き込まれた面持ちだ。
「ほっほっほっ。 両者、良い顔付きになりましたな」
再び教えられたな、この世界に。
シズ、ありがとう。 我々は生きている。
「此方こそ。 私も今、生きてるよ!」
クラフターは微笑んだ。
黄昏時、松明の明かりのみになるまで打ち合いは続いた。
互いに節々が痛む筈なのに、何故かそれすら幸せであった。
やはり我々は生きているんだな。 そう思えた。
「おーいハクロウ! 明日くらいからヨウムって奴も鍛えてくれ!」
「ほっほっほっ。 儂の周囲も賑やかになりますのぅ」
「……ヨウムさん。 気をつけるっす。 このジジイはマジおっかないっすから」
「ゴブタ。 兄弟子になるのだから修行量を倍にするからの」
「えぇ!? 理不尽っすよ!?」
「……成る程、少し理解した」
暗くなってもテンペストは賑やかである。
それも剣一本道だけで華やかだ。
多くの道が開けている。 全て合わせたら、最早道ではなく1つの巨大な世界になろう。
嗚呼、素晴らしきこの世界。 我々は楽しみ尽くせない人生を送っているのだ。
皆様の感想、意見、評価等が励みになります。
いつもありがとうございます。