でも雑念マシマシ。
黒曜石は創造主以外でも破壊可能な件。 修正……。
49.雑念と多様性
「取り巻きは片付けた。 高みの見物は終わりだな、カリュブデス!」
「カリュブディスですリムル様」
「……やっぱり名前は短くて発音しやすいのに限るよな」
取り巻きの魚群を爆散させたから、残るは親玉のみとなった。
取り巻きが呆気ない時程油断してはならない。 創造主は残心の構えを熟知している。
ジ・エンド、ネザー要塞、水中神殿。
長年に渡る様々な戦闘経験。 今日この瞬間まで養われ続けた勘が告げる。
『ギ……キキィ、キイィイ……ギギ』
親玉の大目玉が妖しく光る。 何か来る兆候だ。
文字通り大目玉を喰らう前にIRPを村人より前に出し盾とする。 目玉は蜘蛛で間に合っている。
……そういや大蜘蛛の目は喰ってない。 偏見で食べる気がなかった。 脚の部分はイケたんだが。 眼鏡村人も美味しそうに喰っていたから違いない。
だが目玉は……美味しいのか? 見た目通り大味だと思うと嫌だけども。
それでもシオンよりマシか。 辛い過去と苦労は前向き思考のスパイスになる。 それも場合によるが。
「何だこの音……ッ!? みんな下がれ!」
地を這う同志は黒曜石で防壁を作る。 IRPだけでは村人皆を守り切れないからだ。
これらばかりは現IRP機能で賄えない六感だ。 生物に備わり無機物な装置に有しない。 だが想う。 故に我有り。 将来は人工知能搭載が可能かも知れない。 若しくは似た何か。 思想自体はある。
原初に誰が"想像"したかは定かではない。 だが重要なのは其れでは無く、考えられたなら出来る部分だ。 想像出来た物事は創造出来ると考えるのがクラフターだ。
「な、なにかいっぱい飛んできたっす!?」
「空いっぱいに鱗が!?」
「多すぎて躱せない!?」
「作ってくれた壁の裏に隠れろ!」
「機龍の裏でも良い!」
村人が隠れていく。 ゾンビイベントの様に。
その側から雨霰と大鏃が刺さる。 負傷者は見た限りいない。 先ず良かったと安堵した。
元の世界の村人だったら呑気に刺されに向かう愚者もいた所だ。 蛮勇ですら無い。
黒曜石すら破壊する存在をこの世界で未確認だからと、黒曜石製防壁の安全神話が崩壊しないとは限らない。 ウィザー級がゴロゴロいるならいよいよ頼りきりは出来ない。
絶対は無い。 有るのは空虚な妄信。
だが自信は絶対必要だ。 少しも無ければ、かの様に動けなかった筈である。
疑問の投げ掛けは大切だが、疑い過ぎて尻込むのでは良くない。
取り敢えずやってみる事だ。 空虚としつつも無限の可能性が常に相手であり、しかし敵では無く恐怖でも無い。
「用意が良くて助かる!」
「また恩を受けてしまった」
「剣の腕は粗末じゃが、其れを補い余りある力をお持ちの様じゃの」
「……味方でいる内は有難いよ」
だがやはりそれも、とクラフター。
単に肯否定しては面白くない。 誰も不可能だと証明していないのだから。
昔々ど根性RS回路を組んだ者がいた。 巨大演算装置を製作したのだ。 ならばBBで小型化された集積回路や装置、キャノン理論の基礎からなる弾道弾着、軌道演算……研究を続けた技術革新の果てに見るIRP創造は何か。
ゾクゾクする。 未知なる将来が楽しみでならない。 戦闘中だというのに雑念が凄い。
否。 必要だ。 戦場の肌触り、高揚感が我々に新たな発想、閃きを与えてくれる。 いつ何処で技術革新のヒントを得られるか分からない。 楽しい創造の世界に身を置き続ける人生。 果報者である。
「雨は止んだぞ!」
「お前ら砲撃しないの? 急に呆けてどうした?」
「……みんな戦闘中だよ。 集中しなきゃ」
シズの声がして、思考の海から引き上げられた。
いけない。 やる事をやろう。
クラフター達は空を見上げ直す。 親玉は高度を下げる様子が無い。
弓矢を当てるのは難しい距離。 剣を振るうにも向かう他ない。 一部はエリトラで離陸し、一部は地上に残った。
IRPは残弾全てを親玉に捧げる。 火薬を思えばTNTは貴重な存在であるが惜しまず使う。 こういう時こそ使うものだ。
「……後はアイツらと俺、救援のペガサスナイツでやってみる。 皆は下がっていてくれ」
「なぁなぁワタシも……」
「ダメ」
砲撃の中、リムルがシズに擬態した。 かと思えばコウモリの様な羽根を生やして弾頭と共に飛んでいく。
魔王ミリムはションボリして飛んでいかない。
改めて多様性に富む世界だ。 生物の進化に思いを馳せてみるのも良いかも知れない。
進化……雷に打たれた豚や帯電クリーパー。 元の世界では忌まわしき其れら。
此方の世界では突然に変化して見せた。 が、敵ではないなら進化に対して前向きな姿勢を保ちたい。
バイオーム……環境に合わせたと思われる生態や形状。 同じ場にいても姿形が異なる点に着目しても面白い。
種として分類する際、我々は見た目第一である他、同様の食性であるか、繁殖可能かどうか等で見極めるが一方で馬系の交雑は何で有るか。 種と勝手に決めつけているものの生物は本当に多様性に富み、複雑難解だ。
そもそもドラゴンは他にいるのだろうか。 見てないだけか。 もし単体ならば……。
あ。 弾切れだ。 ストレージは空だ。
目標を改めて見る。 爆炎に散々に呑み込まれているにも関わらず、未だ健在である。
そもそもダメージが通ってる様に見えない。 やはり親玉は別格らしい。
ミリム同様、我々もしょげる。 IRPも狼のお座り姿勢になってしまった。
「あ、ナニ? 弾切れ?」
「そうみたい」
「じゃあ、俺らは遠慮なく近寄れるな……でもアイツらの砲撃が効かなくて俺らの攻撃が通るか……いや、やるしかないな」
またも無用の長物になってしまった。
だがまぁ、やれる事はまだあるだろう。 新たな発想も色々生まれたし。
今度は空を飛んで見せたり、他の兵装を考えてみても良い。
今他に試せるのは……いつもの剣と弓矢か。
IRPで出来るのは……取り敢えずディスペンサーからファイヤーチャージでも撃っておくか?
薄味に……。