いきなり簡易発情実験動物扱いをしたクラフターですが、果たして。
フォスちゃん可愛いからね仕方ないね(殴。
でもフォスも魔物、獣人族。 人間の首を切り飛ばす力を持ちます(畏怖。
「色々と貰えると逆に怖いですね……」
小麦やリンゴや肉や魚や酒を与えても狐村人が発情する様子がないから、クラフターはガッカリした。
ケーキを目の前に設置してみる。 駄目だ。 困惑度が増すのみだ。
「突然目の前に置くです!? 噂通り意味不明です!?」
甲高いハァンを上げるばかりで進行しない。
取引にもならない。
かくなる上はエメラルドだ。 下手するとダイヤより貴重な宝石だが実験の為に。
前の世界では村人との取引に有用であった。 恐らく上手くいく筈だ。
「今度は大粒の翡翠か何かです!? そんな高価な物受け取れないです!」
拒絶された。 まさかここまで失敗続きとは。
発情はともかく懐柔も取引も成立しない。
村人同士で合流や取引が明らかに行われている現世界において、この拒絶は心的動揺を隠せない。
つまるところ仲間外れ感が否めない。 マルチにおいて堪える精神攻撃を今、我々は受けている。
この反応は最早虐めじゃね、これ?
「今度は落ち込むです? 言葉も通じないから困るです……でも悪い人じゃなさそうですし……」
では金か。 ダイヤか。 まさか石炭や鉄か。
様々に思考して試行錯誤をしようとしたが、当の狐村人はあげたモノを返却してきた。
「えと、私は狐の獣人族のフォスです。 色々と恵んでくれるのは嬉しいですが、お返し出来るモノがないです……だからこれはお返しするです」
渡したモノを返却された。
完璧に拒絶されている。 泣けてくる。
クラフターとしては折角の可愛い玩具……じゃなく実験動物を飼育したいところだ。
いっそリードを持ってきて拉致するべきか。 いやそれをやると痛い目に遭いそうだし。
せめて何らかの成果を得ようと村人の装備を見てヒントを得ようとする。
腰に短剣を佩く。 帯刀村人のモノとは全然違う。 それも気になるが横の鞄とやらの中身も気になる。 開けるか。
「あっ、こら駄目です!?」
中身を見てクラフターは首を傾げた。
見た事がない果物だ。 リンゴに似ているが違う。 少し縦長に丸い。
気になる。 美味いかも知れない。 取引して幾つか貰いたい。
エメラルドは駄目らしいので金鋳塊との交換を試みる。
「えっ? これ何個かと交換したいです? えっ、金塊とですか!? 明らかに釣り合わないと思うです!?」
手応えがある。 だが足りないらしい。
しかしどうしても未知なる果物を欲する。 取引が成立した実績も残したい。
金鋳塊を上乗せした。 さあ寄越せ。 まだ積み足りないか。 いっそ1スタック64個渡そうではないか。
「えっ? ええ!? ええええ!?」
路上に無造作にばら撒かれた金鋳塊に驚愕と困惑のハァンを上げて一向に取引が成立しない。
どうしろというのだ。
我々も何なら取引に応じでくれるかと思考するが分からない。
渡そうと思えばアイテム点数は膨大な数に膨らんでしまう。 だが日が暮れる。 時間の浪費はしたくない。
「あ、あの」
自ずと答えは勝手にやってきた。
狐村人が取引を持ち掛けたのだ。
「この国の対価の比は詳しくないですが、先程の芋と交換で良ければ……」
左手に持つベイクドポテトを指さす狐村人。
これか。 ジャガイモはコスパが良いがレートとしては安物だ。
まぁ、これで良いなら良いかと渡す。
案の定、果物を代わりに渡された。 なんと驚き。 取引が成立した。
何気に初かも知れない。
やったぞ。 取引がこんなにも些細でありながら困難を要し、それ故の達成感に浸るクラフター。
これでまたひとつ、村人に認められた気がする。
そうだ。
この狭くも広い世界に認められた快挙である!
歓喜のままに首を激しく動かした。
最早どっちが上で下か分からない。 更なる表現として右腕も激しく振り回す。
「やっぱり噂通りの変な人間です!?」
武装した村人が来るまで喜びの舞は続く。
だが相応の達成感は得たのである。
個人では小さな1歩だが我々には偉大な1歩だ!
中々進まない感じが……。