フォスはカリオンから魔国連邦を密かに探る命令を受けて首都に来ています。
使節団としてではなく、いち獣人族として。
そちらを読まれた方であれば、どの辺の話か分かるかもです。
同時にクラフターの影響か会話や行動が異なる点も……。
日常回、異聞ばかりだと本編進まないかもなので程々にしようかなと。
でも作中の首都の現在状況を把握、説明する回にもなっていたり。
「人間さんのくれた食べ物も美味しいですが、屋台のも美味しいです!」
狐村人は取引所を周り、取引で得た食糧を味わっては恍惚の表情を浮かべた。
一方、クラフターは悔しさを味わっていた。 握り拳を作り天を仰ぎクラフト能力を磨かねばと気持ちを新たにする。
「この串焼き肉、肉汁じゅわわ! やわらかお肉に香草がよく効いてて絶妙な味です! さっきのしゃきしゃき野菜とジューシーハムをふかふかパンに挟んだやつも美味かったです!」
村人のクラフト能力は独特だ。
今狐村人が食べている……パンと野菜、肉とをクラフトした品や棒と肉をクラフトして食べ易く工夫されたモノだけでも我々が作ってきた食糧よりずっと美味い。
若しくは効率的なクラフトや食事時間の短縮に成功していた。
我々も置いてかれまいと再現や研究に励んでいるが、食糧以外にも先手を常に取られている分野は多い。
特に悔しいのは……今狐村人に与えている幸福、それに伴う笑顔。 これは我々がクラフトしたものではない事だ。
村人達の功績だ。 負けていられない。 鶏肋だとしても役立ちたい。 承認欲求もある。
追い付け追い越せ創造主。 時間は掛かれど達成出来る筈。 涓滴岩を穿つのだ創造主。
だが1番はやりたいからやるのだ。 知りたいから研究するのだ。
なにより創りたいから創造していく。 やりたいようにやっていく。
それこそが我々であり人生だ。
そうして生きるし生きていく。
自分自身の為だ。 村人の為ではない。
いや、既に矛盾であったと己を顧みる。
この世界に来て村人の為にクラフトした物事は数知れない。
気が付けばこの世界の立派な住民であったかなとクラフターは苦笑した。
「でも物々交換出来そうなのが少なくなったです……使い過ぎたですか? なくなる前に宿屋さん決めるです……っと良いところに宿屋さんです。 ここにするです!」
おや。 狐村人が建物に入っていく。
建物の殆どはクラフターが建設したが、用途や内装は村人が変更している事が多い。
想定外ともいえるし想定内ともいえる。 何にせよ建物が使用されているのは建築者として嬉しい事に変わりない。
元世界の村人なんて扉さえあれば満足する連中であったし。
「すいませーん! これで何日か泊まりたいです!」
「ごめんねぇ、ちょっと足りないかな」
「1泊も!? 納屋でも良いです!」
「そういうのは出来ないけど……高層集合住宅の空部屋にタダ同然の部屋は沢山あるよ。 でも」
「でも?」
「大体は雲より高い高層階だからね……昇るのに時間がかかるのよ。 転移魔法や設備が間に合っていない建物ほど安いわ。 宿屋さんが存続出来る理由もその辺ね」
「な、なんでそんな不便な建物を……」
「さあ……あの不思議な人達が造ったからねぇ。 よく分からないわ」
「うーん……大変だけど危険な森で野宿するくらいならそこに住むです……」
「……長期滞在を考えているなら働くのはどうだい? 街道整備の仕事を募集していた筈だよ。 最近は地下鉄とかいうプラットホーム? の工事や地下都市の設備工事なんてのもあるね」
また狐村人が騒がしいハァンを鳴いたと思えば建物から出てきた。
取引にでも失敗したか。 良くある事だ。 我々も先程まで失敗していた訳だし。
「泊まる為に街道整備の仕事をしてくるです! さっきは食べ物、ありがとうございました!」
だが笑顔を見せてきた。 クラフターは頷くと、狐村人は溌溂と走り去る。
元気なのは良い事だ。 諦めずに邁進する姿はどこか我々に似る。
やはり負けてられないな。 性に合わない。 狐村人の後を追う。 新たな出会いと創造が待ち構えているに違いない。 それを学びモノにし、競争するのもまた楽しい。
「はい次の労働希望者〜」
「はいッ! 狐の獣人族、フォスです! こう見えて力に自信はあるです!」
「そりゃ大歓迎だ」
クラフターは今日もツルハシを振る。 スコップを振る。 斧も振るえば鍬も振る。
開拓、開墾、新築、改築、修繕、修理色々。
建築だって研究だって、したい事がある限りクラフトしない選択は有り得ない。
この世界の村人がそうである様に、我々も負けじと人生を楽しまねば。
「街道整備は例の人間達のお陰で殆ど終わっているんだ。 代わりに地下労働行きになるが良いか?」
「……背に腹はかえられぬです。 お願いしますですっ!?」
ほら見たまえ。
先程の狐村人は地下鉄へと向かったかと思えば、後手のプラットホームや内装のクラフトの手伝いを始めた。
今は細かな部分をツルハシやスコップで削り整地していく。
やはり狐村人もクラフターであった。 新人玄人関係無く歓迎する。
「うぅ……昼夜が分からない地下労働は苦手になりそうです……カリオン様、これはテンペストの闇かもです……」
目尻の涙を仮設照明の松明でキラリと光らせながら、ツルハシを振るっている。
創造主はその様子を見て満足気に頷いた。
そうかそうか!
泣くほど創造世界が楽しいか!
感極まるのは生きている証拠のひとつだ。
それでこそ創造主、クラフターである。
祝え。 実験動物改め新鮮な仲間の誕生だ。
改めてようこそ。 同志マインクラフターよ。
地下労働も楽しいでしょ?(笑顔)
どうも、可愛い狐娘を地下労働行きにさせる作者です(殴。
本来なら木を切る仕事からの警備隊への転職。
でも作中のフォスは……たぶん大丈夫でしょう。
泣くほど喜んでますから(暗黒微笑。