寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

8 / 175
3.改修と新型ゾンビ

 

「あ、あぁ……村が壊されていく」

「大丈夫だ……たぶん」

 

 

村の改修は急ピッチで行われた。

拳で倒壊する既存の建物。 失笑の他なし。

これを建築物とは認めない。 土塊の方がマシだ。 巫山戯るなと述べたい。

ならば作るまで。 既存の建造物は成るべくあるがまま愛でたいが、これは違う。 いざ判断したクラフターは早い。

さっさと村を拳で解体して更地にし、どうしてか綻びのある地面を土で平坦にし、松明を均等に並べ立て沸き潰しを行った。

ここまでが基礎。 下地である。 ここからが本番だ。

 

 

「あ、あれは一体……松明を大量に並べておりますが」

「儀式か? 地鎮祭?」

「な、なるほど お清めですか……ですが大切な家が……なんと!?」

「あっという間に立ち並ぶな。 しかも前より立派じゃん」

 

 

有り余る木材で不断の建築。 拠点相当の木造陳列。 流れ作業の時間短縮。

建材が統一されているのが失点だ。 デザインのバラつきに些細な抵抗と個性が見られるが、整然こそすれ『遊び』が無い。

捻りのない量産は惰性と偏在にして無個性象徴群。 独創とは差別化を図る事。 それを知りながら犯した創造は即ち誤魔化しを意味する。

正直、眉間に皺が寄った。 だからと建材を理由に弁解はしない。 クラフターは世界を欺瞞で乱す事を嫌う。

これに説明するなら、スライムと、どうしてか緑色に染色された村人が忙しないハァンを上げる事にあるのだ。

村人に見られながらでは興が削がれる。 特に突貫要求をされてる気がしてならなかったのだ。

 

 

「凄いな。 柱は疎か筋交も無し。 なのに強度が保たれている。 揺れもしない。 機密性もある。 なら吸排気口が必要かと思えば、換気は十分。 コイツらの建築技術は どうなってるんだよ……大賢者!」

『不明です』

 

 

一応の竣工を迎える。 夜を越えるには十二分の出来だ。 己の空間を切り取る安堵感は何事にも勝る。

扉さえあれば満足するハァン集団に設えたにしては随分と贅沢をした。 それすら誇らしくもなり、意味有り気にジャンプした。 満足だ。

 

 

「次は何だ? 防衛設備か?」

 

 

後は村の外周りに着手する。 どう見ても四方は森である。 植林場の様に纏まらない自然の木々。 光源が遮られ、沸き潰しは困難を要する。 漏れがある。

今回、村さえ何とかなれば良いので森の沸き潰しは後回しにし、ともすれば防壁の類を建設するのが顕然だ。

 

 

「おぉ……村の周りに柵を設えて下さる」

「地面に置いている様にしか見えないんだがなぁ。 やっぱ強度は高い。 揺れもしない。 粘糸を使わなくても平気そうだな。 それにしても この感覚……洞窟で味わった様な」

 

 

村の周囲を木のフェンスで囲った。 材料は事欠かない。 ブロックでも良いが見た目が気になる。 防壁の上にモンスターが沸いたら気分が悪いし。

加えてフェンスの手前、森側に堀を作り水流トラップを施した。 流された先は落とし穴だ。 マグマでも良いが村人が落ちたら気分が悪い。

取り敢えず最低限は改修した。 暇を持て余していた奴は村の中央に噴水広場を作った。 無限水源なので良い。

やはり機能と景観双方を気にしてこそ建築家と言える。 落ち着いたら拡張したい。 前の世界では色々失敗した。 試したい事が山程ある。

 

 

「あっという間に出来た」

「飲み水に足る水が流れ、整備された道は年寄りも子どもも安心して歩けます。 尽きぬ松明は夜でも昼の如く照らしましょう。 大変ありがたく存じます」

「かなり助かるな、夜でも戦い易くなる。 水路になってる堀も戦術的だ。 ただ」

「ただ?」

「バケツひとつから水源と水流が無限に生まれる理由が全く分からないけどな!?」

「理屈はともあれ、大きな助けですリムル様」

「そうだな、今考えるべきは迎撃だったよな……皆、戦いに備えるぞ!」

 

 

スライムがハァンと鳴き、村人が忙しなく動く。 何とも珍妙な光景だ。 原因はゾンビイベントか。

なら退治するまで。 クラフターは各々武装を展開した。 多くはダイヤモンドフル装備フルエンチャントだ。 多少のエンチャント違いはあるが、ほぼ統一された装備と言える。 当然、弓矢にも強力なエンチャントを施している。

本気の現れだ。 蔓延る魍魎は倒すのみ。

一方で鉄装備は資源不足時と最低限の防御に使う。 金と革は見栄だ。 実戦向けでは無い。 精々が試合向け。 革は染色出来るので班対抗戦での敵味方識別に都合が良い。

金はまぁ……ツールを素早く振り回せる点はギリギリ評価したい。 耐久が無さ過ぎるのが致命的である。

それでも金を纏う事は自らを縛り痛め付けるに近い愚行だった。

 

 

「なんだその青い鎧。 剣もなんだ? 総じて薄ら輝いてるけど」

「頼もしくもあり恐ろしくもあります……」

「魔素は感じないが、気迫は感じるよ」

 

 

今は集中しなくては。

ゾンビイベントは沸き潰しをしても起きてしまう。 村をハーフブロックで敷き詰めて、かの様に防壁を制作すれば効果は得られるが、なにぶん別世界だ。

どんなゾンビが湧くかも分からない。 ゾンビピッグマン級か。 エンダーマン級か。

スライムを見てしまうと想像の域を出ない。 先見、多様性にも程がある世界だ。

 

ここでハタ、と思う。

では村人は村人なのか?

 

村人はどうしてか緑だ。 ゾンビと同色だ。 襲いやしないし陽を浴びても燃え尽きないし知的にハァンするから気にしなかったが、成る程。

理解した。 そういう種か。 ゾンビ蔓延る村。 とうに滅んでいたか村人は。 道理だと思った。

そもそも可笑しいのだ。

元の世界でも手を差し伸べねば全滅する村は多くあるのに、過去最低設備の村がゾンビイベントに耐え得る筈がない。

扉が無ければゴーレムもいないし。

前の世界でも似た経験はある。 理解するのに時間は掛からない。

 

 

「ところで今更なんですが、彼等はリムル様の お知り合いで?」

「まぁ、そうだな。 そうなんだが……日は浅いし、会話も出来なくて苦労してる」

「左様ですか。 悪い人達では無さそうですが」

「村を守ってくれるなら良いんだがな。 気紛れにも感じるし、あまり頼るなよ。 取り敢えず俺は予定通りだから」

「ははっ! ありがとうございます! どうか我らに守護をお与えください! さすれば今日より我らはリムル様の忠実なるシモベでございます!」

 

 

大きなハァンが響く。

見やればゾンビ達がスライムに平伏している。 スニーク姿勢より低い。 なんと礼儀あるゾンビ達か。

その様子にクラフターは感心し、うんうんと頷く。 敵で無いなら良い。 有効活用出来るなら尚の事。

エンダーマンやゾンビピッグマンみたいな中性やも知らないが。 無闇に武力行使する程、ここにいるクラフターは愚かではない。

なんなら取引を要請するか。 ゾンビと取引というのも愚行と無謀の合成技な気がしてならないが、村人みたいに鳴くならやれそうだ。

 

 

「敵の戦力は?」

「約100匹程です」

「確かなのか?」

「はい。 兄の犠牲と引き換えに……」

「……自慢の息子でした。 誇りを無駄にしない為にも、我々は生きねばなりません」

 

 

スライムとゾンビが鳴き合っている光景を見せられた時点で色々違うし。

発見とは常識と偏見の殻を破り現れる。 発想したならやるべきなのだ。

ゾンビ化した村人に金林檎を与えた時を思う。 その時は驚くべき事に通常の村人へと変貌を遂げた。

良く思い立ったものである。 今一度、その頃を振り返るには良い機会ではないか。

 

学ばされるな、スライムとゾンビに。

 

……またも脱線した。 備えねば。

 

 

「戦える者は武器を用意する様に。 ここまで出た負傷者はいるか? 案内してくれ」

「分かりました、此方です」

 

 

水色スライムがヨボヨボゾンビに連れられて、ある建物に入っていく。

その中には横たわるゾンビで溢れている。 最初はほぼ床で寝ていたゾンビだ。

今は余るベッドを大量に並べ立て寝かせている。 不便に思えば人情も出る。 昼間から寝れるのも羨ましい限りだが。

 

 

「傷は深く無さそうだな」

「あの者達が手を施して下さったお陰です」

「へ?」

「赤い小瓶と言いますか、それを投げましてな。 そうしたら忽ち快癒したのです」

「えぇ……」

 

 

最初は改修の邪魔なので殺処分にしようとしたクラフターである。

纏めて葬るべく治癒のスプラッシュポーションをクラフトした。

アンデッドは回復系でダメージを負う。 振りかぶって投げた。 相手は死ぬ。

ところが流石は異世界。 驚くべき事にゾンビ色の血色が良くなった。

ゾンビの血色というのも言い得て妙だが、動けるくらいには回復してしまった。

まぁ良い。 退いてくれたし。

 

 

「暫く安静にしていれば、夜には何とか参戦出来ましょう」

「無理はするなよ。 次に武器を見たいんだが、何がある?」

「此方へどうぞ」

 

 

またも別の建物に移動する。 そこは武器庫だ。 耐久力が擦り切れてる弓を集めた。

スケルトンのトラップタワーが思い出される。

そこに置かれた共用チェストの中身は総じて弓矢だった。 あと骨。

 

 

「弓矢に棍棒か」

「はい。 摩耗していたものは、あの者達が直してくれました。 矢の補填も十分過ぎる程に」

「物作りに関する事なら、なんでも手にかける連中なのか……これは剣?」

「石で出来ています。 これもあの者達が用意してくれました」

 

 

石剣を取り出し眺められた。 珍しいのだろうか。 素材に事欠かない武器なのだが。

最低限の護身相当。 だから村に貯めている。 非常用に近い。

逆に木の剣は用無しになる。 威力が無さ過ぎて容認出来ない。 試合か訓練になら使う。

それかエンチャントの玩具。

 

 

「気前が良いな。 その裏で何考えてるんだか」

「……剣に関しましては、心得のある者がいないので直ぐには扱えませんが」

「とにかく。 ここまでしてくれたなら……村を守り切るだけだな」

 

 

日が暮れる。 急にソワソワしてくる。

夜は拠点で過ごしたい。 ゾンビイベントも起こらない。 焦らされる。

もう寝ようか。 そう拠点に向かった矢先だ。

オオカミの鳴声が聞こえた。 この世界にもいるのか。

 

 

「と、遠吠えだ! 近いぞ!」

「こ、こっちには備えがある! ここで決着を付けてやる……!」

 

 

肉だ! 肉を用意するんだ!

 

クラフターもまた忙しなく動き始める。

懐柔しよう。 オオカミは良いものだ!

 

取り敢えず腐った肉で良いかな。 捨てる程あるし。

空腹の状態異常を受ける悪性の食べ物も、非常食と こういう用途には持って来い。

 

足りなきゃ村人を何人か屠れば良いや。

腐った肉くらい手に入るんじゃないと思った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。